ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ全集(ルドルフ・ブッフビンダー)

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ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ全集
ルドルフ・ブッフビンダー Rudolf Buchbinder (Piano)
2010年9月19日~2011年3月27日 ドレスデン,ゼンパーオパー
88697875102 (P)(C)2011 Sony Music Entertainment Austria (輸入盤)
好録音度:★★★★☆
参考: Tower RecordsAmazon.co.jpHMV OnlineiconApple Music

私はピアノ曲は特定の曲を除いてほとんど聴いてきませんでした。ベートーヴェンのピアノ・ソナタもほとんど聴いてこなかった曲に入ります。特に理由はないのですが,ここらでちょっと聴いてみようかと思い(^^;,Apple Musicで新しめの録音で,演奏も録音も良さそうな全集を物色して選んだのがこの全集です。最近のApple Musicは曲名で検索しても対象が全ては出てこず,限られた中での選択でしたので,特に録音に関して満足が得られるものを選べたかというと必ずしもそうではないのが少々残念なところではあるのですが。まあ価格も安い部類に入るので良しとしました。

この全集は,およそ半年にわたって7回に分けて行われた全曲演奏会のライヴ録音とのことです。まだ全てを聴けてはいないのですが,テクニックのキレが素晴らしく,また比較的速いテンポで甘さを廃した淀みのない音楽が私の好みには合いそうでした。

そして肝心の録音なのですが,少し癖のあるホールの響きが付帯音としてまとわりつき音色に影響を与えてはいるものの,その影響は少なめで,芯のあるピアノの音色が良く伝わってきます。正直言うともう少し近めでクリアで透明感ある音で録って欲しかったところですが,まあストレスなく聴けるので許容範囲に入るかなとは思います。少し甘い評価ですが四つ星半です。7回に渡る演奏会のライヴということですが,統一感は確保されています。

探せばもっと気に入るものはあるだろうとは思いつつ,まずは曲をよく知るところからということで,この全集をしっかりと聴いてみようと思います。

ベートーヴェン:ディアベリの主題による33の変奏曲作品120(フリードリヒ・グルダ)

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ベートーヴェン:ディアベリの主題による33の変奏曲作品120
フリードリヒ・グルダ Friedrich Gulda (Piano)
1970年2月 ドイツ,フィリンゲン,MPSスタジオ
0300723MSW (P)1970 MPS Records (C)2016 Edel Germany (輸入盤)
好録音度:★★★★★
参考: Tower RecordsAmazon.co.jpHMV Onlineicon

バッハ:平均律クラヴィーア曲集全曲が素晴らしかったグルダのMPS録音。その第2弾のリリースです。ディアベリ変奏曲は初めて聴く曲なのでコメント出来ないのですが,とにかくこの録音が素晴らしいのです。残響が皆無で鑑賞の妨げとなる余計な付帯音が過剰と思えるくらいそぎ落とされ,ピアノの音が極めてクリアに粒立ちが美しく録られています。クラシックのピアノ録音としてはデッド過ぎるかもしれませんが,私にとってはほぼ理想的と言って良いです。こういう録音でもっといろいろな曲を聴いてみたいものです。

ベートーヴェン:チェロ・ソナタ全集(グザヴィエ・フィリップ(Vc)/フランソワ・フレデリック・ギィ(P))

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ベートーヴェン:チェロ・ソナタ全集
グザヴィエ・フィリップ Xavier Phillips (Cello)
フランソワ・フレデリック・ギィ François-Frédéric Guy (Piano)
2015年1月 メス,アルセナル
Evidence EVCD015 (P)2015 Little Tribeca / Evidence Classics (輸入盤)
好録音度:★★★★☆
参考: Tower RecordsAmazon.co.jpHMV OnlineiconApple Music

少し前にApple Musicで試聴して記事にしていましたが,やっとディスクを入手しました。やっぱりこれはいいですねぇ。演奏も録音も惚れ惚れします(^^;。しばらくじっくりと楽しませてもらおうと思います。


Apple Musicでの試聴です。

颯爽としてとても清々しさを感じる演奏で,深々とした低弦の響きから伸びのある高音まで魅力ある音色が本当に素晴らしい! 力強くキレの良いタッチのピアノも良いと思います。ベートーヴェンのチェロ・ソナタでこんなワクワクする演奏に出会うとは! 思いもしませんでした。

録音ですが,わずかに残響はありますが,楽器音を適度な距離感で明瞭に捉えた好録音で,音色も自然であり,欠点の少ないバランスの良い録音だと思います。

演奏も録音も気に入りました。今回はApple Musicでの試聴ですが,これはディスクを入手しなければなりません(^^;。愛聴盤候補になりました。

(記2016/01/16)

ベートーヴェン:チェロとピアノのための作品全集(ジャン=ギアン・ケラス(Vc)/アレクサンドル・メルニコフ(P))

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ベートーヴェン:チェロとピアノのための作品全集
ジャン=ギアン・ケラス Jean-Guihen Queyras (Cello)
アレクサンドル・メルニコフ Alexander Melnikov (Piano)
2013年10月, 12月 テルデックス・スタジオ(ベルリン)
HMC 902183.84 (P)2014 harmonia mundi (輸入盤)
好録音度:★★★★
参考: Tower RecordsAmazon.co.jpHMV Onlineicon
ケラスはどんな曲でも飛び抜けた高い品位で聴かせてくれますね。このベートーヴェンも本当に素晴らしいです。ニュアンスが豊かで音色はチェロとは思えないほど透明感があります。そして颯爽とした,躍動感溢れる音楽,非の打ち所がありません。私はベートーヴェンのチェロ曲はほとんど聴いてこなかったので何とも言えませんが,同曲の名盤の仲間入りをしてもおかしくないのではないでしょうか。

録音ですが,残響はほとんど感じられませんが,楽器に響きが軽く乗っていて音色に少し色が付いているように感じます。チェロの音像がやや遠めで実在感に乏しく,質感が感じられそうで感じられないもどかしさがあります。また,チェロとピアノのバランスがややピアノ寄りで,ピアノの音像が大きくチェロよりも前に出てきます。チェロの音が聴きたいのに少しピアノが出しゃばりすぎに感じます。もう少しチェロの質感を強く出して欲しかったところです。演奏が素晴らしいだけに,この録音は本当に惜しいと思います。(そんなに悪い録音ではないと思いつつも,やっぱり納得がいかなかったので少し厳しめに書きました。)

ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ全集第2巻「愛」(小菅優)※レコード芸術誌2013年度第51回レコード・アカデミー賞特別部門録音受賞ディスク

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ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ全集第2巻「愛」
小菅優 Yu Kosuge (Piano)
録音:2012年8月20日-24日 水戸芸術館コンサートホールATM
SICC 10176-7 (P)(C)2013 Sony Music Japan (国内盤)
好録音度:★★★★
参考: Tower RecordsAmazon.co.jpHMV Onlineicon
レコード芸術誌 2013年度第51回レコード・アカデミー賞 特別部門 録音 で『世界最高水準&最先端のピアノ録音』と評価を受けた受賞ディスク。第9番,第10番,第13番,第14番,第24番,第27番,第28番を収録。SACDハイブリッド盤。

ピアノは普段あまり聴かず,またなかなか好録音と思えるものに出会わないため,ベートーヴェンだし,そんなに良いなら聴いてみようと思い入手しました。

結論から言うと,オーディオ品質は確かに高いかもしれませんが,残念ながら私が思うような好録音ではありませんでした。これが優秀録音の受賞ディスクであるという事実に少なからず落胆しております。

オーディオ品質が高いことは認めますが,ホール音響を優先するあまりピアノの音が曇ってしまっています。ピアノ本来の音の輝き,透明さ,ニュアンスが,ホール音響再現の犠牲となって失われてしまっています。完璧に商品化された音であり,演奏者の存在が希薄で身近に感じられません。

ぜひグールドのゴルトベルク変奏曲(1981年録音)や平均律クラヴィーア曲集(1962~1971年録音)と聴き比べてみていただきたい。およそ30年から50年以上も前の古い録音なのでオーディオ品質はもちろん劣ります。しかし,一つ一つの音がクリアで輝いていますし,豊かなニュアンスも十分に感じ取ることができ,演奏者の呼吸も伝わってくる生き生きした音です。

なぜクラシックの録音はこうも楽器本来の美しい音を曇らせようと一所懸命がんばるのか,私には良く理解できないところです。残響の有無が音楽の芸術性にほとんど関係ないということはグールドのディスクで証明済みです。こんなに素晴らしい手本があるのにそれに倣おうとする録音が出てこないのが不思議でなりません。

楽器の持つ本来の美しい音,輝きのある音,ニュアンス豊かな音をありのまま捉えることが最優先ではないのでしょうか。そして,それを維持しながらいかにうまく雰囲気を織り込めるかが次にくると思うのです。この録音はホール音響再現が優先されすぎて本来の美しさが犠牲になっていると思います。オーディオ雑誌ならまだしも音楽雑誌がこういう録音を時代の最先端をいく優秀録音として選んでいるところに失望します。演奏自体は大変素晴らしいと思うので余計にこの録音を悔しく思います。



どういう録音が良いのか,その目指すべきゴールはそれぞれの人の価値観にもよりますので,この録音を優秀録音として評価する方がいてももちろんおかしなことではありません。むしろ,私のように思う人の方が少数派なのでしょう。

しかし,今のクラシック録音はその多様な価値観に基づいた様々な録音が出ているかというと,現状はホール音響再現重視の録音に偏りすぎていると思います。

我々一般人が生の音楽に触れる機会はホールで行われるコンサートという場がほとんどです。このブログでは何度も述べてきたことですが,だからといって音楽を聴く環境としてホールで行われるコンサートがベストかというと,必ずしもそうではないと思うのです。

音楽はもっと身近であっても良いものであり,生の演奏をホールよりもずっと良い音で楽しめる環境はいくらでもあるわけで,そんなベストとは限らないホールの音響をなんでわざわざ自宅で再現しなければならないのか,なんでそんな音響を押しつけられなければならないのか,と,思うわけです。

ホールの音響を家庭で再現するというのも確かに一つの考え方ですが,ホールでも得られないようなもっと素晴らしい音楽体験を目指した録音があっても良いのではないでしょうか(決して奇抜なことをやって欲しいと言っているわけではありません,念のため)。

このホール音響一辺倒のクラシック録音を見直して欲しいという思いで,演奏者の小菅さんにはちょっと悪いなと思いつつ,年間の最優秀に選ばれた録音ということで,あえて少し大げさに辛口でコメントさせていただきました。(といっても私の影響力など微塵もないので,何にも変わらないのだろうな...今までも何にも変わってこなかったし...)