バッハ:ブランデンブルク協奏曲全曲(シュトリンツル/ムジカ・フロレア)

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バッハ:ブランデンブルク協奏曲全曲
マレク・シュトリンツル指揮(Marek Stryncl)(Conductor)
ムジカ・フロレア(Musica Florea)
Studio 1 of the Czech Radio, Prague, June 27-28, 2006(No.3-6), November 5-6, 2006(No.1-2)
SU 3942-2 (P)2008 SUPRAPHON MUSIC (C)CZECH RADIO (輸入盤)
好録音度:★★★★☆
参考url: HMV OnlineiconAmazon.co.jpTower RecordsCzech Radio

チェコ放送局のスタジオでの録音のようです。若干残響を伴っていますが,直接音を主体にすっきりと見通しよく録っています。ピリオド楽器によるこの演奏は,かなりアグレッシブに攻めてきますが,鮮烈というより爽やかに感じられるのは,この録音の良さに負うところが大きいのではないかと思います。特に第三番以降の録音が良いです。第一番,第二番は少しソロの捉え方が弱く,ヴァイオリンなど下支えのない音で,この点は少し残念です。

演奏は,第一番ではホルンが前面に出てきてブイブイと鳴らす活躍が楽しく,弦楽器による第三番,第六番は音を短めに切り,快速テンポでリズムを強調する攻めの演奏,第二番はトランペットの実力にあわせたのかやや抑えめ,第四番,第五番は速めのテンポの爽やかさが印象的です。愛聴盤候補となりました。

ところでこの演奏,Czech Radioで全曲がMP3もしくはFLACで無料ダウンロード出来ます(なんという太っ腹...でも私は知らずにCDを買っちゃいました。後悔はしていませんが。)。MP3は192kbpsでもう少し高いビットレートにして欲しいところですが,FLACはもっとレートが高く高音質が期待できます。ご興味があれば聴いてみてください。

バッハ:無伴奏チェロ組曲全曲(ジョセフィン・ヴァン・リーア)

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バッハ:無伴奏チェロ組曲全曲
ジョセフィン・ヴァン・リーア(Josephine van Lier)(Cello)
Holy Trinity Catholic Church, Spruce Grove, July 2009
VANLIER2010-01 (P)(C)2010 Josephine van Lier (輸入盤)
好録音度:★★★~★★★☆
参考url: 公式WebサイトCD Baby

CD試聴記」にてコメントした内容を転載します。

なんと,4種類のチェロを使い分けて演奏されています。コンテンポラリーとバロック2種,さらにカーボン・ファイバー製のチェロが使われています。第五番はバロック・チェロですが,おまけとして他の二種類の楽器での演奏も収録されています。 CD 1枚に組曲2つずつなので4枚組です(^^;)

第一番 コンテンポラリー・チェロ(1870年フランス製)A=440Hz
第二番 バロック・チェロ(2007年アメリカ製)A=415Hz
第三番 カーボン・ファイバー・チェロ(2005年アメリカ製)A=440Hz
第四番 コンテンポラリー・チェロ(1870年フランス製)A=440Hz
第五番 バロック・チェロ(2007年アメリカ製)A=415Hz
第六番 ヴィオロンチェロ・ピッコロ(五弦)(2008年アメリカ製)A=415
(付録)第五番 コンテンポラリー・チェロ(1870年フランス製)A=440Hz
(付録)第五番 カーボン・ファイバー・チェロ(2005年アメリカ製)A=440Hz
※第五番はscordaturaチューニング(第一弦をA→Gに)

演奏はゆったりとしていて,さらに大きく緩急をつけています。どの舞曲もリズミカルな感じではありません。しかし,自然な呼吸感の範囲なので違和感は大きくありません。技術的にキレのある方ではありませんが,特にゆっくりした舞曲でのしっとりとした節回しが良いです。第六番のSarabandeなど,感動的です。

楽器の違いに関しては,コンテンポラリー・チェロよりもバロック・チェロの方が,この人の演奏スタイルには適合しているという感じです。先入観で聴いてしまっているところはありますが,カーボンファイバー・チェロは,基音成分が弱く音に深みがないように思います。

録音は教会で行われています(公式Webサイトに録音風景が載っています)。意図的かもしれませんが,カーボンファイバー・チェロの録音だけ残響が多く不鮮明です。その他の楽器の録音は,残響を取り込みつつも直接音もそこそこ捉えていて楽器の質感もわかります。しかし,せっかくいくつもの楽器を遣っているのですから,その違いを鮮明に出すためにも,もう少しマイク位置を接近させて直接音比率を上げ,明瞭感と音色の自然さを確保して欲しかったと思います。

タグ: [器楽曲]  [チェロ] 

マーラー:交響曲第一番(ブーレーズ/シカゴ交響楽団)

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マーラー:交響曲第一番ニ長調「巨人」
ピエール・ブーレーズ指揮(Pierre Boulez)(Conductor)
シカゴ交響楽団(Chicago Symphony Orchestra)
1998年5月 シカゴ
POCG-10142(459 610-2) (P)1998 Deutsche Grammophon GmbH, Hamburg (国内盤)
発売元:ポリドール株式会社
好録音度:★★★★
参考url: HMV Onlineicon

私はマーラーは今までほとんど聴いてきませんでした。CDも2, 3枚しか持っていなかった気がします。何となく避けてきたのですが,ちょっと聴いてみようという気になったので...ということで,今回は録音についてのみコメントします。

残響はあまり感じられません。ダイナミックレンジ,周波数帯域ともに非常に大きいのが特徴です。帯域は特に低域側の伸びがすごく感じられます。残響が抑えられているためかドライな印象で,低域もこれだけ伸びているにもかかわらず締まっていてブーミーな感じは全くありません。

ダイナミックレンジが広いので平均レベルが若干低く抑えられていて少しゼネラルオーディオ向きではないかなと思いますし,それぞれの楽器の質感にもう少し生々しさが欲しいかなとは思いますが,それ以外の不満はほとんどなく,オーケストラの録音としてはまずまず良いという印象です。

あと,ヘッドホンで聴くと少し位相が操作されているような感じがしました。許容範囲ですが。

タグ: [交響曲] 

チャイコフスキー:交響曲第五番(インバル/東京都交響楽団)

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チャイコフスキー:交響曲第五番ホ短調作品64
エリアフ・インバル指揮(Eliahu Inbal)(Conductor)
東京都交響楽団(Tokyo Metropolitan Symphony Orchestra)
2009年3月29日 東京・サントリーホールにてライヴ収録
EXTON OVCL-00407 (P)(C)2009 Octavia Records Inc. (国内盤)
好録音度:★★★☆
参考url: HMV Onlineicon

コンサートのライヴ収録です。このディスクは優秀録音としていくつかの雑誌で見かけました。チャイコフスキーの交響曲第五番は好きな曲なので,これは是非聴いてみなければということで手に入れました。ここでは録音についてのみ触れます。

それで聴いてみた第一印象は「なんだかさえない,つまらない録音だなぁ...全然面白くない...」という感じであまり良い印象ではありませんでした。気を取り直して何度も聴いているうちに,多分大型の立派な高級システムで聴けば,収録されたホールのような音場が再現するのかもしれない,と思い始めました。

収録されている音自体のクオリティもそんなに悪くありませんし,オーケストラが発する音と共にホール音響も含めて余さず密度高く詰め込まれているという感じは確かにします。そしてそれを立派な高級大型オーディオシステムで再生すると,いかにもホールで聴いているかのような錯覚に陥ることが出来る。こういう点が評価されたのではないかと思います。

しかし,私からすると,これは優秀録音かもしれませんが,好録音ではありません。私が普段使っているいわゆるゼネラルオーディオ機器で聴くと,なんだかごちゃごちゃしていて肝心な音楽がちっとも聴こえてこないのです。こう聴こえてしまうのは,音楽的に重要な音から重要でない音まで取捨選択することなく全部詰め込まれているからではないかと思うのです。

好録音について考える(1) ~ 録音」のエントリにも書きましたが,私の考える好録音は,メディアという限られた大きさの器に音楽のエッセンスだけが目一杯詰め込まれているというイメージです。そのためには単にその場の音場を捉えるのではなく,音楽的に重要な音をピックアップして録っていくという姿勢が必要になってきます。ライヴ録音であっても音楽のエッセンスを抽出してメディアに詰め込む努力を惜しまないで欲しい,と思います。

というか,そもそも録音する側がそういうゼネラルオーディオを相手にしないポリシーなら何を言っても無駄ですが...クラシック業界を支えている音楽ファンの多くはゼネラルオーディオだと思うんですけどね。

P.S. “ゼネラルオーディオ”っていう言葉はもはや死語でしたっけ?

タグ: [交響曲] 

ベートーヴェン:弦楽四重奏曲全集(オライオン四重奏団)

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ベートーヴェン:初期弦楽四重奏曲集 Op.18
December 2007 & January 2008 at LeFrak Concert Hall, Queens College, New York
KIC-CD-7682 (P)(C)2009 E1 Music (輸入盤)
好録音度:★★★★★
参考url: HMV OnlineiconAmazon.co.jp

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ベートーヴェン:中期弦楽四重奏曲集 Op.59, Op.74, Op.95
LeFrak Concert Hall, Queens College, Flushing, New York
KIC-CD-7681 (P)(C)2007 KOCH International Classics (輸入盤)
好録音度:★★★★★
参考url: HMV OnlineiconAmazon.co.jp

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ベートーヴェン:後期弦楽四重奏曲集 Op.127, Op.130, Op.131, Op.132, Op.133, Op.135
June 2006 - November 2007 at LeFrak Concert Hall, Queens College, Flushing, New York
KIC-CD-7683 (P)(C)2008 KOCH Entertainment LP (輸入盤)
好録音度:★★★★★
参考url: HMV OnlineiconAmazon.co.jpTower Records

オライオン四重奏団(Orion String Quartet)
公式Webサイト

オライオン四重奏団はアメリカの団体。ヴァイオリンの2人は兄弟で,曲によって1stと2ndが入れ替わります。大フーガOp.133はOp.130のCavatinaとFinaleの間に挿入されています。

演奏はストレートで癖がなく,ダイナミックで推進力があります。アンサンブルも見事,技術的にも相当優れていると思います。深みのある表現ではないかもしれませんが,この引き締まった活力みなぎる音楽はとても魅力的です。ラズモフスキー第三番の終楽章など,思わず手に汗握って興奮してしまいました(^^;

でまた録音もなかなか良好です。わずかに響きを伴いつつも直接音主体にクリアに自然な音色で楽器音を捉えています。すっきりとしていて見通しもまずまずです。これならほぼ不満は感じず音楽に集中できます。

演奏も録音も良く,これは<当たり>でした。弦楽四重奏に限らずクラシックの録音では,この録音のような「すっきり感」のあるものが少ないのは残念なことです。

なお,初期弦楽四重奏曲(→HMV Onlineicon)も発売され,全集として完結していますので,もし手に入ればまたレポートしたいと思っています。

(記2010/02/04)


初期を追加しました。初期も中期・後期同様のキレの良い躍動感溢れる好演奏でした。

録音も同様に素晴らしいです。中期・後期も改めて聴き直してみて,この録音の良さを再認識しました。ちょっとおまけの感はありますが,全て五つ星としました。全集として最も好きなセットの一つとなり,めでたく[愛聴盤]の仲間入りをしました。

(記2010/02/24)

バッハ:無伴奏ヴァイオリンのためのパルティータ第二番(ペッテリ・イーヴォネン)

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バッハ:無伴奏ヴァイオリンのためのパルティータ第二番
ペッテリ・イーヴォネン(Petteri Iivonen)(Violin)
05787 (C)2009 Yarlung Records (輸入盤) (※MP3ダウンロード購入)
好録音度:★★★★☆
参考url: CD Baby, Linn Records

演奏については「CD試聴記」にてコメントしていますので,そちらをご参照ください。

録音ですが,どのような環境下で録音されたのかわかりませんが,残響がほとんどなく,明瞭感のとてもよいすっきりした録音です。音色もまずまず自然です。やや楽器音のとらえ方が弱く,中低域が希薄で,ボディ感の乏しい,やや質感を失った音に感じられるのが少し残念です。とはいえ,それでもこの録音はなかなかいいです。
イーヴォネン氏はフィンランドのヴァイオリニストのようです。名前の日本語表記は全く自信がありません。

今回はCD Babyからこの曲だけをダウンロード購入しました。Windowsのエクスプローラのプロパティで見ると256kbps,iTunesにインポートしてプロパティを見ると180kbps(VBR)と出ていました。ファイルサイズと時間から計算すると約180kbpsになります。エンコード歪みはほとんど気になりませんでしたが,MP3ならせめて256kbpsか320kbpsの固定ビットレートにして欲しかったところです。Linn Recordsからもダウンロード購入できるようで,こちらはクオリティを選べます(こちらにすれば良かった...)。

バッハ:ブランデンブルク協奏曲全曲(ゴールドベルク/オランダ室内管弦楽団)

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バッハ:ブランデンブルク協奏曲全曲
シモン・ゴールドベルク指揮(Szymon Goldberg)(Conductor)
オランダ室内管弦楽団(Netherlands Chamber Orchestra)
1958年4月(No.1-3),7月(No.4-6)
UCCD-4207/8 (P)1961/63 Decca Music Group Limited (国内盤)
発売・販売元:ユニバーサル・ミュージック合同会社
好録音度:★★★★~★★★★☆
参考url: HMV Onlineicon

これも最初にお断りしておきますが,1958年の録音ですので,オーディオクオリティはやはり年代相応で,マスターテープの劣化による歪み,粗さが感じられるのは否めません(「音源が古いために,一部お聴き苦しい箇所があります。」という注意書きもあります)。

しかし,この録音にはそのクオリティの悪さを忘れさせるくらい魅力のある音の捉え方をしています。マイクがおそらく各楽器の近くに配されていて,それぞれの音を分離良く明瞭に捉えています。小細工なく生録っぽく録っているという感じです。そのため,極めて明瞭でかつニュアンス,質感もしっかりと感じられ,各パートの動きもそれぞれきちんと聴こえてきます。

全曲の中では,第五番,第六番が特に良いです。クオリティが良くないとはいえ,高域もそれなりに出ているのでこもった感じもなく,十分鑑賞に堪えると思います。

演奏の方ですが,旧世代に属する厳格仕様かつちょっとおっとり系です。昨今の颯爽とした流動感ある演奏とは趣が全く異なり,遅めのテンポできっちりとしています。これがまた実に味わい深い。技術的にも現代のキレのある演奏に慣れた耳には若干甘いというか,あまり上手くないというのが正直なところですが,時代を考えるとこんなものかなとも思いますし,この演奏においてはあまり欠点になっていません。

なお,第二番と第四番はフルートが使われています。

バッハ:無伴奏ヴァイオリンのためのパルティータ第二番,第三番(マリー・カンタグリル)

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バッハ:無伴奏ヴァイオリンのためのパルティータ第二番
バッハ:無伴奏ヴァイオリンのためのパルティータ第三番
マリー・カンタグリル(Marie Cantagrill)(Violin)
Recorded at the Saint-Serge Church, Angers, France
Art & Musique Ref. AB1/1 (P)(C)2009 ABP Musique Classique Productions (輸入盤)
好録音度:★★★★
参考url: 公式Webサイトamazon.de

演奏については「CD試聴記」にてコメントしていますので,そちらをご参照ください。

録音ですが,教会での録音なので残響はかなり取り込まれていますが,直接音も大切にされているため,これだけの残響の量の割にはまずまずかなと思います。もちろん私の好きな録音の仕方ではありませんが。

チャイコフスキー:後期交響曲集(ゲルギエフ/ウィーン・フィル)

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チャイコフスキー:後期交響曲集
第四番 (2002年10月17-21日 ウィーン,ムジークフェラインザール)(ライヴ)
第五番 (1998年7月 ザルツブルグ,祝祭大劇場)(ライヴ)
第六番 (2004年9月2-4日 ウィーン,ムジークフェラインザール)(ライヴ)
ワレリー・ゲルギエフ(Valéry Gergiev)(Conductor)
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団(Wiener Philharmoniker)
好録音度:★★★
参考url: HMV Onlineicon

全てライヴ収録ですが,第五番だけ演奏後に拍手が入っています。この後期交響曲集はHMV Onlineiconでは酷評が並び,評判が良くありません。これを見てから聴いているのでいくらか先入観の影響を受けているのは否めませんが,確かにあんまり面白くないといいますかつまらない,という印象です。多少の粗はあるものの,すっきりと引き締めつつも時に爆発的に盛り上げる,決して悪くないと思うのですが,なぜつまらないと思ってしまうのか,何度聴いても私自身納得いきません。

それで,今のところの私の結論。全くの私見ですが,これは録音が悪いに違いない,この演奏は録音の悪さに殺されている,です。

残響過多でもなく,明瞭感が極端に悪いわけでもないのでこれも悩みました。うまく言い表せないのですが,スケール感に乏しいというか,生気が全く捉えられていないというか,とにかくそんな感じです。いくら実演が良くても,それを活かすも殺すもパッケージ化の善し悪し次第だということでしょうか。

しかしここまで書いて,やっぱりぱっと聴いた感じでは録音はそれほど悪くないので,上記の考えが本当に合っているのか自信がなくなってきました...こんなレビューですみません。

タグ: [交響曲] 

ハイドン:交響曲第45番「告別」,二重協奏曲,他(ショルツ/ベルリン室内管弦楽団)

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ハイドン:ヴァイオリンとチェンバロのための二重協奏曲 ヘ長調
モーツァルト:ディヴェルティメント ニ長調 K.136
モーツァルト:アイネ・クライネ・ナハトムジーク K.525
ハイドン:交響曲第45番嬰ヘ短調「告別」
カトリーン・ショルツ(Katrin Scholz)(Violin & Director)
ベルリン室内管弦楽団(Kammerorchester Berlin)
Jesus-Christus-Kirche, Berlin-Dahlem, 9 & 10.03.2003, 01.06.2003
BERLIN Classics 0017692BC (P)(C)2004 edel records GmbH (輸入盤)
 愛聴盤   リファレンス音源  好録音度:★★★★☆
参考url: HMV OnlineiconAmazon.co.jpTower Records

どういうコンセプトの選曲なのかいまいちよくわかりませんが,二重協奏曲は曲自体の魅力が少し乏しい気がします。協奏曲以外の3曲は超有名曲ですね。演奏は快活で歯切れ良さ,アンサンブルの見通しの良さが素晴らしいです。小編成の特長,モダン楽器の特長が見事に発揮された,洗練された現代的な演奏だと思います。弦楽器のスピッカートの揃い,アクセントとその抜き方など絶妙です。大変気に入りました。この団体の演奏をもっと聴いてみたくなります。

録音ですが,教会での録音ということで残響が結構取り込まれているのですが,それにもかかわらず,明瞭感,音色への影響はミニマムで,ヌケも良く,音の透明感も損なわれず,ほとんど文句ありません。楽器の質感もよく捉えています。残響を多く取り込んだ録音としてはまさに理想的と言えると思います。教会での録音,残響を肯定するつもりはありませんが,残響を取り込むならこんな風にして欲しいという好例です。

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Kammerorchester Berlin, Katrin Scholz

ドヴォルザーク:交響曲第九番「新世界より」,他(アンチェル/チェコ・フィルハーモニー管弦楽団)

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ドヴォルザーク:交響曲第9番ホ短調「新世界より」作品95 B.178
ドヴォルザーク:序曲「自然の王国で」作品91 B.168
ドヴォルザーク:序曲「謝肉祭」作品92 B.169
カレン・アンチェル指揮(Karel Ancerl)(Conductor)
チェコ・フィルハーモニー管弦楽団(Czech Philharmonic Orchestra)
1961年12月6日(交響曲),11月17日(序曲),プラハ,芸術家の家(ルドルフィヌム)
COCO-70499 (P)1962/63 SUPRAPHON (国内盤)
発売元:コロムビアミュージックエンターテインメント株式会社
好録音度:★★★★★
参考url: HMV Onlineicon

このCDは録音がすごく気に入りました! 残響も多く残響時間も長いのであまり私としては好ましく思わないはずなのですが,それぞれの楽器の音が分離良く明瞭に聴こえてきますし,質感もうまく捉えていて,残響の影響がほとんど感じられないからだと思います。そして,音楽のエッセンスがすごく巧みに詰め込まれていて,音楽としての情報量がとても多いと感じられるのです。

正直なところ,ホールで聴いているような自然な音場感,まとまりはあまりないかもしれません。しかし,最近の自然な音場重視の録音よりもはるかに音楽のエネルギーを感じますし,心躍ります。音楽を伝える録音としていったい何が大切なのか,改めて考えさせられますし,制作サイドの方々にもぜひ考えて欲しいと思います。この録音はその好例です。

なお,上記の理由で五つ星を付けましたが,1961年の録音なので,音自体はやや古臭いです。オーディオ・クオリティはそれなりであることをご了解下さい(でもそれでも決して悪くはないですよ)。

[ドヴォルザーク][交響曲]

鷲見恵理子:紀尾井リサイタル

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紀尾井リサイタル
バッハ:無伴奏ヴァイオリンのためのパルティータ第二番
イザイ:無伴奏ヴァイオリン・ソナタ第二番 Op.27-2
パガニーニ:奇想曲 第22番,第3番,第13番,第11番,第14番
クライスラー:レチタティーヴォとスケルツォ・カプリス
鷲見恵理子(Eriko Sumi)(Violin)
2006年11月30日 紀尾井ホール(ライヴ収録)
Musicamici ES-1002 (P)(C)2009 Office Amici (国内盤)
好録音度:★★★
参考url: HMV Onlineicon

バッハの演奏については「CD試聴記」にてコメントしていますので,そちらをご参照ください。

録音ですが,少しマイクが遠目で明らかに間接音比率が高く明瞭感が良くありませんし,何より音色がくすみ,楽器の質感も十分に捉えられていません。残響時間はそれほど長くなく,響きがまとわりつく鬱陶しさはあまりありませんが。会場で聴いている雰囲気はあるかもしれませんが,純粋に音楽を楽しめる音質ではないと思います。残念です。

[バッハ][器楽曲][ヴァイオリン]

「スコアの読みが深い」演奏とは?

「スコアの読みが深い」演奏という評を時々見かけます。Googleでこの文章そのままで検索しても結構な件数がヒットします。「スコアの読みが深い」演奏ってどんな演奏なんだろう? 読みが深い演奏と浅い演奏では具体的に何がどう違ってくるんだろう?っていつも思います。 まさか「これってちょっとスコアを深読みしすぎてるんじゃねぇ?」ってことではないですよね(^^;。音楽学者や指揮者の同業者の「おっ,こいつスコアをよく勉強してるな」っていう感覚でしょうか? でもそれも違いますよね?

好きな曲のスコアはいくつか持っていますが,単に聴きながら眺めて楽しむ程度なので,残念ながら音楽を聴いて「スコアの読みが深い」なんて思えるほど音楽を理解していません。私の書く文章など単に素人の表面的な好き嫌いを述べているに過ぎません。その音楽を聴いただけで「スコアの読みが深い」って思えることって私から見るととてつもなくすごいことです。そんな感想を書けるくらい音楽を深く理解したいものですね。

シベリウス:小オーケストラのための作品集(ペッカ・ヘラスヴォ/フィンランディア・シンフォニエッタ)

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シベリウス:小オーケストラのための作品集
Incidental Music to the Play “Kuolema” (Death) by Arvid Jarnefelt
Impromptu for String Orchestra
Presto
Suite mignonne, Op.98a
Suite champetre, Op.98b
Suite caracteristique, Op.100
Romance, Op.42
ペッカ・ヘラスヴォ指揮(Pekka Helasvuo)(Conductor)
フィンランディア・シンフォニエッタ(Finlandia Sinfonietta)
Lohja, The Laurentius Hall, January 19-20, April 20-21 and August 29, 1985
FINLANDIA FACD 354 (P)1986 Musiikki Fazer (輸入盤)
好録音度:★★★★

シベリウスの中では比較的マイナーな部類に入る作品を集めていると思います。小オーケストラと言いながら,最初の方を除いてほとんど弦楽アンサンブルです。この中では特にSuite mignonne Op.98a(「美しい組曲」と訳されています)がお気に入りの曲です。この曲は弦楽アンサンブルにフルート2本が加わる編成で,そのハーモニーの美しさ,可愛らしさが何とも言えず好きなのです。シベリウスは小品でも良い作品を残していますね。

録音ですが,多少の響きはあるものの,明瞭感も音色もそこそこ良く,まずまずの印象です。私としては,もう少し近めで弦楽器の質感をしっかり出す録り方をして欲しかったと思いますが。

[シベリウス][管弦楽曲][愛聴盤]

バッハ:ブランデンブルク協奏曲全曲(マリナー/ASMF)

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バッハ:ブランデンブルク協奏曲全曲
サー・ネヴィル・マリナー指揮(Sir Neville Marriner)(Conductor)
アカデミー・オブ・セント・マーティン・イン・ザ・フィールズ
ヘンリク・シェリング(ヴァイオリン),カール・ピーニ(ヴィオリーノ・ピッコロ),ミカラ・ペトリ,エリザベス・セーリン(リコーダー),ハインツ・ホリガー(オーボエ),アンドレ・ベルナール(トランペット),ジャン=ピエール・ランパル(フルート),ジョージ・マルコム(ハープシコード)
1980年5月23-30日 ロンドン,セント・ジョンズ・チャーチ
PHILIPS 32CD-115,114 (400 076-2, 400 077-2) (P)1981 (国内盤)
好録音度:★★★★
参考url: HMV Onlineicon

モダン楽器による演奏。錚々たる顔ぶれです(個人的にはミカラ・ペトリのリコーダーがうれしい)。マリナー/ASMFの演奏する安定した土台の上で名手たちが自由闊達に踊る,協奏曲としての面白さが存分に楽しめる演奏だと思います。最近の颯爽とした演奏とは違いますが,こういうソロの個性が強く出た演奏は意外に少なく貴重ではないでしょうか。そういうこともあって,ソロが活躍する第二番,第四番,第五番が面白く聴けました。

録音は教会で行われているようですが,直接音主体で残響はあまり気になりません。もう少しすっきりとした感じは欲しかったと思いますが許容範囲です。ソロをフォーカスしているところも協奏曲として好ましいと思います。

なおこの演奏はマリナー/ASMFの2回目の録音ということです。

[バッハ][協奏曲][愛聴盤]

シベリウス:ヴァイオリンとピアノのための作品集(ユヴァル・ヤロン,新井淑子)

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シベリウス:ヴァイオリンとピアノのための作品集
ソナチネ ホ長調 作品80*
ヴァイオリンとピアノのための4つの小品 作品78
ヴァイオリンとピアノのための5つの小品 作品81より
ヴァイオリンとピアノのための4つの小品 作品115
舞踏の情景 作品116-1
性格的な舞曲 作品116-2
新井淑子(Yoshiko Arai)(Violin)*舘野泉(Izumi Tateno)(Piano)*
ユヴァル・ヤロン(Yuval Yaron)(Violin),レナ・シャロン(Rena Sharon)(Piano)
1980年4月 ヘルシンキ,ムンッキヴオリ教会*
1976年2月,1977年7月 ヘルシンキ,フィンレヴィ・スタジオ
WPCS-6217(4509-95853-2) (P)1979,1981 (C)1990 FINLANDIA RECORDS (国内盤)
好録音度:★★★★

シベリウスのこれらの愛らしい小品たちを初めて聴いたのが,このユヴァル・ヤロンの演奏でした。LPの時代にこの演奏ばかりを長い間ずっと聴いていましたので,この演奏のイメージがすっかり耳にすり込まれてしまっています。弓圧が高く,強奏部ではちょっと音がつぶれ気味になるのですが,意図的にやっているのか,不思議とその音の荒れも音楽的で嫌な感じがしません。力強い演奏なので,これがシベリウスらしいかどうかは微妙だと思いますが,私は気に入っています。

対照的に新井淑子さんの演奏は甘美で透明感のある美しい音色がとても好印象です。

録音ですが,ユヴァル・ヤロンの演奏はスタジオ録音と書かれており,なるほど,ヴァイオリンもピアノも残響に邪魔されることなく明瞭で良い感じですが,なぜか少しヌケの悪さが感じられます。一方新井さんの方は一般的な室内楽の音の捉え方に近い印象ですが,ヴァイオリンの音色を比較的すっきりと,そして楽器の質感もそこそこ感じられるように捉えているので,こちらも悪くありません。

ユヴァル・ヤロンは 1975年のシベリウス国際コンクールの優勝者ということなので,この録音はそのすぐ後に録音されたものということになります。

蛇足になりますが,そういえば最近あまりFINLANDIAレーベルのCDを見かけないような気がしますが,新譜って出ているんでしょうか?

[シベリウス][器楽曲][ヴァイオリン][愛聴盤]

バッハ:無伴奏チェロ組曲全曲(カリーナ・ゲオルギアン)

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バッハ:無伴奏チェロ組曲全曲
バッハ:ヴィオラ・ダ・ガンバ・ソナタ全曲
カリーナ・ゲオルギアン(Karine Georgian)(Cello)
ゲーリー・クーパー(Gary Cooper)(Harpsichord)
St. Martin's Church, East Woodhay, Berkshire May 2007 (Suites) & January 2009 (Gamba Sonatas)
SOMMCD 090-2 (P)(C)2009 SOMM RECORDINGS (輸入盤)
好録音度:★★★
参考url: 公式WebサイトSomm RecordingsHMV Onlineicon

演奏については「CD試聴記」にてコメントしていますので,そちらをご参照ください。

録音ですが,残響自体はそれほど多くは感じられないのですが,録音環境の響きの影響で明瞭感が悪化し,ヌケが良くなく音色もくすんでしまっています。すっきりしない残念な録音です。

[バッハ][器楽曲][チェロ]

ロッシーニ:弦楽のためのソナタ全曲

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ロッシーニ:弦楽のためのソナタ全曲
サー・ネヴィル・マリナー指揮(Sir Neville Marriner)(Conductor)
アカデミー・オブ・セント・マーティン・イン・ザ・フィールズ(Academy of St Martin in the Fields)
録音:1966年,1968年
POCL-3652/3 (P)1966/68 The Decca Record Company Limited (国内盤)
好録音度:★★★★☆
参考url: HMV Onlineicon

ロッシーニの弦楽のためのソナタ集(全6曲)は,12歳の時の作品ということで,確かに作品としての完成度,オリジナリティに難はあるかもしれませんが(そしていささかワンパターン気味か?),12歳ということを考えると十分に素晴らしい作品だと感心します。

解説書によると,オリジナルの編成はヴァイオリン2,チェロ,コントラバスですが,この演奏では,作曲上の難点を補うため?,12人のヴァイオリンを3パートに分け,その第3パート目は第1, 2パートの主題を演奏している方の補強に回し,また,2人のヴィオラを追加して第2ヴァイオリンやチェロを補助しているとのことです。

演奏は生真面目ですが快活で明るく楽しく,この曲の面白さを十分に伝えてくれています。アンサンブルも決まっています。ところどころチェロやコントラバスの旋律が出てくるのですが,これがソロで演奏されるため,ヴァイオリンの旋律が合奏で演奏されることと対比すると,少しアンバランスな感じがしますが,まあ些細なことと思います。

録音ですが,若干の残響を伴いつつもとても明快でヌケも良く,弦楽器の美しさ・質感を魅力十分に伝えてくれる好録音です。録音年を見て驚きました。とても1960年代の録音に聴こえません。1980年代くらいだろうと漠然と思っていました。この録音を聴くと,この半世紀の間にいったい録音の何が進歩したんだ?と疑問に思ってしまいます。

[ロッシーニ][管弦楽曲][弦楽合奏]