パトリック・ストリート・ライヴ

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パトリック・ストリート・ライヴ
ケヴィン・バーク(Kevin Burke) - fiddle
ジャッキー・デイリー(Jackie Daly) - accordion
アンディー・アーヴァイン(Andy Irvine) - vocals, bouzouki, mandolin, hurdy-gurdy, harmonica
ジェド・フォーリー(Ged Foley) - guitar, fiddle
Recorded Live in November 1998 while on tour in Britain & Ireland
GLCD 1194 (P)(C)1999 Green Linnet Records, Inc. (輸入盤)
好録音度:★★★★
参考url: Green LinnetHMV Onlineicon

パトリック・ストリートはアイルランドのトラッドグループです。下に写真を載せましたが,いい歳したおっさんのバンドです。結成当時(1987年頃?),それぞれの奏者はすでにキャリアを積んだベテランで,最初のアルバムもほとんどぶっつけ本番で録音したとそのアルバムの解説書に書いてありました。インストゥルメンタル曲とボーカル曲が半々くらいです。

自分がパトリック・ストリートのファンなのか今ひとつ自分でもわからないのですが(^^;,一応今までに出たアルバムは全て入手しました。いずれCD試聴記にディスコグラフィくらい載せたいと思っているのですが,なかなか手が着いていません。

ベテラン集団なので初期からほとんどキャラクターが変わらないのもこのバンドの特徴です。ケヴィン・バークのフィドルとジャッキー・デイリーのアコーディオンの超絶ユニゾンと,アンディー・アーヴァインのちょっと甘く哀愁を帯びた歌声がこのバンドの個性を決定づけています(ギターは影が薄い...)。どのアルバムの曲を聴いてもまるで金太郎飴のようにどちらかのパターンに入ります。で,このコテコテのアイリッシュ・サウンドがとても好きなんです。

このライヴアルバムは1998年のライヴツアーを収めたもので,パトリック・ストリートの魅力が凝縮されていてよく聴く一枚です。こんなライヴに一度行ってみたいものです。

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左から,ケヴィン・バーク,ジャッキー・デイリー,アンディー・アーヴァイン,ジェド・フォーリー

協奏曲録音の難しさを考える ~ ヒラリー・ハーンのチャイコフスキー:ヴァイオリン協奏曲を聴いて

先日レビューしたヒラリー・ハーンが弾くチャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲の録音について,「ダイナミックレンジが広すぎることと,ソロの音量が小さめで聴きづらく,これを好録音とは言いたくありません。」と書き,★★★の評価としました。このエントリでは,このことについて少し触れたいと思います。

以前レビューした同じくヒラリー・ハーンの弾くシベリウスのヴァイオリン協奏曲の録音については,「ソロにフォーカスしてヴァイオリンの音を明瞭に捉え,バランスとして若干オーケストラよりも大きめに取っているため,違和感を感じる方もおられるかもしれませんが,私としてはソロがキッチリ聴こえるため,私としては歓迎です。」と書き,★★★★☆の評価としていました。

この二つは何が違うのか,簡単に比較してみたいと思います。それぞれの協奏曲の第一楽章の音声波形を示します。上段がチャイコフスキーの第一楽章,下段がシベリウスの第一楽章です。また,比較しやすいように,ヴァイオリンだけとなるそれぞれのカデンツァの部分をマーカーで区切って示しました。

hahn_tchaikovsky_sibelius_violin_concerto.jpg (クリックで拡大表示)

このカデンツァの部分を見ると,明らかにチャイコフスキーの方が音が小さいです。シベリウスと比較しておよそ-6~-12dB(波形レベルで1/2~1/4)。有効ビット長に換算すると1~2ビット少なくなるということになります。絶対レベルで見みると-24~-30dB程度になりますので,ヴァイオリンの音だけを考えると12ビット録音相当です。

以上からこのチャイコフスキーの録音の問題は,(1)肝心のヴァイオリンソロの音に使っているビット数が12ビット録音相当とかなり少ない,(2)オーケストラの音量に対して相対的に小さい,の2点だと思っています。

私の場合,使っているオーディオ装置も聴取環境もそれほど良くありませんので,ヴァイオリンの音をしっかり聴くためには少し音量を大きくしなければなりませんし,そうすると逆にオーケストラの最大音量の部分ではうるさすぎて音量を下げなければなりません。こんなことをしなければならないとは一体何をしていることやら。仮に本来のダイナミックレンジをきちんと反映していたとしても,これでは台無しです。

その点シベリウスの方は若干ソロにフォーカスされていますので,ソロもきちんと聴き取れますし,オーケストラもうるさくなりすぎず,現実の音量バランスとは異なるかもしれませんが,結果としては快適に鑑賞できるのです。ソロに対しても少なくともチャイコフスキーの録音よりはビット数を多く使って録音されていますから,よりよい音で聴けますし。

協奏曲の録音は,いかにソロの音量を確保してオーディオクオリティを上げるか,さらに,いかにオーケストラとのバランスにおいて違和感のないぎりぎりの線を狙えるかが成否のポイントになると思います。そういうことをもっと意識して録音してくれることを希望します。

チャイコフスキー,ヒグドン:ヴァイオリン協奏曲(ハーン/ペトレンコ/ロイヤル・リヴァプール・フィル)

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ヒグドン:ヴァイオリン協奏曲
チャイコフスキー:ヴァイオリン協奏曲ニ長調作品35
ヒラリー・ハーン(Hilary Hahn)(Violin)
ワシーリ・ペトレンコ(Vasily Petrenko)(Conductor)
ロイヤル・リヴァプール・フィルハーモニー管弦楽団(Royal Liverpool Philharmonic Orchestra)
Liverpool, Philharmonic Hall, 11/2008(Tchaikovsky), 5/2009(Higdon)
UCCG 1500(477 8777) (P)2010 Deutsche Grammophon GmbH, Hamburg (国内盤)
好録音度:★★★
参考url: HMV Onlineicon

ジェニファー・ヒグドンはアメリカの人気女性作曲家で,ハーンがカーティス音楽院に在学していたときに20世紀音楽史を教わった先生でもあるということです。この曲の成功によって2010年にピュリッツァー賞を受賞したということです。そしてこの協奏曲はヒラリー・ハーンのために書かれたものです。

チャイコフスキーは,近年まで一般的だった省略や装飾のあるアウアー版ではなく,チャイコフスキーのオリジナル版での演奏ということです(私にはどこがどうオリジナルなのかはっきりわかりませんでしたが)。

ここではチャイコフスキーの方だけコメントしたいと思いますが...予想通りといえば予想通り。技巧は完璧,8割のがんばり度で余裕綽々に美しく仕上げる,これが彼女の個性というか流儀というか,この曲においてもその姿勢を貫いているようです。これはこれで一つのスタイルなんだと納得はしています。

しかし残念ながらやっぱりこの演奏にはワクワクしないのです。特に第一楽章。もっと推進力があって欲しい,スリリングであって欲しい,もっと技巧を誇示して欲しい,限界まで挑戦して欲しい...要は私がこの協奏曲の演奏に期待するところからことごとく外れているのです。また,唐突に加速したり突然シフトダウンしたり,テンポ設定にもついていけないところがあります。残念ですが今のところ好きになれません。

次に録音ですが,残響を抑え気味にすっきりと捉えたドイツ・グラモフォンらしい録音と言えるかもしれませんが,ダイナミックレンジが広すぎることと,ソロの音量が小さめで聴きづらく,これを好録音とは言いたくありません(なので三つ星にしました)。

この録音についてはまた別エントリで触れたいと思っています。(→取り上げました(こちら))

あと蛇足ですが,CDケースに入っている紙の裏面の写真にテールピースとブリッジあたりが写っていて,弦の末端部分が見えます(→写真)。この配色を見るとナイロンガットのドミナントを使っていると思われるのですが,どうでしょうか? 一流のプロもドミナントを使っているんだと思うとちょっとうれしくなります(私もドミナントを使っていますので)。

グルダ:チェロとブラスオーケストラのための協奏曲,他(シフ/グルダ/ウィーン・ブラスアンサンブル)

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グルダ:チェロとブラスオーケストラのための協奏曲
グルダ:ウルズラのための協奏曲
ハインリヒ・シフ(Heinrich Schiff)(Cello)
フリードリヒ・グルダ(Friedrich Gulda)(Conductor)
ウィーン・ブラスアンサンブル(Das Wiener Blaserensemble)
1981/1982 in Wien
amadeo 419 371-2 (輸入盤)
好録音度:★★★☆
参考url: HMV Onlineicon

チェロとブラスバンドという特異な組み合わせのチェロ協奏曲。学生の頃,友人宅で聴かせてもらって,ぶったまげたことを覚えています。もうすっかり忘れていたのですが,ふと思い出して探してみたらすぐに見つかりました。

おぉ!これだこれだ! これはほとんどジャズ(というかロックに近いか),特に第一楽章がいいですなぁ...わくわくします。でも他の楽章は今ひとつかな。終楽章はまるでブラスバンドのマーチだなぁ...それにしても,チェロとブラスバンド,不思議なくらい違和感ないです。昔聴いたときにはチェロがまるでサックスのように聴こえたと記憶しています。今聴いてみるとそうでもないのですが。

録音は,う~ん,微妙だなぁ...そんなに悪くはないのですが,今ひとつ音に生々しさ,実在感がなく,冴えません。

タグ: [協奏曲]  [チェロ] 

ベートーヴェン:交響曲第二番,第三番(ハインリヒ・シフ/ブレーメン・ドイツ室内フィルハーモニー管弦楽団)

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ベートーヴェン:交響曲第二番,第三番
ハインリヒ・シフ指揮(Heinrich Schiff)(Conductor)
ブレーメン・ドイツ室内フィルハーモニー管弦楽団(Die Deutsche Kammerphilharmonie Bremen)
Hamburg, NDR, Studio 10, 10/1993(No.2), Aschaffenburg, Stadthalle am Schloss, 9/1994(No.3)
BERLIN Classics 01 15022BC (P)1995 (C)2008 edel CLASSICS GmbH (輸入盤)
好録音度:★★★☆
参考url: HMV Onlineicon

超軽量級! 室内管弦楽団ですが,まるで室内楽のようなクリアで明晰な音楽がすごく良いです。ものすごい快速テンポですが,一つ一つの音符が本当にクリアに聴こえてきます。モダンスタイルであるところもうれしいです(少なくとも私にはそう聴こえる)。こんなベートーヴェンが聴きたかった!

録音ですが,残響はほとんど気にならず,しっかりと明瞭に録音されていて,音の捉え方自体は文句ないのですが,なぜか音が全く冴えません。これは一体どうしたことでしょうか。響きの影響を受けているという感じではなく,単に高域が落ちているだけという気がするのですが,とにかくすっきりとしないのがとても残念です。

あと第一番,第四番iconがリリースされていますが,第五番以降が見あたりません。録音されていないのかもしれません。私の好みの演奏だけに,第五番以降がないのも残念です。

ハインリヒ・シフはチェリストですが,指揮活動もしていたんですね。知りませんでした。

タグ: [交響曲] 

ブラームス:交響曲全集(マッケラス/スコットランド室内管弦楽団)

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ブラームス:交響曲全集
ブラームス:大学祝典序曲,ハイドンの主題による変奏曲
サー・チャールズ・マッケラス指揮(Sir Charles Mackerras)(Conductor)
スコットランド室内管弦楽団(Scottish Chamber Orchestra)
Recorded in Usher Hall, Edinburgh, Schotland, January 6-11 and 27-30, 1997
CD-80463/80464/80465 (P)(C)1997 TELARC (輸入盤)
好録音度:★★★★☆
参考url: HMV Onlineicon

サー・チャールズ・マッケラス氏が7月14日に亡くなられたという記事がhmv.co.jpiconに掲載されていました。ご冥福をお祈りいたします。

確かマッケラス氏のブラームス交響曲全集を持っていたはず,と,買うだけ買って聴いていなかったディスクを引っ張り出してこの機会に聴いてみました。室内管弦楽団による演奏で,小気味よく引き締まっていて,小編成の機動力が良く活かされている秀演だと思います。見通しの良さも特筆できます。「18世紀から19世紀の演奏スタイルを徹底的に研究,検証したうえで,それを現代にふさわしい姿で再現…」とHMV Onlineiconに書かれているのですが,ピリオド的なテイストはほとんど感じらません。「現代にふさわしい」というあたりはその通りだと思います。重厚さや豊潤さとは無縁の演奏なので好みが分かれると思います。私は気に入りました。

録音も響きを抑えて明瞭感とヌケの良さを確保し,この小気味よい見通しの良い演奏を一層引き立てています。私としてはもう少し弦楽器の質感をはっきりと捉えるようにして欲しかったのですが,それでも良好な録音と言えます。

第一番 15:29/8:51/4:16/16:31 計約45分 提示部リピートあり
第二番 19:38/8:50/5:03/9:00 計約43分 提示部リピートあり
第三番 12:16/8:29/6:14/8:35 計約36分 提示部リピートあり
第四番 12:02/10:38/6:05/10:06 計約39分

チャイコフスキー:弦楽セレナーデ,他(ボニ/コンセルトヘボウ室内管弦楽団)

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チャイコフスキー:弦楽セレナーデ ハ長調 作品48
チャイコフスキー:フィレンツェの思い出 ニ短調 作品70
マルコ・ボニ指揮(Marco Boni)(Conductor)
コンセルトヘボウ室内管弦楽団(Concertgebouw Chamber Orchestra)
April 2002, Waalse Kerk, Amsterdam, The Netherlands
PTC 5186 009 (P)(C)2002 Penta Tone Music b.v. (輸入盤)
好録音度:★★★★
参考url: HMV Onlineicon

解説書にメンバーリストが載っています。6-6-4-4-1 という編成です。アンサンブル,音のまとまりがとても良く室内オーケストラの利点が活かされていると同時に,この編成にしては音がとても豊潤で規模の小ささを感じさせません。引き締まった演奏ですが,どちらかといえば美しさ,しなやかさに重点が置かれているように思います。突出したところや特徴のある表現はなくノーマルな印象を受けますが,水準の高い好演奏だと思います。

録音ですが,やや響きが多めに取り入れられていますが,残響量の割には楽器音への影響は少なく,音色の曇りもそれほど気になりません。私の好みの録音とは少し異なりますが印象は悪くありませんし,客観的に見てもまずまずの好録音ではないかと思います。

Nimbusレーベルのシュムスキーのバッハ無伴奏ヴァイオリン続報

続報というほどのものではないのですが,以前紹介したNimbusレーベルのオスカー・シュムスキーのバッハ無伴奏ヴァイオリンですが,以前よりすでにAmazon.co.jpでは扱っていましたが,タワーレコードでも扱っているようです(でもなぜかhmv.co.jpでは扱っていない。CD-Rは扱わない方針?という話を聞いた気がします。)。

これが出るまでASV盤しかなく,中古市場でとんでもない値段が付いていましたが(まだ付いています→たとえばAmazon.co.jp),国内でも普通に手にはいるようになりました。有り難いことです。なお以前も書きましたが,データレベルでASV盤と一致していますので,基本的に音質はASV盤もNimbus盤も変わりません。

参考: Amazon.co.jp(Nimbus盤ASV盤

ショパン:練習曲集作品10,作品25(イリーナ・メジューエワ)

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ショパン:練習曲集 作品10, 作品25
イリーナ・メジューエワ(Irina Mejoueva)(Piano)
2009年7月&9月 新川文化ホール(富山県魚津市)
WAKA-4139 (P)(C)2009 若林工房 (国内盤)
好録音度:★★★
参考url: HMV Onlineicon

技巧を誇示するようなところはほとんどない,抑制が効いた,しかしほのかな叙情性が感じられる清潔感のある演奏だと思います。ポリーニで耳ができあがっている私には少し刺激に乏しいのですが,地味ながら技術力は確かであり,妙な癖もなく,安心してショパンの音楽に浸れるのがいいです。何度も聴いているうちに良さがじんわりとわかってきます。

録音ですが,残響が多いということはないのですが,それでも響きが被ってピアノの音に透明感がなく,また,粒立ちも不明瞭でもやっとしています。演奏が良いだけにこれは本当にもったいない録音です。

この録音が柔らかで優しいイメージを作り出すのに一役買っているとも言えますが,こういう演奏だからこそ透明感と音の粒の輝きを大切に録音して欲しかったと思います。残念です。

タグ: [器楽曲]  [ピアノ] 

エリザベート王妃国際コンクール本選ライヴ(戸田弥生)

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エリザベート・コンクールの戸田弥生
シベリウス:ヴァイオリン協奏曲 ニ短調 作品47
スウェルツ:黄道十二宮-ヴァイオリンと管弦楽のためのエフェメリス
ヤナーチェク:ヴァイオリン・ソナタ
戸田弥生(Yayoi Toda)(Violin)
ロナルド・ゾールマン(Ronald Zollman)(Conductor)
ベルギー国立管弦楽団(National Orchestra o Belgium)
ドナ・プロトポペスク(Dona Protopopescu)(Piano)
1993年6月4日 ベルギー,ブリュッセルにおけるコンクール本選のライヴ録音
CRCB-10024 (P)1993 日本クラウン株式会社 (国内盤)
好録音度:★★★★☆
参考url: 公式Webサイト

1993年のエリザベート王妃国際コンクールで優勝された時の本選ライヴ録音。コンクールとは思えない安定感,隅々まで冷静に神経を行き届かせ,そしてなおかつ存分に歌う,まるで脂ののりきった百戦錬磨の中堅ヴァイオリニストの演奏! 立派です。優勝するのも納得できます。日本人ヴァイオリニストの水準の高さを改めて思い知らされます。

シベリウスは第一楽章と第二楽章は完璧,第三楽章で少し乱れますが,気になるものではありません。スウェルツの黄道十二宮は作曲部門の大賞を受けた作品で,この新作演奏でも見事な演奏をしておられます。

そしてこの録音の素晴らしさ! コンクールの録音は記録としての性格も持っているのか,ほぼ文句のないくらいに明瞭に楽器音を捉えていて好印象です。オーケストラの方は少し響きの影響を受けていますが,十分許容できます。協奏曲の録音としてはかなり良い部類に入ると思います。

残念ながらあまり入手性は良くないようです。

シベリウス・エディション VOL.6 ~ヴァイオリンとピアノのための作品全集~

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シベリウス・エディション VOL.6 ~ヴァイオリンとピアノのための作品全集~
ヤーッコ・クーシスト(Jaakko Kuusisto)(Violin)
ニルス=エリク・スパルフ(Nils-Erik Sparf)(Violin)
佐藤まどか(Madoka Sato)(Violin)
フォルケ・グラスベック(Folke Grasbeck)(Piano)
ベングト・フォシュベルイ(Bengt Forsberg)(Piano)
録音:1991-2008年
BIS-CD-1915/17 (P)1991-2008 (C)2008 BIS REcords AB (輸入盤)
好録音度:★★★★☆(CD3のみ)
参考url: HMV Onlineicon

シベリウスの完全全集のVOL.6です。無伴奏ヴァイオリンおよびピアノ伴奏付きヴァイオリン曲を網羅しているとのことです(曲目はHMV Onlineiconを参照してください)。

目玉は何といってもCD3に収められている佐藤まどかさんの弾くヴァイオリン協奏曲のオリジナル版と現行版のピアノ伴奏版です。かなり以前にやはりBISからレオニダス・カヴァコスの弾くオリジナル版と現行版の2つの演奏を収めたものが出ていましたが(→HMV Onlineicon),これはあまり録音が良くなくて聴く気がせず放置してしまっているのですが,これはピアノ伴奏版でかつ録音も良いため何度も聴いてしまいました。ヴァイオリンパートがはっきりと聴き取れ,どんな差があるのかよくわかります。

オリジナル版はものすごく技巧的で派手な演奏効果が随所に出てくるのですが,現行版はオリジナル版の贅肉をごっそりとそぎ落としたというか,装飾品も化粧も全部取り去って音楽の真の骨格だけを残した,ということがよくわかります。オリジナル版もこれはこれでヴァイオリンの醍醐味が味わえて面白いのですが,音楽的にはやっぱり現行版がシェイプアップされていて数段良いですね。

そして熱のこもった佐藤さんの演奏も聴き応えあります。技術的にも安定感がありますし,楽器も存分に鳴らしていて清々しいです(ちなみに1716年製のストラディヴァリウスのようです)。

5枚組で少々高価なセットですが,このヴァイオリン協奏曲だけで十分に元が取れたと満足しています。その他の4枚についてはほとんど聴けていないのですが,録音があまりパッとせず,残念ながら頑張って聴こうという気が起きません...

あと,5枚組にしては紙箱がでかすぎるのにも閉口します。

バッハ:ブランデンブルク協奏曲全曲(カザルス/マールボロ音楽祭管弦楽団)

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バッハ:ブランデンブルク協奏曲全曲
パブロ・カザルス指揮(Pablo Casals)(Conductor)
マールボロ音楽祭管弦楽団(Marlboro Festival Orchestra)
Recorded at the Marlboro Music Festival, Vermont, July 6th-16th, 1964
515305 2 (P)(C)2004 Sony Music Entertainment (輸入盤)
好録音度:★★★
参考url: HMV Onlineicon

ルドルフ・ゼルキン(ピアノ),アレクサンダー・シュナイダー(ヴァイオリン),ピーター・ゼルキン(ハープシコード)らの大御所が参加しています。第二番,第四番ではリコーダの代わりにフルートが,第一番,第四番,第五番はチェンバロの代わりにピアノが使われています。

音楽祭の特別編成オーケストラという性格を差し引いても,このロマンティックなアプローチは現代では考えられないと思いますが,正直言ってこれは楽しい! いろんな意味で楽しめます。何より音楽に対する素直で真摯な情熱が感じられるところが良いと思います。古き佳き大らかな時代を象徴するような演奏と感じます。これをどう聴くかは聴き手次第でしょう。

録音ですが,音の捉え方はまずまず良好でソロも明瞭でオーケストラとのバランスも取れています。こもったり曇ったりもしていません。しかし,オーディオクオリティはかなり悪く,すごく歪み感があります。機材が劣悪だったのかマスターテープの保存状態が悪かったのかわかりませんが,これは残念です。

なお,このCDには第一番から第六番まで全ての曲のリハーサル音源が収録されています。

それにしても,この頃はまだまだ音楽は自由で楽しかったんだとつくづく思ってしまいます。現代の演奏はというと,いろいろとバラエティに富んでいるようであって,実は様々な研究成果に縛られた窮屈な音楽になっているんじゃないか,音楽の無限の可能性を自ら閉ざしてしまっているのではないか,昨今のピリオド楽器による演奏を聴いていると,何となく枠にはめられ画一化されていっているような気がしてなりません(面白い演奏が多いのも確かなのですが)。バロックはピリオド楽器でなきゃ,という時代はもうとっくに過ぎ去ったとは思っているのですが...モダン楽器奏者よ,臆せずもっと頑張れ! ...素人の戯れ言,失礼いたしました。

タグ: [協奏曲] 

バッハ:ブランデンブルク協奏曲全曲(リヒター/ミュンヘン・バッハ管弦楽団)

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バッハ:ブランデンブルク協奏曲全曲,他
カール・リヒター指揮(Karl Richter)(Conductor)
ミュンヘン・バッハ管弦楽団(Munchener Bach-Orchester)
Munich, Musikhochschule, 1/1967
Archiv 427 143-2 (P)1968 Polydor International GmbH, Hamburg (輸入盤)
好録音度:★★★★
参考url: HMV Onlineicon

モダン楽器による演奏。評論家先生の選ぶ「名曲名盤300」では必ず第一位に選ばれる名盤中の名盤なので,これについても私がコメントするまでもないのですが,「格調高い」「厳粛な」といったような言葉が並ぶ評に私は少し違和感を感じています。もちろんそういう感じがするのは確かなのですが,この演奏がここまで評価されるのは,純粋に音楽として「楽しい」からだと思うのです。アプローチの古さはあるかもしれませんが,音楽自体は決して古びていませんし,活気があって歓びがある,音楽の楽しさそのものが詰まっていると思うのです。

そして,個々の楽器を明瞭に見通しよく捉えたこの好録音も高評価を支える大きな要因になっていると思います。1967年の録音ということでさすがに音質は古さを感じてしまいますが,音の捉え方が良いのでほとんど問題ありません。第五番のチェンバロもとてもチャーミングに録音されています。

タグ: [協奏曲] 

チャイコフスキー,ドヴォルザーク:弦楽セレナーデ(レッパード/イギリス室内管弦楽団)

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チャイコフスキー:弦楽セレナーデ ハ長調 作品48
ドヴォルザーク:弦楽セレナーデ ホ長調 作品22
レイモンド・レッパード指揮(Raymond Leppard)(Conductor)
イギリス室内管弦楽団(English Chamber Orchestra)
London, 12/1975
420 883-2 (P)1976 Philips Classics Productions (輸入盤)
好録音度:★★★★
参考url: amazon.com

バッハのブランデンブルク協奏曲が良かったレッパード/イギリス室内管弦楽団のチャイコフスキー弦楽セレナーデを持っていることを思い出し,引っ張り出して聴いてみました。誠実で引き締まった表現が好印象なのですが,一方,躍動感を出しながらも情緒は抑え気味,緩徐楽章も速めのテンポで淡泊であり,このあたりで好みが分かれるかもしれません。

録音ですが,音の捉え方はまずまずで弦楽器の質感を良く伝えてくれるものの,高域のヌケがわずかに悪くいため音色に生彩が失われ,今ひとつすっきりしないのが残念なところです。

このCDですが,hmv.co.jpでは見つけることが出来ませんでした。amazon.comにはありました。

バッハ:無伴奏ヴァイオリンのためのソナタとパルティータ全曲(ウェルナー・ヒンク)

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バッハ:無伴奏ヴァイオリンのためのソナタとパルティータ全曲
ウェルナー・ヒンク(Werner Hink)(Violin)
2000年10月29,30日 草津音楽の森国際コンサートホール(群馬)(BWV1001,1004)
2002年2月17,18日 スタジオ・バウムガルテン(ウィーン)(BWV1006)
2004年5月30,31日 スタジオ・バウムガルテン(ウィーン)(BWV1002)
2004年11月16-18日 三重県総合文化センター(三重)(BWV1003,1005)
CMCD-20101-2 (P)2000,2002,2004 (C)2010 CAMERATA TOKYO (輸入盤)
好録音度:★★★★
参考url: HMV Onlineicon

CD試聴記」からの転載記事です。

ウェルナー・ヒンク氏はウィーン・フィルのコンサートマスターとして1974年から2008年という実に長い期間にわたって活躍されていたということです。

どことなく温かさ・優しさを感じる味わい深い演奏ですが,一方で,時代に流されることなく自分の築いてきたスタイルを頑固に守り通そうとする意志の強さも感じます。従って,やっぱりちょっと古風というか旧世代的な印象を受けるのですが,伝統の重みとでも言いましょうか,それが良いところでもあると思えます。技術的には少し衰えを感じてしまうのが少し残念です(というほどのご年齢でもないとは思いつつ...)。

録音は3カ所で4回に分けて実施されています。確かに少しずつ音が違うのですが,意識しなければ全く意識されないほどの差しかなく,これだけ統一感のある録音になっていることに驚きます。

それでその録音ですが,少し残響が多めで付帯音が鬱陶しく,またヌケの悪さにつながっているのが不満です。しかし,楽器音自体は比較的しっかりと捉えられていて質感もそこそこ感じられるので,まあ許容範囲かなと思います。

ハイドン:弦楽四重奏曲集作品76より「五度」「皇帝」「日の出」(ゲヴァントハウス四重奏団)

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ハイドン:弦楽四重奏曲集作品76より「五度」「皇帝」「日の出」
ゲヴァントハウス四重奏団(Gewandhaus-Quartett)
October 2004, Leipzig-Markkleeberg, Rathaussaal
NCA 60148-210 (P)(C)2005 Membran Music Ltd. (輸入盤)
好録音度:★★★★
参考url: HMV Onlineicon

作品76から代表的な3曲をセレクトして収めています。技術的に優れていることに加え,この豊かな歌心! 楽しい演奏はたくさんありますが,こんなに生き生きと歌うハイドンの演奏はそうないと思います。しかも素直で嫌みがなく,そしてどこか現代的なスマートさも感じます。この3曲しか録音していないのはとても残念です。

録音ですが,非常にきめが細かくなめらか,シルクのような肌触りとでも言いましょうか。オーディオクオリティは素晴らしいです。響きが多めに取り入れられていますが,あくまで直接音主体に質感よく捉えていて良い感じです。私としては残響をもっと抑えて楽器の質感をもっとよく捉えて欲しかったということで四つ星にしましたが,客観的には優秀録音の部類にはいるかもしれません。

ホルスト:組曲「惑星」

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ホルスト:組曲「惑星」作品32
ジェームズ・レヴァイン指揮(James Levine)(Conductor)
シカゴ交響楽団・合唱団(Chicago Symphony Orchestra & Chorus)
1989年6月 シカゴ
POCG-1063 (P)1990 Deutsche Grammophon GmbH (国内盤)
 リファレンス音源  好録音度:★★★★☆
参考url: HMV OnlineAmazon.co.jpTower Records
HMV Onlineのレビューで録音についてデモ的だのド派手だのと書かれ,ほめられているのやらけなされているのやらよくわからないのですが,私は素直にこれを好録音と認めます。デモ的,ド派手と言われるのは,例えば火星や木星などでのフォルテの平均音圧レベルが極めて高いからではないかと想像します。実際,他の一般的なオーケストラ録音と同じボリューム設定で聴くとうるさくてたまりません。ボリュームを少し下げてちょうど良くなります。一方で,ダイナミックレンジが広いので静かな曲は相対的にかなり小さく聴こえます。

音の捉え方もストレートそのものです。残響などには情報量はほとんど割かれていません(残響はそれなりにあるのですが直接音にはほとんど影響を与えていません)。オーケストラの金管の鳴りの凄さと相まって,このデモ効果満点の録音が出来上がっていると言っていいでしょう。

「惑星」はあまり他の演奏を聴いたことがないのでコメントできないのですが,HMV Onlineのレビューを眺めているとこの演奏自体の評判は悪くないものの,レヴァインという指揮者自体はあまり評価されていないのかなと感じてしまいます。レヴァインの録音は好録音が多いので私は結構好きなのですが...

レスピーギ:リュートのための古代舞曲とアリア(ドラティ/フィルハーモニア・フンガリカ)

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レスピーギ:リュートのための古代舞曲とアリア(全曲)
レスピーギ:交響詩「ローマの松」(*)
アンタル・ドラティ指揮(Antal Dorati)(Conductor)
フィルハーモニア・フンガリカ(Philharmonia Hungarica)
(*)ミネアポリス交響楽団(Minneapolis Symphony Orchestra)
1958年6月 ウィーン,1960年4月 ミネアポリス(*)
UCCP-3476(442 9562) (P)1959/1961 Decca Music Group Limited, 2007 Universal Classics & Jazz (国内盤)
好録音度:★★★★☆~★★★★★
参考url: HMV Onlineicon

“リュートのための…”は1958年,“ローマの松”は1960年の録音ということで,半世紀前の録音です。しかしこれが本当に半世紀前の録音か?!と驚かざるを得ません。もちろんオーディオクオリティ面では現代のデジタル録音にはかなわないのですが,この明瞭感,自然さ,質感,ヌケの良さの前にそんなことは全く意識に上ってきません。これぞ私にとっての好録音の典型の一つであると言えます。

なんでこれが好録音?と疑問を持たれるかもしれません。確かにノスタルジーを感じさせるような古風な音質,演出,誇張(不自然さ)がみられることは否めません。しかし,ここには巧みに抽出された音楽のエッセンスが目一杯に詰め込まれているのです。オーディオ的にどうか云々の前に音楽がどう収められているかの方が音楽を楽しむ上ではるかに重要だと思うのです。そしてこの録音は間違いなく楽しいのです。最近の録音は,こういうことを軽視しすぎていないでしょうか,ということを感じます。

演奏ですが,ノーマルですがちょっと旧世代的でほのぼのした感じが好印象です(リュートのための…)。フィルハーモニア・フンガリカはあまり上手な団体とは思えないのですが,この演奏ではそれもそれ程気になりません。

ブラームスの交響曲全集チャイコフスキーの交響曲全集も良かったのですが,これも良かったです。

バッハ:ブランデンブルク協奏曲全曲(レッパード/イギリス室内管弦楽団)

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バッハ:ブランデンブルク協奏曲全曲,他
レイモンド・レッパード指揮(Raymond Leppard)(Conductor)
イギリス室内管弦楽団(English Chamber Orchestra)
録音データ記載なし
442 386-2/442 387-2 (P)1975 Philips Classics Productions (輸入盤)
好録音度:★★★★☆
参考url: HMV Onlineicon

モダン楽器による演奏。第二番,第四番はリコーダが使われています。この録音はなかなか素晴らしいです。私がイメージするフィリップスの好録音の典型です。すっきりとして見通しが良く,各楽器の分離,質感,音色,どれをとっても全く不満がありません。何よりサウンドが綺麗で爽やかなことに惹かれます。同じフィリップスのミカラ・ペトリのリコーダー協奏曲集に通じるところがあります。録音データの記載がないのですが1975年頃,つまり35年も前の録音ですが,全く色褪せていません(クオリティは現代の録音には及ばないのは仕方ないところですが)。

最近のピリオド楽器の楽しい演奏を聴いてからだとやっぱり生真面目だなぁという印象をどうしても持ってしまうのですが,旧世代的でない快活かつ端正な好演奏であることは間違いなく,録音も良いモダン楽器の演奏の一つとしてお薦めに値すると思います。愛聴盤候補がまた一つ増えました。

[バッハ][協奏曲]

バッハ:無伴奏チェロ組曲全曲(マリオ・ブルネロ)

cover picture

バッハ:無伴奏チェロ組曲全曲
マリオ・ブルネロ(Mario Brunello)(Cello)
Auditorium Santa Cecilia - Perugia 2009
EGEA SCA 156 (輸入盤)
好録音度:★★★★★
参考url: HMV Onlineicon

CD試聴記」からの転載記事です。

ブルネロ氏2回目の全集。遊び心がちりばめられていて,まるでバッハと戯れているようです。これは演奏会で多くの聴衆に聴かせるような感じの演奏ではありません。自分の楽しみのために弾いている,あるいは,友人とともに音楽を楽しむ,頑張らずに純粋に音楽を楽しむ,そんな風に私には聴こえます。こういうアプローチは室内楽の原点だと思います。

この演奏では,リズムをいびつに崩したり,ピチカートを織り交ぜたり,いろいろとやっています。そのためリズムを身体で感じたり,呼吸を共にしたりすることが難しく,私にとってはちょっとつらい演奏です。面白いということは頭でわかっていても,それを素直に楽しめない自分にもどかしさを感じるのですが,うーん,こればかりはどうにもなりません。

『録音に際して選んだ目標は,聴く事が演奏者の行為と感触にとってかわるがごとく,そして,動きや呼吸を感じられるほど「近い」音でした。』 解説書にこう書かれています。まさにその通りの録音です。教会の礼拝堂での録音ですが,残響感が少なく直接音を間近で捉えたハイファイ調の録音で,極めて明瞭感が高く,音色も自然,楽器の質感もしっかりと感じられます。距離感も適切で,演奏の雰囲気にもぴったりと合っています。今時こんな録音には滅多に出会えません。満点です!