バッハ:無伴奏チェロ組曲全曲(キリーヌ・フィールセン)

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バッハ:無伴奏チェロ組曲全曲
キリーヌ・フィールセン(Quirine Viersen)
Waalse Kerk, Amsterdam, 19-21 October 2010, 1-3 March 2011
GLOBE GLO 5244 (P)(C)2011 Klaas Posthuma Productions (輸入盤)
好録音度:★★★★
参考: HMV OnlineAmazon.co.jpTower Records
CD試聴記」からの転載記事です。

フィールセン氏は1972年生まれ。 ロストロポーヴィチ国際コンクール,ヘルシンキ国際チェロ・コンクール,チャイコフスキー国際コンクールなどで入賞歴を持つということです。名前について,「クヴェリーヌ・フィエルセン」と記載してあるサイトもありました。

モダン楽器による演奏で,オーソドックスで落ち着きと品格があります。自己主張が強くはありませんが,きめ細かく丁寧に自然な呼吸感で表情付けされて陰影に富む音楽が印象深いです。

録音ですが,まとわりつく残響が少しあって音色を損なっていますが,明瞭感と質感はそこそこ感じられる良好な録音です。 もう少しヌケ良く録っていれば文句なしなのですが,惜しいです。 残響が許せる方ならかなり良い録音と言えるかもしれません。

蛇足ですが...ジャケット写真をみるとちょっとおばさん(失礼!)ですが,HMV Onlineの写真を見てみると,なかなか綺麗な人じゃないですか!

タグ: [器楽曲]  [チェロ] 

ベートーヴェン:交響曲全集(フィリップ・ヘレヴェッヘ指揮/ロイヤル・フランダース・フィルハーモニー管弦楽団)

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ベートーヴェン:交響曲全集
フィリップ・ヘレヴェッヘ指揮
ロイヤル・フランダース・フィルハーモニー管弦楽団
2004~2009年,ベルギー&オランダ
PTC 5186 312 (P)(C)2011 PentaTone Music (輸入盤)
好録音度:★★★★~★★★★☆
参考: HMV OnlineAmazon.co.jpTower Records
モダン・オーケストラのピリオド・アプローチによる全集。といっても私にはあまりピリオド・アプローチということが意識に上がってきません。贅肉をそぎ落としたスリムでキレの良い,モダン・オーケストラの良さが活かされた演奏だと思います。特にオーケストラが素晴らしいですね。良く鍛えられているというのはこういうのを言うのでしょう(「上手い」とはちょっと違うのです)。躍動的でありながら刺激的になりすぎず,ノーマルな路線を逸脱しない範囲で丁寧に魅力的な音楽を創り上げているところが気に入りました。

録音ですが,残響が多めに取り入れられているものの,音色や自然さがあまり失われず個々の楽器の質感が保たれているのが良いと思います。私の好きな録音ではありませんが,この録り方であれば十分許容できます。2004年に録音された第4番と第7番がやや音色がくすんでいて良くありませんが,その他は概ね良好なレベルで揃っています。

それにしても,巻物のように折りたたみ式になっているこの変なパッケージは勘弁して欲しいです。解説書もこの巻物を全部開いていかないと読めませんし...

ベートーヴェン:交響曲全集(サー・チャールズ・マッケラス指揮/ロイヤル・リヴァプール・フィルハーモニー管弦楽団)

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ベートーヴェン:交響曲全集
サー・チャールズ・マッケラス指揮
ロイヤル・リヴァプール・フィルハーモニー管弦楽団
1991-1997年録音
7243 5 75751 2 6 (P)(C)1998 EMI Records (輸入盤)
好録音度:★★★★
参考: HMV OnlineAmazon.co.jpTower Records
大編成のオーケストラのような音色の質感と,小編成オーケストラのような小気味よさ,キレの良さを併せ持っています。速めのテンポで颯爽と音楽が流れていく,なんと爽快なことか。私の好きなタイプの演奏です。

録音ですが,基本的に音の捉え方は悪くありません。残響控えめで各楽器を分離良く録っています。しかしやはりEMI! ヌケが悪くどこかすっきりしないのがとても残念です。なんでこんな録音なんでしょうねぇ,EMIは。

なお,楽譜はジョナサン・デル・マーが校訂したベーレンライター版が使用されているとのこと(解説書にもデル・マーのコメントが載っている)。

マッケラスは2006年にスコットランド室内管弦楽団と全集を再録音していますが,どちらも良く甲乙付けがたいです。(そしてどちらも録音がちょっと...)

タグ: [交響曲] 

ベートーヴェン:弦楽四重奏曲全集(エマーソン弦楽四重奏団)

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ベートーヴェン:弦楽四重奏曲全集
エマーソン弦楽四重奏団 Emerson String Quartet
1994年1月~1995年4月 ニューヨーク,アメリカ文芸アカデミー
00289 477 8649 (P)(C)1996,1997 Deutsche Grammophon (輸入盤)
好録音度:★★★★~★★★★☆
参考: HMV OnlineAmazon.co.jpTower Records
HMV Onlineのレビューでも述べられているとおり,鮮烈で現代的な演奏であると思います。個人の技術力もアンサンブルも見事ですし,表現意欲も旺盛で聴き応え十分です。切れ味の鋭さばかりが注目されるきらいがありますが,緩徐楽章の繊細な表現力も素晴らしいものがあります。唯一の(そして結構大きな)不満は重音で弾かれる和音が汚いところが散見されることです。これだけの技術を持っていながらこれはちょっとないだろうと残念に思います。まあ全体の出来からすれば些細なことかもしれません。

録音ですが,ドイツ・グラモフォンらしい残響を抑え気味にした明快ですっきりしたところは好感を持ちます。ですが,もう一歩踏み込んで鮮明さを強調して欲しかったと思います。まあ十分に良い録音ではあると思いますが。

メジャーからマイナーまでいろいろなベートーヴェン弦楽四重奏曲全集を聴いてきましたが,正直言ってベートーヴェンの全集をリリースできるような団体で下手なところはまずありません。どれも一定の水準をクリアした良い演奏ばかりと思います。しかし,このエマーソン四重奏団のようなメジャーな団体はやはり一歩抜きん出ています。技術やアンサンブルの精度が高く優れているのはもちろんですが,個々の楽器が発する音自体の魅力が断然違いますね。と,この演奏を聴いて今更ながら改めて認識した次第です。エマーソン四重奏団は今まであまり好きではなかったのですが,これはいいと思いました。

ベートーヴェン:弦楽四重奏曲全集(ヴァンブルー四重奏団)

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ベートーヴェン:弦楽四重奏曲全集
ヴァンブルー四重奏団 The Vanbrugh Quartet
Recorded 1996 at Swedish Broadcasting Corp. Gothenburg
IMCD 043-050 (P)(C)2002 Intim Musik AB (輸入盤)
好録音度:★★★★
参考: HMV OnlineTower RecordsAmazon.co.jp(Op.130,133)
スウェーデンからの輸入盤ですが,解説書の最後の団体紹介に日本語訳がありました。1988年の国際ポートマス弦楽四重奏コンクールに優勝したとあります。現在はアイルランド南岸のコーク市をベースに活動しているとのことです。解説書では「ヴァンブルー四重奏団」と記載されていますが,「ヴァンヴラ四重奏団」と記載しているサイトもありました。

あまり期待していなかったのですが(じゃあなんで買ったんだ?(^^;),意外に(失礼!)良かったです。力強くまた柔剛の織り交ぜが巧みでよく練られています。技術的にも上手くアンサンブルも優秀です。超一流の団体と肩を並べるところまではいきませんが,それでもこのベートーヴェンは上出来です。

録音ですが,かなり濃く分厚い響きをもって録られています。いささか暑苦しいサウンドでボリューム感がありすぎる気もしますが,この芯の太い音色はこれはこれで悪くありません。しかしやっぱり音色は少し落ちていると思います。個人的にはもっとすっきりと伸びやかな音で録って欲しいとは思います。

ベートーヴェン:交響曲第5番「運命」,序曲「プロメテウスの創造物」(デヴィッド・グリマル指揮/レ・ディソナンス)

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ベートーヴェン:交響曲第5番ハ短調「運命」作品67
ベートーヴェン:序曲「プロメテウスの創造物」作品43
デヴィッド・グリマル指揮/レ・ディソナンス
2010年12月9日 ディジョン歌劇場オーディトリウム
AP023 (P)(C)2011 Aparté (輸入盤)
好録音度:★★★★★
参考: HMV OnlineAmazon.co.jpTower Records
ベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲,交響曲第7番が良かったグリマル指揮/レ・ディソナンスのコンビによる交響曲第5番です。これもグリマルがコンサートマスターで,指揮者を立てずに演奏しています。それにしてもこのスピードにしてこの完璧なアンサンブル! すさまじい集中力! 指揮者なしでここまでやるとは! しかし,指揮者なしだからこそこんな演奏が出来るのかもしれません。個人の技術レベルはもちろんのこと,何よりも全員の意識の高さ,積極性がこの演奏を生み出しているのでしょう。素晴らしいです。

録音も良いですねぇ。残響はあるにはありますが,気にならないレベルに抑えられ,無駄な響きのないとても引き締まった,そして見通しの良い録音に仕上がっています。特に中低域がカチッと締まっていてチェロやベースの音がとても魅力的に聴こえてきます。五つ星はちょっとオマケかもしれませんが...文句はありません。

これもライヴ録音で拍手まで入っています。DVDも付属していて交響曲第5番とプロメテウスの創造物序曲のライヴ映像が収録されています(ただし,やっぱりPALです...)

ベートーヴェン:交響曲第1番,第3番「英雄」(ヘルベルト・ブロムシュテット指揮/サンフランシスコ交響楽団)

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ベートーヴェン:交響曲第1番,第3番「英雄」
ヘルベルト・ブロムシュテット指揮/サンフランシスコ交響楽団
Davis Symphony Hall, San Francisco, May 1990
430 515-2 (P)(C)1991 The Decca Records (輸入盤)
好録音度:★★★★
参考: Amazon.com
ブロムシュテットのベートーヴェンといえばシュターツカペレ・ドレスデンとの全集が有名ですが,サンフランシスコ交響楽団との録音があったんですね。全然知りませんでした。この第1番と第3番の他に録音があるんでしょうか?(見つけられませんでしたが)

演奏は少し速めのテンポで淡々としていて,スタンダードな印象ですが少し大人しい気がします。オーケストラからシュターツカペレ・ドレスデンのような魅力ある音色がいまいち引き出せていない気がします。

録音ですが,リヒャルト・シュトラウスの録音と同じくらいのクオリティがあるようにも思うのですが,う~ん,ちょっと精彩がないように思います。曲の違いも印象に影響しているのかもしれません。

期待したのですが,私としてはいろんな面でちょっと残念なディスクでした。

タグ: [交響曲] 

ベートーヴェン:交響曲第7番,ヴァイオリン協奏曲(デヴィッド・グリマル/レ・ディソナンス)

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ベートーヴェン:交響曲第7番イ長調作品92
ベートーヴェン:ヴァイオリン協奏曲ニ長調作品61
デヴィッド・グリマル(指揮・ヴァイオリン)/レ・ディソナンス
2010年3月15日(Vn協奏曲),2010年5月27日(交響曲第7番)
AP009 (P)(C)2010 Aparté (輸入盤)
好録音度:★★★★☆
参考: HMV OnlineAmazon.co.jpTower Records
デヴィッド・グリマルが結成した小編成のオーケストラを率いてのベートーヴェンの交響曲と協奏曲。交響曲ではグリマルがコンサート・マスターを務め,指揮者を立てずに演奏しています。協奏曲は弾き振りです。協奏曲はグリマルの伸びやかなヴァイオリンが素晴らしいです。交響曲第7番は速いテンポで推進力があり,強靱でスリリングな演奏を繰り広げています。オルフェウス室内管弦楽団を彷彿とさせますが,洗練されたオルフェウス室内管弦楽団に対し,ずっとアグレッシヴな印象です。指揮者なしでここまで統率できるとは見事としか言いようがありません。

録音ですが,協奏曲はソロにまとわりつく残響が若干気になるものの,ソロにきっちりフォーカスされていて明瞭に美しく捉えています。オーケストラとのバランスも良く,気持ちよく協奏曲を堪能できます。協奏曲の録音としてほとんど不満を感じません。一方交響曲の方ですが,内声までくっきりと聴こえる見通しの良い分離の良い録音なのですが,フォルテではやや飽和気味で混沌とします。グリマルの鼻息?!と思われる音まで入っていたり,演奏者の発する雑音なども聞こえてくるくらいよく捉えられているだけに惜しいです。また,少し音がきつく硬いのが気になります。とはいえ,総合的にはかなり良い部類に入ります。なお拍手まで収録されたライヴ録音です。

このセットは,協奏曲は普通のCDなのですが,交響曲の方がデュアルディスクという片面がCD,もう片面がDVDという貼り合わせの両面ディスクになっています。DVD側には5分程度のプロモーションビデオが収められていました(ただしNTSCではなくPAL...)。貼り合わせなのでやや分厚く,恐らくCD規格は満たしていないと思います。トレイタイプのCDプレーヤは問題ありませんでしたが,スロットインタイプのCDプレーヤでは隙間が足りず挟まってしまい,正常に再生できませんでした(ディスクが詰まってしまって焦りました)。DVDをオマケで付けてくれるのは良いのですが,こんなデュアルディスクは勘弁して欲しいです。

ベートーヴェン:交響曲全集(ルネ・レイボヴィッツ指揮/ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団)

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ベートーヴェン:交響曲全集
ルネ・レイボヴィッツ指揮
ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団
1961年4~6月 ロンドン,ウォルサムストウ・タウン・ホール
CH-2009 (P)(C)2009 Chesky Records, Inc. (輸入盤)
好録音度:★★★★☆
参考: HMV OnlineTower Records
チェスキーレーベルのベートーヴェンの全集とあらば,これは聴いてみなければなりません。この全集は純粋にその録音を聴いてみたかった,というだけで手に入れました。HMV Onlineでは長い間「入手困難」になっていたのですが,ある日見てみると「在庫あり」になっているではないですか! で,やっと入手できたという次第です。もうすでに在庫がないようですが...

この録音はDECCAのケネス・E・ウィルキンソンという著名なエンジニアが担当したとのことです(ショルティのベートーヴェン:交響曲全集も担当していたとのこと)。で,その音質ですが,半ば期待通り,半ばやっぱり1960年代前半の録音なんだよなぁ...という感じです。やや残響感が多めですが,音の捉え方は良く,特に弦楽器の質感は素晴らしいと思います。音色も残響に影響されず自然です。しかし,やはり1960年代前半の録音,音色は自然ながらも何かが抜け落ちている感じがしますし,クオリティは現代の録音から比べると当然ながら及びません(いくらチェスキーといえど...)。1970年代後半の良質なアナログ録音のような良さを持っているだけに惜しいと言わざるを得ません。現代のクオリティで聴いてみたいものです。

演奏ですが,全体にテンポ設定が速く,部分的に雑になったり乱れたりするところがあるものの,勢いがありなかなか聴き応えがあります。こういう演奏も最近の録音ではなかなか聴けなくなってしまいました。

オープンタイプのインナーイヤー型イヤホンの特性測定を試みる(その4) AKG K315

AKG K315
AKG K315
その1その2その3に引き続き,AKGのオープンタイプのイヤホンK315です。K315は以前レビューをしました。測定方法はその1その2その3と同じです。

2本の特性は以下のように条件を変えています。

 ①イヤホンをカプラーに押しつけて密閉度を高くして測定
 ②イヤホンをカプラーにそっと載せて軽く手を添えるくらいの状態で測定

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AKG K315

高域は他のモデルに比べるとわずかに落ち気味です。2kHzにディップがあり,3kHzでピークになっています。このあたりの特性が,わずかな癖となって感じられるのかもしれません。

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オープンタイプのインナーイヤー型イヤホンの特性測定を試みる(その3) Sennheiser MX581, MX371, MX271

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MX581
その1その2に引き続き,ゼンハイザーのオープンタイプのイヤホン,MX581, MX371, MX271です。MX581は以前レビューをしました。測定方法はその1その2と同じです。

2本の特性は以下のように条件を変えています。

 ①イヤホンをカプラーに押しつけて密閉度を高くして測定
 ②イヤホンをカプラーにそっと載せて軽く手を添えるくらいの状態で測定

上から順にMX581, MX371, MX271です。

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Sennheiser MX581

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Sennheiser MX371

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Sennheiser MX271

MX271の②の中低域のレベルが低いですが,本当にレベルが低いのか,カプラーとの間の隙間の空き具合が大きかったのかはもう少し試行を重ねないとわからないと思います。恐らく後者の隙間の空き具合の差と思いますが。安定して再現性のある特性を取るのは本当に難しいです。

この3機種は,実際に音を聴いてみて音の傾向が似ているのですが,特性を比較すると,細かい差はあれど,全体の特性の傾向は似ているのがわかります。②の100~200Hzの盛り上がり方がMX581とMX371, MX271で少し異なることから,このあたりの低域の質は異なるかもしれません。

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オープンタイプのインナーイヤー型イヤホンの特性測定を試みる(その2) audio-technica ATH-CM707

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ATH-CM707
その1に引き続き,audio-technicaのオープンタイプのイヤホン,ATH-CM707の特性です。測定方法はその1と同じです。

2本の特性は以下のように条件を変えています。

 ①イヤホンをカプラーに押しつけて密閉度を高くして測定
 ②イヤホンをカプラーにそっと載せて軽く手を添えるくらいの状態で測定

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2kHzくらいに大きなディップ,4kHzくらいに大きなピークがあります。

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オープンタイプのインナーイヤー型イヤホンの特性測定を試みる(その1) Sennheiser MX500

私はヘッドホンが好きなので,兄妹サイト「CD試聴記」の「オーディオ製品試用記」で私の使ったヘッドホンやイヤホンを紹介してきました。これらのヘッドホンについて,言葉だけではなく定量的なデータとして特性を示すことが出来ないかと常々思っていました。オーバータイプのヘッドホンについては,バイノーラル・マイクロフォンを使う方法があることがわかり,先日,実際に測定してみた結果を掲載しました(→バイノーラル・マイクロフォンでヘッドホンの測定を試みる(その1)(その2))。まだまだ検討の余地はあると思いますが,自分の聴いた印象とそれなりに相関のある特性データが取れたのではないかと思っています。

私はオープンタイプのインナーイヤー型イヤホンも愛用しているので,この特性も測定してみたいと考え,今回試験的に実施してみました。

オープンタイプのイヤホンの測定についてはほとんど情報を見かけません。耳に装着しないとまともな特性にならないことは容易に想像できるのですが,耳の中にマイクを仕込むわけにいかず,どうやって測定したらよいのか全くアイデアが浮かばなかったのですが,オーバータイプのヘッドホンに使ったバイノーラル・マイクロフォン(ローランド CS-10EM)の形状が適度な大きさで突起形状になっていることを利用し,この先端に耳の代わりのカプラーを取り付けて測定出来るのではないかと思いつきました。

カプラーをどう作るかも悩みましたが,材料は消しゴムを使えば柔軟性もあり加工も楽なのでこれで作ってみました。

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カプラーを付けたRoland CS-10EM(右)
このすり鉢状の部分にイヤホンをあてて音を出し,マイクで拾います。オープンタイプなので適度な隙間が必要なのですが,これはイヤホンに付属のスポンジのパッドを装着することで確保できるのではないかと思い,取り付けて測定しています。信号の再生系と収録系はオーバーヘッドホンの測定と同じです。
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MX500
実際に測定した結果を示します。測定したイヤホンは,Sennheiser MX500です。
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3本の特性がありますが,これらは以下のように条件が異なります。

 ①イヤホンをカプラーに押しつけて密閉度を高くして測定
 ②イヤホンをカプラーにそっと載せて軽く手を添えるくらいの状態で測定
 ③イヤホンとカプラーの間に意識的に隙間を空けて測定(別の日に別のカプラーで測定)

上記のように隙間の空き具合を変えただけで特性が大きく変わってしまいます。隙間の空き具合で低域特性が大きく変わることは容易に想像できたのですが,装着具合の影響がほぼ4kHzにまで及んでいるのには正直驚きました。自分がどの程度の装着状態で聴いているのかはわかりませんが,恐らく②と③の間くらいの状態で聴いているものと思います。

なお,この図は測定したそのままのレベルで表示していますが,例えば1kHzでレベルを合わせて表示すると,違った見え方をしてくるように思います(装着具合によって低域と高域のバランスが変わってくる)。

この測定でわかったのは,オープンタイプのイヤホンは人によって装着具合が異なるでしょうから,全然違う音を聴いているのではないかということです。イヤホンの音や特性を一意的に示すことはかなり難しそうです。

あと,この測定の課題としては,耳の形状が全く考慮できていないことです。カプラー形状の妥当性,マイクとイヤホンとの距離の妥当性など,全く検討できていません。さらに,この測定そのものを他の方が試しても同じ特性にはならないでしょう。自分自身がやっても再現性がどれくらいあるかわかりません。

じゃあこんな測定全然意味ねーじゃん,とも思うのですが,そう言っていては進歩がありません。できるだけ測定条件を単純化し,そのイヤホンの素性を何らかの形で表すことで,相対的ではあってもそれぞれのイヤホンの特徴が見えてくるのではないかと考えています。

なお,測定結果にはマイクの特性も重畳されていることに注意しなければなりませんし,個々のユニットのばらつきもあるので,本来は複数のサンプルでその傾向をつかんでおきたいところです(なかなか出来ませんが)。まだまだ試験段階ですので,試行錯誤してデータを積み上げ,より適切な方法を模索していきたいと思います。

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ブラームス:ヴァイオリン協奏曲,ハンガリー舞曲集(バイバ・スクリデ/サカリ・オラモ指揮/ロイヤル・ストックホルム・フィルハーモニー管弦楽団/ラウマ・スクリデ)

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ブラームス:ヴァイオリン協奏曲ニ長調作品77
ブラームス:ハンガリー舞曲集全曲(ヨアヒム編)(*)
バイバ・スクリデ Baiba Skride (Violin)
サカリ・オラモ指揮
ロイヤル・ストックホルム・フィルハーモニー管弦楽団
ラウマ・スクリデ Lauma Skride (Piano)(*)
2009年1月29日 ストックホルム,コンサート・ホール
2010年11月7-9日 ミュンヘン,グリュンヴァルト,アウグスト・エファーディング・ザール(*)
C 829 112 A (P)(C)2011 ORFEO International (輸入盤)
好録音度:★★★☆,★★★★(*)
参考: HMV OnlineAmazon.co.jpTower Records

力のこもった熱演でありながら,決して荒れず乱れず,隅々までコントロールされ計算し尽くされている感じがします。個性の主張を抑え曲の持つ普遍的な魅力を最大限に引き出すような演奏に思います。こういうのを非の打ち所がないというのでしょうか。実際,この演奏を聴いていて不満に思ったり違和感を感じたりするところは皆無でした。素晴らしいです。

で,録音なのですが,これが非常に残念なのです。ヴァイオリン・ソロに響きが被って明瞭感,音色が大きく損なわれているのです。くすんでしまって全く良くありません。こういうのこそ透明感のある,伸びのある音で録って欲しかった。演奏が最高に良いだけに...本当にもったいない! なお,ハンガリー舞曲集の方が幾分ましです。

ハイドン:交響曲第92番~第104番「ザロモン・セット」(マルク・ミンコフスキ指揮/ルーヴル宮音楽隊)

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ハイドン:交響曲第92番~第104番「ザロモン・セット」
マルク・ミンコフスキ指揮/ルーヴル宮音楽隊
2009年6月 ウィーン,コンツェルトハウス
V5176 (P)(C)2009 naïve (輸入盤)
好録音度:★★★★
参考: HMV OnlineAmazon.co.jpTower Records
レコード芸術誌2011年度第49回レコード・アカデミー賞で「大賞 交響曲部門」を受賞したディスク。確かにどの曲も軽快で躍動的で本当に楽しいです。ハイドンの交響曲は楽しい曲なんだというのが改めて実感できます。ルーヴル宮音楽隊(レ・ミュジシャン・デュ・ルーヴル・グルノーブル)はピリオド楽器の団体ですが,それがあまり意識されません。ピリオド楽器があまり好きではない私でもこれは十分に楽しめます(もちろんモダン楽器だったらもっと良かったのに,とは思います(^^;)。

で,話題の第94番「驚愕」第2楽章ですが,評判通りですねぇ。「ワォ~」という叫び声に冗談ではなく本当に肝をつぶします。心臓が弱い方はやめておいた方が良いというのは私も思います。面白いのですが,普段は通常版で聴きたいですねぇ...(^^;。これはできればオマケとしておいて欲しかったです。何度聴いても慣れることが出来ませんし,こんな冗談は何度も聴くようなものではないと思いますので。

録音ですが,オーディオ品質は優秀で音もなめらかで綺麗です。かなり良いと思いつつ,残響が多いわけではないのですが,少し間接音的ですっきりしませんし,生々しさにも欠ける気がします。良くまとまってはいるのですが,まとまりすぎなのかもしれません。

タグ: [交響曲] 

Portland (Kevin Burke & Mícheál Ó Domhnaill)

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ポートランド Portland
ケヴィン・バーク Kevin Burke (Fiddle)
ミホール・オ・ドーナル Mícheál Ó Domhnaill (Guitar)
GLCD 1041 (P)(C)1982 Green Linnet Records, Inc (輸入盤)
 愛聴盤  好録音度:★★★★
参考: HMV OnlineAmazon.co.jp
長い間聴き続けている愛聴盤です。

フィドラーのケヴィン・バークとギタリストのミホール・オ・ドーナルのデュオ・アルバム。素朴なフィドルと味わい深いアコースティック・ギターが最高で,哀愁漂う独特の雰囲気が気に入っています。多重録音でユニゾンで音を重ねて独特の響きを出しているのがユニークです(個人的には多重録音などせず一本で勝負して欲しかったと思いますが)。

ミホールは伴奏に徹しているのですが,実はこのギターが大好きなのです。このギターを聴きたくてこのディスクを聴いているようなものです。

試聴: iTunes Store(iTunesが必要です)

で,二人の演奏する動画がYouTubeにありました。奇跡的です!感動!


ミホールの歌も味わい深いです。(アルバムの曲ではありませんが)

タグ: [愛聴盤]  [YouTube] 

チャイコフスキー:後期交響曲集(カール・ベーム指揮/ロンドン交響楽団)

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チャイコフスキー:後期交響曲集
カール・ベーム指揮/ロンドン交響楽団
1977年12月(第4番),1978年12月(第6番) ロンドン,ウォルサムストウ・タウンホール,1980年5月(第5番) ロンドン,聖ヨハネ教会
UCCG-4161/2 (P)1978,1979,1981 Deutsche Grammophon (国内盤)
好録音度:★★★★☆
参考: HMV OnlineAmazon.co.jpTower Records
ベームのチャイコフスキーというのが全く想像できなかったのですが,HMV Onlineの紹介やレビューにもある通り,ドイツ的な重厚さを持ったチャイコフスキーというのに同意です。しかし,それでいてどこか穏やかでもある(チャイコフスキーなのに!)。第5番の終楽章など,これは田園交響曲なのか?と思ってしまいました(もっともこんな感想を持つのは私ぐらいかもしれません(^^;)。とはいえ,急にテンポが変わったりして戸惑うようなところがあるものの,概ねオーソドックスで普通に楽しめます。

録音もこの時期のドイツ・グラモフォンらしい,無駄がなく明快で聴きやすいものです。何度も書いているかもしれませんが,私はこういう録音は好きですね。最近こういう録音があまりないのは残念なことです。

リヒャルト・シュトラウス:ツァラトゥストラかく語りき,家庭交響曲(ロリン・マゼール指揮/ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団)

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R. シュトラウス:交響詩「ツァラトゥストラかく語りき」作品30
R. シュトラウス:家庭交響曲作品53
ロリン・マゼール指揮/ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
1983年2月,9月,10月 ウィーン
UCCG-5059 (P)1983,1984 Deutsche Grammophon (輸入盤)
好録音度:★★★★☆
参考: HMV OnlineAmazon.co.jpTower Records
録音が良いからかもしれませんが,極めて明晰で見通しが良いです。今まで意識しなかったいろんな楽器の音が聴こえてきます。カラヤン/ベルリン・フィルのような壮麗さはありませんが,美しく引き締まったサウンドが素晴らしく思います。

録音も無駄な残響はあまり感じられず,伸びやかでかつ澄み切っています。もう一歩近寄って質感を強めに出してくれていればなお良かったのではないかと思いますが,この録音でも十分納得できます。

ブラームス:交響曲全集(金聖響指揮/オーケストラ・アンサンブル金沢)

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ブラームス:交響曲全集
金聖響指揮/オーケストラ・アンサンブル金沢
2007年4月~2008年3月 石川県立音楽堂コンサートホール
AVCL-25461-4 (P)(C)2009 Avex Entertainment Inc. (国内盤)
好録音度:★★★★☆
参考: HMV OnlineAmazon.co.jpTower Records
中規模オーケストラによる軽量級のブラームス。これは人によってはっきりと好みが分かれそうです。私のイメージではベルグルンド指揮/ヨーロッパ室内管弦楽団の演奏に近いです。見通しが良く音楽の造形がよく見えてきます。時折見え隠れするピリオド的な響きが私としては気に入らないのですが(^^;,この輝きと透明感のある音楽はすごく魅力的です。オーケストラ・アンサンブル金沢ってこんなに上手かったんですね。すごく良いと思います。

録音ですが,残響はそれなりにあるものの,輪郭がぼやけずくっきりとしているのが特徴です。ややドライで硬い辛口(?!)の録音ですね(^^;。音色が本当に綺麗です。もう少し弦楽器にフォーカスして質感を強めに出してくれていたら満点だったのですが。

だいぶ前に購入したのですが,いままで聴きそびれていました。こんなに良いんだったらもっと早く聴くべきだったと反省。

なお,この全集には大学祝典序曲と悲劇的序曲がカップリングされています。

第1番 15:43/8:29/4:39/16:05 提示部リピートあり
第2番 19:35/8:58/5:15/9:06 提示部リピートあり
第3番 12:57/8:43/6:11/8:46 提示部リピートあり
第4番 12:30/10:46/6:14/9:45