「400年前の西洋音楽と古楽器」というCD

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400年前の西洋音楽と古楽器
若松夏美(ヴィオラ・ダ・ブラッチョ)
中野哲也(リュート,ヴィオラ・ダ・ガンバ,打楽器)
曽根麻矢子(チェンバロ)
勝俣敬二(ルネッサンス・フルート)
録音:福島市音楽堂
G-G1003 (P)(C)1990 技術新聞社 (国内盤)
好録音度:★★★★
あるCDを探していて発掘されたCDです(^^;。まだまだハイファイオーディオに元気があった1990年頃,毎年秋に開催されていたオーディオ・フェアで入手した記憶があります。

このCDの副題に「1591年(天正19年3月3日)秀吉が聚楽第で感動したあの調べ」「天正遣欧少年使節団が持ち帰った後期ルネッサンス音楽を再現」とあります。秀吉が当時どのような曲を聴いたかに関しては記録がないということで,使節団が旅したヨーロッパの地域から,持ち帰ったであろう曲を想像して選曲したようです(曲目解説を書いておられる金沢正剛さんが選曲?)。楽器の復元されたのは弦楽器職人の石井高さんで,9本の楽器を7年間かけて製作したとのことです。

このCDは石井高さんが製作された楽器を用いて,ちょうど400年前に秀吉の前で行われた演奏を再現しよう,ということで企画されたようです。CDの製作・発売が技術新聞社ということもあってか,録音についてもかなりこだわった内容となっています。録音担当は飯田明さんです。純金CDです(かなり高かった記憶があります)。

それでその録音なのですが,さすがにこだわった録音だけあってクオリティの高さはすぐにわかります。ホールトーンを多めに取り入れていますが,楽器音はカリカリで結構刺激的で,ちょっときついくらいです。生録的な雰囲気も感じられます。しかし,やはり私としては響きを取り入れすぎていて,好きな録音とは言えませんでした。

録音を担当された飯田明さんが録音の解説も行っておられますが,ここでとんでもなく腹立たしい記述を見つけました(^^;。以下,少し引用します。

古楽器は総じて音が小さく,デッドな録音は向いていない。個人的には眼前で演奏しているような収録も好きだが商品となるとそうはいくまい。(後略)

なぜ商品となるとそうはいかないんだ? いいと思うならなんでそうしないんだ! いくらヨーロッパの建物がライブだからといって,すべての人が残響豊かな空間で聴いていたわけでもないであろうし,こういう室内楽的な音楽は少人数で小さな空間で楽しまれることもあったはずです。また,全く響きのない屋外で演奏されることもあったでしょう。著名な録音エンジニアの人たちがこんな「西洋音楽=残響豊か」といった固定概念で凝り固まっているんだから,昨今の残響偏重の録音も致し方ないところで,全くもって残念としか言いようがありません。そもそも,秀吉が聴いたのはそんな環境じゃなかったはずでしょう? なぜそれを再現しようとしなかったのか。なぜお城で収録しなかったのか。

なんて今頃文句を言っても仕方ないですね... でも,秀吉はきっともっと感動的な音を耳にしていたんじゃないかと思います。きっと「眼前で演奏しているような」音であったことでしょう。

タグ: [室内楽曲] 

ブラームス:交響曲全集(ヤンソンス/バイエルン放送交響楽団)

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(a) ブラームス:交響曲第2番,第3番
2006年3月16-17日,ミュンヘン,ヘルクレスザール(第2番)
2010年1月16日,ウィーン,ムジークフェラインザール(第3番)
BR Klassik 900111 (P)(C)2011 BRmedia Service GmbH (輸入盤)
好録音度:★★★★
参考: HMV OnlineAmazon.co.jpTower Records

(b) ブラームス:交響曲第1番,第4番
2007年10月30-31日,ミュンヘン,ヘルクレスザール(第1番)
2012年2月6-10日,ミュンヘン,ヘルクレスザール(第4番)
BR Klassik 900112 (P)(C)2012 BRmedia Service GmbH (輸入盤)
好録音度:★★★★
参考: HMV OnlineAmazon.co.jpTower Records

マリス・ヤンソンス(Mariss Jansons)(Conductor)
バイエルン放送交響楽団(Symphonieorchester des Bayerischen Rundfunks)

第2番,第3番が発売されたときにレビューしていますが,第1番,第4番も発売され全集として揃いましたので,加筆します。基本的には印象は変わりません。

大編成オーケストラのスケールの大きさを存分に活かしつつも鈍重になることなく躍動的で引き締まっています。それでいて緻密で細部までコントロールが行き届いているのがさすがです。以前発売されたチャイコフスキー交響曲第5番も同傾向の演奏だった記憶がありますが,そのチャイコフスキーよりもずっと良いと思います。

録音ですが,残響がかなり入っているのですが,直接音成分もそこそこあって楽器の質感も何とか感じられますので,私の好きなタイプの録音ではありませんが,印象は悪くありません。音の密度がものすごく高く,また中低域の充実した重心の低さも特徴です。音楽のエッセンスを詰め込むというより,オーディオ的に出来るだけ多くの情報をメディアに詰め込もうとした感じでしょうか。私としてはもっとすっきりと見通しの良い録音が好きなのですが。でもまあ弦楽器を重視した音作りになっているのでまあ良しとするか,というところです。第2番の録音の低域の質感はかなりよいと思います。

なお,第2番,第3番はSACDでしたが,第1番,第4番は普通のCDでした。

第1番 14:30/9:00/4:55/18:30 計47:09 提示部リピートあり
第2番 15:38/9:22/5:09/8:56 計39:46 提示部リピート省略
第3番 13:39/8:59/6:33/9:23 計39:10 提示部リピートあり
第4番 12:39/10:54/6:16/10:40 計40:50

タグ: [交響曲] 

音楽・オーディオ以外の話を掲載する別のブログを開設しました

音楽・オーディオ以外の話を掲載する別のブログ「TS note」を<好録音探求>の別館として開設しました。まだ始めたばかりなのであまり記事はありませんし,役に立たないことばかり書いているかもしれませんが,もしよろしければお立ち寄りください。

私のメインのサイトである「CD試聴記」の更新が長い間滞っている(やっと今日久しぶりに更新しました!)なか,またいらん余計なことを始めたなと思っておられるかもしれませんが,その通り!です(^^;。

では今後ともよろしくお願い致します。

バッハ:無伴奏ヴァイオリンのためのソナタとパルティータ全曲(ブロニスラフ・ギンペル)

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バッハ:無伴奏ヴァイオリンのためのソナタとパルティータ全曲
ブロニスラフ・ギンペル Bronislav Gimpel
録音データ記載なし
品番なし (P)2011 Cambria (MP3ダウンロード販売)
好録音度:★★★☆
参考: Amazon.co.jpダウンロード販売(Vol.1Vol.2

CD試聴記」からの転載記事です。

折り目正しく見得を切る演奏が,往年の巨匠風で時代を感じさせます。伝統的なスタイルによる品格を備えた立派な演奏だと思います。

録音年代がよくわかりませんが,1950年代から60年代にかけての録音だと思います。オーディオ的には帯域も十分ではなく痩せた音であまり良いとは言えません。残響は多くはありませんが,ややオフマイク気味で鮮明さが今一歩足らないように思います。

この音源はAmazon.co.jpのMP3ダウンロード販売で入手しました。パルティータ第一番でなぜかブツブツというノイズが混じりますが,元の音源から入っているものかもしれません。

ベートーヴェン:交響曲全集(ベルナルト・ハイティンク指揮/ロンドン交響楽団)

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ベートーヴェン:交響曲全集
ベルナルト・ハイティンク指揮/ロンドン交響楽団
録音:2005~2006年 ロンドン,バービカン・センター(ライヴ)
LSO0598 (P)(C)2006 London Symphony Orchestra (輸入盤)
好録音度:★★★★☆
参考: HMV OnlineAmazon.co.jpTower Records
ライヴ録音です。ただし拍手は入っていません。三重協奏曲(ゴルダン・ニコリック(Vn),ティム・ヒュー(Vc),ラルス・フォークト(P))と,レオノーレ序曲第2番がカップリングで収録されています。

これはとても勢いがあってかつよく引き締まった素晴らしい演奏ですね。質実剛健で武骨ですが,表現に癖がなく普遍的な魅力を持っていると思います。やっぱり私にはこういう演奏が向いています。

録音ですが,残響が少なくかなりデッドでドライです。潤いに欠けると思われる方もおられるでしょう。なぜか少し高域のヌケが悪く音がモゴモゴしていてすっきりしないのですが,基本的には私の好みの録音です。低域もブーミーにならずよく締まっています。少し大きめの音で再生すると気持ちよく聴けます(ということで少しオマケですが四つ星半です)。人によって大きく評価が分かれそうな録音です。もう少しスカッとする音で録ってくれていれば間違いなく最上の全集の一つになったのに,と少々残念に思います。

シューベルト:交響曲第9番ハ長調D944(ジェームズ・レヴァイン指揮/シカゴ交響楽団)

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シューベルト:交響曲第9番ハ長調D944「ザ・グレイト」
ジェームズ・レヴァイン指揮/シカゴ交響楽団
Chicago, Orchestra Hall, 7/1983
429 983-2 (P)1984 Polydor International (輸入盤)
好録音度:★★★★☆
参考: Amazon.co.jp
これはレヴァインらしい明るく明快で力強い演奏ですねぇ。シューベルト特有のどこか病的な陰影がほとんど感じられません。ブロムシュテットやアバドの演奏とはまた違う魅力があります。

録音がこれまたなかなか良いですねぇ。残響も適正量に抑えられ,比較的すっきりとバランス良く捉えられています。低域の量はそれほど多くありませんが,引き締まっています。突出したところはありませんが,欠点の極めて少ない良好な録音と言えると思います。

レヴァインの録音は,好録音と言えるものが多いですが,これもその一つに入ると思います。このディスクは現在は廃盤のようで入手性が良くないのが残念です。

21世紀の精神正常者たち(モルゴーア・クァルテット)

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21世紀の精神正常者たち
モルゴーア・クァルテット Morgaua Quartet
録音:2012/2/23,3/12,4/10 ワンダーステーションスタジオ
COCQ-84964 (P)2012 NIPPON COLUMBIA (国内盤)
好録音度:★★★☆
参考: HMV OnlineAmazon.co.jpTower Records
この気色の悪いジャケット写真は,キング・クリムゾンの有名なアルバム「クリムゾン・キングの宮殿(In The Court Of The Crimson King)」(→HMV Online)のパロディですな。このアルバムの内容を象徴しているようにも思います。

収録曲の中で良かったのは,悪の教典#9 第一印象・パート1(エマーソン・レイク&パーマー)くらいでした。もともとプログレッシヴ・ロックは私の守備範囲外なので...

松山晋也氏が書いた解説書の記事を少し引用します。

クラシック専門の演奏家がポップ・ミュージック,とりわけロックの楽曲を演奏したものを耳にする機会は珍しくないが,本当に感心させられることは,残念ながらほとんどない。その最大の理由は,クラシックとロックではリズム感というかビートの感覚がまるで異なり,いわゆるロックのノリ,躍動感やスピード感がさっぱり出ないことにある。(後略)

これは私が1966カルテットのアルバムで述べたこととほぼ一致します。ポピュラー音楽をクラシックの土俵に持ってきて演奏する,ターゲットとする聴衆もクラシック愛好家,という以上,この野暮ったさから抜け出ることは出来ない。そしてこのアルバムもかなり良い線をいっているとはいえ,やはり例外ではなかった,というのが私の感想です。まあ,プログレッシヴ・ロックは現代音楽的な要素もあり,そういう意味では現代音楽的に演奏されるのはそれはそれで合っているのかもしれませんが。

で,このアルバムで最も腹立たしかったのが,音がとにかくつぶれて汚いことです。テンションを高くしようとするあまり弓圧が高くなりすぎているためでしょう。とにかく不快です。ロックではギターの音をわざと歪ませて,いわゆるディストーション・サウンドを作り出すことも多いですが,それを模してそうしているのかもしれません。でも,それはちょっと違うんじゃないかと思うのです。ロックのディストーション・サウンドは音楽表現上,それが音楽を格好良く演出するための音作りとして使われます。人によるとは思いますが,不快な音ではありません。擦弦楽器の音のつぶれは生理的に受け付けない不快さを持っています。根本的に違うのです。そしてテンション高く演奏すること自体が目的になっているような... 何か違う方向に行ってしまっている気がしてならないのですが。

と,また辛口コメントになってしまいました...

私がよく聴くブルーグラスのフィドラーに比べれば,この四重奏団の技術レベルは100倍も1000倍も高い。でも彼ら(フィドラー達)の音楽がすごく面白く楽しいのは,その音楽が彼ら自身の自然な言葉で話しかけてくるようなものだからだろうと思うのです。

結局はクラシック演奏家によるクラシック愛好家のための音楽であり,そこに本物のロックを求めた私が間違っていた,馬鹿だった,ということでしょう。このディスクがCDショップのクラシックの棚に並ぶことはあってもロックの棚に並ぶことはまずないし,モルゴーア・クァルテットがロックバンドとして一般に認知されることもない。間違った期待をしてどうも申し訳ございませんでした。

ディストラクション(モルゴーア・クァルテット)

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ディストラクション
モルゴーア・クァルテット Morgaua Quartet
録音データ記載なし
TOCE-9650 (P)1998 東芝EMI株式会社 (国内盤)
好録音度:★★★★
参考: Amazon.co.jpTower Records
最近新譜が出たので久しぶりに旧盤を聴いてみました。収録曲は省略しますが,アトム・ハーツ・クラブ・クァルテット(吉松隆),ラウンド・アバウト,シベリアン・カトゥルー(イエス),21世紀の精神異常者(キング・クリムゾン)が秀逸。特にイエスの2曲が良く,この演奏をきっかけに原曲も聴くようになりました。原曲をあまりいじらずに編曲し,原曲のイメージを崩さずに演奏されているところに好感を持ちましたし,原曲から離れて独立した作品として成り立つ内容に仕上がっています。逆に,期待していたレッド・ツェッペリンの編曲は,原曲からモチーフを取り出して組み合わせた現代音楽風の音楽になってしまい,私にとっては全く面白くない内容でした。

このディスクはすでに廃盤で手に入りにくいようです。

ベートーヴェン:弦楽四重奏曲全集(アマデウス四重奏団)

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ベートーヴェン:弦楽四重奏曲全集
アマデウス四重奏団 Amadeus Quartet
録音:1959-1963年
DG 423 273-2 (P)1960,1962,1963 Polydor International (輸入盤)
好録音度:★★★★
参考url: HMV OnlineAmazon.co.jpTower Records
モーツァルトの弦楽四重奏曲全集ハイドンの弦楽四重奏曲集が良かったアマデウス四重奏団のベートーヴェン弦楽四重奏曲全集。前記の演奏同様,一所懸命に弾いているところがどこか微笑ましく感じられる独特の情感と味わいを持っています。このキャラクターはベートーヴェンには合わないのではないかと聴き始めたときは思いましたが,そんなことはありませんでした。聴いているうちに彼らの世界に引き込まれてしまいます。

録音は1960年前後のものなので,クオリティからいうと残念ながら少しザラザラとした感じで歪みが感じられるのと帯域バランス的に少し崩れていて決して良いとは言えません。しかし,そこに目をつぶれば,残響を抑えて楽器音をしっかりと捉えた好録音と言えるのではないかと思います。高域が伸びているとは言いませんが,ヌケは悪くなく聴いていてストレスを感じることはありません。

現代の弦楽四重奏団のようなキレの良い演奏ではありません。今では顧みられることのほとんどない全集だとは思います。でも音楽的な魅力は十分に備えています。お薦めするものではありませんが,彼らのモーツァルトやハイドンが好きな方は楽しめるのではないかと思います(なんちゅう微妙な言い方...(^^;)。

ベートーヴェン:弦楽四重奏曲全集(ウィーン・ムジークフェライン四重奏団)

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ベートーヴェン:弦楽四重奏曲全集
ウィーン・ムジークフェライン四重奏団
録音:1990/1-1992/4 ショッテンシュティフト・フェストザール,ウィーン
DB1001-1008 (P)2006 GAKKEN-PLATZ (国内盤)
好録音度:★★★☆
参考: Tower Records,(Amazon.co.jpAmazon.co.jp)
タワーレコードの企画盤です。

ウィーン・フィルのコンサートマスター,ライナー・キュッヒル氏が率いるウィーン・ムジークフェライン四重奏団による全集。「ウィーン・フィルの...」というところから,香り高い上品な演奏を想像してしまっていたのですが,その想像は見事に打ち砕かれました(^^;。アクセントを大胆に効かせた熱い熱いアグレッシブで情感に満ちた演奏に圧倒されました。Tower Recordsの解説にあるとおり,「生命力みなぎる」という表現があたっていると思います。整ったスマートな昨今の演奏を聴き慣れた耳にはかえって新鮮に聴こえます。

録音ですが,残念ながら残響過多で良くありません。曲にもよりますが,それほど楽器音に被っていないのが救いで,残響が許容できるなら気にならないかもしれません。ただ,これは銭湯で録音したのか?という曲もあり,これはやっぱりいただけません。いくらなんでもやり過ぎです。細かい動きやニュアンスがつぶれてしまっています。もっと楽器から発せられるニュアンス豊かな音を質感よく捉えてほしいものです。

このボックスセットは発売当初に購入しました。その時は6,000円していました。今はその半額で購入できるのですね(涙)。

ベートーヴェン:弦楽四重奏曲全集(ジュリアード四重奏団 1982年ライヴ録音)

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(a) ベートーヴェン:初期弦楽四重奏曲集
SB3K89895 (C)2002 Sony Music Entertainment (輸入盤)
参考: Amazon.co.jp

(b) ベートーヴェン:中期弦楽四重奏曲集
SB3K89896 (C)2002 Sony Music Entertainment (輸入盤)
参考: Amazon.co.jp

(c) ベートーヴェン:後期弦楽四重奏曲集
SB3K89897 (C)2002 Sony Music Entertainment (輸入盤)
参考: Amazon.co.jp

ジュリアード四重奏団 Juilliard Quartet
1982年 ワシントン,アメリカ合衆国 国会図書館 クーリッジ・ホール(ライヴ)
 愛聴盤  好録音度:★★★★☆

愛聴盤にも関わらず家の中で行方不明になっていました...捜索してやっと引っ張り出してきました(^^;

ジュリアード四重奏団の2回目の全集で,1982年ワシントン国会図書館クーリッジ・ホールでのライヴ録音です。観客の咳払いも聴こえ,演奏後の拍手も入っている本当のライヴ録音です。ライヴ録音のため完成度では1回目に劣る,という批評を見かけましたが,確かにそういう面はあるかもしれませんが,私としては全く気になりませんでした。強い意志の感じられるとともに,ニュアンスが一層豊かになり,引き締まった造形とともに奥行きの深さも備えた素晴らしい演奏だと思います。1回目の録音とともに,今もって正統派ベートーヴェンの最高峰の演奏の一つと数えられるのではないでしょうか。

そして,やっぱり録音が良いのです。残響はありますが,奥にふわっと広がる程度であり,直接音をほとんど邪魔していません。各楽器が明瞭に分離良く聴こえ,そして質感もよく感じられます。ほんのわずかに高域が弱い気がしますが,問題のないレベルです。そして,ライヴならではのリアリティを伝えてくれる生録的雰囲気を持っているのも良い点です。オーディオ的には評価されないかもしれませんが,これは好録音と言えるでしょう。

1回目の録音と同様,素晴らしい演奏が良好な録音で残されたことに感謝します。

で,何たることか,これも1回目の録音と同じく現在は廃盤で入手が難しいようです。こんな素晴らしい演奏を廃盤にするとは! (タワーレコードさん,期待していますよ!)

ベートーヴェン:弦楽四重奏曲全集(ケッケルト四重奏団)

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ベートーヴェン:弦楽四重奏曲全集
ケッケルト四重奏団 Koeckert Quartett
録音 1953-1956年 ハノーファー,ベートーヴェンザール (モノラル録音)
PROC-1192/8 Tower Records Vintage Collection + plus Vol.14 (国内盤)
好録音度:★★★★
参考: Tower Records
タワーレコードの企画盤。

解説書によると,ケッケルト四重奏団は,チェコに生まれたドイツのヴァイオリン奏者ルドルフ・ケッケルトによって,当時彼が在籍していたプラハ・ドイツ・フィルハーモニー(バンベルク交響楽団の前身)の楽員をメンバーにして1939年に創設されたチェコ・ドイツ弦楽四重奏団をを母体にしたアンサンブル。ケッケルトは1949年にバイエルン放送交響楽団のコンサートマスターに就任し,当時のメンバーもバイエルン放送交響楽団の団員であったとのことです。

演奏は至極正統的であり,アクセントの効いた躍動感ある,ダイナミックレンジの広い表現が印象的です。技術的にもしっかりしていて隙がありません。今もってしても表現に古びたところは微塵もなく,現代でも遜色なく十分に通用する充実した内容を備えていると思います。

録音ですが,1953-56年のモノラル録音のため,歪み感や帯域バランスの崩れといったクオリティ面においては残念ながら良くないと言わざるをえませんが,音の捉え方はまずまず良く,残響は多少あるものの直接音が主体で明瞭感があり,音のヌケも悪くありません。この中では1955-16年に録音された第1番~第9番,第15番が比較的良好で,それ以前に録音された他の曲は少し落ちます。

タワーレコードは相変わらず良い仕事をしてくれますね。今後の復刻にも期待します。