バッハ:ゴルトベルク変奏曲BWV988(植山けい)

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バッハ:ゴルトベルク変奏曲BWV988
植山けい Kay Ueyama
2011年10月26-28日
INT 221.188 INTEGRAL Classic (輸入盤)
好録音度:★★★★
参考: HMV OnlineAmazon.co.jpTower Records
チェンバロによる演奏。使用楽器はスイス,ノイシャテル博物館所蔵の1634年製J.ルッカースという名器だそうです。a=392Hz。ゆっくりした曲でリピートの省略がありますが,その他のほとんどの曲でリピートが実行されています。

演奏はしっとりとおちついた気品のあるもので,ついついアグレッシヴな演奏を期待してしまう耳にはかえって新鮮に聴こえました。すごくいいです。気に入りました。

録音ですが,残響時間はそれほど長くありませんが,明らかに部屋の響きで音色が影響を受けています。明瞭でそれなりに鮮明な録音なのに,この楽器が持つであろう美しく輝かしい音色で聴けないのは非常に残念です。この響きはプラスには働いていないと思います。オーディオ的にはクオリティは高く,こういう収録環境の響きの影響を気にしない方,響きとともに録音すべきだと思っている方にとっては優秀録音かもしれません。私は好きではありません。楽器本来の音をすっきりと透明感ある鮮度の高い音で録音して欲しいところです。

このディスク,残念ながらオンラインショップでは在庫切れになっているようです。私はamazon.co.ukのマーケットプレイスで購入しました。

なお,フランスのレーベルのようですが,解説書やケースに日本語も解説がきちんと併記されています。ありがたい。日本人なんだから日本の音楽ファンのことを思えばこれくらいの配慮は当然のごとくしてほしいものです。見習ってほしいですね。

モーツァルト:弦楽四重奏曲集「ハイドン・セット」(ジュリアード弦楽四重奏団)

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モーツァルト:弦楽四重奏曲集「ハイドン・セット」
30th Street Studios, New York City, May, 1962
SICC 825~7 (P)(C)1962 Sony Music Entertainment (国内盤)
好録音度:★★★★★
参考: Amazon.co.jpTower Records
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モーツァルト:弦楽四重奏曲集「ハイドン・セット」(*)
モーツァルト:弦楽五重奏曲全集(**)
モーツァルト:クラリネット五重奏曲(***)
30th Street Studios, New York City, May, 1977(*), 1978(**), 1968(***)
88697884152 (C)2011 Sony Music Entertainment (輸入盤)
好録音度:★★★★
参考: HMV OnlineAmazon.co.jpTower Records

ジュリアード弦楽四重奏団 Juilliard String Quartet

ジュリアード弦楽四重奏団の演奏するモーツァルトのハイドン・セット。1962年と1977年の2種類の録音があります。

まず録音について。1962年の方が格段に良いです。もちろん古い録音なのでオーディオクオリティは劣りますし,「サー」というノイズがやはりあります。しかしそれはほとんど問題ではありません。響きはほんのわずかに背景的にふわっと感じる程度で楽器音に与える影響は全くありません。それぞれの楽器が極めて明瞭にかつ自然な音で捉えられており,分離も良く,高域のヌケも全く問題ありません。「おぉぉぉ,これこれ!これだ!」と思わず心の中で叫んでしまいました(^^;。好録音認定です(^^)。最高に気分良く聴くことが出来ました。

一方で1977年の録音ですが,同じスタジオでの録音ですが,響きが多めに含まれ,明らかに楽器音に被って明瞭感を損ない,音色を損ない,...1962年の録音に比べると雑味が多く平板です。ヌケが悪く何かベールを一枚まとったような感じですっきりせずもどかしいです。響きが音楽に何ら貢献していません。何のためのスタジオ録音なのか! 残念でなりません。実はそんなに悪くないとは思うのですが,1962年録音と比べてしまうので,ついつい文句を言いたくなってしまうのです。なんで退化してしまうのか不思議でなりません。

録音はオーディオクオリティも最低限の条件を満たしていることは大事ですが,それ以上に大切なことがあることを改めて思いました。

音楽は1962年の方が脂が乗っていて躍動的ですが,モーツァルトとしてはちょっと暑苦しいかもしれません。1977年の方が少し抑え気味な代わりに表現に幅が出て深みが増していると思います。こちらの方がやっぱりモーツァルトとしてはふさわしい気がします。どちらも素晴らしいのですけどね。

1977年の演奏が1962年の録音で残されていたらどんなに素晴らしかっただろうと思います。

1962年の方はhmv.co.jpでは見つけられませんでした。在庫限りなのでしょうか? 手に入りにくい状況だとすると本当にもったいない話だと思います。

チャイコフスキー:後期交響曲集(ダニエル・バレンボイム指揮/シカゴ交響楽団)

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チャイコフスキー:後期交響曲集
ダニエル・バレンボイム指揮/シカゴ交響楽団
Orchestra Hall, Chicago, Oct. 1995(No.5), Jan.-Feb. 1997(No.4), Feb. 1998(No.6)
2564 66313-9 (P)1996-1998 Teldec Classics (輸入盤)
好録音度:★★★★☆
参考: HMV OnlineAmazon.co.jpTower Records
幻想序曲「ロメオトジュリエット」,序曲「1812年」,そして,第6番「悲愴」のディスクにベートーヴェンのピアノソナタ第8番「悲愴」が併録されています(ピアノはもちろんバレンボイム)。

ダニエル・バレンボイムという指揮者をまだ私はあまりイメージがつかめないでいます。このチャイコフスキー,紳士的で緻密に音楽を組み立てているように聴こえます。全体にどこか計算されつくしたという感じがするというか,勢いをあえてギリギリのところで抑制したような禁欲的で演奏で情感に訴えるようなところが少ないように思います。チャイコフスキーとしては少し欲求不満がたまるかもしれません。

録音はライヴ録音とありますが,演奏後の観衆の拍手は入っていません。響きを抑え,エッジを効かせて鋭角的に捉えているという印象です。ただ,少しゴチャっとして見通しが良くはないのですが,それでもこの録音は魅力があると思います。最近はこんなに個々の楽器を力強く捉える録音はないですねぇ。もっと全体の響きが溶け合ったものが多いように思いますが,こちらの方がずっと楽しいです。

自分の耳は信じられるのか?(その3) 自分の耳を信じて選べるのか?

自分の耳は信じられるのか?(その2)」のさらに続きですが,今回はちょっと論点がずれます。

オーディオ機器を選ぶときに「自分の耳を信じて選べ」というアドバイスがよくありますが,そもそも選べるのか?という疑問です(^^;。選ぶ環境と自分が使う環境は全く異なります。それこそありとあらゆる条件が異なります。きっと「微妙な差」どころではない大きな音質差が発生するはずです。こんな差があるのがわかっていてなおかつ自分の耳を信じて選べ,というのが正しいのかどうか...

しかし,実際には店頭で音を聴いて選ぶしかありません。私の経験では,スピーカやヘッドホンに関しては,その素性の善し悪し,自分に合いそうかどうか,くらいの選別はなんとか出来そうです。でも最終的に気に入るかどうかまでを店頭での試聴で判別するのは相当困難だと思いました。自分が本気になって使い込んで,自分の使用環境におけるその機器の癖や音の聴こえ方のばらつき度合いが把握できて初めて気に入るかどうかが決まるからです。

従って,「自分の本当に気に入ったものが見つかるまで,買っては使い込み買っては使い込み...を続けなさい。投資を惜しんではいけません。」というアドバイスになるのではないでしょうか(^^;。実際にオーディオにはまっている人はこのパターンですね...

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自分の耳は信じられるのか?(その2) なぜ違って聴こえるのか?

自分の耳は信じられるのか?」の続きです。

「同じ音源を同じ装置を使い同じセッティングで聴いているはずなのに,聴く度に違う音に聴こえる」ことについて少し考えてみました。

まず心理的・身体的要因。その日の体調,疲れ具合。気温・湿度(五感に多少なりとも影響があるのでは?)。心理状態・精神状態。照明の差(色温度が変わると味覚が変わるという話もある)。その直前に何を聴いていたか。周囲雑音の大きさや音質。などなど,こんなことで聴こえ方が微妙に変わってくるのではないだろうか...

次に本当に音が違っているとしたら。気温差(特に発音体は温度によって物性が変わるはず)。湿度差(これも発音体の材質によっては特性に影響を受けるはず)。頭の微妙な位置の差・機器装着具合の差(複数の発音体からの位置関係が数センチずれただけで特に高域の位相やピークディップのパターンは大きく変化する)。周囲に置いてあるものが異なる(反射音パターンが変化し音が変わるはず)。電源電圧やその品質(コンセントの電圧は一日の間に数V変動することもある)。などなど,実際に音が変わる要因は実はたくさんあるのではないだろうか...

実際には複数要因が絡み合って音の聴こえ方に影響していると思います。自分の耳をどう見極めるか,ということもありますが,いかに自分の耳を信用して良い状況を作り出すか,というのもあるのではないでしょうか。

それにしても,人間の耳というのは敏感であり,鈍感でもある,両極端の性質がうまく組み合わさって働いているなぁと思います(※1)。

※1 「本当に音が違っているとしたら」に書いたことの多くは,比較的簡単にその特性差を音の物理量の差として観測可能です。しかし,人間はこういう差には鈍感で,こういうことに対してあまり神経質には反応しません。一方で,よくオーディオで語られる音質差は物理量として観測不可能(差が微小すぎて観測が難しい)のものがほとんどです。しかし,人によっては極めて敏感にこの差を捉えます。人間の能力というのは本当にすごいと思います。(このあたりがオカルトと言われる所以でしょう)

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自分の耳は信じられるのか?

自分の耳は信じられるのか?...

ずっと前から何となくこの疑問が頭から離れず,いつかこのテーマで記事を書くことで頭を整理しておきたいと思っていました。結局まだ全然整理できていないのですが,まずこれを書き始めて,書きながら考えようと思い,エントリーを起こしました。取り留めがないかもしれません。ロジックがおかしいかもしれません。そのあたりは大目に見てやってください(^^;。また,続かなかったらゴメンナサイ。

オーディオ機器の選び方などの文章の中で,よく「自分の耳を信じて選びなさい」といった主旨のアドバイスを見かけます。その通りなのですが,なぜか見る度に違和感を感じていました。そもそも自分の耳は信じられるのか?ということです。

私はアンプやケーブルの違い,アクセサリー使用による音の差を聴き取るのは苦手です(もちろんモノによりますが)。おそらくこういった音の差にはあまり興味が湧かないので感度が低いのだと思います。でもこのことを言っているのではありません。

私の場合,同じ音源を同じ装置を使い同じセッティングで聴いているはずなのに,聴く度に違う音に聴こえるということがよくあります。というかむしろ同じに聴こえる方が希と言った方がいいかもしれません。聴き慣れた装置であればだいたい平均的な聴こえ方が頭の中にイメージとしてあります。しかし,その通りのイメージで聴こえることもありますが,大きく外れて聴こえることもあります。自分の感覚がばらついているのか,本当に音が違っているのか,それすら定かではありません。

というところから,自分の耳は信じられるのか? という私の疑問が出てきていると自分では思っています。オーディオ機器を選ぶときに,今自分が聴いている音を信じて選んで良いのだろうか...

で,これに結論があるわけではありません。すみません...で終わってしまうと身も蓋もないので,少しだけ思ったことを。「自分の耳を信じる」のは良いとして,問題はどう信じるか,ではないかと。自分の耳がどういう性質を持っているかをきちんと把握することが第一ではないかと。でないと,自分の耳を信じて選んだのにあれっ?こんなはずじゃなかった...となってしまうであろうと。

それで,私の耳は上記のようにばらつくので,例えば私がヘッドホンなどを選ぶ場合は,いつも使っているリファレンス機を持っていって聴き込んだリファレンス音源を聴き,耳の調子を確認した上で対象のヘッドホンを聴くようにしています。リファレンス機が思った音で聴こえなかったときは選ぶのを諦めます。つまり今なら信じられるであろうという時を選んでいるということです。

皆さんは自分の耳に疑問を持ったことはないですか?

とまあ,やっぱり取り留めのない話になってしまいました。失礼しました。

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ブルーグラスの女性マンドリン奏者 シエラ・ハルのYouTube動画

このところずっと毎日聴くぐらいなぜか気に入ってしまったシエラ・ハルのYouTube動画を見つけたので載せます。



いずれもセカンド・アルバム 「デイブレイク」に収録されている曲です。以下,YouTube動画へのリンクを張ります。

Sierra Hull - Best Buy [Live at WAMU's Bluegrass Country]
上記の埋め込み動画です。大好きな曲の一つです。この動画が見られるのは本当にうれしい!

Sierra Hull - Bombshell [Live at WAMU's Bluegrass Country]
インストゥルメンタル。シエラ・ハルの超絶技巧マンドリンが堪能できます。素晴らしい!

Sierra Hull - Don't Pick Me Up [Live at WAMU's Bluegrass Country]
これぞブルーグラスの見本みたいな曲ですね。

Sierra Hull - Easy Come, Easy Go [Live at WAMU's Bluegrass Country]
これはちょっと垢抜けた,彼女としては新しい感じのする曲です。

Sierra Hull - Tell Me Tomorrow [Live at WAMU's Bluegrass Country]
これも大好きな曲です。これもブルーグラスらしい名曲です。

ヘッドホン Sennheiser HD25-1とHD25-1 IIの特性比較

ヘッドホンの特性比較をもう一つ。SennheiserのHD25は,数年前に一度モデルチェンジをして,HD25-1からHD25-1 IIとなりました。現在手にはいるのは後者のモデルです。2007年に「オーディオ製品試用記」でこの2機種のレビュー記事を書いています。どちらも現役で使用しています。

この新旧2機種の特性をバイノーラル・マイクロフォンで測定しましたので参考として掲載します。旧機種のHD25-1は「バイノーラル・マイクロフォンでヘッドホンの測定を試みる(その4)」で載せたものと同じです。測定方法は「バイノーラル・マイクロフォンでヘッドホンの測定を試みる(その1)」に準じます(使用マイクは異なります)。

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図1 Sennheiser HD25-1 Lch: Blue/Rch: Red (使用マイク:SP-TFB-2)
※1kHzを0dBとして正規化


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図2 Sennheiser HD25-1 II Lch: Blue/Rch: Red (使用マイク:SP-TFB-2)
※1kHzを0dBとして正規化


こう並べてみると,新機種のHD25-1 IIの方が若干低域の量感があるような特性になっていますが,それを除くと概ね似た特性が得られています。音質の傾向もかなり似ていることが想像されますし,実際に聴いてみても大きくは変わっていないことを確認しています。

私が言うのもなんですが(^^;,リファレンス機としてふさわしい整ったバランスの良い特性をしていると思います。

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ヘッドホン audio-technica ATH-OR7 の改造とその特性

audio-technicaのATH-OR7は2006年に発売されたモデルで,このブログを始める前の2007年に,友人から借りてレビューしました(→オーディオ製品試用記)。その時の感想は「中域の癖のある響きが気になる」ということで,残念ながら良い印象ではありませんでした。

その後,同じ友人から「改造したら音が良くなったので聴いて欲しい」ということで再度お借りして聴いてみたところ,確かに中域の癖が軽減されて随分と聴きやすくなり,これなら使ってもいいかも,というくらいの音質に改善されていました。

今回,個体は違いますが,未改造のものと改造後のもので特性を測定してみました。その結果を報告します。

まずどのような改造が施されたか,ということについて簡単に説明しておきます。もともとの未改造のものは,イヤーパッドがハウジングにダイレクトに取り付けられておらず,ハウジングに固定されたリングに取り付けられていました。改造は,このハウジングに取り付けられていたリングを取り外し,イヤーパッドをハウジングにダイレクトに取り付けるというシンプルなものです。

図1に未改造のハウジング部分の写真を,図2に改造後のハウジング部分の写真を示します。イヤーパッドの付け方が異なっていることがわかると思います。

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図1 未改造のATH-OR7ハウジング部分


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図2 改造後のATH-OR7ハウジング部分


次に,バイノーラル・マイクロフォンによる周波数特性の測定結果を示します。測定方法は「バイノーラル・マイクロフォンでヘッドホンの測定を試みる(その1)」に準じます(使用マイクは異なります)。未改造が赤線,改造後が青線です。いずれもLchの測定結果です。なお,未改造と改造後は使用した個体が異なります。

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図3 ATH-OR7改造前後の特性差(未改造:Red/改造後:Blue)
※1kHzを0dBとして正規化


特性を比較してみると,改造後は400Hzあたりを中心としたディップが緩和され,相対的に1~2kHzの特性の大きな盛り上がりが緩和されていることがわかります。ハウジングに取り付けられていたリングがなくなり,ハウジング容積が小さくなり,これによって空洞共振の特性が変化し,400Hz付近の特性上の凹みが緩和されたのではないかと想像します。

改造によって音質が改善されたことが,聴感だけでなく特性上でも確認することができました。周波数バランスとしては,3~6kHzあたりのレベルがもう少し上がれば申し分のない音質になったのではないかと思います(これはあくまでも特性から見た想像ですが)。

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Bluetoothヘッドホン Sennheiser PX210BT レビュー

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Bluetoothヘッドホン ゼンハイザー PX210BT

形式: 密閉型
無線規格: Bluetooth 2.1 + EDR
サポートプロファイル: A2DP, AVRCP
コーデック: SBC, apt-X
※有線接続可 インピーダンス100Ω,専用ケーブル片出し

参考: ゼンハイザージャパンAmazon.co.jp
事情によりBluetoothヘッドホンが必要になったため,どうせ購入するならゼンハイザーをと思い,少々高価でしたが思い切って入手しました。詳細はよくわかっていないのですが,apt-Xという低レイテンシ(時間遅延が少ない)で高音質のコーデックをサポートしているということも選定理由の一つでした。

高いだけのことはあって,全体の造りはそこそこしっかりしていますし,質感も値段相応かと思います。耳載せタイプですが側圧は適度であって,長時間使用していてもHD25-1ほどは耳は痛くなりません。装着感もまずまず良好です。折りたたみ式でコンパクトに収納できるのも有り難いです。

それで,肝心の音質ですが,残念ながら満足できるものではありませんでした。中域の癖が強く,また,解像感や明瞭感がかなり不足し情報量が少なくなってしまっているように感じました(ただしHD25-1と比較してですが)。聴こえて欲しい音が微妙に聴こえないのでちょっとイライラしてきます。これは非常に残念です。

バイノーラル・マイクロフォンSP-TFB-2による周波数特性の測定結果を示します。測定はBluetoothではなく有線接続で行いました。測定方法は「バイノーラル・マイクロフォンでヘッドホンの測定を試みる(その1)」に準じます(使用マイクは異なります)。

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図1 周波数特性 Sennheiser PX210BT Blue:Lch/Red:Rch
※1kHzを0dBとして正規化 使用マイク:SP-TFB-2


約700Hz~4kHzの間にある大きな特性の盛り上がりがあります。中域の強い癖の原因はおそらくこの特性の盛り上がりにあります。相対的に他の帯域(特に高域側)のレベルが下がるため,これが解像感や明瞭感,情報量の不足につながっているのではないかと推測します。

Amazon.co.jpのユーザーレビューでは音質に関しても非常に好評なので,音質に関する不満は私のこだわりからくるものかもしれませんが,特性を見る限りはやはり癖は持っていると思います。安くなかっただけに私としてはちょっと落胆が大きいです(涙)。

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バイノーラル・マイクロフォンでヘッドホンの測定を試みる(その4)

前回の続きで,ローランドのCS-EM10とSound ProfessionalsのSP-TFB-2の2つのバイノーラル・マイクロフォンでのヘッドホンの測定の差をみていきます。測定したヘッドホンは,私のリファレンス機であるゼンハイザーHD25-1とHD580の2機種です。

測定方法は(その1)で説明した方法と同じです。グラフ表示は1kHzでレベルを揃えました。これは今まで示してきた表示方法と異なりますのでご注意下さい。

まずゼンハイザーHD25-1の測定結果から提示します。図1がローランドのCS-EM10,図2がSound ProfessionalsのSP-TFB-2です。青線がLch,赤線がRchです。

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図1 Sennheiser HD25-1 Lch: Blue/Rch: Red (使用マイク:CS-EM10

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図2 Sennheiser HD25-1 Lch: Blue/Rch: Red (使用マイク:SP-TFB-2


ちょっと見ただけでも3kHz以上の特性がかなり違うことがわかります。また,ローランドのCS-EM10は左右でかなり異なる特性になっていますが,Sound ProfessionalsのSP-TFB-2では左右で近い特性が得られています。

次にゼンハイザーHD580の測定結果です。図3がローランドのCS-EM10,図4がSound ProfessionalsのSP-TFB-2です。青線がLch,赤線がRchです。

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図3 Sennheiser HD580 Lch: Blue/Rch: Red (使用マイク:CS-EM10

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図4 Sennheiser HD580 Lch: Blue/Rch: Red (使用マイク:SP-TFB-2


やはり3kHz以上の特性がマイクの違いでかなり異なります。

測定対象が同じでも,測定する機器,ヘッドホンやマイクの装着の具合,測定する人(耳の形の違い),などによって測定結果がかなりばらつきます。こんなに違うと一体何を信じて良いのか? こんな測定をして本当に意味があるのか? という疑問が湧いてきます。この特性は,ある特定の条件下で観測された,その機器+測定系のごくごく限られた一側面を切り取ったにすぎません。

しかし,一方で,いろいろと測定を重ねていると,何となくそのヘッドホンの癖が特性に現れているのではないかとおぼろげながら思えるようにもなってきました。あくまで参考データでしかありませんが,できるだけ条件を揃えて測定することによって何らかの傾向をつかむことが出来るであろうと思っています。

周波数特性は,音質を示す特性のある一つの特性にすぎませんが,重要な特性の一つであることは間違いありません。課題が多いとはいえ,主観だけでなく客観的にも評価することにはそれなりに価値があると考えます。これからも出来るだけ客観データが示せるように検討を続けていきたいと思います。

今回の結果からは,Sound ProfessionalsのSP-TFB-2の方がばらつきが少なく安定して測定できそうな感触が得られましたので,当面は,ヘッドホンはSP-TFB-2を使おうと思います。一方,インナーイヤータイプ(耳栓型ではないオープンタイプ)のイヤホンの測定はローランドのCS-EM10+自作カプラーしか今は準備が出来ていませんので,こちらはこれで測定データを示していきたいと思います。

なお,測定にSP-TFB-2を使った場合は特にマイク位置が耳の中の方に入っていますので,必ず耳の形の影響を受けます。具体的には耳の凹みの前室効果による中高域への特性の影響で,盛り上がりのほか,激しいピークディップが生じることが想像されます。従って,「中高域の乱れ=ヘッドホンの特性の乱れ」とは必ずしも言えないと考えます。このあたりは測定を積んで傾向をつかんでいくしかないと思いますが,この測定とは別に,耳の形状などの影響を除いたヘッドホンのドライバユニットの素の特性を測る方法も考える必要があるかもしれません。ただし,こちらは素性を知るには良いかもしれませんが,ヘタをすると聴感からはずれた測定となってしまうかもしれません。難しいところです。

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バイノーラル・マイクロフォンでヘッドホンの測定を試みる(その3)

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Roland CS-EM10
今年の2月頃に,ローランドのCS-EM10というバイノーラル・マイクロフォンを使って今までいくつかのヘッドホンやイヤホンの測定を試みた結果を提示してきました(たとえばこれこれ)。このバイノーラル・マイクロフォンはイヤホンの外側にマイクが付いているため,耳に装着すると少し耳から飛び出る形になります。ハウジングの大きなヘッドホンではそれほど影響がないかもしれませんが,ハウジングの小さな耳載せ型のヘッドホンでは振動板とマイクの位置がかなり近くなり,場合によってはマイクが接触することもるため,測定の誤差やばらつきが大きくなるのではないかという懸念がありました。
そこで,もう少し耳の中にすっぽりと入るマイクがないかと探して見つけたのが次のマイクです。

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Sound Professionals
SP-TFB-2
Sound Professionals SP-TFB-2というマイクです。これはサウンドハウスで見つけました。サウンドハウスの商品紹介に装着している写真がありますが,耳の穴のすぐ上に小さなマイクがくるように装着します。このため,耳載せタイプのヘッドホンであってもマイクが接触するようなことはなく,安定した測定が出来るのではないかと考えました。

実際に測定してみると,ローランドのマイクとはだいぶ違う測定結果となりました。これはある程度想定内でしたが,このようなバイノーラルマイクを使った測定の難しさと限界を改めて思い知らされたように思います。実際に測定した結果は後日報告したいと思います。

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ベートーヴェン:交響曲全集(ダニエル・バレンボイム指揮/シュターツカペレ・ベルリン)

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ベートーヴェン:交響曲全集
ダニエル・バレンボイム指揮/シュターツカペレ・ベルリン
Studio One at the former GDR Radio studios, Nalepastrasse, Berlin, May-July 1999
3984 27838-2 (C)2000 Teldec (輸入盤)
好録音度:★★★★
参考: HMV OnlineAmazon.co.jpTower Records
往年の巨匠の演奏を彷彿とさせる重厚な演奏です。スタンダードと言ってもいいのではないでしょうか。1999年の録音ですが,もう少し古い時代の演奏かと思いました。重厚で熱いドイツ的熱演で,テンポもどっしりと落ち着いていますが,とてもよく引き締まっていて機敏ささえ感じられ鈍重さはまったくありません。ピリオド的なアプローチを取り入れることの多い昨今の風潮など全く意に介さない堂々たる演奏が良かったです(といってももう10年以上前の演奏なんですね)。

録音ですが,残響を多めに取り入れたやや濃厚な録音なので私の好みからは外れるのですが,弦楽器の質感をまずまずよく捉えていますし,管楽器とのバランスも適切,意外に分離も良く見通しも悪くありませんでした。音色も曇った感じはしません。全体の印象としては良好です。標準的な録音と言えなくもありませんし,残響が気にならない方であれば全く問題ないでしょう。

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ブラームス:交響曲全集(マルクス・ボッシュ指揮/アーヘン交響楽団)

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ブラームス:交響曲第1番,第4番
Live Recording: Aachen Eurogress, December 13th and 14th 2006
CDV30704 (P)(C)2007 Coviello Classics (輸入盤)
好録音度:★★★★
参考: HMV OnlineAmazon.co.jpTower Records
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ブラームス:交響曲第2番,第3番
Recording: Eurogress Achen, December 10th-12th 2011
CDV31206 (P)(C)2012 Coviello Classics (輸入盤)
好録音度:★★★★
参考: HMV OnlineAmazon.co.jpTower Records
マルクス・ボッシュ指揮/アーヘン交響楽団

少し小さめの編成による演奏。ライヴ録音。第1番,第4番は演奏後の拍手あり,第2番,第3番は拍手なしです。小気味よくキレのよい軽量級の演奏で,先日紹介したヤンソンス/バイエルン放送交響楽団による全集とは対極的です。もしかしたらこんなのブラームスじゃないと認めない方もおられるかもしれませんが,私はこういうのは好きですね。清々しい気分になります。第1番第1楽章の提示部のリピートがないのは残念です。

録音ですが,残響が少し多めに取り入れられているものの,直接音の方がやや優勢なので印象は悪くありません。もう少し弦楽器の質感がリアルに捉えられていると良かったのですが。でも,多くの方は納得されるのではないでしょうか。ほんのわずかですが,第1番,第4番の録音の方が良い気がします。録音レベルが少し低めなのはマイナスポイントです。

第1番 12:07/8:33/4:44/15:54 提示部リピートなし
第2番 18:59/8:07/4:47/9:37 提示部リピートあり
第3番 12:28/7:04/5:26/8:10 提示部リピートあり
第4番 11:16/9:54/6:14/9:41

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