バッハ:無伴奏ヴァイオリンのためのソナタとパルティータ全曲(ジャン=ジャック・カントロフ)

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バッハ:無伴奏ヴァイオリンのためのソナタとパルティータ全曲
ジャン=ジャック・カントロフ Jean-Jacques Kantorow (Violin)
録音:1979年11月 荒川区民会館
COCQ-83410/11 (P)1990 NIPPON COLUMBIA CO., LTD (国内盤)
好録音度:★★★☆
参考: HMV OnlineiconAmazon.co.jpTower Records
CD試聴記」からの転載記事です。2回目のレビューです。

とても感情表現が豊かです。穏やかに表情をつけていく曲もあれば,は突如として感情の高ぶりを見せる熱い曲もあります。フーガやシャコンヌでは重音を分けず一気に弾ききり,緊張感を持続させながら怒濤のごとく突き進みます。 緊張感の高い感情移入の激しい曲と穏やかな曲が入り交じり,「この曲はこういう表現であろう」と思って聴くと全然違って肩すかしを食らうこともあり,掴みどころがなく戸惑うところもあります。技術力の高さと感情表現の上手さはさすがです。好き嫌いははっきり分かれそうな演奏ですね。

録音ですが,少し距離感があって楽器音が残響に埋もれ,明瞭感,解像感が落ちていて,今ひとつ冴えません。録音レベルが若干低めなのも残念なところです。

バッハ:無伴奏ヴァイオリンのためのソナタとパルティータ全曲(クリストフ・バラティ 2002年録音 1回目)

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バッハ:無伴奏ヴァイオリンのためのソナタとパルティータ全曲
クリストフ・バラティ Kristof Barati (Violin)
Concert enregistre en public le 18 juin 2002 a Pleyel.
LVC 1030 Saphir Productions (輸入盤)
好録音度:★★★★★
参考: 公式WebサイトAmazon.co.jp
CD試聴記」からの転載記事です。2回目のレビューです。

これは本当にライヴなのだろうか,というくらい充実感のある演奏です。 非常に高い集中度で曲に真正面から取り組んでいるのがひしひしと伝わってきます。 切れ味が鋭く鋭角的であり,張りの強い音色が印象に残る力演です。 表現は奇をてらうことのないオーソドックスなもので,緩急強弱も控えめですがツボを突いていますし, テンポも中庸ですがきびきびとしており,聴いていて気持ちよいです。 強いて言えば,若さ故の謙虚さからか,一つ一つの音を丁寧すぎて推進力が削がれているところもあり, もうひと味欲しいなという感じはありますが,これは酷な要求というものでしょう。 技術力,安定感も秀でていますが,ソナタ第三番,パルティータ第三番では,あれっと思うミスも見られました。 一日で全曲をこなした疲れでしょうか,ちょっと残念に思います。

録音はライヴで,私の大好きな録音の典型です。残響感が全くなく,極めて鮮明に,生々しく,ライヴらしい実在感をもって捉えられています。音色も自然であり,演奏の全てが本当にストレートに,子細に伝わってきます。楽器の質感もよく捉えられています。わずかに反射音による濁りが感じられるものの,この程度であれば全く問題ありません。ライヴとしてはこれ以上は望めないでしょう。最高です。このような録音ではオーディオ的クオリティが悪い場合も多いのですが,この録音はこの点でもまずまず合格です。

バラティ氏は,1979年生まれ,ハンガリー,ブダペスト出身。 1997年のエリザエート国際コンクールで3位入賞など,なかなかの実力者です。2009年に2回目の全集録音をしています。

インナーイヤホン beyerdynamic DTX 21 iE のレビュー

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インナーイヤホン beyerdynamic DTX 21 iE

ケーブル1.2m Y字,プラグL字型 金メッキ? 16Ω,VOL付
(ごめんなさい,VOLは付いていませんでした)
参考: TASCAMAmazon.co.jp

ベイヤーダイナミックのオープンタイプのインナーイヤホン。実売価格が1,200円前後という安価な製品。先日,ヨドバシカメラの店頭で物色していて見つけました。ベイヤーダイナミックからオープンタイプのイヤホンが出ているとは知らなかったのですが,安いし失敗してもショックは小さいのでお試しで買ってみました。ヨドバシ店頭では1,230円でした。

聴いてみて驚きました。どちらかといえば地味で大人しいのですが,すごく素直でバランスがよいのです。1,000円ちょっとのイヤホンとは思えない素性の良さ! 高域の伸び感も良く,解像感も良好,癖が全くないとは言いませんが,付帯音も少なくとても聴きやすい音質です。

装着感も良好で,私の耳にぴったりとすごく良い感じに収まります。

一方で,モノとしての品質,質感は良くありません。ケーブルはよれよれで癖がとれず滑りも悪くすぐにからみつきますし,音が出るところのゴムのカバーは緩くすぐに外れてしまいます(なくすのは時間の問題...)。さらに,全く不要なアクセサリーが付いています。音質の素性が良いだけに,これは本当に残念です。

この素性の良さにさらに磨きをかけ,音質をさらにすっきりとさせ,モノとしての造り,質感を高めたものをぜひ出して欲しいものです。全く期待できませんが...

昨日Twitterで簡易測定した話を書きましたが,よくよく見てみると高域の特性が実際の音のイメージとかけ離れた特性になっていました。測定は以前「オープンタイプのインナーイヤー型イヤホンの特性測定を試みる(その1) 」という記事で紹介した,Roland CS-10EMというマイクに手作りのカプラーを取り付けたものを用いました。少なからず測定装置との相性があるようで,オープンタイプのイヤホンの測定方法についてはまだまだ検討の余地があるようです。ということで,今回は紹介できる測定データがありません。もう少し良い測定方法を見つけたらまた紹介したいと思います。

タグ: [ヘッドホン] 

バッハ:無伴奏ヴァイオリンのためのソナタとパルティータ全曲(ナタン・ミルシテイン 1973年録音)

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バッハ:無伴奏ヴァイオリンのためのソナタとパルティータ全曲
ナタン・ミルシテイン Nathan Milstein (Violin)
London, Conway Hall (Wembley, Brent Town Hall), 2, 4, 9/1973
457 701-2 (P)1975 Polydor International GmbH (C)1998 Deutsche Grammophon GmbH (輸入盤)
好録音度:★★★★
参考: HMV OnlineiconAmazon.co.jpTower Records
CD試聴記」からの転載記事です。2回目のレビューです。

キレのある弓遣いが推進力に溢れ,途切れることのない密度の高い音楽を生み出しています。一つ一つの音が確信に満ちていて揺らぐことがない,そして恐ろしいくらいに明晰で品格がある。数多の演奏とは明らかに違う次元・高みに達していると感じます。本当に素晴らしい出来だと思います。

一方でごく稀に音程にわずかな違和感を感じることがあります。技術的な衰えがあるとすれば,この微妙な音程感にきているのではないかと(といっても和音の正確さなどは際立っています)。あと,ソナタ第1番のフーガの最後の音の途中で弓を返したりと,何とかならなかったのかと残念に思うところもあります。 些細なことではありますが。

録音ですが,やや多めに残響が取り込まれており,楽器音を損ない鮮度やニュアンスを失う要因になっていますが,それでもまずまず楽器音をしっかりと捉えているのでなんとか許容範囲と言えます。とはいえ1回目の録音のようなストレートな録音でないことは残念でなりません。

ミルシテインがおよそ70歳になる頃に録音された2回目の全集。10年ぶりにじっくり聴いて,巨匠の演奏の凄さを再認識しました。

10万アクセス有り難うございます!

本日,気がついたら10万アクセスを越えておりました。いつもアクセス有り難うございます。皆様のアクセスを励みに少しずつ更新を続けていきたいと思います。今後ともよろしくお願いいたします。

バッハ:無伴奏ヴァイオリンのためのソナタとパルティータ全曲(ナタン・ミルシテイン 1954-56年録音)

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バッハ:無伴奏ヴァイオリンのためのソナタとパルティータ全曲
ナタン・ミルシテイン Nathan Milstein (Violin)
Studio A, 46th Street Studio, NY. 26 & 31 March 1954(Sonata No.1), 6 February 1956(Partita No.1), 27 December 1956(Sonata No.2), 23-24 March 1954(Partita No.2), 5, 16, 17 March 1956(Sonata No.3), 28 December 1955(Partita No.3)
ZDMB 64793 2 3 (P)1955-66 Angel Records (輸入盤)
 愛聴盤  好録音度:★★★★★
参考: HMV OnlineiconAmazon.co.jpTower Records

CD試聴記」からの転載記事です。3回目のレビューです。

恐ろしいほどにキレがよく,その潔さが痛快! 円熟や味わい深いといった言葉の対極にある,ものすごく尖った演奏です。当時の巨匠の強烈な個性に圧倒されます。現代ではもうこんなスタイルで演奏する人が出てくることはないんじゃないだろうか...

リピートの省略が多いのが残念ですが,これも時代を思えばいたしかたなしというところでしょうか。

録音はモノラルです。わずかに残響が感じられますが,ほとんど影響がないと言ってもいいくらいです。少し距離感があってわずかに明瞭度,鮮明さを落としているのが残念ですが,それでも音の捉え方としては良好で,演奏をストレートに生々しく伝えてくれる好録音です。この点を評価して五つ星にしました。

ただオーディオ的なクオリティは決して良いとは言えません。高域がキンキンし,低域が抜けた感じでバランスも良くありませんし,いかにも古い音色です。マスターテープの問題か,時折曇った感じに聞こえるところもあります。古い録音なので仕方ないと思います。

このディスクは1回目の全曲録音で,どちらかといえばDGに録音した2回目の全集の方が一般的には評価が高いように思います。でもこの1回目も捨てがたい魅力を放っています。(私の好きな)ミルシテインの魅力がこの全集に凝縮されています。

以上が「CD試聴記」からの転載です。ここではもう少しだけ録音について追記します。

上述の通り,この録音はスタジオで残響がほとんどない環境で録音されています。音質が「古い」という以外に鑑賞を阻害する要素がほとんどありません。今でも十分に鑑賞に堪えるのは,この残響の少ない録音によるところが大きいと思います。

以前の記事(例えばペレーニの無伴奏チェロ組曲)からも繰り返し言ってきたことですが,残響がなくても素晴らしい音楽は成立します。音楽の本質は残響の有無に左右されません。このディスクはそれを見事に証明しています。「これに残響が加わっていればもっと素晴らしいものになったのに!」と思われる方もおられるかもしれませんが,私はそうは思いません。

ミルシテインの1973年の録音は残響がかなり入っています。この1973年盤とこの1954-56年盤を聴き比べてみると,1973年盤はものすごく多くの大切な音楽的情報が残響と引き換えに失われていることが感じられます(それでも名盤としての確固たる地位を築いているというのは本当に演奏が素晴らしいということの証ですね)。CDという限られた情報量しか収められない器がそれ自体ほとんど情報量のない残響で埋め尽くされるのですから,相対的に重要な音楽的情報が減ってしまうのは当然です。情報量が減った方がよいということは基本的にはありません。

特に録音に関わられている方には,残響について,取り入れるにしてもその功罪をきちんと見極めて取り入れて欲しいということを改めてお願いしたいと思います。

残響が入っていても音楽的情報の損失が最小限の録音も存在します。こういう録音は,メディアという器に収められた音楽情報の隙間にうまく残響の情報を入れて,音楽情報が押し出されないようにしているのだと思います。せめてこれくらいは配慮して欲しいものです。

長々と失礼しました...

バッハ:無伴奏ヴァイオリンのためのソナタとパルティータ全曲(アーロン・ローザンド)

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バッハ:無伴奏ヴァイオリンのためのソナタとパルティータ全曲
アーロン・ローザンド Aaron Rosand (Violin)
Recorded in May and August, 1997
VXP2 7901 (P)(C)1998 The Vox Music Group (輸入盤)
好録音度:★★★★★
参考: Amazon.co.jpTower Records
CD試聴記」からの転載記事です。2回目のレビューです。

ヴィルトゥオーソの面目躍如たる堂々とした演奏。太くて押しが強く,そして温かさがあります。アクセントを効かせた独特の歯切れ良さも気持ちがよいです。なにより音楽が活き活きしているのが素晴らしいです。短調の曲でさえどこか明るく微笑ましいです。

録音ですが,若干音色に癖を感じますが,残響はほとんどなく,極めて明瞭に質感高く捉えています(ちょっと濃すぎるくらい)。オーディオ品質的には少し粗く劣る感じはありますが,十分許容範囲です。(五つ星はちょっとオマケですが)

ローザンド氏は1927年生まれなので,70歳での録音ということになります。この歳でこの出来は大変素晴らしいと思います。10年前の1回目のレビューの時には,演奏も録音もあまり高く評価していませんでしたが,今改めて聴いてみて,演奏も録音もこれはすごく良いじゃないですか,と大幅に見直しました。

バッハ:無伴奏ヴァイオリンのためのソナタとパルティータ全曲(トーマス・ツェートマイヤー)

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バッハ:無伴奏ヴァイオリンのためのソナタとパルティータ全曲
トーマス・ツェートマイヤー Thomas Zehetmair (Violin)
Haarlem 1982
3984-21035-2 (P)1983 (C)1998 Teldec Classics International GmbH (輸入盤)
好録音度:★★★★★
参考: HMV OnlineiconAmazon.co.jpTower Records
CD試聴記」からの転載記事です。2回目のレビューです。

私の持っている同曲の演奏の中でも最も変態的...いや失礼...最も個性的な演奏の一つと言って良いと思います。「うげっっ...なんじゃこりゃ...なんかすげぇあぶねぇ奴!」っていう感じです(^^;。この激しさ,唐突さ,本当に好き勝手してます。好き嫌いがはっきり出そうな演奏ですね。でも何度も聴いているとこれがまた快感に変わってくるんですよ,ほんとに。

でも決してバッハを軽んじているわけではなく,強い意志をもって臨んでいるというのも伝わってきます。技術的にも冴え渡っています。上手いからこそこういう演奏も許せるというものです(これでヘタだったらとても聴いていられない)。

録音ですが,わずかに残響のまとわりつきはありますが,直接音が主体で極めて明瞭かつ解像感が高く,高域の伸び,ヌケの良さも申し分ありません(少しきついくらいです)。距離感も適切ですが,もう一歩寄って質感を強めに出してもよかった気はします。やや立体感には欠け,こぢんまりしている感はありますが,それでもこれはかなり良い録音と言えると思います。(五つ星はちょっとオマケです)