Androidスマートフォンで音楽のギャップレス再生を行う別の方法(xrecord II + GoneMAD Music Player)

今まで,Androidスマートフォンでギャップレス再生を行う方法として,Winamp Proを使う方法と,Android4.1以降限定ですがGoogle Play Musicを使う方法を紹介してきました。

その後者のエントリーのコメントで,Androidスマートフォンでギャップレス再生を行う別の方法を教えていただきました(ありがとうございます)。しかもこの方法は原理的に完璧なギャップレスになります。ただし,このためにCDからのリッピングが少々特殊な方法になります。以下,簡単に手順を紹介します。

(1)CDからのリッピング
xrecord IIというPCアプリを使います(→xrecord IIのWebサイト)。登録が必要なソフト(有料?)ですが,起動直後に表示される登録を促す画面をやり過ごせばそのまま使えます(この待ち時間はだんだん長くなっているようだ)。

このソフトの「目的の形式」欄(コーデックを選択する欄)で「結合/CUE」を選び,その設定の中で任意のコーデックを選び,CDをリッピングします。リッピングした音楽ファイルと,同名のCUEシートファイルの2つのファイルが出来ます。音楽ファイルはCD1枚が丸ごと1つのファイルになっています。ここがミソです(CUEシートファイルにトラックの開始位置の情報が書かれている)。

(2)Androidスマートフォンでの再生
GoneMAD Music PlayerというAndroidアプリを使います。14日間は無料で使えるトライアル版をまずは使います。(1)の音楽ファイルとCUEシートファイルの2つをスマートフォンのmicroSDに任意のフォルダを作成して保存します。ジャケット写真を表示したい場合は,"cover.jpg"というファイル名でジャケット写真を置いておけばそれが使われます。GoneMAD Music Playerで見ると,トラックが分割された状態で表示され,普通の音楽ファイルと同様に扱えます。

上記のように,CD 1枚が丸ごと連続的にエンコードされて1つの音楽ファイルに収められるのでギャップ自体が存在しません。トラックはその音楽ファイルの中の開始位置を示しているだけです。なので,このファイルを普通に再生すればギャップなしに再生されるというわけです。

CD 1枚が1つのファイルになるので自由度や音楽ファイルの管理の点で不便さは伴いますが,ギャップレス再生の有力な選択肢の一つと言えるでしょう。

情報の提供主様に感謝します。

このギャップレス再生方法は,GoneMAD Music PlayerがCUEシートによるトラック表示をサポートしているというところに拠っています。従って,試していませんが,CD 1枚丸ごとリッピングができ,別途CUEシートだけを作成することが出来れば,xrecord IIでなくても使えるかもしれませんし,CUEシートに対応した別の音楽アプリがあれば,それでも実現できるはずです。

ベートーヴェン:弦楽四重奏曲全集(メロス四重奏団)

cover picture
ベートーヴェン:弦楽四重奏曲全集
メロス四重奏団 Melos Quartet
1983年6月,7月,9月(前期),1984年2月,7月(中期),1984年12月,1986年5月(後期),バンベルク
UCCG-9627/34(435 5202) (P)2005 Deutche Grammophon (国内盤)
好録音度:★★★☆~★★★★
参考: HMV OnlineiconAmazon.co.jpTower Records
ある意味ベートーヴェンの弦楽四重奏曲の理想を極めたと言えるのではないかと思います。頭に思い描くこの曲の姿そのものが現実の音楽として目の前で再現されていきます。活気のある熱い演奏でありながらビシッと引き締まった完璧に統制されたアンサンブルは本当に見事です。

録音ですが,残響が少し多めで,楽器音はそれなりにしっかりと捉えられているものの,音色は曇りがちで質感も少し失われておりすっきりしません。残響を気にしない方なら問題ないレベルかもしれませんが。私としては残念でなりません。

それにしてもこれだけの素晴らしい演奏が現役盤として存在しないのはなぜ?と疑問に思わざるを得ません。もったいないと思います。

ヨゼフ・スークのバッハ/無伴奏ヴァイオリンがタワーレコード企画盤として復刻!

cover picture
以前紹介したヨゼフ・スークのバッハ/無伴奏ヴァイオリン全曲は,素晴らしい演奏なのに廃盤で手に入りにくい状況でしたが,タワーレコードの企画盤として復刻されるようです(→Tower Records)。またまたやってくれますねぇ,タワーレコード! この復刻はうれしいです。

ベートーヴェン:弦楽四重奏曲全集(エンデリオン弦楽四重奏団)

cover picture
ベートーヴェン:弦楽四重奏曲全集
エンデリオン弦楽四重奏団 Endellion String Quartet
2005-2008年; Concert Hall, Wyastone, Monmouth; West Road Concert Hall, Cambridge; Potten Hall, Ipswich;
2564 69471-3 (P)2005,2006,2008 Warner Classics & Jazz (輸入盤)
好録音度:★★★☆~★★★★
参考: HMV OnlineiconAmazon.co.jpTower Records
エンデリオン弦楽四重奏団は1979年に結成,30周年を記念して全集を録音したとのこと。第1番の初稿や断章,弦楽五重奏曲,ピアノ・ソナタ作品14-1のベートーヴェン自身による編曲版も含まれます。ジョナサン・デル・マーのベーレンライター校訂譜による初の全集で,エンデリオン弦楽四重奏団もこの校訂作業に協力しているとのことです。

音楽にどんどんと没入していく意欲的で熱い(しかし,高い技術力でしっかりと制御されている)演奏で,曲想ごとにそれをくっきりと浮き立たせるような表現をしてきます。個人的には拍の頭で溜めず前に前に音楽が転がっていくノリの良さが気に入っています。

録音ですが,録音場所が3カ所に分かれ,時期も3年以上に渡っていてばらつきはあるものの,大まかには統一されていて違和感はありません。やや残響が多く楽器音に被って音色が曇りがちですが,状態の良い曲はぎりぎり許容範囲と言えます(後期は概ね良い方かなと思いました...気のせいかもしれませんが)。

Android Google Play Musicのギャップレス再生を確認する

iPod touchとAndroid音楽アプリのギャップレス再生を検証してみた」というエントリで,AndroidアプリのWinamp Proのギャップレス再生を検証し,MP3は実用上問題なし,AACは不完全,という結果を報告していました。そのほかのアプリでギャップレスに対応したものが見つからなかったため,この検証以来,Winamp Pro + iTunes MP3の組み合わせで使ってきました。

最近,Google Play Musicというアプリがギャップレス再生に対応したという記事を見つけたので,早速試してみようと思ったのですが,Android4.1以降からの対応ということで,いつも使っているXperiaではなく,Google Nexus Sで試してみました。Androidのバージョンは4.1.2,Google Play Musicのバージョンは4.5.910lです。

今日は速報ということで,上述の記事で用いたコンテンツを聴感で確認しました(聴感でもだいたいわかるので)。コンテンツは14トラックから成るので,曲間は13カ所です。聴感上うまくギャップなしにつながったと思われる回数を数えました。以下,結果です。

  iTunes AAC 320kbps ○=7カ所,×=6カ所 (Winamp Pro ○=0カ所,×=13カ所)
  iTunes MP3 320kbps ○=12カ所,×=1カ所 (Winamp Pro ○=13カ所,×=0カ所)

ということで,AACについてはWinamp Proよりも良い結果でしたが,それでも完全ではありませんでした。MP3はWinamp Proとほぼ同等ですが,こちらも完全ではありませんでした。という何とも中途半端な結果です。とりあえずギャップレス対応ということでいうと,Winamp Pro + iTunes MP3から乗り換える必要はないということがわかりました。

なお,Winamp Proの結果を併記しましたが,Androidのバージョンは4.0.4です。Android4.1.2上でWinamp Proを使うと,AACが全然だめでした。相性が悪いようです。

Google Play MusicもWinamp Proも頻繁にアップデートされていますので,近いうちにAACに完全対応してくれるであろうと期待しています。今後も時々チェックして報告したいと思います。

ベートーヴェン:交響曲全集(ニコラウス・アーノンクール指揮/ヨーロッパ室内管弦楽団)

cover picture
ベートーヴェン:交響曲全集
ニコラウス・アーノンクール指揮/ヨーロッパ室内管弦楽団
1990年6,7月, 1991年6月 グラーツ(ライヴ・レコーディング)
WPCS-5820/4 (P)(C)1991 TELDEC CLASSICS (国内盤)
好録音度:★★★☆
参考: HMV OnlineiconAmazon.co.jpTower Records
精悍というか,弾けるように躍動する生命力に溢れたベートーヴェンだ。ヨーロッパ室内管弦楽団の引き締まった機動性の高い演奏に負うところも大きいと思います。強烈なアクセントとリズムで推進される音楽にグイグイと引き込まれていきます。20年以上前の録音ですが,未だにモダン楽器オーケストラによる最先端をいく現代的ベートーヴェンの代表作と言えるのではないでしょうか。素晴らしいです。こういう演奏,大好きですね。病みつきになります。

しかし!録音が...微妙です。少し残響が多めで音色が全体にくすみ気味です。残響過多という感じではないのですが,直接音よりも間接音が優勢で,まるでEMIの録音のようにヌケが悪くすっきりしませんし,少々やかましく聴こえてしまいます。演奏が素晴らしいだけに欲求不満がたまってしまいます。本当に残念でなりません。

タグ: [交響曲] 

ベートーヴェン:交響曲全集(ヘルベルト・フォン・カラヤン指揮/ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団) 1977年東京普門館ライヴ

cover picture
ベートーヴェン:交響曲第1番,第3番「英雄」
普門館 1977年11月13日
TOKYO FM TFMC0025 (C)(P)2010 TOKYO FM (国内盤)
好録音度:★★★★☆
参考: HMV OnlineiconAmazon.co.jpTower Records
cover picture
ベートーヴェン:交響曲第2番,第8番
普門館 1977年11月14日(第2番),17日(第8番)
TOKYO FM TFMC0026 (C)(P)2010 TOKYO FM (国内盤)
好録音度:★★★★☆
参考: HMV OnlineiconAmazon.co.jpTower Records
cover picture
ベートーヴェン:交響曲第5番「運命」,第6番「田園」
普門館 1977年11月16日
TOKYO FM TFMC0027 (C)(P)2010 TOKYO FM (国内盤)
好録音度:★★★★
参考: HMV OnlineiconAmazon.co.jpTower Records
cover picture
ベートーヴェン:交響曲第4番,第7番
普門館 1977年11月15日
TOKYO FM TFMC0028 (C)(P)2010 TOKYO FM (国内盤)
好録音度:★★★★☆
参考: HMV OnlineiconAmazon.co.jpTower Records
cover picture
ベートーヴェン:交響曲第9番「合唱」
普門館 1977年11月18日
TOKYO FM TFMC0029 (C)(P)2010 TOKYO FM (国内盤)
好録音度:★★★★
参考: HMV OnlineiconAmazon.co.jpTower Records
ヘルベルト・フォン・カラヤン指揮/ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団

TOKYO FM開局40周年記念盤。FM放送用に収録された音源のCD化(シングルレイヤーのSACDも発売されています)。カラヤン自身が「今日の演奏は最高に満足できるものだった」と語ったとか。演奏自体は私がコメントするまでもないとは思いますが,力感のみなぎる迫真の熱いベートーヴェンであり,昨今の理知的な演奏に比べると随分と荒っぽいなぁとも正直思います。自己主張の塊のようなサウンド,縦の線が揃わず混沌とするのもカラヤン/ベルリン・フィルらしい言えるでしょう。ライヴなので至るところで事故があるのはこういう演奏なら仕方ないかなと思います(ただし,これが許されるのはこれだけのパフォーマンスの出来るカラヤン/ベルリン・フィルだけでしょう)。私はこういう演奏は好きですし,CD評など見ても好きな方が多いようですが,嫌いな人は本当に嫌いだろうなぁと思うような演奏ですね。

さて,録音について。録音エンジニアは第5番,第6番がエフエム東京の橋本正文氏,他の7曲が若林駿介氏。橋本氏の音作りは客席上部に吊ったエコー・マイクも活用して量感と臨場感を重視するタイプで,若林氏は中央に吊ったワンポイントマイクを中心に舞台上のブースター・マイクの音も取り入れ,ホール残響をあまり取り入れず,明晰で緻密に,かっちりと凝縮させたサウンドを求めるタイプ,とのことです(以上,解説書より)。確かに聴いてみるとその通りで,橋本氏の録音は演出色の強いサウンドで,若林氏の録音はストレートで力強く演出色のない荒削りの生録的サウンドで,やはり私には若林氏の録音の方が好みに合います。明瞭な中高域,タイトな低域など,なかなか良いと思います。ガサガサ,ゴソゴソという演奏者や観客が出す会場のノイズも若林氏の録音の方が大きめです。

第9番の録音は,本番の直前に収録用のマイクアンプの故障で,中央に吊ったメインマイクのみでの収録になったそうで,確かにややパンチに欠ける大人しい音ですが,どぎつさが少なくすっきりとしていてそんなに悪いというほどではないと思いました。橋本氏の録音よりは私の好みには合います。

普門館は5千人を収容できる巨大なホールで,もともと音楽会場として設計されていないらしくデッドでドライな音響条件だったようです。実際のコンサート会場で聴いた感じがどうであったかはわかりませんが,結果的にこの音響条件が録音にはプラスに働いたのではないでしょうか。

CDパッケージのたすきに「凄い音質!」とあり,これはオーディオ的に優れているというよりは,この生々しさのことを言っているのだろうと思います。こういうサウンドを「凄い!」と言いつつ,普通は誰もこんな音で録音しようとしませんね。なんで?とちょっと意地悪に思ってしまいますね。

バッハ:ゴルトベルク変奏曲(クリスティーナ・ビェルケ)

cover picture
バッハ:ゴルトベルク変奏曲 BWV988
クリスティーナ・ビェルケ Christina Bjørkøe (Piano)
録音データ記載なし(おそらく2000年の録音)
Scandinavian Classics 220590-205 (C)2002 TIM (輸入盤)
好録音度:★★★★
参考: Amazon.co.jpTower Records
ビェルケ氏はデンマークの女流ピアニスト。リピートはほぼ実行(全てではないが)。これはかなり特徴のある演奏です。一つ一つの音をかなり短くスタッカートのように弾くので最初は違和感を感じましたが,何度も聴いているとだんだんこれが快感に変わってきます。単に短いというだけでなく,音の長さと強さを自在にコントロールし,微妙で広がりのある表情付けに成功していると思います。技術的にも優れていてこれはなかなか良いと思いました。聴けば聴くほど引き込まれていきます。

録音ですが,少し録音環境の響きで色づけが感じられるのが残念ですが,歯切れの良い演奏の特徴を活かす明瞭な録音で,まずまず良いと思います。

タグ: [器楽曲]  [ピアノ] 

バッハ:ゴルトベルク変奏曲(熊本マリ)

cover picture
バッハ:ゴルトベルク変奏曲 BWV988
熊本マリ Mari Kumamoto (Piano)
1993年8月10-12日 川口リリア音楽ホール
FIREBIRD KICC 110 (P)1993 KING RECORD CO., LTD. (国内盤)
好録音度:★★★☆
参考: HMV OnlineiconAmazon.co.jpTower Records
ジャケット写真はグレン・グールドへのオマージュでは?という話がありますね(そのグールドの写真は夏目漱石へのオマージュという話も?)。演奏もグールドを強く意識しているんじゃないかと思えるところもありますが,若々しく溌剌として元気のあるところが良いですね。でも,この演奏もグールド同様リピートの省略が多いのが本当に残念に思います。

録音ですが,残響が多いという感じではないのですが,マイクポイントが楽器から遠く,ホールの響きを中心に捉えているためにヌケが悪くピアノの音色が曇っています。響きがマイナス方向にしか働かない典型例のように思います。タッチは歯切れ良いのにこの録音ではせっかくの演奏が生きてきません。

演奏自体は好きなのですが,リピート省略とこの録音が...もったいないです。

タグ: [器楽曲]  [ピアノ] 

ベートーヴェン:弦楽四重奏曲全集(タカーチ四重奏団)

cover picture
ベートーヴェン:初期弦楽四重奏曲集
タカーチ四重奏団 Takács Quartet
St George's, Bristol, 18-22 Nov. 2002, 1-4 Sep. 2003
470 848-2 (P)(C)2004 Decca Music Group (輸入盤)
好録音度:★★★★
参考: HMV OnlineiconAmazon.co.jpTower Records
cover picture
ベートーヴェン:中期弦楽四重奏曲集
タカーチ四重奏団 Takács Quartet
St George's, Bristol, 16-19 Jul. 2001, 19-22 Nov. 2001
470 847-2 (P)(C)2002 Decca Music Group (輸入盤)
好録音度:★★★★
参考: HMV OnlineiconAmazon.co.jpTower Records
cover picture
ベートーヴェン:後期弦楽四重奏曲集
タカーチ四重奏団 Takács Quartet
St George's, Bristol, 17-20 Nov. 2003, 17-21 May, 19-23 Jul. 2004
470 849-2 (P)(C)2004 Decca Music Group (輸入盤)
好録音度:★★★★☆
参考: HMV OnlineiconAmazon.co.jpTower Records
すごくシャープですねぇ。アンサンブルの精度,和音の響きの充実感,どれをとってもずば抜けています。隙がまったくありません。それでいて無機質になることがありません。力強いキレの良いアクセントが全体を引き締め緊張感を維持しつつも,歌心,情緒感にも溢れている。素晴らしい! これは本当に感動しました。現代的演奏の最高峰の一つに挙げても良いんじゃないでしょうか。

録音ですが,やや残響が気になるものの,楽器音の捉え方は良く楽器そのものの充実した音をしっかり収めているので,印象は良好です。中期がやや曇りがちで少し劣るものの,後期はその曇りもかなり緩和され,高域まで伸びていてヌケも悪くありません。楽器の質感も良好です。

バッハ:ゴルトベルク変奏曲,フランス組曲第5番,半音階的幻想曲とフーガ(イリーナ・メジューエワ)

cover picture
バッハ:ゴルトベルク変奏曲 BWV988
バッハ:フランス組曲第5番ト長調 BWV816
バッハ:半音階的幻想曲とフーガニ短調 BWV903
イリーナ・メジューエワ Irina Mejoueva (Piano)
2012年9月7日,りゅーとぴあ新潟市民芸術文化会館(ライヴ)
WAKA 4169 (P)(C)2012 若林工房 (国内盤)
好録音度:★★★★
参考: HMV OnlineiconAmazon.co.jpTower Records
リリースされるディスクがほぼ例外なく高評価を得ている※1メジューエワ氏のゴルトベルク変奏曲(これもレコード芸術誌2013年2月号で特選!)とあらばこれはもう聴かざるを得ません。いくつか批評を見てみましたが,好意的なものばかりですね。私はピアノ曲はあまり聴かないので彼女の真価を理解できるに至っていないのですが,端正で控えめで温かく,しかしどこかスケールの大きさを感じさせるところが良いと思いました。

しかし,一通り聴き終えた今,実は非常に落胆しています。なぜか。もうお察しのことと思いますが,リピートがほとんど省略されているのです。しかも総て省略しているわけではなく所どころでリピートされているのですが,前半も後半もリピートされる場合もあれば,前半のリピートだけやって後半はやらなかったりする場合もあり,そのポリシーが私にはよくわからないのです。

基本的に私は作曲家が指定したリピートはやって欲しいと思っています※2。リピートすることでしか現れないあの音楽の流れが私は好きだからです。リピートしないということは私にとっては曲の一部を捨てられているのと同じです。単に1回しかやらない,ということではないと思うのです。頭の中では無意識のうちにリピートしたときに現れるであろう音楽の流れを期待して待ちかまえているところをスッと次にしまう,この度になんとも残念な気分になってしまうのです。しかも,ゴルトベルク変奏曲は1つの変奏曲あたり2度のリピートがあるわけで,全曲を通して聴いていると何十回も残念な瞬間が繰り返し訪れてくるという,もう勘弁して欲しい状態になってしまいます。(じゃあ聴くなよ!ということですかね...※3

録音ですが,ホール音響の癖がやや強めに出ているのですが,残響時間も長くなく,若干甘美な方向に傾くにとどまり,幸いなことに音質を大きく損ねるには至っていません。明瞭感もそれほどは損なわれていないので,許容範囲というところです。私としてはやはり付帯的にまとわりつく響きが邪魔に感じられるので,これらがないもっとピュアな音作りをして欲しいと思っています。



※1 若林工房のWebサイトに掲載されているディスコグラフィを調べてみて驚きました。今までにリリースされている総組数が38,そのうちレコード芸術誌の特選が30(!!),準特選が3,準推薦が1,で,何も付いていない4組はライヴや記念限定盤という驚くべき実績でした。実質的にほぼ総てが選出されていると言って良いです。

※2 リピートの省略についてはいろいろな考え方があるようですし,ここを議論しても水掛け論にしかならないと思いますのでやめておきますが,私の場合,建前的には「作曲家が意図を持って楽譜に記したリピートを何でそういとも簡単に無視できるんだ?」ですが,結局のところは上述したように,リピートによってしか形成されないあの音楽の流れを聴くのが好きだ,ということに尽きます。

※3 にも書きましたが,音楽といえど結局はディスクという器に入った製品であるわけで,リピートというのはその製品の基本的かつ重要な仕様であるにもかかわらず,購入前にその仕様を正しく知ることができないというのはちょっと納得いかないですね。

タグ: [器楽曲]  [ピアノ]