ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ全集第2巻「愛」(小菅優)※レコード芸術誌2013年度第51回レコード・アカデミー賞特別部門録音受賞ディスク

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ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ全集第2巻「愛」
小菅優 Yu Kosuge (Piano)
録音:2012年8月20日-24日 水戸芸術館コンサートホールATM
SICC 10176-7 (P)(C)2013 Sony Music Japan (国内盤)
好録音度:★★★★
参考: Tower RecordsAmazon.co.jpHMV Onlineicon
レコード芸術誌 2013年度第51回レコード・アカデミー賞 特別部門 録音 で『世界最高水準&最先端のピアノ録音』と評価を受けた受賞ディスク。第9番,第10番,第13番,第14番,第24番,第27番,第28番を収録。SACDハイブリッド盤。

ピアノは普段あまり聴かず,またなかなか好録音と思えるものに出会わないため,ベートーヴェンだし,そんなに良いなら聴いてみようと思い入手しました。

結論から言うと,オーディオ品質は確かに高いかもしれませんが,残念ながら私が思うような好録音ではありませんでした。これが優秀録音の受賞ディスクであるという事実に少なからず落胆しております。

オーディオ品質が高いことは認めますが,ホール音響を優先するあまりピアノの音が曇ってしまっています。ピアノ本来の音の輝き,透明さ,ニュアンスが,ホール音響再現の犠牲となって失われてしまっています。完璧に商品化された音であり,演奏者の存在が希薄で身近に感じられません。

ぜひグールドのゴルトベルク変奏曲(1981年録音)や平均律クラヴィーア曲集(1962~1971年録音)と聴き比べてみていただきたい。およそ30年から50年以上も前の古い録音なのでオーディオ品質はもちろん劣ります。しかし,一つ一つの音がクリアで輝いていますし,豊かなニュアンスも十分に感じ取ることができ,演奏者の呼吸も伝わってくる生き生きした音です。

なぜクラシックの録音はこうも楽器本来の美しい音を曇らせようと一所懸命がんばるのか,私には良く理解できないところです。残響の有無が音楽の芸術性にほとんど関係ないということはグールドのディスクで証明済みです。こんなに素晴らしい手本があるのにそれに倣おうとする録音が出てこないのが不思議でなりません。

楽器の持つ本来の美しい音,輝きのある音,ニュアンス豊かな音をありのまま捉えることが最優先ではないのでしょうか。そして,それを維持しながらいかにうまく雰囲気を織り込めるかが次にくると思うのです。この録音はホール音響再現が優先されすぎて本来の美しさが犠牲になっていると思います。オーディオ雑誌ならまだしも音楽雑誌がこういう録音を時代の最先端をいく優秀録音として選んでいるところに失望します。演奏自体は大変素晴らしいと思うので余計にこの録音を悔しく思います。



どういう録音が良いのか,その目指すべきゴールはそれぞれの人の価値観にもよりますので,この録音を優秀録音として評価する方がいてももちろんおかしなことではありません。むしろ,私のように思う人の方が少数派なのでしょう。

しかし,今のクラシック録音はその多様な価値観に基づいた様々な録音が出ているかというと,現状はホール音響再現重視の録音に偏りすぎていると思います。

我々一般人が生の音楽に触れる機会はホールで行われるコンサートという場がほとんどです。このブログでは何度も述べてきたことですが,だからといって音楽を聴く環境としてホールで行われるコンサートがベストかというと,必ずしもそうではないと思うのです。

音楽はもっと身近であっても良いものであり,生の演奏をホールよりもずっと良い音で楽しめる環境はいくらでもあるわけで,そんなベストとは限らないホールの音響をなんでわざわざ自宅で再現しなければならないのか,なんでそんな音響を押しつけられなければならないのか,と,思うわけです。

ホールの音響を家庭で再現するというのも確かに一つの考え方ですが,ホールでも得られないようなもっと素晴らしい音楽体験を目指した録音があっても良いのではないでしょうか(決して奇抜なことをやって欲しいと言っているわけではありません,念のため)。

このホール音響一辺倒のクラシック録音を見直して欲しいという思いで,演奏者の小菅さんにはちょっと悪いなと思いつつ,年間の最優秀に選ばれた録音ということで,あえて少し大げさに辛口でコメントさせていただきました。(といっても私の影響力など微塵もないので,何にも変わらないのだろうな...今までも何にも変わってこなかったし...)

ベートーヴェン:後期弦楽四重奏曲集(弦楽合奏版)(テリエ・トンネセン指揮/カメラータ・ノルディカ)

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ベートーヴェン:後期弦楽四重奏曲集(弦楽合奏版)
テリエ・トンネセン指揮/カメラータ・ノルディカ
2001年~2005年 スウェーデン,ヴィシェルム教会,アルグツルム教会(Op.127)
ALT1024(3) (P)(C)2006 Altara Music (輸入盤)
好録音度:★★★☆~★★★★
参考: Tower RecordsHMV Onlineicon (※リマスター再発盤)
指揮者自身の編曲によるコンチェルト・グロッソ・タイプの編曲ということで,弦楽合奏とソロが混じった編曲になっています。第13番の終楽章は大フーガで,Op.130の終楽章は省略されています。

後期の全曲を弦楽合奏で聴けるのがうれしいのですが,一方で,これらの曲を弦楽合奏で本当に出来るの?と,その仕上がりがイメージ出来なかったのですが,聴いてみて,想像をはるかに超える出来映え,アグレッシヴな快演に驚きました。攻める演奏なのにアンサンブルもほとんど乱れませんし,ソロの入れ方も絶妙で聴き応えがありました。これもややキワモノ的で好みがあるでしょうからなかなか人に薦めづらいところですが,ベートーヴェンの後期弦楽四重奏曲が好きなら一度は聴いてみても良いのではないかと思いました。

録音ですが,やや残響過多で弦楽器の音色に精彩がないのが気に入りませんが,とはいえ,それなりに音の厚みと弦楽合奏としての質感は良く,何とかぎりぎり鑑賞には堪えるかなと思います。出来は少しばらつきがあり,Op.130, 133が比較的音に透明感があって良く,Op.135は残響が多すぎてあまり良くありません。

しばらく廃盤のようでしたが,もうすぐBISからリマスター盤として再発売されるようです。リマスター盤,聴いてみたいけど買い直すほどでもないかな...でも気になるなぁ...でも残響が多くて好録音の少ないBISだしなぁ...

ベートーヴェン:弦楽四重奏曲作品18-3, 74, 135(イザイ四重奏団)

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ベートーヴェン:弦楽四重奏曲作品18-3, 74, 135
イザイ四重奏団 Quatuor Ysaÿe
2008年3月-4月 パリ,オルセー美術館オーディトリウム
YR510 (P)2008 (C)2012 YSAŸE RECORDS (輸入盤)
好録音度:★★★☆
参考: Tower RecordsAmazon.co.jpHMV Onlineicon
ライヴ録音で演奏後の拍手も収録されています。ライヴならではの気迫のこもった,そして,勢いのあるキレの良い演奏が素晴らしいです。今のところベートーヴェンはこのディスクしかないようなのですが,他の曲も聴いてみたくなります。

録音なのですが,残響はほとんどなく,それぞれの楽器を適度な距離感で明瞭に捉えていて,この点ではすごく良いと思うのですが,なぜか弱音も含めて歪みっぽく締め付けられるような感じがします。リニアリティが悪いのでしょうか,何となく濁っていて音に伸びもなく,この点で印象が悪くなっています。生々しくリアリティのある良い音の捉え方をしているだけに,このオーディオ品質の悪さは残念です。

このシリーズが続くならぜひ録音機材を見直して欲しいと思います。このクオリティではせっかくの素晴らしい演奏がもったいないことになってしまいます。

R. シュトラウス:アルプス交響曲(ダニエル・ハーディング指揮/サイトウ・キネン・オーケストラ)

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R. シュトラウス:アルプス交響曲
ダニエル・ハーディング指揮/サイトウ・キネン・オーケストラ
2012年8月23,25日 キッセイ文化ホール(長野県松本文化会館)
DECCA UCCD-1380 (P)2013 Saito Kinen Festival (国内盤)
好録音度:★★★★~★★★★☆
参考: Tower RecordsAmazon.co.jpHMV Onlineicon
いくつかのレビュー記事を読んで,演奏の評判まもちろんのこと,録音の評価も高かったので気になっていました。輸入盤を待っていたのですが,いつまで経っても出ないのでしびれを切らして入手しました(入手した途端に輸入盤の案内が...)。

その録音ですが,ライヴ録音としてかなり自然で,ホールトーンも抑えられて音色に変な色づけもありません。低域から高域までバランス良く,締まりがあるのも良い点です。こういう広いダイナミックレンジを要求されるような曲でありながら,平均レベルを少し高めになるように録られているので聴きやすいのも私としては良いと思う点です。オーディオ的なクオリティも高く全く問題ありません。

しかし,あまりにも全体がまとまりすぎているというか,溶け合いすぎて,個々の楽器の分離感がなく質感が希薄で今ひとつ感じられないのが不満です。私にはワンポイント的なサウンドに聴こえ,これを好ましく感じる方もいらっしゃると思いますが,手が届きそうで届かないようなもどかしさがあります。ホールの後ろの方の席で聴いている感じとでも言いましょうか。

これは「優秀録音かもしれないが,好録音とはちょっと違う」録音の一例と言えるかもしれません。もう少し聴き込んで私の不満の正体を見極めておきたいところです。(評価は変わるかもしれません)

Androidの音楽プレーヤWinamp Proが公開終了!!

MP3やApple Losslessでギャップレス再生ができたAndroid版のWinamp Proの公開が残念ながら終了したようです。11月の下旬に12月20日をもって公開終了する旨の報道がありましたが,Android版も予告通り終了しているようです。

確認してみたところ,Androidの無料版のWinampはまだ公開が継続されていますが,Proの方は姿を消しました。通常版はApple Losslessも再生できないし,ギャップレス再生も出来ませんので,私としては価値がありません。Google Playで購入したアカウント上では,Google Playアプリの「すべてのアプリ」上に出てきますので,今のところ新機種に乗り換えても同じアカウントを使う限りはProが再ダウンロード出来るようです。この状況がいつまで続くのかわかりませんが,しばらくは使い続けられそうです。でもそろそろ次につかうプレーヤソフト候補を探し始めようかとも思っているところです。

開発元のNullsoftをMicrosoftが買収するため親会社のAOLと交渉しているという話もあるようですが,何らかの形で復活して欲しいものです。

バッハ:ヴァイオリンとピアノのための6つのソナタ(ミシェル・マカルスキ(Vn)/キース・ジャレット(P))

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バッハ:ヴァイオリンとピアノのための6つのソナタ
ミシェル・マカルスキ(Violin)/キース・ジャレット(Piano)
Recorded November 2010 at American Academy of Arts and Letters, New York
ECM 2230/31 (P)(C)2013 ECM Records (輸入盤)
好録音度:★★★★
参考: Tower RecordsAmazon.co.jpHMV Onlineicon
モダン楽器で録音されることが少なくなってしまった曲なので,大いに期待して聴きました。穏やかで気品溢れる香り高い演奏とでも言いましょうか,控えめながらニュアンスに富んだ演奏を聴かせてくれます。ピリオドに傾いているとは思いませんが,やはり意識の底にはそれがあるのか,バロック曲の演奏としては真っ当すぎるくらい真っ当ではないかと思いました。モダン楽器の特長を生かした時代の先端を走るモダンな演奏(っていったいどんなんだ?(^^;)を期待していた私としては少し肩すかしを食らった感じです。もちろんこれはこれで優れた演奏だと思うのですが,モダン楽器であるというところに過剰に期待を持ってしまったせいかもしれません。

録音ですが,控えめに残響を美しく取り入れているのはまあ良いとして,ややピアノが大きく(音像も大きい)ヴァイオリンが細くひ弱に聴こえます。バランスとしてもう少しヴァイオリンを大きめに質感を強めに出し,ピアノをもっとすっきりと録って欲しかったと思います。私にはヴァイオリンがだいぶ力負けしてしまっているように感じられます。そこを録音でもう少しカバーしても良かったのではないかと思います。ECMの録音は私の好みとは少し違うようです。

ベートーヴェン:弦楽四重奏曲全集(上海クァルテット)

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ベートーヴェン:弦楽四重奏曲作品18-1,18-2,18-3
2005年11月8日~10日 岩舟町コスモス・ホール(栃木)
CMCD-28111 (P)2005 (C)2006 CAMERATA TOKYO (国内盤)
好録音度:★★★★
参考: Tower RecordsAmazon.co.jpHMV Onlineicon
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ベートーヴェン:弦楽四重奏曲作品18-4,18-5,18-6
2006年11月11日~13日 草津音楽の森国際コンサートホール(群馬)
CMCD-28138 (P)2006 (C)2007 CAMERATA TOKYO (国内盤)
好録音度:★★★★
参考: Tower RecordsAmazon.co.jpHMV Onlineicon
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ベートーヴェン:弦楽四重奏曲作品59-1「ラズモフスキー第1番」
ベートーヴェン:弦楽四重奏曲作品59-3「ラズモフスキー第3番」
2008年10月8日~10日 草津音楽の森国際コンサートホール(群馬)
CMCD-28169 (P)2008 (C)2009 CAMERATA TOKYO (国内盤)
好録音度:★★★★
参考: Tower RecordsAmazon.co.jpHMV Onlineicon
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ベートーヴェン:弦楽四重奏曲作品59-2「ラズモフスキー第2番」
ベートーヴェン:弦楽四重奏曲作品74「ハープ」
2007年12月4日~6日 花かげホール(山梨)
CMCD-28159 (P)2007 (C)2008 CAMERATA TOKYO (国内盤)
好録音度:★★★★
参考: Tower RecordsHMV Onlineicon
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ベートーヴェン:弦楽四重奏曲作品127,131
2007年2月24日~28日 スタジオ・バウムガルテン(ウィーン)
CMCD-28159 (P)2007 (C)2007 CAMERATA TOKYO (国内盤)
好録音度:★★★★
参考: Tower RecordsAmazon.co.jpHMV Onlineicon
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ベートーヴェン:弦楽四重奏曲作品95「セリオーソ」
ベートーヴェン:弦楽四重奏曲作品130,133, 132,135
2009年11月25日~28日 草津音楽の森国際コンサートホール(群馬)
2008年6月9日~13日 スタジオ・バウムガルテン(ウィーン)
CMCD-20105-6 (P)2008,09 (C)2010 CAMERATA TOKYO (国内盤)
好録音度:★★★★
参考: Tower RecordsAmazon.co.jpHMV Onlineicon
上海クァルテット Shanghai Quartet

どちらかといえば旧来からのオーソドックスなスタイルで,刺激的な特徴のある演奏ではありませんが,引き締まった充実感のある演奏であると言えます。技術的にも上手いですし,アンサンブルも良いと思います。

録音ですが,数年にわたっていろんな会場で録音されていますが,驚くほど統一感があります。残響も取り入れられていますが,楽器音を直接音主体に濃いめに捉えているため,残響はあまり気になりません。残響は音場感にはあまり寄与せずどちらかといえば演出色を強める方に出てしまっているようで,私としてはあまり好ましいとは思わないのですが,なんとか許容範囲です。濃いめに捉えている効果で,ポータブルプレーヤで移動中に聴くようなあまり聴取状態が良くない場合でも十分楽しめました。この点では良い録音と言えると思います。

バッハ:無伴奏ヴァイオリンのためのソナタとパルティータ全曲(ルカ・ファンフォーニ)

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バッハ:無伴奏ヴァイオリンのためのソナタとパルティータ全曲
ルカ・ファンフォーニ Luca Fanfoni (Violin)
Chiesa di Sant' Andrea, San Paolo di Torrile, Italy, May 2011
CDS 758/1-2 (C)2013 DYNAMIC (輸入盤)
好録音度:★★★☆
参考: amazon.co.uk
CD試聴記」からの転載記事です。

弓運びが鋭く思い切りのよい弾きっぷりが見事で痛快です。 やや荒っぽく聴こえるところもありますが,雑に弾いているわけではなく, そういう表現なんだと思うと気になりません。 最近バッハの無伴奏をこういう風に弾く人が少なくなりました。

録音: 残響が多めで直接音よりも残響の方がやや勝っていて音色を汚しています。 音が曇っている訳ではないのでそれほど悪くはないと思いますが, 残響があまり功を奏しておらずすっきりとしません。 オーディオ的にも可もなく不可もなしといったところです。

ファンフォーニ氏はイタリアのヴァイオリニスト。公式Webサイトで試聴が出来ます。日本にはまだあまりディスクが入ってきていないようです。

ハイドン:チェロ協奏曲第1番,第2番,他(ジャン=ギアン・ケラス/ペトラ・ミュレヤンス指揮/フライブルク・バロック・オーケストラ)

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ハイドン:チェロ協奏曲第1番,第2番,モン:チェロ協奏曲
ジャン=ギアン・ケラス Jean-Guihen Queyras (Cello)
ペトラ・ミュレヤンス指揮/フライブルク・バロック・オーケストラ
録音 2003年3月
HMC 901816 (P)2004 harmonia mundi s.a. (輸入盤)
好録音度:★★★★☆
参考: Tower RecordsAmazon.co.jpHMV Onlineicon
HMV Onlineiconの紹介文に書かれている「とにかく熱い,怒涛のハイドン」は,そのまま同意します。しかも,決して荒れないし,張りのある音色はひたすら美しい,驚異的な演奏だ(ちょっと大げさか(^^;)。好みは分かれると思いますが,躍動感溢れるこの演奏は大好きです。理屈抜きに楽しいです。唯一残念なのはオーケストラがモダンではなくバロックなことですかね,やっぱり(^^;。

録音ですが,チェロの音はかなり鮮明に録られていますが,オーケストラはかなり響きが多く,音色に曇りはなく鮮度も感じられるものの,やや喧しく煩く響きます。オーディオ的にはかなり良いと思いますし,響きが許せる方には優秀録音かもしれないと思いつつも,やっぱり好録音とはちょっと違うよなぁ思うのです。でもオマケで四つ星半を付けちゃいます。

それにしてもケラスのチェロは本当に素晴らしいですねぇ。

ショパン:練習曲集(蔵島由貴)

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ショパン:練習曲集
蔵島由貴 Yuki Kurashima (Piano)
2013年3月6-8日 埼玉・三芳町文化会館(コピスみよし)
TRITON OVCT-00097 (P)(C)Octavia Records Inc. (国内盤)
好録音度:★★★★
参考: Tower RecordsAmazon.co.jpHMV Onlineicon
練習曲集作品10,作品25および3つの新しい練習曲を収録しています。曲を変にいじくり回すことなく極めて真摯に素直に,そして力強く堂々と表現されていると思います。テクニックも万全で不安は全くありません。どこかポリーニの演奏に通ずるところがあるように思います(私だけでしょうか?)。そういうこともあって,この演奏はとてもすんなりと耳に入ってきます。久しぶりに私好みの演奏に出会いました。

録音ですが,残響感はほとんどなくピアノの音を真正面からしっかりと捉えていてパッと聴いた感じではまずまずの印象なのですが,実はホールトーンが結構乗っていて音色がくすみ,ぼやけて透明感と輝きを失い,ガチャガチャとうるさい音色になってしまっているように感じます。おそらく制作者としては狙い通りで,客観的には決して悪い録音ではないとは思うのですが,私の聴きたいピアノの音,好録音とは少し方向性が違っています。演奏が素晴らしいだけに私としてはちょっと残念です。

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バッハ:無伴奏ヴァイオリンのためのソナタとパルティータ全曲(シルッカ=リーサ・カーキネン=ピルク)

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バッハ:無伴奏ヴァイオリンのためのソナタとパルティータ全曲
シルッカ=リーサ・カーキネン=ピルク Sirkka-Liisa Kaakinen-Pilch
Karjaa Church, Finland, October & November 2012, January & March 2013
ODE 1241-2D (P)(C)2013 Ondine Oy, Helsinki (輸入盤)
好録音度:★★★★
参考: HMV OnlineiconAmazon.co.jpTower Records
CD試聴記」からの転載記事です。

バロック・ヴァイオリンによる演奏。 アタックを抑え気味にしあと押しするように音をふくらませ響かせる独特の弾き方や, 緩急を細やかに付けてリズムを微妙に崩しながら表情を付けていくところなど,バロック・ヴァイオリンらしさを感じさせます。 重音でもこのような弾き方をするためブレーキがかかってリズムが大きく崩れるのが少し引っかかるのですが, 音符に逆らわず自然な流れの中で行われているので慣れれば心地よさに変わってきます。 音色も美しく技術的にも優れています。

録音ですが,残響は多めで残響時間も長いのですが,直接音と残響の分離が比較的に良く, 音の曇りも少ないため,印象は悪くありません。 楽器の質感もまずまず感じられます。 しかし,高域成分は豊富なものの,やはり残響の影響はあってスカッと伸びているという感じではないのが少し残念に思います。 オーディオ品質は良好です。

エルガー:交響曲全集(コリン・デイヴィス指揮/ロンドン交響楽団)

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エルガー:交響曲第1番変イ長調作品55
エルガー:交響曲第2番変ホ長調作品63
エルガー:交響曲第3番ハ短調(ペイン補筆)
コリン・デイヴィス指揮/ロンドン交響楽団
録音 2001年9月~12月 Barbican, London
LSO0072 (P)(C)2002 London Symphony Orchestra (輸入盤)
好録音度:★★★★☆
参考: HMV OnlineiconAmazon.co.jpTower Records
ドヴォルザークの交響曲第8番の録音が良かったコリン・デイヴィス指揮/ロンドン交響楽団のLSO Liveによるエルガーの交響曲全集。第3番は,残されたスケッチからアンソニー・ペインが補筆完成させたものということです。

エルガーの交響曲は他にディスクを持っているのですが,何となくつかみ所が見つけられず何度聴いても馴染めなかったのですが,もしかして録音が良ければ聴けるんじゃないかと思って聴いてみました。

その録音ですが,想定通り,私の好きなタイプの残響控えめの生録的でキレの良い録音です。少しドライすぎると思われる方もいるでしょう。私としては期待通りといえばその通りなのですが,前述のドヴォルザーク:交響曲第8番と比べるとやや精彩に欠ける感じがします。スケールの大きな曲で演奏もそのスケールに合わせて最大音量が大きく,相対的に平均レベルが下がってしまっているようで,そのためかもしれません。惜しいです。

で,聴いてみた結果...やっぱりつかみ所がなくまだ馴染めていません(^^;。

ジェニファー・ウォーンズの優秀録音ディスク「ザ・ハンター」のエディション違いを比較する

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ザ・ハンター The Hunter
ジェニファー・ウォーンズ Jennifer Warnes
BVCP-203 (P)1992 Private Music/BMGビクター (国内盤)
好録音度:★★★★☆
参考: HMV OnlineiconAmazon.co.jpTower Records
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The Hunter [K2 HD Mastering CD]
ジェニファー・ウォーンズ Jennifer Warnes
88883734802 (P)1992 Private Inc. (C)2013 Sony Music (輸入盤)
好録音度:★★★★☆
参考: HMV OnlineiconAmazon.co.jpTower Records
※韓国盤(日本製)
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The Hunter [24K GOLD SPECIAL EDITION]
ジェニファー・ウォーンズ Jennifer Warnes
IMP8303 (P)1992 Sony Music (C)2010 Impex Records (輸入盤)
好録音度:★★★★☆
参考: Amazon.co.jpTower Records
※米国盤?
言わずとしれた優秀録音の名盤中の名盤,私も試聴によく使用するディスクですが,ずっと発売当初に買った国内盤を聴いていました。少し前に“24K GOLD SPECIAL EDITION”というのがあることに気がつき,気になっていたもののなかなか手が出せずにいたのですが,やっぱり聴いてみようということで,やっと手に入れて比べてみました。さらに,“K2 HD Mastering CD”なるエディションがつい最近発売されていることもわかり,ここまできたらこれも比較するしかない(^^;と思い,手に入れました。ガラスCDもあるようなのですが,12万円もするので,さすがにこれは諦めました。あと,SHM-CDもあったようですが,限定盤で現在は入手困難なため比較していません。

試聴してみて鈍感な私の耳でも明らかな違いがあったため,盤質の影響を避けるため,ロスレスでリッピングした後に再度試聴して,それでも違いがあることがわかりました。

そこで,波形を比較してみました。図1は,1曲目の“Rock You Gently”の最初の1分30秒ほどの波形を表示したものです。上から,通常盤,K2 HD Mastering CD,24K GOLDです。こんな荒っぽい表示でも明らかにデータレベルで異なることがわかります。

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図1 1曲目“Rock You Gently”冒頭1分30秒の波形比較
(上)通常版 / (中)K2 HD Mastering CD / (下)24K GOLD


次に,周波数成分を比較してみました。図2は,同じく1曲目の“Rock You Gently”の1曲をWaveSpectraというソフトで再生してFFTのピーク値のエンベロープを描かしたものです。黄緑が通常盤,青が24K GOLD,赤がK2 HD Mastering CDです。この順番に少しずつレベルが上がっていること,K2 HD Mastering CDは低域が少し強調されている,といった違いが見られます。

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図2 1曲目“Rock You Gently” FFTピーク値のエンベロープ比較
(黄緑)通常版 / (青)24K GOLD / (赤)K2 HD Mastering CD


上記の図と聴感はほぼ一致します。鮮明度の向上は,24K GOLDとK2 HD Mastering CDとだいたい同じくらいに感じました。低域の量感もK2 HD Mastering CDが豊かになっているように感じられました。

しかし,もっと決定的な違いがあることに気がつきました! 24K GOLDの“Rock You Gently”のイントロ部分をよく聴くと,通常盤およびK2 HD Mastering CDには含まれないコーラスがうっすらと入っているのです! ミキシングからして変わっているようなのです。さらに,他の曲を調べてみると,24K GOLDは,波形の極性が反転しているものがあるのです。つまり,本来はスピーカの振動板が前に出るところが引っ込むというような逆の動きになるのです。人間の耳はこういう位相の違いには鈍感なので聴感上の違和感はないのですが,いったいどんなマスタリングをしたんだ?と気になってしまいます。

ということで,24K GOLDはちょっと別物だぞ,と思った方が良さそうです。波形を見た限りではK2 HD Mastering CDの方は,通常盤の波形と異なるとはいえ近い波形に見えましたので,そのまま素直にリマスタリングしたように思えます。どちらが良いかは考え方次第だと思いますが,私としては気分的にK2 HD Mastering CDの方が安心できます。

24K GOLDをお持ちの方は一度じっくりと比較して「間違い探し?」をしてみてはいかがでしょうか(^^;。

あと,どうでも良いことですが,K2 HD Mastering CDはデジパックのケースに4桁のシリアルNo.らしきものが打ってあります。私の番号はNo. 0524でした。

ベートーヴェン:交響曲全集(ベルナルト・ハイティンク指揮/ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団)

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ベートーヴェン:交響曲全集
ベルナルト・ハイティンク指揮
ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団
1974~1976年 Watford Town Hall, Watford, United Kingdom
DN0027 DECCA (輸入盤) 2013年発売 Universal Korea
好録音度:★★★★
参考: HMV OnlineiconAmazon.co.jpTower Records
大オーケストラをドライヴする重厚かつ引き締まった,そして品格も備えた完成度の高い全集だと思います。1970年代を象徴するかのような揺るぎのない堂々とした立派な演奏に心が揺さぶられます。第1楽章の提示部の省略が多いのが残念ですが,これもこの時代を感じさせる一つと思えば許せます(もちろん残念には思いますが)。

録音ですが,濃厚でコクのあるサウンドで,残響感が多めで低域に向かってピラミッドのような低域重視の音作りが独特ですが,弦楽器が主体でまとまりのある音で録られていて曇った感じも少ないので,全体の印象は悪くありません。私の好きな音作りとはだいぶ違うので好録音とは言えないのですが,まるでアナログ写真のような独特の質感がなかなか良く,優秀録音と受け取る方がおられても不思議ではないです。録音も1970年代のアナログ録音の代表格と言えるかもしれません。

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ハイドン:弦楽四重奏曲作品76「エルデーディ四重奏曲」(ジョヴァンヌ・クァルテット・イタリアーノ)

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ハイドン:弦楽四重奏曲作品76「エルデーディ四重奏曲」
ジョヴァンヌ・クァルテット・イタリアーノ Giovane Quartetto Italiano
1990年 ミラノ
(P)1995 Claves ※iTunes Music Storeにてダウンロード購入
好録音度:★★★★★
参考: Amazon.co.jpAmazon.co.jp(MP3)
いつも参考にさせていただいている「ハイドン音盤倉庫」で知ったディスクです。有り難うございます。このブログで絶賛されていましたのでiTunes Music Storeで試聴してみたところ,演奏も良さそうだったのですが,録音も良さそうだったので,ダウンロード購入しました。本当はオリジナルのディスクを入手したかったのですが,Amazon.co.jpでは少し高価であり,その他で見つけられなかったので...

演奏に関してはハイドン音盤倉庫で述べられているとおりです。伸びやかで明るく溌剌とした演奏がハイドンにピッタリと合っています。技術的にもしっかりしています。

そして録音ですが,オンマイクで極めて明瞭に各楽器を捉えています。オンマイクといっても適切な距離感があり,ドライになりすぎない程度に控えめに響きが取り入れられています。若干中域に癖を感じるものの,自然さを失うほどではありません。オーディオ的観点からは少し不満が残るかもしれないので優秀録音とは言いませんが,間違いなく好録音です。

この弦楽四重奏団は,Giovane Quartetto Italiano から Nuovo Quartetto Italiano と楽団名が変わっているようです。ハイドン音盤倉庫のコメントでもあるように「若手イタリア四重奏団」から「新イタリア四重奏団」となったというところでしょうか。このハイドンは,配信はあるものの,ディスクは現役盤ではないようです。演奏も録音も良いので残念です。

なお,iTunes Music Storeで購入したものはAAC 256kbpsでエンコードされたものでDRMフリーでした。価格は\1,800です。