バッハ:無伴奏チェロ組曲全曲(ニーナ・コトワ)

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バッハ:無伴奏チェロ組曲全曲
ニーナ・コトワ Nina Kotova (Cello)
Purchase College Performing Arts Recital Hall (録音時期記載なし)
0825646394111 (P)2014 Nina Kotova (C)2014 Warner Classics (輸入盤)
好録音度:★★★★
参考: Tower RecordsAmazon.co.jpHMV Onlineicon
CD試聴記」からの転載記事です。

ジャケット写真の容姿からは想像できない力強さで大胆に表情を刻み込んでいく演奏です。 ガリガリと弾くタイプなので音色は荒れ気味で美しくありませんが,この無骨で太く力強い弾きっぷりは独特の魅力を放っています。 技術的には粗削りで隅々までコントロールが行き届いているとはとても言えませんが, これだけ積極果敢に攻める演奏でほとんど破綻をきたしていないのは立派です。

録音ですが,この太い音色はこの録音によるところも大きいと思います。 残響はやや多めですが,比較的オンマイクでボディ感たっぷりに録音しているため悪い印象ではありません。 ただ,やや飽和気味で歪みっぽいのが残念なところです。

タグ: [器楽曲]  [チェロ] 

ベートーヴェン:ヴァイオリン協奏曲,バッハ:無伴奏ヴァイオリンのためのパルティータ第2番(ヴォルフガング・シュナイダーハン(Vn)/オイゲン・ヨッフム指揮/ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団)

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ベートーヴェン:ヴァイオリン協奏曲ニ長調作品61(*)
バッハ:無伴奏ヴァイオリンのためのパルティータ第2番
ヴォルフガング・シュナイダーハン Wolfgang Schneiderhan (Violin)
オイゲン・ヨッフム指揮/ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
1959年4月29-30日 ベルリン イエス・キリスト教会(*)
1955年1月12-15日 ウィーン コンツェルトハウス・モーツァルトザール
PROC-1444 (P)1955,1959 Deutsche Grammophon (輸入盤)
Tower Records Vintage Collection +plus Vol.18 タワーレコード企画盤
好録音度:★★★★☆(*),★★★☆
参考: Tower Records

ここではベートーヴェンの協奏曲のみコメントします。

解説書によると,シュナイダーハンとヨッフムの顔合わせによるベートーヴェンの協奏曲は1962年録音のものが有名だが,これはその3年前に同じ顔合わせで録音されたもので,1959年8月にドイツで発売されて以来の初めての復刻ということです。カデンツァはベートーヴェン自身がピアノ協奏曲に編曲した際に書いたものをシュナイダーハン自身が編曲したものだそうです。演奏自体の素晴らしさに加えて,このカデンツァも聴き応えがあります。

このベートーヴェンは1959年の録音ですが最初期のステレオ録音とのことです。しかしこの録音には驚きました。ソロのヴァイオリンの音色がものすごく魅力的なのです。わずかに残響を伴っていますが楽器音への影響はほとんどなく,極めて明瞭で,極めてヌケの良い,まるですぐ近くで私のために弾いてくれているような音なのです。こんなに気持ちよくヴァイオリンの音色を楽しめる録音に出会ったのは久しぶりです。

オーディオ的には音が痩せ気味で中低域の厚みが不足し,粗さもありますが,1950年代という50年以上前の録音であるということを考えると十分に良好ですし,鑑賞に問題はありません。ただしこれはソロだけで,オーケストラの方は並で特筆すべきところはあまりありません。また,ホールで聴くような自然な音響では全くありませんのでこの点はご留意ください。

しかし! この録音には重大な問題があります。カデンツァになると,それまでの気持ちよい音色が一変して曇ってしまうので,おかしいと思って良く聴き直してみると,どうもカデンツァの部分だけ人工的に残響が加えられ,疑似ステレオ処理が強めにかけられているようなのです。当時制作されたマスターテープ自体にこのような処理が加えられてしまっていたのかは不明ですが,演奏家および音楽愛好家をナメた非常に頭にくる加工です(怒)。せっかくの透明感ある美音が台無しです。こういうことは本当にやめていただきたい。もし今回の復刻で手が加えられたのなら,無加工のもので出し直して欲しいものです。

なお,ステレオ録音との記載がありますが,確かに左右の音が若干異なるのですが,WaveSpectraというソフトでリサジュー波形を見る限りほぼモノラルに近いです。カデンツァの部分は左右の相関が明らかに低くなるのがリサジュー波形でもはっきりわかりますので,手が加えられているのは明白です。

こういう貴重な音源の復刻に力をいれているタワーレコードには本当に感謝するのですが,復刻の内容にも気を配っていただきたいと思います。

ベートーヴェン:ヴァイオリン協奏曲,ピアノ協奏曲第5番「皇帝」(ヴェラ・ベス(Vn)/ヨス・ファン・インマーゼル(Pf)/ブルーノ・ヴァイル指揮/ターフェルムシーク・バロック管弦楽団)

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ベートーヴェン:ヴァイオリン協奏曲ニ長調作品61
ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第5番変ホ長調作品73「皇帝」
ヴェラ・ベス(Violin),ヨス・ファン・インマゼール(Fortepiano)
ブルーノ・ヴァイル指揮/ターフェルムシーク・バロック管弦楽団
Kursaal, Bad Tolz, Germany, September 8-10, 1997
SK 63365 (P)(C)1998 Sony Music Entertainment Inc. (輸入盤)
好録音度:★★★★
参考(全集盤): Tower RecordsAmazon.co.jpHMV Onlineicon

ピリオド楽器が好きな方にはたまらない演奏なのかもしれません。しかし,私が苦手とするピリオド楽器演奏の典型例とも言えます。ノンビブラートの音色は澄んでいて美しいのですが弦楽器としての魅力が薄いですし,オーケストラは勢いと推進力には溢れますが,リズムが切り立ちすぎでガチャガチャとうるさく感じられます。ヴァイオリンのソロは強拍以外ののばす音や細かいパッセージが弱々しく聴き取りづらくもどかしいです。苦手なら聴くなよ!と言われればその通り! 失礼しました。

録音ですが,やや遠目の音像で間接音が主体,響きの被りが気になりますが,ピリオド楽器特有の透明感は何とか感じられます。ただ,楽器の質感が掴みづらく現実感が希薄です。直接音主体でもう少し各楽器の質感を強めに出してくれると良いのですが。

このディスクは1枚ものとしては廃盤ですが,ピアノ協奏曲全集を含む限定盤ボックスセットとして最近復刻されたようです。まだ入手可能ですね。

ブラームス:交響曲全集,他(エルネスト・アンセルメ指揮/スイス・ロマンド管弦楽団)

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ブラームス:交響曲全集,他
エルネスト・アンセルメ指揮/スイス・ロマンド管弦楽団
Victoria Hall, Geneva, Switzerland, Gebruary 1963 (Symphonies, Haydn Variations, Overtures), October 1965 (Rhapsody), June 1966 (Nanie, German Requiem)
480 0448 (P)1963,1967 Decca Music Group (輸入盤)
好録音度:★★★★
参考: Tower RecordsAmazon.co.jpHMV Onlineicon

交響曲の他に,ハイドンの主題による変奏曲作品56a,悲劇的序曲作品81,大学祝典序曲作品80,悲歌作品82,アルト・ラプソディ作品53,ドイツ・レクイエム作品45が収録されています。

アンセルメとスイス・ロマンド管弦楽団によるブラームス,というのがほとんどイメージできなかったのですが,これは正統派の引き締まった,そして推進力のある雄壮な演奏でした。ただ,所々で木管の響きに違和感を覚えるのはオーボエのせいでしょうか? あと,第1番第1楽章のリピート省略が極めて残念です。

録音も当時のデッカらしい明瞭で分離が良く見通しの良いもので,この演奏の価値を高めるのに貢献していると思います。残響が抑えられていて,弦楽器を中心に全体のサウンドが構成されているのが良いと思います。およそ50年前の古い録音なのでオーディオ的な品質は現代のもからは劣りますが,それでも鑑賞には全く問題ありません。

期待を大きく越える素晴らしい全集でした。

第1番 12:38/8:47/4:48/16:28 提示部リピート省略
第2番 19:37/9:49/5:11/9:10 提示部リピートあり
第3番 11:51/7:42/6:06/8:39 提示部リピートあり
第4番 11:43/11:20/6:26/9:40

タグ: [交響曲] 

ベートーヴェン,ブラームス:ヴァイオリン協奏曲(アーロン・ローザンド(Vn)/デリック・イノウエ指揮/モンテカルロ・フィルハーモニー管弦楽団)

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ベートーヴェン:ヴァイオリン協奏曲ニ長調作品61
ブラームス:ヴァイオリン協奏曲ニ長調作品77
アーロン・ローザンド Aaron Rosand (Violin)
デリック・イノウエ指揮/モンテカルロ・フィルハーモニー管弦楽団
Recorded in May, 1998, Salle Garnier, Monte Carlo
VXP 7902 (P)(C)1998 Vox Music Group (輸入盤)
好録音度:★★★★☆
参考: Tower RecordsAmazon.co.jp

私にとってローザンド氏は愛すべきB級ヴァイオリニストの代表格なのですが(ゴメンナサイ...でも良い意味にとって欲しい(^^;),この演奏でもその期待を裏切りません。非常に明快でネアカなベートーヴェンとブラームス。彼だからこそ出来るとても楽しい演奏,いいですねぇ。オーケストラもそれに呼応するように元気があってとてもよろしい。思わずニヤニヤしながら聴いてしまいます。ベートーヴェンのカデンツァはハイフェッツによるもので,これも聴きものです。

録音ですが,ソロもオーケストラも残響を抑えて明瞭に捉えられていてますし,ソロが浮き出るように少しフォーカスされているので,協奏曲として聴きやすい録音です。自然さにはかけるかもしれませんが,私の好きな録音です。オーディオ的なクオリティは標準的ですが,もう少し高域の伸びがあると良かったとは思います。

ベートーヴェン,メンデルスゾーン:ヴァイオリン協奏曲(ローラ・ボベスコ(Vn)/エドガール・ドヌー指揮/ベルギー国立放送新交響楽団)

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ベートーヴェン:ヴァイオリン協奏曲ニ長調作品61
メンデルスゾーン:ヴァイオリン協奏曲ホ短調
ローラ・ボベスコ Lola Bobesco (Violin)
エドガール・ドヌー指揮/ベルギー国立放送新交響楽団
録音不明
DOM 2910 501X (P)(C)1982/1995 Classic Talent (輸入盤)
好録音度:★★★★
参考: Tower RecordsAmazon.co.jp

ヴァイオリンという楽器の魅力がたっぷりと詰まった演奏ですね。ブラームスのヴァイオリン・ソナタでもその香り高さが素晴らしかったのですが,この演奏でもそれに通じる色香が感じられます。この人の熱烈な支持者の方が結構いらっしゃるというのも頷けます。こういった魅力的な音色を持った演奏家が昨今すっかりいなくなってしまったように思うのは私だけでしょうか。

録音ですが,ソロは若干残響の影響が多く出て私の好みではありませんが,それでも魅力的な音を十分に堪能できるという点で,この録音はまずまず良好ということが出来るかもしれません。むしろオーケストラの方が残響が抑え気味で締まった音響で録音されていて好感が持てます。ソロがもう少しすっきりと録音されていたら言うことはなかったのですが。

このディスクも現在は入手性が良くないのが残念です。

ベートーヴェン:ヴァイオリン協奏曲(オスカー・シュムスキー(Vn)/アンドリュー・デイヴィス指揮/フィルハーモニア管弦楽団)

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ベートーヴェン:ヴァイオリン協奏曲ニ長調作品61
ベートーヴェン:ロマンスヘ長調作品50
オスカー・シュムスキー Oscar Shumsky (Violin)
アンドリュー・デイヴィス指揮/フィルハーモニア管弦楽団
St. Peter's Church, Morden. January 1988.
OS6080 (C)1992 Academy Sound and Vision (輸入盤)
好録音度:★★★★
参考: Tower RecordsAmazon.co.jp

シュムスキーというヴァイオリニストはつくづく不器用なヴァイオリニストだと思ってしまうのですが,不器用であるが故に彼はより真摯に曲に向き合い,愚直に演奏をしてきたのだろうと思います。それが聴く者の心を捉えるのでしょう。このベートーヴェンを聴いて一層強くそう思うようになりました。そういう彼の持ち味が生かされた良い演奏だと思います。

録音は協奏曲としてはごく標準的です。残響もあり楽器音に被って少し音色を損なっていてすっきりしないところはあります。悪くはありませんが良くもない,少し半端な感じのする録音です。一応許容範囲ですが。

この録音は現在は少し入手しづらいようです。今年1月に発売されたシュムスキー・ボックスには残念ながら含まれていませんでした。


いつもお世話になっている読者の方から,録音年月を教えていただきました。有り難うございました。(2014/7/16)

ブラームス:交響曲全集,他(イシュトヴァン・ケルテス指揮/ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団)

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ブラームス:交響曲全集
ブラームス:セレナーデ第1番,第2番(*)
イシュトヴァン・ケルテス指揮
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団,ロンドン交響楽団(*)
Sofiensaal, Vienna, 1964(Symphony No.2), 1972(No.4), 1973(No.1 & 3), Kingsway Hall, London, 1967(Serenade No.1 & 2)
480 4839 (C)2012 Universal Music Australia (輸入盤)
好録音度:★★★★
参考: Tower RecordsAmazon.co.jpHMV Onlineicon

上記の他に,ハイドンの主題による変奏曲が収められています。ケルテス氏はこの一連の全集録音の終盤で事故で亡くなられ,このハイドンの主題による変奏曲のフィナーレの部分が録音されずに残っていたところを,ウィーン・フィルの団員が指揮者なしで録音して仕上げたということです。

正統派の演奏だと思いますが,重厚な響きを求める演奏ではなく,どちらかといえばストイックに曲の造形美を追求するような演奏ではないかと思います。その結果,よく引き締まった明快で見通しの良い音楽に仕上がっています。こういう演奏は好きですね。

録音ですが,交響曲第2番だけがやや古く,クオリティで少し劣る面はあるものの,録音の統一感は取れていて違和感はほとんどありません。残響も控えめで,各楽器をクリアに分離良く捉えています。この当時のDECCAのアナログ録音の風合いが良く出ている好ましい録音だと思います。私としてはもう少し生々しさを残して欲しかったとは思いますが。

第1番 16:07/9:06/4:47/16:43 提示部リピートあり
第2番 20:05/10:05/4:55/9:18 提示部リピートあり
第3番 13:28/8:46/6:03/8:59 提示部リピートあり
第4番 12:29/11:56/6:11/10:07

タグ: [交響曲] 

バッハ:無伴奏チェロ組曲全曲(パブロ・カザルス)

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バッハ:無伴奏チェロ組曲全曲
パブロ・カザルス Pablo Casals (Cello)
録音 1936-1939年
OPK 2041/2 (P)2010 オーパス蔵 (国内盤)
好録音度:★★★
参考: Tower RecordsAmazon.co.jpHMV Onlineicon
CD試聴記」からの転載記事です。

カザルスの無伴奏チェロ組曲を聴くときに,この組曲をこの世の中に復活させた功績を抜きにして聴くことが難しいのですが, 技術的なレベルがずっと向上し,奏法の研究も進んだ現代の優れた演奏と比較して,時代を感じさせるものであることは否めません。 しかし,決して色あせることなく私たちの心に響いてくるのは,彼のこの曲に対する熱意が音として表れ, それが音楽の本質を突いているからに他ならないと改めて感じる次第です。

録音ですが,SPの時代の録音がどのように行われたのかは知らないのですが,出来るだけ鮮明な音で楽器の音を残そうと努力されたはずです。 録音からもうすぐ80年になろうという現代においてもこれだけのクオリティで鑑賞できるのは,その努力のおかげと言えるでしょう。 もし現代の多くの録音のように残響まみれで録音がされていたなら,こんなに良い音で楽しめなかったことでしょう。

カザルスのバッハ無伴奏チェロ組曲のディスクはものすごく多くのリリースがあって,いったい何種類の復刻があるのかがわからないのですが, 私が聴いた,オーパス蔵盤(2010年リマスター),Warner ClassicsのSACDハイブリッド盤(2011年リマスター),古くからある旧EMI盤,Membran盤,Naxos盤の中では, このオーパス蔵盤が最も良好な音質と思いました。 SP盤のトレース音がそのまま入っているために多少耳障りではありますが,鮮明さも失われず,最も音に伸びがあり,自然に聴こえました。 ノイズとしての低域成分もカットされずに入っているのは善し悪しだとは思いますが。

なお,オーパス蔵盤は,2003年に発売されたものが最初で,2010年に現行のリマスター盤に変わりました。

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2003年に最初に発売された盤

カバーピクチャーには金色が使われていました。2010年リマスター盤は金色の部分が銀色に変更されています。当初のリマスター盤は,ディスクデザインまで一緒でディスクが混じってしまうと区別がつきませんでしたが,最近のものはディスクのレーベル面にリマスター盤であることが明記され,間違えないようになっています。(誤って2010年リマスター盤を,発売当時と最近と2回買ってしまいました...品番が全部同じなので紛らわしいです。)

2010年のリマスターでは,線香花火のようなパチパチ音を一つ一つ丁寧に取り除いていったということです。確かにそのノイズが減っていました。まあ元々のノイズが大きいので正直なところ,あえて買い直すほどのことはないかなと思いました。

以下,他のディスクのコメントです。

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Warner Classics 2011年リマスター盤
WPGS-50110/1 (P)2011 Warner Classics (国内盤)
参考: Tower RecordsAmazon.co.jpHMV Onlineicone-onkyo
2011年にリマスターされたSACDハイブリッド盤。 SP盤再生時特有のノイズは多少緩和されていますが,無理に消すようなことはしていないようです。 昔からあるEMI盤に比べると,格段に音色が自然です。 ただ,やはりノイズ低減処理の影響か,オーパス蔵盤に比べるとわずかに音の伸び,鮮明さが失われているように感じられます。 真っ当な音質ですが,少し地味な印象です。

オーパス蔵盤の次に良いと思ったのがこのWarner Classicsの2011年のリマスター盤で,今選ぶならオーパス蔵盤か,このWarnerのリマスター盤のどちらかでしょう。e-onkyoではハイレゾ音源もリリースされています。

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旧EMI盤
TOCE-11567/8 (P)2000 東芝EMI株式会社 (国内盤)
参考: Tower RecordsAmazon.co.jpHMV Onlineicon
昔からある旧EMI盤ですが,SP盤のノイズ低減処理の影響もあるのでしょうが,ずいぶんとクセのある音色です。 中域から高域にかけて盛り上がっているような感じで,ややキンキンしていますし,伸び,自然さに欠けます。 また,復刻の質のばらつきも多いです。 さらに,特に第1番は最近の復刻と比べるとピッチが低めに感じられました。 今,このディスクを選択する理由はあまりないと言えるでしょう。

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Membran盤
232675 Membran (輸入盤)
参考: Tower RecordsHMV Onlineicon
SP特有のノイズは私の聴いた中では最も低減されています。 驚くほど少ないです。 しかし,まるで低ビットレートのMP3でエンコードしたときのようなシュルシュルという独特のブリージングがあります。 ノイズ低減処理の影響だと思いますが,残念ながら人工的な処理のにおいが強く,これはあまり良くありません。

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Naxos盤
8.110915-16 (P)2000 HNH International Ltd (輸入盤)
参考: Tower RecordsAmazon.co.jpHMV Onlineicon
復刻の質としては中庸です。 ノイズを取るわけでもなく,さりとてオーパス蔵のような音を目指すわけでもなく, よく言えば素直な復刻ですが,悪く言うとただ単にSPを再生して録っただけ,という感じがしないでもありません。 録音レベルも若干低く,また,録音に積極的な意志が感じられず,残念ながらあまり良い印象ではありませんでした。

タグ: [器楽曲]  [チェロ] 

アリアーガ:弦楽四重奏曲全集(ラ・リティラータ)

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アリアーガ:弦楽四重奏曲全集
ラ・リティラータ La Ritirata
2013年6月 マドリード音楽院
GLOSSA GCD 923102 (P)(C)2014 note 1 music gmbh (輸入盤)
好録音度:★★★★
参考: Tower RecordsAmazon.co.jpHMV Onlineicon
スペインのモーツァルトの異名をとるアリアーガの弦楽四重奏曲。20歳目前にして没したとのことで,十代でこれだけの作品を残すとは驚きです。これらの作品をヒロ・クロサキの参加するラ・リティラータが軽やかに,爽やかに演奏しています。私の苦手なピリオド楽器での演奏ですが,ピリオド楽器の澄んだ響きが心地よくて好印象でした。

録音ですが,やや残響が多いというわけではないのですが,反射音の被りでやや録音会場のキャラクターが強く出過ぎているように思います。奏者の息づかいもリアルに感じられるので,違和感があります。下の写真にある録音の仕方なら,もっとクリアで透明感ある録音が出来ただろうにと思うと少し残念です。オーディオ的なクオリティは良いのでなおさらです。

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XperiaのWALKMANアプリのギャップレス再生を確認する

記事の訂正があります。コメントでご指摘いただいた内容を検討した結果,当初の確認に誤りがあったことがわかりました。誤っていた部分を下記の通り打ち消し線で示します。ギャップレスの可否についてはコメントもご参照ください。また,コメントではZ3 Compactに基づいて記載していますが,Z1fと結果が若干異なります。これは別途整理して別記事を起こしたいと思います。誤った記事を掲載してしまい,申し訳ありませんでした。お詫び申し上げます。→訂正記事
(記2015/03/01)


今年の1月に,Walkman F880シリーズのギャップレス再生性能を確認する記事を掲載しました。この時点でWalkman F880は実用上問題ないギャップレス再生性能を持っていることが確認できたのですが,XperiaにプリインストールされているWALKMANアプリはその当時はまだ対応していなかったと記憶しています。

先日,このXperiaのWALKMANアプリで再生してみるといつの間にかギャップレス再生出来るようになっているようでしたので,念のため確認してみました。

確認した機種はXperia Z1 f SO-02F(Android 4.4.2, ビルド14.3.B.0.288),WALKMANアプリのバージョンは8.3.A.0.7です。

結果として,Media GoのMP3以外は問題のないギャップレス再生性能が得られました。

  ○WAV
  ○Media Go FLAC
  ○Media Go AAC 320kbps ※1 →×
  ×Media Go MP3 320kbps ※1
  ○iTunes AAC 320kbps ※1 →×
  ○iTunes MP3 320kbps ※1 →×

Media Go のMP3がダメなのは,Media Go側の処理に何らかの問題があるのではないかと想像しています(あくまでも推測ですが)。

※1ですが,再生リストの最終トラックの1つ前のトラックから最終トラックへのギャップレス再生は失敗していました。これはソフト開発者ならちょっとニヤッとしてしまうような単なるバグでしょう。境界条件のテストはちゃんとやりましょうね(^^;。


これでやっとXperiaのWALKMANアプリも使い物になります。あとはApple Losslessに対応してくれれば文句ないのですが。

ビット・トレード・ワンの電流帰還式ポータブルヘッドフォンアンプを測定する

※本記事は「ヘッドホン・イヤホン 周波数特性 測定結果」に掲載した記事の転載です。
ビット・トレード・ワンのブログでも紹介されました。

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■はじめに

ある日,ビット・トレード・ワンの方から「ヘッドホン・アンプを評価して欲しい」というメールをいただきました。 私はヘッドホンの測定はやりますが,ヘッドホン・アンプについては測定ノウハウも見識も持っていないため, 私にはアンプの評価することが出来ないとお断りしました。

その後,「このヘッドホン・アンプを使っていつものヘッドホンの測定をしてくださればいいのです」と再度依頼のメールをいただきました。 ビット・トレード・ワンのWebサイトでそのアンプの解説を見てみると,「適切に電流帰還制御する事でヘッドフォンのインピーダンス変動に影響されず, 低音から高音まで音量を忠実に再現する技術」を使った電流帰還式アンプということで,依頼主の方が私に何を期待されているのかがピンときて, 引き受けることにしました。

そして,手持ちのヘッドホン・アンプも含めて測定することで,電流帰還式アンプの効果がヘッドホンの測定結果として実際に得られましたので, この場でレポートさせていただくこととしました。

対象のヘッドホン・アンプの詳細は,ビット・トレード・ワン商品紹介ページでご確認ください。

■測定内容

測定対象ヘッドホン・アンプ(4機種)
ビット・トレード・ワン 電流帰還式ポータブルヘッドフォンアンプ
AUDIOTRAK Dr.DAC
GRACE DESIGN m902
SONY PHA-2

測定に使用したヘッドホン(7機種)
Sennheiser Amperier 密閉ダイナミック型 18Ω
Sennheiser HD25-1 II 密閉ダイナミック型 70Ω
Sennheiser HD239 開放ダイナミック型 32Ω
Sennheiser HD580 開放ダイナミック型 300Ω
Sennheiser Momentum 密閉ダイナミック型 18Ω
DENON AH-D1100 密閉ダイナミック型 32Ω
audio-technica ATH-CK9 バランスドアーマチュア型 30Ω

測定環境
測定系は「使用機材と構成(2014年1月~)」ですが,測定対象のヘッドホン・アンプを次のように接続しています。
PC ---(USB)--- m902 ---(LINE)--- 電流帰還式ヘッドホンアンプ
PC ---(USB)--- m902 ---(LINE)--- Dr.DAC
PC ---(USB)--- m902
PC ---(USB)--- PHA-2

その他の補足
電流帰還式ヘッドホンアンプは,ヘッドホンのインピーダンスによって調整用の抵抗を変える仕様になっています。 それぞれのヘッドホンの公称インピーダンスで使用する抵抗を選択して測定しました。

[測定結果 Sennheiser Amperier]
hp-amp_sennheiser_amperier_512.png
■電流帰還式アンプ ■Dr.DAC ■m902 ■PHA-2 ■Impedance
Fig.1 Sennheiser Amperier

インピーダンスの変動幅が比較的小さい(18~20Ω)ため,4つのアンプの差はほとんどありません。

[測定結果 Sennheiser HD25-1 II]
hp-amp_sennheiser_hd25-1_ii_512.png
■電流帰還式アンプ ■Dr.DAC ■m902 ■PHA-2 ■Impedance
Fig.2 Sennheiser HD25-1 II

インピーダンスの変動幅が比較的小さい(70~80Ω)ため,4つのアンプの差はほとんどありません。

[測定結果 Sennheiser HD239]
hp-amp_sennheiser_hd239_512.png
■電流帰還式アンプ ■Dr.DAC ■m902 ■PHA-2 ■Impedance
Fig.3 Sennheiser HD239

インピーダンスが低域のf0(最低共振周波数)付近で最大約76Ωまで増加するため,この周波数近辺で電流帰還式ヘッドホンアンプの音圧が増大しています。

[測定結果 Sennheiser HD580]
hp-amp_sennheiser_hd580_512.png
■電流帰還式アンプ ■Dr.DAC ■m902 ■PHA-2 ■Impedance
Fig.4 Sennheiser HD580

インピーダンスが低域のf0(最低共振周波数)付近で最大約560Ωまで増加するため,この周波数近辺で電流帰還式ヘッドホンアンプの音圧が増大しています。

[測定結果 Sennheiser Momentum]
hp-amp_sennheiser_momentum_512.png
■電流帰還式アンプ ■Dr.DAC ■m902 ■PHA-2 ■Impedance
Fig.5 Sennheiser Momentum

インピーダンスの変動幅が比較的小さい(20~24Ω)ため,4つのアンプの差はほとんどありません。

[測定結果 DENON AH-D1100]
hp-amp_denon_ah-d1100_512.png
■電流帰還式アンプ ■Dr.DAC ■m902 ■PHA-2 ■Impedance
Fig.6 DENON AH-D1100

インピーダンスの変動幅が比較的小さい(28~31Ω)ため,4つのアンプの差はほとんどありません。

[測定結果 audio-technica ATH-CK9]
hp-amp_audio_technica_ath-ck9_512.png
■電流帰還式アンプ ■Dr.DAC ■m902 ■PHA-2 ■Impedance
Fig.7 audio-technica ATH-CK9

インピーダンスが増加し始める1.5kHz以上で電流帰還式ヘッドホンアンプの音圧が増大しています。

■おわりに

「ヘッドフォンのインピーダンス変動に影響されず,低音から高音まで音量を忠実に再現する」という電流帰還式ヘッドホンアンプの効果がが, 特にインピーダンス変動の大きなヘッドホンで顕著に顕れることが測定で確認できました。 実際に聴いてもその効果は明らかにわかります。 一方で,インピーダンス変動が小さなヘッドホンについては測定結果でもあまり差はありませんが,実際に聴いてもその差はあまり感じられませんでした。

一般的なヘッドホンでは,低域のf0付近でのインピーダンス変動と,ボイスコイルのインダクタンスによるインピーダンスの増加があるので, この電流帰還式ヘッドホンアンプを使用すると,特にインピーダンス変動の大きなヘッドホンでは低域の増強と高域の伸びにつながることが確認できました。

最後に,このような貴重な測定の機会を与えてくださったビット・トレード・ワンのご担当者に感謝申し上げます。

タグ: [ヘッドホン] 

ヘッドホン Sennheiser HD800に惚れる...

sennheiser_hd800.jpg
ヘッドホン Sennheiser HD800

ダイナミック・オープン型,インピーダンス300Ω,ケーブルY字3.0m,6.3mmステレオ標準プラグ(ストレート)

参考: メーカーサイトAmazon.co.jp

ゼンハイザーの誇る最高級ヘッドホンHD800,幸運なことに,私がいつも聴いている自分の環境で,いつも聴いている曲で,落ち着いて試聴する機会を得ました。ごく短時間の試聴でしたが...今まで聴いてきたヘッドホンとのあまりの違いに絶句してしまいました。

同社のHD580やHD600を素晴らしい高音質と思って聴いてきましたが,それらを寄せ付けない全く次元の違う音に驚きました。もしこれが手には入ったら間違いなくヘッドホン・スパイラルを終結させることが出来る!と直感しました。次はHD650を聴いてみようかと漠然と思っていた気持ちはもうどこかにすっ飛んでしまいました。これを聴いてしまった以上,もう他のヘッドホンは手が出せなくなってしまいました。

しかし,とはいえあまりにも高い! Amazon.co.jpでは16万円以上する。HD650の3~4倍の値段... しばらく倹約しつつ,舞い上がってしまった頭をよく冷やして冷静になって,でも,真剣に考えよう(^^;... もし本当に手に入れられたとしても,きっとスパイラルは終わらないのだ。このデザインも嫌いだし...

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