バッハ:無伴奏ヴァイオリン・ソナタ第1番,パルティータ第1番,第2番,第3番(ジェニファー・コウ Jennifer Koh)

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バッハ:無伴奏ヴァイオリン・パルティータ第2番,第3番
ジェニファー・コウ Jennifer Koh (Violin)
November 13 & 16, 2011(No.2), January 4 & 5, 2012(No.3) at the American Academy of Arts and Letters, New York City
CDR 90000 134 (P)(C)2012 Cedille Records (輸入盤)
好録音度:★★★★☆
参考: HMV OnlineiconAmazon.co.jpTower RecordsApple Music
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バッハ:無伴奏ヴァイオリン・ソナタ第1番,パルティータ第1番
ジェニファー・コウ Jennifer Koh (Violin)
June 4-5, 10-12, 2014 at The Perfoming Arts Center, Purchase College/SUNY
CDR 90000 154 (P)(C)2015 Cedille Records (輸入盤)
好録音度:★★★★☆
参考: Tower RecordsAmazon.co.jpHMV OnlineiconApple Music
CD試聴記」からの転載記事です。

小気味よいのですが,一方で,美しく,優しく柔らかい印象を残す演奏でもあります。 線がやや細く弱々しい面が感じられなくもないですが,技術的にも優れキレと安定感がありますし, 音色や和音の取り方も美しく,欠点になっていません。 強い個性の主張がなく大人しい演奏ですが,自然体であり,そこが美点と言えるかもしれません。

録音ですが,少し残響を伴っているものの,直接音を主体に楽器音を透明感ある音で捉えていて好ましいです。 音色も自然で美しいです。 もう一歩寄って質感を強めに出してくれるとなお良かったと思いますが,これでも十分に良好です。 中ではパルティータ第1番の録音状態が最も良いと思います。

コウは1994年のチャイコフスキーコンクールで1位なしの最高位を獲得した実績を持つ実力者で,最近ではN響との共演もあるとのこと。2001年にもパルティータ第2番を録音されていました。このディスクは“Bach & Beyond”というタイトルでPart 1が2013年にリリースされ,2015年の6月にPart 2がリリースされました。Part 3で完結するのが楽しみです。

ハイドン:弦楽四重奏曲作品76-1, 50-1, 77-1(モディリアーニ四重奏団)

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ハイドン:弦楽四重奏曲作品76-1, 50-1, 77-1
モディリアーニ四重奏団 Quatuor Modigliani
2013年4月21-24日 ラ・グランジュ,エヴィアン=レ=バン
MIR231 (P)2013 mirare
好録音度:★★★★☆
参考: Tower RecordsAmazon.co.jpHMV OnlineiconApple Music
ドビュッシー,ラヴェル,サン=サーンスの弦楽四重奏曲集が良かったモディリアーニ四重奏団のハイドンです。ここでもその実力が遺憾なく発揮され,モダンで洒落た演奏をしています。いいですねぇ,楽しいです。ハイドンの演奏には圧倒的技術的余裕が必要だなと思わせますね。

録音は,やや誇張された感のあったドビュッシー他の録音に比べると,演出感がなくなり随分と自然な印象の録音になっています。その分,各楽器の明瞭感と分離感は薄まっていますが,残響がほぼ影響のない程度に抑えられているため音色のくすみも少なく,透明感のある綺麗な音で録られています。やや地味で控えめな感じのする録音ですが楽器の音を大切にした誠実な?好録音です。

彼らのハイドンは2作目で,1作目は作品54-1, 74-3「騎手」, 76-4「日の出」でした。個人的には作品番号でまとめて録音して欲しいんですけどね(特にエルデーディ四重奏曲)。そういう気はないようですね...

ドビュッシー,ラヴェル,サン=サーンス:弦楽四重奏曲集(モディリアーニ四重奏団)

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ドビュッシー:弦楽四重奏曲ト短調
サン=サーンス:弦楽四重奏曲第1番作品112
ラヴェル:弦楽四重奏曲ヘ長調
モディリアーニ四重奏団 Quatuor Modigliani
2012年4月,9月
MIR188 (P)2012 mirare (輸入盤)
好録音度:★★★★☆
参考: Tower RecordsAmazon.co.jpHMV OnlineiconApple Music
四重奏団が一つの生き物のように一体化し呼吸する演奏とでも言いましょうか,技術的にも上手くアンサンブルも良いですし,きめ細やかで繊細な表現力が素晴らしいと思います。際立った個性はないかもしれませんが良くできた演奏だと思います。いつも言うことですが,最近の若い四重奏団は本当に上手いですね。

録音ですが,わずかに残響感はありますが,楽器音主体で明瞭感があり,それぞれの楽器の質感も良く捉えています。少し不自然さと演出感のある録音ですが,各楽器が分離良く明瞭に聴こえるので,音楽を存分に楽しめる好録音だと思います。

モディリアーニ四重奏団は2003年の結成で,いくつかのコンクールで優勝し,イザイ四重奏団やアルテミス四重奏団などからも指導を受けたという期待の若手四重奏団とのことです(といってもすでに10年のキャリアを積んでいるんですね)。この録音を聴くと確かにその実力の高さを感じることが出来ます。

このディスクでは,珍しいサン=サーンスの弦楽四重奏曲が収められています。2枚組で1枚目にドビュッシーとサン=サーンス,2枚目はラヴェルだけ,という贅沢な収録の仕方をしています。個人的にはもう一曲くらい収録しても良かったのでは?と思いますが...

バッハ:ゴルトベルク変奏曲 BWV988 (キース・ジャレット Keith Jarrett)

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バッハ:ゴルトベルク変奏曲 BWV988
キース・ジャレット Keith Jarrett (Harpsichord)
January 1989 Yatsugatake Kohgen Ongakudoh, Japan
ECM 1395 (P)(C)1989 ECM Records (輸入盤)
好録音度:★★★★☆
参考: Tower RecordsAmazon.co.jpHMV Onlineicon
キース・ジャレットがクラシック音楽を演奏したディスクは以前にも聴いたことがありますが,ジャズ的な演奏を期待すると肩すかしを食らうというのはこの演奏でも同じで,全くスウィング感はなく,どんなクラシック演奏家よりもクラシック音楽家的だと思えるほどのリズム感で演奏されています。キッチリと生真面目で遊びの要素はほとんどありませんが,ゆったりしたテンポで一音一音を丁寧に心を込めて弾いているのがよくわかる味わい深い演奏です。彼がジャズ・ピアニストだということを忘れて聴かなければなりませんね。リピートの省略が多いのは残念なところです。

録音ですが,ホールの箱鳴り感が被っているのが少し気になりますが,直接音が支配的であり,音の芯,輪郭がはっきりしていて明瞭感のある録音となっています。楽器自体の豊潤な響きも質感もよく捉えています。私としては先に述べた箱鳴り感による音色への影響が少々不満として残るものの,これなら好録音と言えると思います。少しおまけですが四つ星半です。

演奏時間 約62分
リピート表
Aria ××
Var.01 ×× Var.02 ○○ Var.03 ○○
Var.04 ○○ Var.05 ×× Var.06 ○○
Var.07 ×× Var.08 ×× Var.09 ○○
Var.10 ×× Var.11 ×× Var.12 ××
Var.13 ×× Var.14 ×× Var.15 ××
Var.16 ○○ Var.17 ×× Var.18 ××
Var.19 ×× Var.20 ×× Var.21 ○○
Var.22 ×× Var.23 ×× Var.24 ××
Var.25 ○○ Var.26 ×× Var.27 ××
Var.28 ×× Var.29 ○○ Var.30 ○○
Aria da capo ××

バッハ:ゴルトベルク変奏曲 BWV988 (ラルス・フォークト Lars Vogt)

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バッハ:ゴルトベルク変奏曲 BWV988
ラルス・フォークト Lars Vogt (Piano)
2014年3月24-26日 ケルン,ドイツ放送カンマームジークザール
ODE1273 (P)(C)2015 Ondine (輸入盤)
好録音度:★★★☆
参考: Tower RecordsAmazon.co.jpHMV OnlineiconApple Music
ジャケット写真の風貌から受ける印象とは全く異なる(^^;,アクセントを控えた柔らかいタッチの優しい演奏に少々面食らいます。テンポは決して遅くないのですが,細かい音型でも裏拍までキッチリと丁寧に弾き,響きをなめらかにつなげていくスタイルが独特のテンポ感を生んでいます。推進力も躍動感も希薄で音楽があくまでマイペースで進んできます。先日取り上げたイングリッド・マルゾーナーの演奏とは対極にあるような演奏です。好みが分かれるのではないでしょうか。私はちょっとこのヌルヌルした感じが苦手かなと思います(^^;。なお,リピートはAria da capo含めて全て実行されていて完璧です。

録音ですが,残響が少しありますが,楽器音を濁すだけの質の悪い響きであり,音色もこれで変に色がついてしまっていて全く良くありません。明瞭感も今ひとつです。残念です。

演奏時間 約77分
リピート表
Aria ○○
Var.01 ○○ Var.02 ○○ Var.03 ○○
Var.04 ○○ Var.05 ○○ Var.06 ○○
Var.07 ○○ Var.08 ○○ Var.09 ○○
Var.10 ○○ Var.11 ○○ Var.12 ○○
Var.13 ○○ Var.14 ○○ Var.15 ○○
Var.16 ○○ Var.17 ○○ Var.18 ○○
Var.19 ○○ Var.20 ○○ Var.21 ○○
Var.22 ○○ Var.23 ○○ Var.24 ○○
Var.25 ○○ Var.26 ○○ Var.27 ○○
Var.28 ○○ Var.29 ○○ Var.30 ○○
Aria da capo ○○

タグ: [器楽曲]  [ピアノ] 

バッハ:ゴルトベルク変奏曲 BWV988 (イングリッド・マルゾーナー Ingrid Marsoner)

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バッハ:ゴルトベルク変奏曲 BWV988
イングリッド・マルゾーナー Ingrid Marsoner (Piano)
October 2009, at Lehár Theater, Bad Ischl, Upper Austria
Gramola 98846 (P)(C)2010 Gramola (輸入盤)
好録音度:★★★★☆
参考: Tower RecordsAmazon.co.jpHMV OnlineiconApple Music
速めのテンポで歯切れの良い弾き方(ノンペダル?)が気持ちの良い快活な演奏です。速めといっても表現はごくごく自然でテンポの揺れや「ため」も最小限,違和感なくすんなりと耳に入ってきます。Aria da capo以外,全てリピートを実行しているのも二重丸です。技術的にも上手いと思います。

そして録音がまた良いのです。ピアノの音を邪魔する間接音が一切ないドライな録音で,明瞭かつ自然な音色でこの歯切れの良い演奏を一層引き立てています。マイク距離もほぼ適正,あざとさもなく,むしろ地味に感じるくらいで,もう少し音に輝きがあって欲しいくらいです。優秀録音ではないかもしれませんし,万人受けするとは思えませんが,間違いなく好録音です。

演奏も録音も好みで私にとっては大当たりの掘り出し物でした。グールド2回目イッサカーゼに続く愛聴盤候補として急浮上です(^^)。

演奏時間 約73分
リピート表
Aria ○○
Var.01 ○○ Var.02 ○○ Var.03 ○○
Var.04 ○○ Var.05 ○○ Var.06 ○○
Var.07 ○○ Var.08 ○○ Var.09 ○○
Var.10 ○○ Var.11 ○○ Var.12 ○○
Var.13 ○○ Var.14 ○○ Var.15 ○○
Var.16 ○○ Var.17 ○○ Var.18 ○○
Var.19 ○○ Var.20 ○○ Var.21 ○○
Var.22 ○○ Var.23 ○○ Var.24 ○○
Var.25 ○○ Var.26 ○○ Var.27 ○○
Var.28 ○○ Var.29 ○○ Var.30 ○○
Aria da capo ××

バッハ:無伴奏ヴァイオリン・パルティータ第2番,他(ティボー・ノアリ Thibault Noally)

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バッハ:無伴奏ヴァイオリン・パルティータ第2番,他
ティボー・ノアリ Thibault Noally (Violin)
2013年6月 サン・レミ教会(ベルギー)
AP068 (P)2013 Aparté (輸入盤)
好録音度:★★★★
参考: Tower RecordsAmazon.co.jpHMV OnlineiconApple Music
CD試聴記」からの転載記事です。

ティボー・ノアリは,指揮者のマルク・ミンコフスキ率いるルーヴル宮音楽隊(レ・ミュジシャン・デュ・ルーヴル・グルノーブル)のコンサートマスターで, 「マンゼやオノフリの後世代で最も期待できるバロック・ヴァイオリンの若手」とのことです。バッハ以外の併録曲は次の通りです。

ヴィルスマイヤー/パルティータ第5番ト短調
テレマン/幻想曲ニ長調TWV40:23,TWV40:25,TWV40:15,TWV40:17
ヴェストホーフ/組曲第5番ニ長調
バルツァー/前奏曲ハ短調 アルマンド ト短調
ビーバー/ローゼンクランツ・ソナタ~パッサカリア

バロック楽器による演奏で,粘りのある弓遣いがいかにもバロック楽器ですが, 淡々と整然として揺るがないテンポ感で淀みなく流れる音楽が気持ちよく, この点ではあまりバロック的ではないかもしれません。 音色も透明感があり美しく,技術的にも隙がなく大変優れています。 これは素晴らしい出来だと思います。 いずれ全集を出してくれることを大いに期待したいです。

録音ですが,残響がものすごく多く,しかも残響時間がかなり長いです。 しかし,直接音比率が結構高く,残響成分は広がり感があって楽器音とある程度分離して聴こえるため, 「豊かな残響」として何とかぎりぎり鑑賞に堪えうるというところです。 残響の質は良い方で,残響が許せる方なら優秀録音かもしれませんし,雰囲気に浸りたい方には好適と言えそうです。 残響のまとわりつきが気になるので私としてはもちろん好きな録音ではありませんが。

バッハ:無伴奏ヴァイオリンのためのソナタとパルティータ全曲(パオロ・ギドーニ Paolo Ghidoni)

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バッハ:無伴奏ヴァイオリンのためのソナタとパルティータ全曲
パオロ・ギドーニ Paolo Ghidoni (Violin)
Pieve dei Campi Bonelli, Mariana Mantovana, 2012
OC125BrM (P)2015 OnClassical (e-onkyo音楽配信 2015年発売)
好録音度:★★★☆
参考: OnClassicale-onkyoApple Music
CD試聴記」からの転載記事です。

モダン楽器による演奏。 乱暴とも思える思い切りの良い意志の強さを感じる強い弓遣いで大胆に攻める演奏です。 緩急はそれほどでもありませんが,時折強烈なアクセントがあったり聴こえないくらい弱音で弾いたり,起伏に富んでいます。 音色は全体にキツめで刺激的であり美しくはありません。 技術的にはかなりしっかりとしていると思います。 受け入れがたい部分も多々ありますが,聴き慣れると芯のしっかりした,筋の通った演奏に思えるようになってきました。 これはこれでアリだと思います。

録音ですが,残響は多めで,残響時間はそれほど長くありませんが,音色の濁りがかなりあります。 残響の広がりも感じられず楽器音にまとわりついて音を濁すだけです。 そしてその割にキンキンと刺激的な音色が残っています。 少し遠めの音像で明瞭感も不足しています。 残念ですが全く良くありません。

パオロ・ギドーニは1964年生まれのイタリアのヴァイオリニスト。 この全集は音楽配信のみでディスクでの販売はないのではないかと思います。

クラシックの録音における残響の問題について

昨日の記事に関連して,最近感想を書かせていただいたいくつかの無伴奏ヴァイオリン/無伴奏チェロの録音で感じた問題をもう少し具体的に述べたいと思います。私が感じる問題は下記の3点です。

(1)残響過多=楽器音と間接音の主従関係の逆転
これは昨日の記事にも書いた点です。楽器の音が第一優先<主>,残響などの間接音は補助的なもの<従>。この主従関係が崩れ,明らかに楽器音よりも間接音の方が<主>になっています。これによって音楽を楽しむ上で大切な音色や質感,ニュアンスが隅に追いやられ,失われているのです。この主従関係を意識した適正な収録・編集が必要と考えます。

(2)残響の<質>が悪い
残響の<質>に関しては,過去に書いた記事「好録音について考える(5) ~ 残響の理想的な取り入れ方1」を参考にしていただければと思います。

上記の記事の中で引用したレキシコンのデヴィッド・グリジンガー氏によると,
  • 直接音に対する遅延が50msec以下の初期反射音は直接音を補強する役割がある
  • 遅延が150msecより大きなものは残響として有効
  • 遅延が50-150msecの反射音は“濁り”の要因となるため抑えなければならない

とされていました。間接音はむやみに取り入れれば良いというものではなく,<従>の役割をきちんと果たすものを選んで取り入れるよう,マイク設置や編集で気を遣わなければならないということです。前述の問題のある録音は,楽器音を大きく濁していることから,間接音の適切な取捨選択が出来ていないと考えられます。

(3)残響が楽器音から分離しない
良質なコンサートホールで聴く演奏は,間接音が多くても楽器音はそこそこ明瞭に聴くことが出来ます。これは過去の記事「好録音について考える(3) ~ 残響のカクテルパーティー効果」にも書きました。ホールの空間を満たす音響は膨大な情報量を持っており,人間はこの情報を使って楽器音と間接音を上手く分離して聴き分けているからではないかと考えています。

しかし,録音しメディアに収めるということは空間を満たす音響のごくごくわずかな情報を切り取り,楽器音も間接音も一緒くたに2chの信号にまとめてしまうということです。そして楽器音も間接音も区別なく一緒くたに再生されます。聴く人は,これを頭の中で「錯覚」という能力を使って仮想的に分離して聴かなければなりません。前述の問題のある録音では,これが一緒くたになったまま全く分離できません。分離するための膨大な情報がほとんど含まれないのですから,何の工夫もなければこうなってしまいます。

これには「錯覚」を上手く起こさせる技術が必要になってきます。位相を意図的に操作すると違和感が生じることもあるため,あくまで自然さを保ったまま楽器音から分離し,空間的な広がりを感じさせるように収録から編集までトータルなコントロールが必要でしょう。

私は録音は素人以下なのであくまで仮説ですが,楽器を定位させるには左右chの相関が関係することから,定位させずに広がりを持たせるのもこの左右chの「相関」が鍵になると考えます。少なくとも左右chの残響成分が無相関であれば楽器の定位から外れ,違和感なく広がりを持たせることができるのでは?と思います。まあここはプロの方の得意分野でしょうからお任せするしかありません。
~~~

昨日の記事でも書いた通り,私は残響を嫌っています。しかし,豊かな残響が含まれる録音を好む方も多数いらっしゃいますから,残響を排除した録音というのは残念ながらほぼ期待できません。少なくとも上記の3点を配慮して残響を取り入れた録音をしてくだされば,私のような嗜好を持った者でも納得する録音ができるであろうと思います。 (本当はもちろん「残響ありき」の固定観念から脱却して欲しいんですけどね...)

せっかくの素晴らしい演奏を録音で台無しにしないで欲しい... これが私の望みであり,お願いです。

なお,私の録音に対する考え方は,以前より何度かこのブログ上でも述べています。「好録音について考える」カテゴリも併せてご参照いただければと思います。

長文・乱文,失礼しました。

「録音」に望むこと ~ 最近の無伴奏ヴァイオリン/無伴奏チェロを聴いて

最近感想を書かせていただいたいくつかの無伴奏ヴァイオリン/無伴奏チェロの録音は,いずれも私の「好録音」という観点を外したとしても良好とは言えず,極めて残念なものでした。音楽は素晴らしいのに録音がそれを台無しにしています。こういった録音に出会うたびに,録音技術は果たして1950年代から進歩しているのだろうかと疑問に思えてなりませんし,過去の名録音に何にも学んでないと思ってしまいます。

あくまで私見ですが,まずは楽器の音がありき,第一優先であり,残響などの空間を演出する間接音はあくまで補助的な位置づけだと考えています。何をおいても楽器の音。私の記憶にある過去の名録音は総じて楽器の音が大切に扱われていました。昨今の多くの録音は,この優先順位が逆転しているように思います(さらに言うと,間接音の「質」も悪い)。結果,楽器の音が間接音に締め出され,質感やニュアンスなどが失われていると思うのです。私が残響を嫌う理由はここにあります。

オーディオで音楽を再生するということは,録音している空間の音場をリスニングルームで擬似的に再現する行為と考えることが出来ると思います。録音する空間の膨大な音響の情報を,空間内に設置したわずかな数のマイクで拾い,限られた容量の器(メディア)に詰め込むわけですから,そこに記録される情報は録音空間の音響のほんの断片に過ぎず,再現するには情報量が圧倒的に不足します。録音空間の音響をどのように捉え,この限られた器の中にどのように詰め込むかが鍵だと思います。

残響のような間接音は,空間性を再現するものであり,上手く使えば音楽を豊かに演出するものではありますが,それ自体は音楽そのものの情報をほとんど持ちません。楽器の音に対して間接音の比率が高くなればなるほど楽器の音の情報は前述のように締め出されていきますので,この比率を適切に扱うことは非常に重要です。

もう一点重要なのは,いかに情報量の多い状態で楽器の音を捉えるかということで,これはすなわちマイクをいかに適正に設置するかということにかかっていると思います。楽器から離れるほど質感やニュアンスは失われていきます。またマイクで捉えられる音は本来の音のごく一部であり,編集してメディアに収められ,スピーカで再生して耳に届くまでにさらに相当多くの情報が失われていきます。こうした収録・編集・再生で失われていく情報量を見越したマイク設置が肝だと考えます。過去の名録音は,やはりこういった点においても配慮がなされていたと思うのです。

長々と書いてきましたが,以上をまとめると,私が録音に望むことは,下記の2点となります。

(1)楽器の音を第一優先に,間接音はあくまで補助的に(「質」も大切!),適正なバランスで収録・編集して欲しい
(2)楽器の音は可能な限り情報量の多い状態で収録するようマイク設置を配慮して欲しい

ぜひとも過去の名録音に学び,良質な録音を残していただきたくお願いする次第です。

長文・乱文,失礼しました。

最後に,私が理想とする「好録音」にかなり近い録音の例を載せておきます。以前にも紹介したYouTube動画ですが,残響は皆無,適正なマイク位置で情報量の多い状態で録音され,質感高くニュアンス豊かに音楽が伝わってきます。残響が音楽性にほとんど関係ないということを示す好例でもあると思っています(ほんと「残響ありき」の固定概念から脱却してほしい!)。また私の考える「好録音」はハイレゾや圧縮などとも関係のない軸で見ていることもわかっていただけると思います。いささか極端な例ですが,参考にしていただければと思います。

ベートーヴェン:弦楽四重奏曲全集(フィルハーモニア・クァルテット・ベルリン)

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ベートーヴェン:弦楽四重奏曲全集
フィルハーモニア・クァルテット・ベルリン
録音データなし
CTH2614 Thorofon (2015年発売)(輸入盤)
好録音度:★★★★,★★★☆(Op.95, Op.127, Op.130, Op.133)
参考: Tower RecordsHMV Onlineicon
フィルハーモニア・クァルテット・ベルリンは,ベルリンフィルの首席奏者によって1984年に結成された団体とのことで,メンバーチェンジを繰り返しながら今に至り,日本にも10回以上来日しているとのことです。

録音データが全く記載されていないのですが,公式Webサイトのディスコグラフィを見ると,1994年にOp.95/Op.127,2000年にOp.130/Op.133,2004年にOp.131/Op.135,だいぶ飛んで,2013年にOp.18,2014年にOp.59/Op.74をそれぞれリリースしており(Op.132は不明),この全集はそれら20年にわたる録音の集大成ではないかと思われます。

ベートーヴェンの弦楽四重奏曲というと,昨今は切れ味の鋭くソリッドに演奏がされる傾向が強いと感じているのですが,ここでは卓越した技術に支えられているのはもちろんですが,活気がありながらもその技術的余裕を活かしてむしろユルくネアカのベートーヴェンに仕立てているように思います(「ユルく」というのは誤解を生みそうですが(^^;)。あとの録音になるほどその傾向が強くなっているのは団体としての成熟度を反映しているのかもしれません。これはなかなかに素晴らしい全集だと思います。

録音ですが,2000年頃までにリリースされているOp.95, Op.127, Op.130, Op.133と,それ以降の録音で差があり,前者は残響過多で音色がくすみ,明瞭感も良くなく,精彩のない音質です。一方後者は残響は多いものの,直接音成分が比較的多いため,残響の影響を受けながらも楽器の質感も感じ取りやすく,音の伸びもあってまずまずです。中ではラズモフスキー第1番が最も良好です。せめてこれくらいの録音で統一されていたら良かったのですが。

バッハ:無伴奏チェロ組曲(安田謙一郎)

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バッハ:無伴奏チェロ組曲全曲
安田謙一郎 Ken-ichiro Yasuda (Cello)
Yokosuka Bayside Pocket, Yokohama, 16th-18th April 2015
MM-3053-54 (P)(C)2015 MEISTER MUSIC (国内盤)
好録音度:★★★☆
参考: Tower RecordsAmazon.co.jpHMV OnlineiconApple Music
CD試聴記」からの転載記事です。

朴訥とした語り口の温かく優しい音楽が印象に残ります。 歳を重ねた結果辿り着いた境地とでも言いましょうか。 音楽として決して緩むことなく前向きでありながらこの味わい深さをを出せるのはさすがです。 技術的にももちろんしっかりとしているのですが,キレは少し甘くなっているかもしれません。 ただそれは意図的かもしれません。

録音ですが,残響自体は少ないのですが,比較的遅延の少ない反射音が多め,直接音よりもその反射音の比率が高く,音を濁す要因となっています。 またそれによって高域の伸びが阻害され,詰まったモゴモゴとした冴えない音質になってしまっています。 比較的マイク位置は近いと思うのですが,それにしては明瞭感も悪く楽器の質感も損なわれ過ぎです。 もっとクリアで透明感のある音,楽器の質感をストレートに伝えてくれる録音をして欲しいものです。

これは安田謙一郎さん2回目の録音。 1回目は1975年ですので,ほぼ40年ぶりの録音ということになります。 録音の音質については1回目の方がはるかに良好で,好録音でした。 今回,このような音質で録音をされたことがとても残念でなりません。この40年で録音機材は進化しましたが,録音技術は進化するどころかむしろ退化していると思わざるをえません。

タグ: [器楽曲]  [チェロ] 

バッハ:無伴奏ヴァイオリンのためのソナタとパルティータ全曲(横山奈加子)

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バッハ:無伴奏ヴァイオリンのためのソナタとパルティータ全曲
横山奈加子 Nakako Yokoyama (Violin)
2014年10月15-16日,12月9-10日,2015年2月3-4日 横浜・かながわアートホール
OVCL-00561 (P)(C)2015 EXTON (国内盤)
好録音度:★★★
参考: Tower RecordsAmazon.co.jpHMV Onlineicon
CD試聴記」からの転載記事です。

横山奈加子さんは,第60回日本音楽コンクール第2位,第10回チャイコフスキーコンクール第5位などのコンクール入賞歴を持つ実力者です。

モダン楽器による,甘さのない引き締まった演奏です。 癖がなくオーソドックス,良い意味で教科書的, 緊張感と躍動感のバランスの良さが心地よさを生んでいます。 技術のキレも素晴らしく,一音たりとも気を抜かず隅々まで気が配られている点も良いと思います。

録音ですが,残響がかなり多く,残響時間も長め,直接音比率が低く,残響の被りによる音色の濁りがかなりあります。 残響の質も悪く,ワンワンと洞窟のように響くだけで,録音空間の広がりも感じさせず,音楽的な寄与も感じません。 明瞭感も良くなく,ニュアンスも失われてしまっています。 音色のバランスも崩れ,変にキンキンうるさいです。 全く良くありません。 ソナタ第3番,パルティータ第3番はさらに一段悪くなります。 残念です。

ツェルニー:弦楽四重奏曲集(シェリダン・アンサンブル)

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ツェルニー:弦楽四重奏曲集
シェリダン・アンサンブル Sheridan Ensemble
Bremen, Sendesaal, 03-16. 10. 2012, Berlin, Simemensvilla, 11-13. 02. 2011
C5234 (P)(C)2015 Capriccio (輸入盤)
好録音度:★★★★
参考: Tower RecordsAmazon.co.jpHMV OnlineiconApple Music
マイナーな弦楽四重奏曲を聴くシリーズ第9弾です(^^;。カール・ツェルニー(1791-1857)はオーストリアのピアノ教師,ピアニスト,作曲家で,ベートーヴェンの弟子であり,1000曲以上作曲した多作家。現在では特にピアノ練習曲を多く残した作曲家として有名ではないでしょうか。弦楽四重奏曲も20曲ほど残しているとのことですが,録音はほとんどなく忘れ去られています。

ここではそのうちの4曲が収録されています。ベートーヴェンの弟子というだけあって曲は古典的ながら緻密に構成され,いずれも親しみやすく,かつ,聴き応えのある堂々としたものです。ただ,弦楽四重奏という定型に綺麗に収まりすぎている感があり,心に残る特徴,個性に乏しいのが埋もれてしまった理由なのでしょう。

演奏は極めて意欲的で,このマイナーな曲を盛り上げようといろいろと工夫されているのがわかって楽しく聴くことが出来ました。技術的にも上手いです。

録音ですが,残響は多めですが,直接音主体で捉えられているため楽器音が明瞭かつニュアンス豊かでまずまず良好です。弦楽四重奏の録音としては標準的で悪くないと思います。もう少し演出色が薄かったらなお良かったのですが。

バッハ:無伴奏ヴァイオリンのためのパルティータ第2番,第3番,ソナタ第3番(島田真千子)

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バッハ:無伴奏ヴァイオリンのためのパルティータ第2番,第3番
バッハ:無伴奏ヴァイオリンのためのソナタ第3番
島田真千子 Machiko Shimada (Violin)
2014/5/1,7/2,12/2 所沢市民文化センター キューブホール
ALT318 (C)2015 Altus Music (国内盤)
好録音度:★★★☆
参考: Tower RecordsAmazon.co.jpHMV Onlineicon
CD試聴記」からの転載記事です。

モダン楽器による演奏。 緊張感が高く,淀みのないテンポで突き進む潔い音楽が実に気持ちが良く, また彫りが深く起伏に富んだ思い切りの良い表情が印象的です。 そしてヴィブラートがコブシのように利く「泣きのヴァイオリン」というイメージが強く残る演奏です(それはちょっと違うだろ!と突っ込まれるかもしれませんが...(^^;)。

大変細かい話で恐縮ですが,パルティータ第3番 Gavotte en Rondeauの最初のリピートが省略されています。 そういう版もあるのでしょうか?

録音ですが,残響がかなり多く,残響時間も長めのため,楽器音に大きく被り音色が混濁しています。 高域の伸び,輝きも今ひとつでモゴモゴしているほか,強く演奏される部分での音の潰れが気になります。 やや歪みっぽく,オーディオ品質もあまり良いように思えません。

また録音会場の「ドーン」とか「ゴワーン」とかいう低いノイズが結構入っていて気になります。 少々配慮が足りない気がします。

さらに編集されているのではないかと思わせるような不自然な音のつながりもあるような気がして, 今ひとつ落ち着いて聴けないのが残念です。

さらに... パルティータ第2番 Gigueの3:33あたりで左chから小さな子供の「かあちゃん!」という叫び声が聞こえるのですが... 空耳だとは思いますが... ちょっと怖いです(^^;。

寺神戸亮さんのコレッリ:ヴァイオリン・ソナタ作品5の初期盤のエラーと再発売盤

寺神戸さんのディスクは1990年代よりDENONのAliareシリーズで多くのタイトルが発売されてきました。先のエントリーで紹介したコレッリのヴァイオリン・ソナタ集もその中の一つです。

このAliareシリーズですが,CDの規格の仕様の一つである「プリエンファシス」をかけたものが多くありました。プリエンファシスというのは,簡単に言うと,あらかじめ高域を強調して録音しておき,再生時に強調された高域を下げて元に戻すことにより,ヒスノイズなどのノイズの影響を少しでも低減しようというものです。磁気テープなど主にアナログ録音をするときのノイズ低減に効果のある方法ですが,CDにも取り入れられていました。なお細かい話ですが,録音時に高域を強調する処理をプリエンファシス,再生時に戻す処理をディエンファシスと言います。

もう少し細かい話をすると,プリエンファシスで録音されたCDは,プリエンファシスがONであるというフラグが立てられているので,再生するCDプレーヤは,このフラグを見て,フラグがONの時には,ディエンファシスフィルタをONにして再生することで,正しい音に戻しています。このフラグは,CDのTOC(Table of Contents = 管理情報)と音声データに付随するサブコードの2カ所に記録されています。

しかし,1990年代に発売されていたディスクの中で,プリエンファシスで録音されているにも関わらず,このフラグが正しく記録されていないエラーディスクのものがありました。この寺神戸さんのコレッリもその一つです。具体的には,音声データに付随するサブコードのフラグは正しくONとなっているのに,TOCのフラグがONになっていない,というエラーです。

このエラーの具体的な影響は,「PCで正しくリッピング出来なくなる」です。CDプレーヤは通常はサブコード側のフラグも参照するため,TOCの情報が間違っていても正しく再生できます。しかし,通常,PCではサブコードは読み取らずTOC情報だけを頼りとするので,これが間違っているとディエンファシスをかけ損ねて正しい音でリッピング出来なくなります(もちろんリッピングするソフトの仕様にもよるとは思いますが)。実際このディスクをリッピングしてみると高域が変に強調されたおかしな音になります。

このディスクが発売された1995年当時はPCでリッピングすることはなかったため,エラーがあっても実質的に問題はなかったので,このようなエラーディスクが見過ごされていたのだと思います。

このディスクは何度か復刻されていますが,2002年に再発売されたバージョンでは,TOCのフラグが正しくONに修正され,エラーディスクではなくなりました。

さらに,先のエントリーで取り上げた2010年に再発売されたバージョンでは,音声自体がプリエンファシスされていないものに変更されていました。デジタルであるCDではプリエンファシス自体ほとんど効果がないこと,TOCのフラグを無視して正しい音でリッピング出来ないソフトへの対策,で仕様変更されたのではないかと思います。

ちなみにiTunesはTOCのプリエンファシスのフラグを参照し,リッピング時にディエンファシスフィルタをフラグに応じて適用しているようです。

ディスクについて整理すると以下のようになります。

・1995年発売 COCO-78820 プリエンファシスON ★TOC情報エラーあり
・2002年発売 COCO-70459 プリエンファシスON
・2010年発売 COCO-73075 プリエンファシスOFF

コレッリ:ヴァイオリン・ソナタ集作品5 第7番~第12番(寺神戸亮(Vn)/ジーベ・ヘンストラ(Cemb, Organ)/ルシア・スヴァルツ(Vc))

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コレッリ:ヴァイオリン・ソナタ作品5 第7番~第12番
寺神戸亮 Ryo Terakado (Violin)
シーベ・ヘンストラ Siebe Henstra (Cembalo/Organ)
ルシア・スヴァルツ Lucia Swarts (Cello)
1994年8月8-10日 オランダ,デン・ハーグ,旧カトリック教会
COCO-73075 (P)2010 COLUMBIA MUSIC (国内盤)
好録音度:★★★★
参考: Tower RecordsAmazon.co.jpHMV OnlineiconApple Music

このディスクはおよそ10年前に「CD試聴記」で取り上げていましたが,改めて。このディスクは,1995年度のレコード・アカデミー賞(音楽史部門)を受賞した名盤で,コレッリの作品5の中では未だにダントツに好きな演奏であり,聴き続けている愛聴盤の一つです。

バロックヴァイオリンによる演奏で,第9番の装飾はジェミニアーニによるものと記載されていますが,それ以外は明記されていません。また装飾は,リピートのある曲では,1回目を楽譜通り,2回目に装飾を入れる,というスタイルが採られています。通奏低音は,第10番,第11番がポジティブ・オルガン,その他がチェンバロで演奏されています。

緩徐楽章は伸びやかに,情緒豊かに,そして静かに高揚し,急速楽章は生気に溢れています。控えめにさりげなく施される装飾は,まるで元々作曲されていたかのごとく曲の一部として同化し,そして,ピリッと効いています。音色も艶やかでクリア,テンポの微妙な揺らぎも絶妙。 純粋に音楽の喜びに満ちていて,何度聴いても新たな感動がわき上がってきます。素敵な演奏に感謝!

中でも長調の第9番,第10番,第11番が絶品ですね。寺神戸さんの美質は,こういうシンプルで明るく楽しい曲で最大限に発揮されていると感じます。

録音ですが,響きがたっぷりと取り入れられていてまとわりつきがかなり気になりますが,ヴァイオリン自体の音は比較的明瞭で,音色の劣化も少なく,好きなタイプの録音ではありませんが,悪い印象ではありません。背景に心地よい響きが広がり,その上にくっきりとしたヴァイオリンが浮かび上がる,響きを許せる方にとっては優秀録音と言えるかもしれません。響きを取り入れるなら,最低限こういう音の捉え方をして欲しいものです(それでもちょっと取り入れすぎと思いますが)。また,チェロやチェンバロの実在感が希薄でつかみどころがないところも少し不満に思うところです。

CD試聴記でも触れていますが,1995年に発売された最初のディスク(COCO-78820)にはちょっとしたエラーがありました。これについては別エントリーにて整理したいと思います。