バッハ:無伴奏ヴァイオリンのためのソナタとパルティータ全曲(ワンチ・ホワン)

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バッハ:無伴奏ヴァイオリンのためのソナタとパルティータ全曲
ワンチ・ホワン Wanchi Huang (Violin)
June 4, 5, and July 15, 2013 at WFMT Studios, Chicago
CRC 3419/3420 (P)(C)2015 Centaur Records (輸入盤)
好録音度:★★★★☆
参考: Amazon.co.jpHMV OnlineiconApple Music
CD試聴記」からの転載記事です。

モダン楽器による演奏。 こんな書き方をして本当に申し訳ないのですが,お世辞にも上手いとは言えません。 破綻こそしていないものの,フーガなどの難しい楽章ではたどたどしさが拭えません。 安全運転に徹して楽譜を正確になぞり,その中で精一杯の表現を試みる, 誠実さの感じられる,微笑ましい演奏なので好感は持てるのですが, やはり技術面での不満は大きく残ってしまいます。 音程はそんなに悪くないので,それでかなり救われているとは思います。

録音ですが,残響は背景にふわっと広がる程度であり,直接音を主体に録られています。 距離感も適度で,音色も自然,高域の伸びもあります。 生々しさもあり,楽器の質感もニュアンスもしっかりと聴き取れます。 まずまずの好録音と言えます。 時々音像がフラフラと移動したり,質が若干落ちるように感じるところがありますが,気になるほどではありません。 オーディオ的なクオリティもまずまず良好です。

演奏に若干の難はあるものの,結構楽しく聴くことができました。 録音が良好だからだと思います。 鑑賞する上で「良い録音」であることはとても大切ですね。

バッハ:無伴奏ヴァイオリンのためのソナタとパルティータ全曲(パヴェル・シュポルツル)

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バッハ:無伴奏ヴァイオリンのためのソナタとパルティータ全曲
パヴェル・シュポルツル Pavel Šporcl (Violin)
2015年4月16-18日,5月20-22日,6月15-17日 プラハ,チェコ兄弟団福音教会
SU 4186-2 (P)2015 Supraphon (輸入盤)
好録音度:★★★☆
参考: Tower RecordsAmazon.co.jpHMV OnlineiconApple Music

CD試聴記」からの転載記事です。

モダン楽器による演奏。 ブルーに塗装されたヴァイオリンでどんな演奏を聴かせてくれるのかと興味津々で聴きましたが, 至極真っ当,正統派の立派な演奏でした。 技術レベルも高く,整然と隅々までコントロールが行き届いていますし, 和音の響きの透明な美しさなども特筆できます。 大きな特徴はありませんが,秀演だと思います。

録音ですが,残響が多めでしかも楽器音に被って音色をくすませています。 楽器の質感はそれなりに感じられるのでぎりぎり許容範囲というところです。 残響が気にならない方には問題ないかもしれませんが, 私としてはあまり良い印象ではありません。 スプラフォンは比較的好みの録音が多いレーベルなので期待していたのですが,この録音は少し残念に思います。

シュポルツル氏は「チェコが誇る奇才ヴァイオリニスト」とのこと。 クラシックのみならず民族音楽なども演奏するそうです。 個人的にはその多様な音楽性を生かしたバッハが聴きたかったかなと...

バッハ:無伴奏ヴァイオリンのためのソナタとパルティータ全曲(五嶋みどり)

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バッハ:無伴奏ヴァイオリンのためのソナタとパルティータ全曲
五嶋みどり MIDORI (Violin)
2013年8月13日-17日 WDRフンクハウス,クラウス・フォン・ビスマルク・ザール(ケルン,ドイツ)
ONYX 4123 (P)2015 WDR (C)2015 PM Classics Ltd. (輸入盤)
好録音度:★★★★
参考: Tower RecordsAmazon.co.jpHMV OnlineiconApple Music

CD試聴記」からの転載記事です。

この達観した演奏,いきなりその境地に行ってしまわれましたか... 人間的な温かさ,謙虚で優しさに溢れた音楽。 真摯でありながら,何事にもとらわれず自由に音楽と戯れる,そんな喜びが滲み出ています。 技術的にはもちろん完璧ながらそれが前面に出てこない柔らかなタッチがこの演奏を印象づけています。

ヴァイオリンという楽器は本当に難しいと思います。 どんな手練れであってもその難しさからどうしても音楽に「歪み」が生じます。 名手はそれを完璧な技巧で,研ぎ澄まされた演奏で乗り越え消し去ろうとします。 しかし彼女はそれを遙かに通り越し,さらにその上のステージでの音楽表現を試みようとしているように思えます。 ヴァイオリンという楽器の制約から解放されたこのような音楽は滅多に聴けるものではないと感じます。

彼女は2005年にソナタ第2番を録音していますが,それは静寂の中に静かに鳴り響く内向的な演奏でした。 どちらかといえば寒色系。 しかし,今回の演奏は暖色系に思います。 2005年の録音の延長線上で突き詰められた演奏を想像していたので, 最初聴いたときは「あれっ?,あれっ?」と戸惑い,肩すかしを食らった感があったのですが, 何度も聴くうちにこの演奏にどんどん惹きつけられました。 2005年にあの路線で全集を残してくれていたら,という思いは残るものの, 今ここにこの素晴らしい演奏に巡り会えたことを本当にうれしく思います。

録音ですが,やや残響は多めで楽器音への被りが気になるものの, 素直に捉えていてニュアンスも聴き取ることができるので,良好とまでは言わないまでもまずまずというところです。 空調なのか,低域の雑音レベルがかなり高く,聴く装置や環境によってはかなり気になります。 もう少し配慮が欲しかったところです。

解説書には“Artist's note”として五嶋みどりさん自身による文章が3カ国語で載せられています。 全くの蛇足ですが,日本人ヴァイオリニストなのですから,オリジナルの解説書に日本語も載せて欲しかった...

「CD試聴記」の一部をスマートフォン対応しました。

姉妹サイトの「CD試聴記」は2002年の開設で,PCでの表示しか考えていなかったため,スマートフォンではとても読みづらい状態です。この状況を改善したいと思ったのですが,もはや過去にさかのぼって記事のメンテナンスをするのは工数的に到底困難なため,トップページとバッハ無伴奏ヴァイオリン,無伴奏チェロに限り,また,2015年の記事からに限ってスマートフォンでも見やすくなるようにレスポンシブ対応の新ページを起こしました。味も素っ気もないページですが,スマートフォンでも多少読みやすく,また軽くなったのではないかと思います。

旧ページも更新は続ける予定ですが,メンテナンス工数は増える一方で,好きでやっていることとはいえ,だんだんつらくなってきているのも正直なところです。いろいろと不備が生じてくるとは思いますが,大目にみてやってください(^^;。

テレマン:無伴奏ヴァイオリンのための12のファンタジア(ピーター・シェパード・スケアヴェズ)

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テレマン:無伴奏ヴァイオリンのための12のファンタジア
ピーター・シェパード・スケアヴェズ Peter Sheppard Skærved (Violin)
Recorded at the Church of St. John the Baptist, Aldbury, Hartfordshire, England, on 13th and 21st November 2013
Athene ath 23203 (P)(C)2015 Divine Art Ltd. (輸入盤)
好録音度:★★★★★
参考: Amazon.co.jpApple Music

CD試聴記」からの転載記事です。同ページのほぼ9年ぶりの更新です(^^)。

バロック・ヴァイオリンによる演奏ですが,奏法的にはそれほどバロック的ではありません。 わざとかどうかはわかりませんが,リズムの崩しがたどたどしく,音楽に乗ることができません。 下手とまでは言いませんが,キレが良くなく素直に音楽を楽しむことができません。

録音ですが,わずかに残響感があるものの,背後にふわっと広がる程度であり, 直接音が支配的できわめて明瞭,高域の伸びも申し分なく, 楽器の質感がストレートに伝わってくる好録音です。 少しきつめに聴こえるかもしれませんが,私にはこれくらいがちょうど良いです。 録音の音のキレが抜群なだけに,演奏のキレが良くないのが残念でなりません。

本ディスクには,“12 Fantasies for Flute, TWV40:2-13”のヴァイオリンによる演奏も収録されています(2枚組です)。 また,本ディスクのタイトルが“THE GREAT VIOLINS volume 1: Andrea Amati, 1570”ということで, かつての名器で無伴奏ヴァイオリンの作品を録音するプロジェクトの第1弾なのかもしれません。

スケアヴェズ氏は先日紹介したタルティーニ:30の小さなソナタ集も録音しています。

シベリウス:交響曲第2番,他(小林研一郎指揮/チェコ・フィルハーモニー管弦楽団)

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シベリウス:交響曲第2番ニ長調作品43
シベリウス:交響詩「トゥオネラの白鳥」作品22-2
シベリウス:交響詩「フィンランディア」作品26
小林研一郎指揮/チェコ・フィルハーモニー管弦楽団
1995年2月22-25日 プラハ「芸術家の家」ドヴォルザーク・ホール
PCCL-00277 (P)(C)1995 Pony Canyon (国内盤)
好録音度:★★★★
参考: Tower RecordsAmazon.co.jpHMV Onlineicon

この演奏はすごく牧歌的で南欧の温暖な田園地帯を思い起こさせます。ゆったりと,そして,蕩々と流れる弦楽器の旋律がドラマティックです。こんなシベリウスもなかなk良いかもしれないと思いますね。

録音ですが,低域の豊かな響きの支えの上に中高域が綺麗に乗りスケールの大きな音響を構成しています。残響が多めなのですが,個々の楽器が埋もれることなく質感豊に録られているので印象は悪くありません。個人的にはもう少し残響を押さえてすっきりした録音にしてほしかったとは思いますが,この録音が上記のような温かさにつながっているとも言えると思いますので,まあ良しとするか,というところです。客観的には優秀な方ではないかと思います。

ポニーキャニオンからリリースされていた本ディスクは,今はEXTONからSACDでリリースされているようです。

タグ: [交響曲] 

メンデルスゾーン:弦楽のための交響曲全集(ミヒャエル・ホーフシュテッター指揮/シュトゥットガルト室内管弦楽団)

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メンデルスゾーン:弦楽のための交響曲全集
ミヒャエル・ホーフシュテッター指揮/シュトゥットガルト室内管弦楽団
2007年9月,11月, 2008年3月,9月,11月 シュトゥットガルト・ボートナング・リーダークランツハレ
C 763 093 D (P)(C)2009 ORFEO International Music (輸入盤)
好録音度:★★★★
参考: Tower RecordsAmazon.co.jpHMV Onlineicon

この弦楽のための交響曲は,メンデルスゾーンが12歳から14歳にかけて作曲した作品で,第1番から第6番は演奏時間がだいたい10分程度の小曲ですが,第7番以降は20分を越え,第11番に至っては40分近くという大作です。中学生くらいの少年が書いた作品ですが,充実した立派な曲集ですね。

少し前にアヒム・フィードラー指揮/ルツェルン祝祭弦楽合奏団の全集を取り上げましたが,これも同時期にメンデルスゾーン生誕200年記念としてリリースされたもののようです。室内管弦楽団の比較的小編成の演奏ながら,小編成とは思えないシンフォニックでスケールの大きな響きを出しています。そして音楽が生き生きと躍動感にあふれているのが素晴らしいです。オーケストラも上手く完成度が高い全集だと思います。

録音ですが,かなり残響が多いのですが,直接音成分の比率がそこそこあるために音の曇りは少なく,弦楽器の魅力を十分に伝えてくれる録音だと思います。もしかしたらイコライジングで少し高域を持ち上げて音色のくすみを緩和しているかもしれません。そんなように聴こえます。私にとってはやはり残響が多すぎます。ただ多くの方には受け入れられる録音かもしれません。

シベリウス:交響曲全集,他(レナード・バーンスタイン指揮/ニューヨーク・フィルハーモニック)

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シベリウス:交響曲全集,他
レナード・バーンスタイン指揮/ニューヨーク・フィルハーモニック
録音 1960~1967年
88875026142 (P)(C)2015 Sony Music Entertainment (輸入盤)
好録音度:★★★★
参考: Tower RecordsAmazon.co.jpHMV Onlineicon

1960年代,およそ50年前にバーンスタインがニューヨーク・フィルと録音したシベリウスのリマスター盤です。収録曲は下記の通りです。

シベリウス:交響曲全集
シベリウス:交響詩「ルオンノタル」作品70
シベリウス:ポヒョラの娘 作品49
シベリウス:フィンランディア 作品26
シベリウス:悲しきワルツ 作品44
シベリウス:トゥオネラの白鳥 作品22-3
シベリウス:ヴァイオリン協奏曲ニ短調 作品47 (*1)
ブルッフ:ヴァイオリン協奏曲第1番ト短調 作品26 (*2)
グリーグ:ペール・ギュント第1組曲,第2組曲

*1 ジノ・フランチェスカッティ(Vn)
*2 トーマス・ジッパーズ指揮,ジノ・フランチェスカッティ(Vn)

交響曲のみのコメントですが,とても力強いダイナミックなシベリウスです。近年の多くの演奏と比べると随分と趣が異なります。シベリウス独特の情緒感は希薄で,指揮者の個性,オーケストラの個性が際立った演奏と言えるとは思いますが,こういう表現の仕方がごく普通だった時代の演奏という風に私は受け取りました。演奏スタイルの歴史を感じますね。この中では特に第6番が特徴的で,両端楽章の落ち着きのない速いテンポに面食らいますが,ちょっと他では聴けない演奏で結構楽しめました。

録音ですが,残響は控えめで各々の楽器を明瞭に分離感よく捉えたドライな好録音なのですが,音色が古臭く硬質でバランスが崩れてキンキンとやや耳障りであり,また,少々歪みっぽく粗いのも欠点です。誇張された音作りも時代を感じされる要因になっていますが,聴き取りやすく演出感もあまりないため印象は悪くないのですが。惜しいです。

タグ: [交響曲] 

ヴィヴァルディ:協奏曲集「四季」,他(ダニエル・ゼペック(弾き振り)/ドイツ・カンマーフィルハーモニー・ブレーメン)

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ヴィヴァルディ:協奏曲集「四季」
ヴィヴァルディ:トリオ・ソナタ作品1-12「ラ・フォリア」
ダニエル・ゼペック Daniel Sepec (Violin & Direction)
ドイツ・カンマーフィルハーモニー・ブレーメン
Die Kammerphilharmonie, Bremen, March 6-9 2010 and March 8-9 2011
COV 21112 (P)(C)2011 Coviello Classics (輸入盤)
好録音度:★★★★☆
参考: Tower RecordsAmazon.co.jpHMV Onlineicon

以前から何度も取り上げさせていただいている,音工房Zのメールマガジンで紹介されていたディスクです。ディスクの紹介をされている方と良い録音の考え方が同じなのかどうかは定かではありませんが,結果として選ばれているディスクは私の好みにも合うものが多いと感じます。

ダニエル・ゼペックは,ドイツ・カンマーフィルハーモニー・ブレーメンのコンサートマスターを務め,また,アルカント・カルテットのメンバーとしても活躍しているとのことです。参考に挙げたTower RecordsHMV Onlineのディスク紹介にもありますが,この曲に添えられたソネットを大きく意識させる大胆な表現がされています。こういったユニークな演奏は今や珍しくはないと思いますが,まだまだ表現の可能性はあるんだということに感心させられます。

ちなみに編成は,ソロを含め,弦楽器が5-4-3-2-1,ハープシコード/オルガン,リュート/ギター,ハープが加わります。モダン楽器によるキレの良い現代的な演奏ですが,リュートやハープが独特の古雅な雰囲気を醸し出しているのが面白いと思います。

さて録音ですが,残響は中低域中心に少し多めに取り入れられていますが,ブーミーになることなくスッと綺麗に減衰するため被りによる悪影響が少なく,さらに直接音主体に録られているので,曇ることなく楽器本来の響きが美しく届きます。雰囲気も自然で演出感が少ないのも良いと思います。オーディオ品質も良好で,優秀録音と言えるでしょう。