ボロディン:弦楽四重奏曲第2番,スメタナ:弦楽四重奏曲第1番「我が生涯より」(ストリングカルテット響)

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ボロディン:弦楽四重奏曲第2番ニ長調
スメタナ:弦楽四重奏曲第1番ホ短調「我が生涯より」
ストリングカルテット 響 String Quartet Hibiki
Recorded at Salamanca Hall, Gifu Japan, 10, 11, August 2015
OTTAVA records OTVA-0008 (P)(C)2015 MI7 Japan Inc. (国内盤)
好録音度:★★★★
参考: Tower RecordsAmazon.co.jpHMV Onlineicone-onkyo

ストリングカルテット響は,2004年,桐朋学園大学の卒業生で結成された弦楽四重奏団。メンバーは大宮臨太郎(Vn),宇根京子(Vn),亀井綾乃(Va),長瀬夏嵐(Vc)で,ヴァイオリンは曲によって第1と第2が入れ替わるようです。

最近は日本人の弦楽四重奏団の録音を耳にする機会が増えてきたのは本当にうれしいことです。これもそんな演奏の一つですね。とても良く歌う演奏で,その節回し,旋律と伴奏,掛け合いのバランスも定石通り,アンサンブルもきっちりとしています。この演奏水準の高さと生真面目さには思わず笑みがこぼれてしまいます。世界的に評価される演奏なのかどうかはわかりませんが,少なくとも日本人による日本人らしい完成度の高い演奏として私は誇りたいと思いますね。個々の奏者の音色に魅力が加わればもっと良くなると思います。さらに磨きをかけ,これからも素晴らしい演奏を聴かせて欲しいと思います。

録音ですが,それぞれの奏者の音色,楽器の質感を濃いめに捉えてはいるものの,響きが被ってややくすみ気味です。オーディオ品質は優秀だと思いますが,もう少しクリアにすっきりと録って欲しかったところです。惜しい録音です。

モーツァルト:弦楽四重奏曲第14番K387「春」,第17番K458「狩」

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モーツァルト:弦楽四重奏曲第14番K387「春」,第17番K458「狩」
ハーゲン四重奏団 Hagen Quartet
録音 2014年12月
MYR017 (P)2014 (C)2015 myrios classics (輸入盤)
好録音度:★★★★☆
参考: Tower RecoredsAmazon.co.jpHMV Onlineicon

ハーゲン四重奏団は2010年にmyriosレーベルに第16番K428を録音していました。このディスクは以前取り上げていました(→2012年1月4日の記事)。これを聴いて,モーツァルトに関しては,個人的には残念な方向に向かっていると思ったのですが,このディスクではその傾向がさらに進化してしまっています。やはり「ため」が多く(第14番の第1楽章が特に...),自然な呼吸感で聴けないために胸が苦しくなり痛くなります。私にとって生理的に受け付けられない音楽です。第14番の第2楽章以降はそれほどでもなかったので何とか聴き通せましたが,苦痛を感じながらであったことには変わりありません。残念ですがおそらくもう二度と聴かないと思います。

様々なアプローチや挑戦があるからこそクラシック音楽の聴き比べは楽しいのですし,そういったチャレンジ自体は歓迎すべきなのですが,ハーゲン四重奏団がこういうアプローチを選択したというのはとても残念に思います。

録音ですが,邪魔になる残響感はほとんどなく,彼らのシャープな演奏を克明に録った好録音と言えます。もう少し寄って質感と生々しさを強めに出しても良いんじゃないかと思いますが,それでもこれはなかなか良いと思います。

ヘッドホン ゼンハイザー HD700 周波数特性&レビュー

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ヘッドホン ゼンハイザー Sennheiser HD700

オープン・ダイナミック型,インピーダンス150Ω,ケーブル両だし(着脱可) 3m 6.3mmストレートプラグ,2012年発売
参考: メーカーサイトAmazon.co.jp

ヘッドホン・イヤホン 周波数特性 測定結果にも掲載しています。

ゼンハイザーのHD650と高級機のHD800との間の位置づけ?のモデルで価格的にも確かに中間的です。 どうも中途半端な印象が拭えず,また,デザインも魅力を感じなかったので今まで注目してこなかったのですが, 重い腰を上げて聴いてみました。

音質は想像以上にニュートラルで癖がなく,また,HD800には及ばないにしても十分に広い音場感が得られます。 フラットですが,高域が少し強めのチューニングになっているため,クリアーで音の伸びが良く,音色にも輝きがあります。 上品でおとなしい(そして軽めの)音質であり,このクラスにふさわしいクオリティを備えていると思います。

装着感ですが,イヤーカップの大きさが十分大きく,イヤーパッドの開口も大きいため, 耳介に全く何も触れずに装着できるため極めて快適です。 重量も十分に軽く,長時間の使用も全く問題ありません。

さすがにゼンハイザーの上級モデルだけあって,音の良さは素晴らしいですね。 HD650とHD800との音質の差別化も絶妙になされているのはさすがです。 デザインはやっぱり好きになれませんが,見直しました。 なお,開放型のため音漏れはものすごくあります。 ホームユースなので問題はありませんが。

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図1 Sennheiser HD700 周波数特性
■SPL ■SPL[1] ■2nd D ■3rd D ■Impedance ■Impedance[2]
[1]人工耳アダプターなし / [2]非装着状態 / 測定環境

タグ: [ヘッドホン] 

ユリウス・レントヘンの協奏曲を聴く

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レントヘン:ヴァイオリン協奏曲集
リーザ・フェルシュトマン Liza Ferschtman (Violin)
ダヴィト・ポルセリーン指揮/ラインラント=プファルツ州立フィルハーモニー管弦楽団
Ludwigshafen, Philharmonie, April 13-18, 2009
cpo 777 437-2 (P)2011 cpo (輸入盤)
好録音度:★★★★☆
参考: Tower RecordsAmazon.co.jpHMV OnlineiconApple Music
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レントヘン:チェロ協奏曲全集(第1番~第3番)
グレゴール・ホルシュ Gregor Horsch (Cello)
ダヴィト・ポルセリーン指揮/オランダ交響楽団
Enschede Musikzentrum, June 2006
cpo 777 234-2 (P)2013 cpo (輸入盤)
好録音度:★★★★☆
参考: Tower RecordsAmazon.co.jpHMV OnlineiconApple Music
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レントヘン:ピアノ協奏曲第2番,第4番
マティアス・キルシュネライト Matthias Kirschnereit (Piano)
ダヴィト・ポルセリーン指揮/ハノーファー北ドイツ放送フィルハーモニー
Großer Sendesaal, NDR Hannover, May 5-9, 2008
cpo 777 398-2 (P)2011 cpo (輸入盤)
好録音度:★★★★☆
参考: Tower RecordsAmazon.co.jpHMV OnlineiconApple Music

秘曲の宝庫!?(^^;,cpoレーベルから。Apple Musicでの試聴です。未知の作曲家の協奏曲を聴いてみました。

ユリウス・レントヘン(またはレントゲン Julius Röntgen 1855-1932)は,オランダで活躍したドイツの作曲家,音楽教師で,ブラームスとも交流があり,ブラームス本人の指揮でピアノ協奏曲第2番を演奏したり,アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団の創設にも尽力したとのこと。交響曲18曲,ピアノ協奏曲7曲,ヴァイオリン協奏曲3曲,チェロ協奏曲3曲,弦楽四重奏曲22曲,などを含め,600曲を越える作品を残したとのことです(以上,Wikipediaより)。

今まで全く名前すら知らなかった作曲家の作品ですが,美しくロマンティックなメロディが溢れる佳作揃いで聴き応えがあります。まだ聴き始めたばかりなのでもう少しじっくりと楽しみたいと思っています。交響曲の録音もいくつか出ていますので,こちらも聴いてみようかと。弦楽四重奏曲も多数残しているようですが,こちらの方はまだ録音を見つけられていません。個人的にはもう少し評価されても良い作曲家ではないかと思っております。

録音ですが,協奏曲の録音として標準的であり,オーケストラに対してソロが明瞭に聴こえる点が良いと思います。特に優れているという感じではないのですが,欠点が少ないという点でまずまずの好録音だと思います。

私にとってApple Musicはこういう未知の楽曲との出会いをサポートしてくれる強力なツールです。そしてcpoレーベル,いいですねぇ。

バッハ:無伴奏チェロ組曲全š曲(マット・ハイモヴィッツ)

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バッハ:無伴奏チェロ組曲全曲
マット・ハイモヴィッツ Matt Haimovitz (Cello)
2015年4月 芸術文化アカデミー(ニューヨーク)
PTC 5186555 (P)2015 Pentatone Music (C)2015 Oxingale Production (輸入盤)
好録音度:★★★☆
参考: Tower RecordsAmazon.co.jpHMV OnlineiconApple Music

CD試聴記」からの転載記事です。

バロック・チェロでの演奏。 タイトルが“THE CELLO SUITES According to Anna Magdalena ”とありますので, アンナ・マグダレーナの写筆譜に従った演奏のようです。 ただし,第1番Gigueの写筆譜には存在する32小節目の半拍しかない小節はやっぱり省略されていますね...

持ち前の技術力の高さを活かした大胆で闊達な演奏。 吸い付くような弓遣いによる起伏が大きいフレージングが印象的です。 粘りのあるニュアンスに富んだ音色も素晴らしいです。 バロック楽器とのことですが,ざらつきのあるガサガサした音色は確かにバロック楽器のそれなのですが, 音楽自体はむしろモダンな印象を残します。

録音ですが,残響は多めで楽器に被り気味,ややモゴモゴとして伸びのない,濁った精彩に欠ける音になってしまっています。 演出感もかなり感じられます。 許容範囲だとは思うのですが,もっとすっきりと,そして生々しく録って欲しかったと思います。

本ディスクはハイモヴィッツ氏2回目の録音。 楽器は,ゴフリラー(1710)とチェロ・ピッコロコルマー(18世紀)を使用。 調律はA=415Hz。

タグ: [器楽曲]  [チェロ] 

バッハ:無伴奏ヴァイオリンのためのソナタとパルティータ全曲(フリフ・スィグリョンスドーティル)

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バッハ:無伴奏ヴァイオリンのためのソナタとパルティータ全曲
フリフ・スィグリョンスドーティル Hlíf Sigurjónsdóttir (Violin)
Recorded in the Church of Reykholt, Borgarfjörður, Iceland, in December 2000 [BWV1006], June 2001 [BWV1004], September 2002 [BWV1002], and October 2007 [BWV1001, 1003, 1005]
MSR Classics MSR 1605 (P)(C)2015 Hlíf Sigurjónsdóttir (輸入盤)
好録音度:★★★
参考: Amazon.co.jp

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自主制作 HSB03 (輸入盤)
※上記と同じ内容のディスク

CD試聴記」からの転載記事です。

正直なところ,技術的には相当苦しいと言わざるを得ません。 特にソナタ。 フーガなど止まってしまいそうですごくスリリングです(^^;。 一方,パルティータ第2番だけは他の曲に比べるとかなり出来が良いです。 この出来を考えると他の曲は明らかに弾き込み不足ではないかと思ってしまいます。 ただ全体を通して奏者の技量の範囲で丁寧に演奏をしておられるとは思いますので, 大きな破綻はなく持ちこたえているという印象で,それはそれで楽しめました。

録音ですが...すごい残響です。 しかし,楽器音の輪郭はそれなりに感じられ,質感もそこそこ伝わってくるので, 残響量の割にはマシかなと思います。 もちろん私の好みではありませんが。

フリフ・スィグリョンスドーティルはアイスランドのヴァイオリニスト。 名前の日本語表記は自信なしです。 公式Webサイトがあります。 2010年頃に自主制作のディスクを公式Webサイトから購入し,レビューしていました。 2015年にMSR Classicsより再発売されたようです。 内容は同じでした。

ブラームス:ヴァイオリン協奏曲,バルトーク:ヴァイオリン協奏曲第1番(ジャニーヌ・ヤンセン(Vn)/アントニオ・パッパーノ指揮/ローマ聖チェチーリア国立音楽院管弦楽団/ロンドン交響楽団)

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ブラームス:ヴァイオリン協奏曲ニ長調作品77
バルトーク:ヴァイオリン協奏曲第1番Sz.36(*)
ジャニーヌ・ヤンセン Janine Jansen (Violin)/アントニオ・パッパーノ指揮/ローマ聖チェチーリア国立音楽院管弦楽団/ロンドン交響楽団(*)
2015年2月21-24日 ローマ,聖チェチーリア国立音楽院,2014年8月26日 ロンドン,ウォルサムストウ,アセンブリー・ホール
478 841-2 (P)2015 Decca Music Group Ltd. (輸入盤)
好録音度:★★★☆
参考: Tower RecordsAmazon.co.jpHMV OnlineiconApple Music

Apple Musicでの試聴です。

ヴィブラートをたっぷりかけ,ポルタメントを多用して濃厚に歌う,往年の巨匠を彷彿とさせる堂々たる演奏。近年スマートで整った演奏をする人が多くなり,これだけヴァイオリン臭をプンプンさせる演奏になかなか出会えない気がします。そして実にかっこいい! ヴァイオリンはこうでなきゃ,と言わせる強さと魅力を備えていると思います。

一方録音はというと,オーケストラはまあ普通でそんなに悪くないと思うのですが,ソロが引っ込み気味で,ニュアンスが感じ取りづらく,細部が聴こえてきません。イライラが募ります。この録音は本当に残念です。

ベートーヴェン:交響曲全集(ヴォイチェフ・ライスキ指揮/ポーランド室内フィルハーモニー管弦楽団)

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ベートーヴェン:交響曲全集
ヴォイチェフ・ライスキ指揮/ポーランド室内フィルハーモニー管弦楽団
The Church of "Stella Maris" in Sopot (Poland), 2005(nos. 7, 8), 2006(nos. 1, 2), 2007(nos. 5, 6), 2009(nos. 3, 4), St. John's Church in Gdansk, 2015(no. 9)
TACET 974 (P)(C)2015 TACET (輸入盤)
好録音度:★★★★
参考: Tower RecordsHMV Onlineicon

2006年から2009年にかけて第1番から第8番が録音されSACDでリリースされていましたが,今年第9番が録音されてやっと全集として完結したようです(全集はCDで,第9番のSACDは来年発売とのこと)。

小編成オーケストラによる演奏ですが,強烈なアクセントが随所で見られる力強さと速いテンポで颯爽と駆け抜けるダイナミックでキレの良い演奏です。小編成のハンデをカバーしようとしているのか少し頑張りすぎて落ち着きがなくやかましい感じ出てしまっていますが,それを除けば意外に癖のない素直な演奏のようにも思います。個人的には小編成なら小編成にしかできない表現を追求して欲しいと思いますが,でもこれはこれで面白い演奏だと思います。

録音ですが,TACETレーベルらしい,ものすごい残響感です。残響の量も多ければ残響時間も相当長いです。ただ,これだけ残響を取り込んでいながら全体の音色のバランスが崩れず,楽器の本来の音色,ヌケのよさを保っているのは上出来だと思います。楽器音が濁らないよう,直接音とのバランスを絶妙に取っていますし,広がり感をきちんと持たせて楽器音との分離が取れるよう配慮されていると思います。もちろん私はこのような録り方であっても残響を肯定するつもりはありませんし,ない方が良いと思っていますが,もし残響を取り入れるならこれは一つのお手本になるかな,とは思います。これはちょっと多すぎるとは思いますが。残響が好きな方なら優秀録音かもしれません。

ただし,残響が強調されるようなウェットな再生環境だと残響がかなり煩わしく感じられます。カラッとしたドライでクリアな再生環境で聴いてやっと許容範囲に入ってきます。

なお,この中では第7番,第8番は少し質が落ちます。あとは多少のばらつきはあるものの,ほぼ統一感があります。

タグ: [交響曲] 

シューベルト:アルペジョーネ・ソナタ,フランク:チェロ・ソナタ,ストラヴィンスキー:イタリア組曲(タチアナ・ヴァシリエヴァ(Vc)/パスカル・ゴダール(P))

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シューベルト:アルペジョーネ・ソナタ イ短調 D821
フランク:チェロ・ソナタ イ長調
ストラヴィンスキー:イタリア組曲
タチアナ・ヴァシリエヴァ Tatjana Vassiljeva (Cello)
パスカル・ゴダール Pascal Godart (Piano)
2003年12月 パリ
4761279 (P)2004 Accord (輸入盤)
好録音度:★★★★☆
参考: Tower RecordsAmazon.co.jpHMV OnlineiconApple Music

Apple Musicでの試聴です。

ハイドンのチェロ協奏曲の上品で美しい音色の演奏が良かったヴァシリエヴァが2003年に録音していたアルバム。フランクはヴァイオリン・ソナタの編曲です。やはりここでも持ち前の美音を活かした清楚な演奏を聴かせてくれます。演奏もさることながら,音色自体に魅力があるというのは素晴らしいことだと再認識をさせてくれますね。

録音ですが,残響を控えめに,ヴァシリエヴァの美しい音色を色づけなく明瞭に,綺麗に,質感豊かに録っています。距離感も適切でごく自然なところが好ましいです。残響に邪魔されずチェロの音色を堪能できるのがうれしいですね。地味ですが好録音です。

モーツァルト:ヴァイオリン協奏曲全集(ダヴィド・グリマル(Vn)/レ・ディソナンス)

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モーツァルト:ヴァイオリン協奏曲全集
ダヴィド・グリマル David Grimal (Violin)
レ・ディソナンス Les Dissonances
2014年3月1日 パリ,シテ・ド・ラ・ミュジーク
LD006 (P)2015 Les Dissonances (輸入盤)
好録音度:★★★★☆
参考: Tower RecordsAmazon.co.jpHMV OnlineiconApple Music

Apple Musicでの試聴です。(→気に入りましたので,結局ディスクを購入しました)

先日紹介したブラームスのヴァイオリン協奏曲と同時期に発売されたディスクで,同じく拍手のはいるライヴ録音です。やはり高い技術力を縦横無尽に活かした独特の節回しで,キレが良くスピーディで刺激的な音楽を展開しています。透明感と輝きのある音色もとても魅力的です。ワクワクする演奏ですね。素晴らしいです。オーケストラもこの奔放とも言えるソロにピッタリと驚くほどよく合わせています。

そして,この録音も素晴らしいです。残響は控えめでオーケストラもソロも明瞭で抜けの良さも申し分ありません。オーケストラは見通しが良く,ソロはさらにフォーカスされてオーケストラからくっきり浮き上がっています。弓が弦から離れる瞬間まで些細にニュアンスが伝わってきます。低域はあまり強調されておらずで少し腰高で高域の刺激が強いようにも思いますが,このクリアな音色は本当に魅力的です。ブラームスのヴァイオリン協奏曲の録音とは全く別物です。

演奏も録音も素晴らしい痛快な全集でした。

ハイドン:チェロ協奏曲,ショパン,アルカン:チェロ・ソナタ,他(タチアナ・ヴァシリエヴァ(Vc))

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タチアナ・ヴァシリエヴァ・セット~ハイドン,ショパン,アルカン
タチアナ・ヴァシリエヴァ Tatjana Vassiljeva (Cello)
MIR 288 (C)2015 MIRARE (輸入盤)
参考: Tower RecordsAmazon.co.jpHMV Onlineicon

これは下記の既発売の2つのディスクを単に1つのボックス入れてセットにしたものです。2015年12月現在の価格で1,600円を切っていますので,かなりお買い得ですね(^^。聴きたかったのはハイドンのチェロ協奏曲なのですが,こちらのセットの方が1枚買うより安かったのでこれを選んだ次第です。

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ショパン:チェロ・ソナタ ト短調 作品65
ショパン:序奏と華麗なるポロネーズ ハ長調 作品3
アルカン:演奏会用ソナタ ホ長調 作品47
タチアナ・ヴァシリエヴァ Tatjana Vassiljeva (Cello)
ジャン=フレデリック・ヌーブルジェ Jean-Frederic Neuburger (Piano)
Enregistrement réalisé par Cécile Lenoir en septembre 2009
MIR 107 (C)2010 MIRARE (輸入盤)
好録音度:★★★★
参考: Tower RecordsAmazon.co.jpHMV Onlineicon
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ハイドン:チェロ協奏曲第1番ハ長調 Hob.VIIb-1
ハイドン:チェロ協奏曲第2番ニ長調 Hob.VIIb-2
モーツァルト:交響曲第29番イ長調 K.201
タチアナ・ヴァシリエヴァ Tatjana Vassiljeva (Cello)
オーギュスタン・デュメイ指揮/ワロニー王立室内管弦楽団
Enregistré Salle Colonne à Paris les 10, 11, et 12 novembre 2012
MIR 220 (C)2013 MIRARE (輸入盤)
好録音度:★★★★
参考: Tower RecordsAmazon.co.jpHMV Onlineicon

ヴァシリエヴァは1977年生まれのロシア出身のチェリスト。数々の国際コンクールでの入賞歴があり,2001年のロストロポーヴィチ国際チェロ・コンクールでは優勝もしているとのことです。すでにバッハ無伴奏チェロ組曲も録音しており,素晴らしい演奏を聴かせてくれました(レビューはこちら)。

この人のチェロの音色は本当に雑味がなくて美しいです。チェロでこのような音色を出せる人は本当に限られているように思います。ハイドンの協奏曲はこの美音を活かしたニュアンス豊かで気品ある上質の音楽を聴かせてくれます。上品すぎてインパクトには欠けますが,彼女の場合はそれで良いのです(^^。

チェロソナタの方はあまり聴かない曲なので,この機会に楽しませてもらおうと思っています。

録音ですが,残響は少し多めですが,オーケストラはふわっとした響きを伴いつつも音色が大きく損なわれることなく聴こえてきますのでまずまず良好,ソロは少し残響の被りによる音色のくすみが気になります。協奏曲なのでもう少しオーケストラとのコントラストをはっきりさせて,一段明瞭にして欲しいところです。せっかくの美音が損なわれていて少々残念です。

R. シュトラウス:ドン・ファン,死と変容,ティル・オイレンシュピーゲルの愉快ないたずら(マンフレート・ホーネック指揮/ピッツバーグ交響楽団)

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R. シュトラウス:交響詩「ドン・ファン」作品20
R. シュトラウス:交響詩「死と浄化」作品24
R. シュトラウス:交響詩「ティル・オイレンシュピーゲルの愉快ないたずら」作品28
マンフレート・ホーネック指揮/ピッツバーグ交響楽団
2012年6月8-10日 ピッツバーグ,ハインツ・ホール
FR707SACD (P)2013 Reference Recordings (輸入盤)
好録音度:★★★★
参考: Tower RecordsAmazon.co.jpHMV OnlineiconApple Music

ホーネック指揮ピッツバーグ交響楽団のディスクをもう一つ。演奏と録音の傾向は先に取り上げたドヴォルザーク交響曲第8番と同じです。ゴージャスなサウンドで見事に本領が発揮されています。理屈抜きに楽しめます(^^。

タグ: [管弦楽曲] 

ドヴォルザーク:交響曲第8番,ヤナーチェク:「イェヌーファ」組曲(マンフレート・ホーネック指揮/ピッツバーグ交響楽団)

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ドヴォルザーク:交響曲第8番ト長調作品88
ヤナーチェク:「イェヌーファ」組曲
マンフレート・ホーネック指揮/ピッツバーグ交響楽団
2014年12月5-7日 ピッツバーグ,ハインツ・ホール
FR710SACD (P)2014 Reference Recordings (輸入盤)
好録音度:★★★★
参考: Tower RecordsHMV OnlineiconApple Music

先入観で聴いてはいけないと思いつつ,スラブ的でもなく,「イギリス」的でもなく,これはやはりアメリカ的ドヴォルザークだと思う。先日取り上げたベートーヴェン交響曲第5番,第7番と似たアプローチですが,もう少し自由さと「遊び」があるように思います。好き嫌いが分かれそうな演奏ですね。私は結構好きな方です。

録音ですが,ベートーヴェン交響曲第5番,第7番で感じたやり過ぎ感はなく,ぎりぎりのところで上手くバランスを取っていると思います。残響はやはり多く(しかもワンテンポ遅れてやってくる感じも同じ),密度感,詰め込み感はあるのですが,逆に飽和感はなく,音色を少しドライな方向に振っているため,比較的聴きやすく仕上がっています。演出感もあまりないのは良いと思います。私の好みからするともっとすっきりと録って欲しいところなのですが,これならまずまずですし,優秀録音と評価される方もいらっしゃるでしょう。

ブラームス:ヴァイオリン協奏曲,交響曲第4番(ダヴィド・グリマル(Vn)/レ・ディソナンス)

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ブラームス:ヴァイオリン協奏曲ニ長調作品77
ブラームス:交響曲第4番ホ短調作品98
ダヴィド・グリマル(Violin),レ・ディソナンス
2012年10月27日(Op.77),2013年2月12日(Op.98)
LD004 (P)2014 Les Dissonances (輸入盤)
好録音度:★★★★
参考: Tower RecordsAmazon.co.jpHMV OnlineiconApple Music

Apple Musicでの試聴です。

ダヴィド・グリマル率いるレ・ディソナンスのディスクは今までにベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲,交響曲第7番交響曲第5番「運命」他を取り上げてきましたが,どちらも素晴らしい演奏でした。このディスクも最後に拍手の入るライヴ録音ですが,この拍手を聴いて初めて,あぁこれはライヴだったのか!と認識するくらい完成度の高い演奏です。グリマルのソロは技術力がないと出来ない独特のクールな節回しが特徴で,透明で美しい音色なのですが,色気のない禁欲的な印象も受けます。一長一短といったところでしょうか。カデンツァはヨアヒム版ではなく,おそらく自作ではないかと思います。

そして期待以上に良かったのが交響曲第4番。コンパクトにキリッと締まった見通しの良い,室内楽的な印象さえ受ける演奏です。大編成のオーケストラの豊潤で深い響きはありませんので,こんなのブラームスじゃないと思われる方もきっと多いのではないかと思いますが,私はこんなのが好きですね。ベルグルンド指揮ヨーロッパ室内管弦楽団のイメージに近いと思います。これは是非全集録音を期待したいところです。

さて録音ですが,残響が少し多めで,ヴァイオリン協奏曲は特にソロが少し遠めなために響きの影響を受けてくすみがちです。これが自然なバランスといえばそうなのかもしれませんが,少なくともソロはもう少しくっきりと質感豊かに録って欲しかったところです。オーケストラも個々の弦楽器奏者の音色が感じられそうな録り方をしているのは良いのですが,やはり響きが被って音色を損ない,クリアさに欠けるのが惜しいです。

それにしても,ヴァイオリン協奏曲と交響曲第4番,1枚のディスクに収まるんだ,と感心しました。およそ79分でぎりぎりですが。

ベートーヴェン:ヴァイオリン・ソナタ全集(ルノー・カプソン(Vn)/フランク・ブラレイ(P))

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ベートーヴェン:ヴァイオリン・ソナタ全集
ルノー・カプソン Renaud Capuçon (Violin)
フランク・ブラレイ Frank Braley (Piano)
2009年9月16-20日 スイス,ラ・ショー=ド=フォン,ルール・ブルー,テアトル・サル・ド・ミュジーク
9996420010 (P)2010 EMI Records/Virgin Classics (輸入盤)
好録音度:★★★★☆
参考: Tower RecordsAmazon.co.jpHMV OnlineiconApple Music

モダン楽器らしい現代的でスマートな演奏ですね。力強くアクセントも効いていますし,明るく歌心にも溢れ,生き生きと喜びに満ちているのが素晴らしいです。音色も美しくこの奏者の美質が最大限活かされています。過剰な演出や違和感を覚える表現は一切なし,シンプルかつ自然で素直に音楽を受け入れられます。

録音ですが,少し残響感があり,楽器音に被りが感じられるものの,音色の美しさは保たれており,楽器の質感,ニュアンスも豊かに感じられます。きめの細かさ,高域の伸びもあり,まずまず良好な録音と言えると思います。満足する録音ではありませんが,まあ納得はできるかなと。

この全集,最近聴いた中では最も気に入りました。長く付き合えそうな気がします。愛聴盤候補になりました。

ブラームス:ヴァイオリン協奏曲,弦楽五重奏曲(弦楽合奏版)(アンティエ・ヴァイトハース/カメラータ・ベルン)

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ブラームス:ヴァイオリン協奏曲ニ長調作品77
ブラームス:弦楽五重奏曲第2番ト長調作品111(弦楽合奏版)
アンティエ・ヴァイトハース(Voilin),カメラータ・ベルン
2014年12月 ベルン,カジノ(Op.77),チューリッヒ放送スタジオ(Op.111)
4260085533282 (P)2015 Decca Music Group Ltd. (輸入盤)
好録音度:★★★★
参考: Tower RecordsAmazon.co.jpHMV OnlineiconApple Music

Apple Musicでの試聴です。

ヴァイトハースはアルカント四重奏団の第1ヴァイオリン奏者で,1962年に設立された弦楽オーケストラのカメラータ・ベルンの音楽監督も務めているとのことです。ヴァイトハースのヴァイオリンはとてもクールな印象があるのですが,抜群の技術のキレで奏でられるきめ細やかなフレージングに力強く情熱的な表現が加わり,協奏曲としてとても魅力的な音楽に仕上がっています。

カップリングの弦楽五重奏曲第2番は,ヴァイトハースとカメラータ・ベルンのコントラバス奏者ケーティ・シュトイリによる弦楽合奏版とのことで,小編成の弦楽オーケストラの緻密なアンサンブルと,小編成とは思えないスケール感が素晴らしい秀演です。ヴァイオリン協奏曲が目的で聴いたこのアルバムですが,これは思わぬ掘り出し物です。

さて録音ですが,残響感はそれほどないものの,マイク位置が遠いのか,全体に響きが被って音色をくすませているのですが,それでも不思議なことに音は綺麗な印象を保っています。しかし,ソロ,オーケストラとも下支えの希薄でどことなく浮ついた音であり,楽器のとらえ方も弱く,ソロはオーケストラと同化して聴き取りづらく,欲求不満が募る音作りです。少なくともソロはもう少しボディ感・実体感のある音で録って欲しいところです。演奏が素晴らしいだけにこの録音はすごく惜しいと思います。

これに対して弦楽五重奏曲の方はオーケストラを豊潤に,濃く捉えていて,やや残響は多めですが,こちらの方がわずかながら良い印象です。弦楽合奏の録音としてまずまずだと思います。

ベートーヴェン:交響曲第5番「運命」,第7番(マンフレート・ホーネック指揮/ピッツバーグ交響楽団)

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ベートーヴェン:交響曲第5番「運命」,第7番
マンフレート・ホーネック指揮/ピッツバーグ交響楽団
2014年12月5-7日 ピッツバーグ,ハインツ・ホール
FR718SACD (P)2015 Reference Recordings (輸入盤)
好録音度:★★★★
参考: Tower RecordsAmazon.co.jpHMV OnlineiconApple Music

これは凄まじくパワフルで痛快なベートーヴェンですねぇ。しかもオーケストラが徹底的に鍛え上げられていて全く乱れません。「ため」のない疾走するリズム感,気持ちよいほどの頭拍の揃いも素晴らしいです(第7番の最初の1音がこんなにビシッと決まった演奏を初めて聴きました)。そして...なんかすごく騒々しいです(^^;...録音のせいかもしれませんが。深みや味わいとはだいぶ遠い演奏ですが,とにかく元気が出ます。

さて,優秀録音で有名というReference Recordingsの録音なのですが,この録音はとにかく密度感がものすごくあります。直接音成分はキレがあるので良いのですが,中低域に偏った残響のエネルギー感もものすごいです。ブーミーではないのですが,ワンテンポ遅れて残響がブワッとくる感じです。やや人工的な響きです。

そして,再生装置によっては低域の飽和による歪み感があったり(コンプレッサーを強くかけたような感じ),音がつぶれて荒れるように聴こえる場合がありました。この録音は再生装置を選ぶ気がします。やかましく聴こえるのはこういったことが原因になっているようにも思います。私としてはもう少し整理された見通しの良いすっきりした音響が好きなので,これはちょっと音を無理に詰め込みすぎている感じがして疲れますね。

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