ベートーヴェン:弦楽四重奏曲第十四番,シューベルト:弦楽四重奏曲第十四番「死と乙女」(ジュリアード四重奏団)

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ベートーヴェン:弦楽四重奏曲第十四番 嬰ハ短調 作品131
シューベルト:弦楽四重奏曲第十四番 ニ短調 D.810 「死と乙女」
ジュリアード四重奏団(Juilliard String Quartet)
28.III.1960; 1 & 4.IV.1960, RCA Studio B, New York City (ベートーヴェン)
5-6.II.1959 & 27.V.1959, Academy of Arts and Letters (シューベルト)
SBT 1373 (P)(C)2005 TESTAMENT (輸入盤)
好録音度:★★★★★
参考url: HMV Onlineicon

ジュリアード弦楽四重奏団が1960年前後に一時期RCAに移籍していた頃の録音ということで,同レーベルから4枚ほど発売されており,これはその中の1枚です。1960年 RCAスタジオBでの録音とのことです。なお,ここで触れるのはベートーヴェンの方の録音です。

このCDは以前,拙Webサイトの“編集日録 2005年10月5日”で紹介したものです。演奏ももちろん良いのですが,とにかく録音が素晴らしい!! 今改めて聴いてみて私の“好録音”に対する考え方を如実に示す好例であると思い,ここに再び取り上げます。

この録音は1960年のものということで,初期のステレオ録音に属すると思います。当然ながら現代の録音に比べれば,オーディオ品質で劣る面があるということは否めません。また,マスターテープの保存上の問題か,部分的に音質劣化が見られたり,テープの再生ノイズにムラが感じられるところもあります。正直言って古くさい音です。オーディオ品質の観点では「良い録音」とは言えないです。ただ,周波数帯域,ノイズレベル,歪み感など,鑑賞上の障害にならない最低限のレベルはクリアしていると思います。高域のヌケの良さなどは現代の録音と比べても遜色ありません。

この録音の特徴は,残響がほとんどないというところと,まるで生録のような実在感のある音の捉え方にあります。RCAのスタジオで録音されたものということで,音楽の録音環境としてはかなりデッドな空間で録音されたものと想像します。強奏の後の無音部でかすかにスタジオの響きが感じられる程度で,楽器音そのものに影響を与える残響は皆無です。適度な距離に設置されたマイクで直接音だけねらって収録する,そんな録音の仕方です。その録音された音は,コンサートホールや教会で録音されたものとは全く異質です。

下の写真は解説書に載っていた録音風景で,これがそのスタジオかどうかはわかりませんが,おそらくこのような環境であったのでしょう。

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それで,この録音のどういうところが好きなのか。それは,演奏者が楽器に託して発する音の全てが聴こえてくる(ような気がする)ところです。何も足されることなく,そして,何も引かれることなく,ありのままストレートに伝わってくる,素顔のままというか,素肌の肌触りというか,良いところも悪いところも全て感じ取れそうな質感,そして,自宅のリスニングルームで,間近で演奏を聴かせてもらっているような,そんな妙なリアルさ,親密感がたまらなく好きなのです。私が持っている弦楽四重奏曲のディスクの中でも,録音が最も好きなものの一つに挙げられます。

私の考える“好録音”は,音がマイクに入るまでが勝負だということをつくづく感じます。

[ベートーヴェン][室内楽曲][弦楽四重奏]

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