チャイコフスキー:ヴァイオリン協奏曲(パトリシア・コパチンスカヤVn/テオドール・クルレンツィス指揮/ムジカエテルナ)

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チャイコフスキー:ヴァイオリン協奏曲ニ長調作品35
パトリシア・コパチンスカヤ Patricia Kopatchinskaja (Violin)
テオドール・クルレンツィス指揮/ムジカエテルナ
2014年5月 ペルミ国立チャイコフスキー・オペラ&バレエ劇場
88875190402 (P)2016 Sony Music Entertainment (輸入盤)
好録音度:★★★★★
参考: Tower RecordsAmazon.co.jpHMV OnlineiconApple Musice-onkyo

2016年度 第54回レコード・アカデミー賞の協奏曲部門の受賞ディスクなのでご存じの方も多いと思います。クルレンツィスつながりApple Musicで聴いてみました。

奇異に感じられる演奏も,彼女の身体に染みついた東欧の民族音楽スタイルを持ち込んだのかと思えばなるほどと思います。まぁこれが好きかどうかは人によりますね。聴き比べには大変面白いのですが,愛聴盤になるかといえばどうかなと思います。ただ,終楽章のラストにはちょっと興奮を覚えました。

さて録音ですが,残響控え目で,すっきりと見通しの良い,明瞭感の高い好録音でした。サウンドにも締まりがあり,ほとんど欠点が見当たりません。全くストレスを感じることなく聴くことが出来ました。強いて言うならもう少し寄って楽器の質感を高めに,そして左右のサウンドステージの広がりが感じられればもっと良かったと思うのですが,これでも十分です。好録音の一つの見本になる録音です。少し音が痩せ気味にも感じられるので芳醇な響きが好みの方には合わないかも知れませんが。

カップリングはストラヴィンスキーのバレエ・カンタータ「結婚」という曲ですが,最初の0.5秒で,これは私には無理だ,と思ったので聴いていません(^^;。

チャイコフスキー:交響曲第6番ロ短調作品74「悲愴」(テオドール・クルレンツィス指揮/ムジカエテルナ)

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チャイコフスキー:交響曲第6番ロ短調作品74「悲愴」
テオドール・クルレンツィス指揮/ムジカエテルナ
88985404352 (P)(C)2017 Sony Music Entertainment (輸入盤)
好録音度:★★★★★
参考: Tower RecordsAmazon.co.jpHMV Onlineicone-onkyo

話題の盤なので私も聴いてみました。すでに多くの方がコメントされており,私も同じような印象を持ちました。この聴き古された超有名曲をドラマティックで壮大な音絵巻として再現する演出力と,この怒濤ごとく押し寄せるサウンドを余すところなく捉えきった録音,これらが高度にかみ合うことでこの音楽作品を成功に導いていると思います。キワモノ路線ではなく真っ向勝負でこれを達成しているのが凄いところです。

あくまでも無数にある表現の一つに過ぎないのですが,ここまで極めたものが出ると,生半可な演奏では生ぬるいと見なされかねない,演奏においても録音においても標準的という基準のハードルを一段あげるのではないかと思うくらい画期的な演奏・録音ではないかと思います。

まあ幾分大げさに言ってはいますが,それくらいのインパクトは確かにありました。一聴の価値ありです。

ベルリオーズ:幻想交響曲(エマニュエル・クリヴィヌ指揮/ラ・シャンブル・フィラルモニーク管弦楽団)

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ベルリオーズ:幻想交響曲作品14
エマニュエル・クリヴィヌ指揮/ラ・シャンブル・フィラルモニーク管弦楽団
2014年5月27日 パリ,シテ・ド・ラ・ミュジーク
ALPHA 714 (C)2016 ALPHA CLASSICS (輸入盤)
好録音度:★★★★★
参考: Tower RecordsAmazon.co.jpHMV Onlineicon

先日録音が良くて取り上げたR. シュトラウスのクリヴィヌつながりで見つけたDVDです。古楽器オーケストラによる演奏で,編成もベルリオーズとしては大きくありません。演奏もなかなか興味深いのですが,期待通り録音が良かったのでここで取り上げます。

コンサートホールでのライヴの録音ですが,ホールの残響はうっすらと感じる程度で楽器音に影響を与えていません。直接音が主体であり,各楽器が極めてクリアに透明感のある音で聴くことができます。分離も見通しも申し分ありません。使用楽器に特徴があり,映像を見ながらそれらの音色を楽しむにはもってこいの音源だと思います。ただし,ここまでくるとちょっと音が痩せすぎだと思われる方もおられるかもしれません。でも私はこういう録音が好きなのです。

YouTubeで第5楽章の一部がアップされていましたので紹介します。

天上的な美しさ! アネルセン:マニフィカト(トロンハイム・ソロイスツ/ニーダロス大聖堂少女合唱団/他)

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アネルセン:マニフィカト
カーニス:天上の音楽(弦楽オーケストラのための)
ヤイロ:ツンドラ
ヤイロ:普遍者の歌
トロンハイム・ソロイスツ/ニーダロス大聖堂少女合唱団/他
2013年5月,2014年1月,5月 ノルウェー,トロンハイム,ニーダロス大聖堂
2L-106-SABD (C)2014 Lyndberg Lyd AS (輸入盤)
好録音度:★★★★★
参考: Tower RecordsAmazon.co.jpHMV Onlineicone-onkyo

AV Watchの【匠のサウンド百景】という特集の中で,エミライ/OPPO Digital Japanの島 幸太郎氏が紹介されていた6曲の中の一つです。リリース当時に話題になったとのことですのでご存じの方も多いと思います。2Lというノルウェーのレーベルは高音質で有名なので幾つかは聴いたことがあるのですが,このディスクは初めてでした。私は全く声楽曲を聴かないのですが,この天上的な響きの美しさにちょっとばかり感激してしまいました。残響を豊富に取り込んでいますが,これはもう音楽の一部として欠かせないものですし,この音楽の美しさを損なうことなく取り込まれていますので問題ありません。

パッケージとしてはSACDとBlu-rayで構成され,ハイレゾの2chステレオのほか,マルチチャンネルの音声も収録されています。私は2chステレオで聴きましたがそれでも十分にこの美しい音楽を楽しむことが出来ました。

モーツァルト:弦楽四重奏曲第16番,第19番「不協和音」,ディベルティメントK.136(ヴァン・カイック四重奏団)

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モーツァルト:弦楽四重奏曲第16番K.428,第19番「不協和音」K.465
モーツァルト:ディベルティメントニ長調K.136
ヴァン・カイック四重奏団 Quatuor Van Kuijk
ALPHA 246 (P)(C)2016 ALPHA CLASSICS (輸入盤)
好録音度:★★★★★
参考: Tower RecordsHMV OnlineiconAmazon.co.jpe-onkyo

勢いがあり,躍動感に溢れるとともに,技術的にもキレがありコントロールも行き届いていて表情が細やかです。音楽の喜びを素直に表現した若々しいフレッシュな演奏だと思います。音色の美しさも特筆できます。惜しむらくは楽節の切れ目で恣意的な「ため」が入って呼吸が乱されることで,せっかく音楽に気持ちよく乗っていたのにここで「うっ」と息苦しくなってしまいます。これがなかったら最高なのに...本当にこれだけはクラシック音楽の大嫌いなところです。

録音ですが,わずかに残響感があるものの,それぞれの楽器を明瞭に,透明感のある伸びのある音で美しく捉えています。距離感も適度であり,各楽器の分離感もまずまず良好です。弦楽四重奏の録音として欠点がほとんど見あたりません。オーディオ的な品質も良好です。私としてはもう少し生々しさを出して欲しいかなとは思いますが,これでも十分に好録音です。

この団体は全く知らないのですが,演奏も録音も素晴らしいので,今後もこの調子で録音を続けていって欲しいですね。期待しています。

価値ある復刻! ファイン・アーツ四重奏団のベートーヴェン弦楽四重奏曲集

ファイン・アーツ四重奏団は1946年の創立で,現在でも活動を続けられています。メンバーは交代していますが,第1ヴァイオリンの交代は1回,第2ヴァイオリンは3回,ヴィオラは9回,チェロは2回ということで,ヴィオラ以外は結構長く続けられています。

このベートーヴェンの弦楽四重奏曲全集は1960年代に完成されたもので,Everest Recordsからリリースされていました。以前一度取り上げています(→こちら)。今回はこの全集から12曲が復刻されています。このうち作品18の2曲を除く中期,後期の曲を購入して聴きました。全集として復刻されなかった理由は不明ですが,マスターテープに問題があったのかもしれません。

それにしても,CDで発売されていたものよりもものすごく改善されています。聴き比べてみると明らかなのですが,鮮明さが格段に上がっており,これは本当に1960年代の録音なのか?と思うほどの鮮度です。これはサンプルの試聴でもはっきりわかりました(なので購入しました)。

どうもCDでは余計な残響を意図的に付け足していたのではないかと思います。その残響は音楽的にまったく効果がなく,音色を曇らせるだけのマイナス効果しかありませんでしたので,前回のレビューでも結局あまり高い評価になりませんでした。演奏に被るその残響が取り払われ,極めて明瞭に,ダイレクトに音楽が伝わってくるすばらしい録音に生まれ変わりました。

特に後期が良いですね。楽器の分離も良好で,それぞれの楽器の動きがこれほどはっきりとわかる録音もそうありません。まあこれに関しては賛否あると思いますが,こういう録音ならではのいろいろな発見があって面白いと思います。

今までにもリマスタリングされたものをいくつも聴いてきましたが,ここまで改善幅が大きいのは初めてです。しかも改善後はこれ以上望めないくらい良好です。音楽をストレートに伝えてくれるという点で,現代の多くの録音をもはるかに凌駕するリアルさと迫力があります。これは本当に価値ある復刻です。録音の質がいかに大切かを実感しました。(ちょっと興奮してしまいました)

こういう録音こそ<好録音>と呼ぶにふさわしいです。まあちょっと褒めすぎでオマケの感はありますが,五つ星評価としました。なお,1960年代の録音なので多少マスターテープの品質に起因する粗さはあります(オーディオクオリティは時代なりです)。また,今回はハイレゾでの復刻(192kHz/24bit, 96kHz/24bit)ですが,私の評価はハイレゾとは関係なく,CDクオリティであっても全く変わりません。

まだ斜め聴きなので,これからじっくりと聴きたいと思います。

しかし,これはちょっと財布には優しくないですね... なお私はe-onkyoで購入しましたが,moraでも取り扱いがありますね。

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ベートーヴェン:弦楽四重奏曲第3番作品18-3
ベートーヴェン:弦楽四重奏曲第4番作品18-4
ファイン・アーツ四重奏団 Fine Arts Quartet
録音1959年
参考: e-onkyo

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ベートーヴェン:弦楽四重奏曲第7番「ラズモフスキー第1番」作品59-1
ファイン・アーツ四重奏団 Fine Arts Quartet
録音1965年
好録音度:★★★★★
参考: e-onkyo

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ベートーヴェン:弦楽四重奏曲第8番「ラズモフスキー第2番」作品59-2
ベートーヴェン:弦楽四重奏曲第9番「ラズモフスキー第3番」作品59-3
ファイン・アーツ四重奏団 Fine Arts Quartet
録音1965年
好録音度:★★★★★
参考: e-onkyo

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ベートーヴェン:弦楽四重奏曲第10番「ハープ」作品74
ベートーヴェン:弦楽四重奏曲第11番「セリオーソ」作品95
ファイン・アーツ四重奏団 Fine Arts Quartet
録音1965年
好録音度:★★★★★
参考: e-onkyo

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ベートーヴェン:弦楽四重奏曲第12番作品127
ファイン・アーツ四重奏団 Fine Arts Quartet
録音1962-63年
好録音度:★★★★★
参考: e-onkyo

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ベートーヴェン:弦楽四重奏曲第13番作品130
ファイン・アーツ四重奏団 Fine Arts Quartet
録音1962-63年
好録音度:★★★★★
参考: e-onkyo

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ベートーヴェン:弦楽四重奏曲第14番作品131
ファイン・アーツ四重奏団 Fine Arts Quartet
録音1962-63年
好録音度:★★★★★
参考: e-onkyo

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ベートーヴェン:弦楽四重奏曲第15番作品132
ファイン・アーツ四重奏団 Fine Arts Quartet
録音1962-63年
好録音度:★★★★★
参考: e-onkyo

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ベートーヴェン:弦楽四重奏曲第16番作品135
ベートーヴェン:大フーガ作品133
ファイン・アーツ四重奏団 Fine Arts Quartet
録音1962-63年
好録音度:★★★★★
参考: e-onkyo

ベッカー:ソナタと組曲(パルナッシ・ムジチ)

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ベッカー:ソナタと組曲
パルナッシ・ムジチ Parnassi Musici
詳細不明 (P)2000 cpo (輸入盤) ※Apple Musicで試聴
好録音度:★★★★★
参考: Apple MusicAmazon.co.jp

秘曲の宝庫CPOレーベルから。Apple Musicでたまたま聴いたこのアルバムが演奏も録音も大変良かったので取り上げたいと思います。聴く限りはヴァイオリン2本(?)と通奏低音(チェロ,テオルボ,チェンバロ,オルガンなどでしょうか)のピリオド楽器アンサンブルです。作曲者のディートリヒ・ベッカー(Dietrich Becker, 1623年頃 - 1679年頃)はWikipediaによるとバロック音楽期のドイツのヴァイオリニスト・作曲家とのことです。

特に録音が気に入りました。優秀録音というわけでもありませんし,オーディオ品質が高いというわけでもないのですが(もちろん全く問題のないレベルです),聴いていて<全く>不満を感じない,ストレスを感じないという点で文句なしの五つ星の好録音です。

楽器音を邪魔する要素が全くなく,低域から高域までバランスが取れて自然であり,高域の伸び,音の透明感も申し分なく,美しい音色を堪能できます。距離感も適切です。ステージの立体感もそれなりに感じられますが,録音会場の響きはほとんどないので空間性はあまりありません(私としては全く問題ありません)。

これが好録音なの?と思われる方もおられるかもしれませんが,こういう何気ない普通の録音が良いのです。

このディスクはすでに廃盤になっているのか,入手困難ではありませんが,入手しづらい状況のようです。こういう音源が聴ける状況になったのは本当に有り難いことですね。ちなみにApple Musicで公開されている他のParnassi Musiciの録音を幾つか聴いてみましたが,その中で録音に関してはこれが一番良いように思いました。

ドヴォルザーク:交響曲第9番ホ短調作品95「新世界より」(イシュトヴァン・ケルテス指揮/ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団)

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ドヴォルザーク:交響曲第9番ホ短調作品95「新世界より」
イシュトヴァン・ケルテス指揮/ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
1961年3月22-24日 ウィーン,ゾフィエンザール
UCCD-7213 (P)1961 Decca Music Group Ltd. (国内盤)
好録音度:★★★★★
参考: Tower RecordsAmazon.co.jpHMV Onlineicon

本ディスクに関しては,少し前にApple Musicで試聴した感想を掲載していました(→こちら)。Apple Musicでも間違いなく好録音であったと報告していました。その後やっぱりこれはディスクで聴きたいと思い,高音質盤のステレオサウンド誌の企画盤にするか通常盤にするか迷ったのですが,私には通常盤で十分かなと思い,こちらを選びました。

感想は前回の記事を参照していただきたいのですが,何度聴いても気持ちのよいサウンドです。現代の多くの録音がこの50年以上前の録音に全く足下にも及ばないという現状は何とも残念です。「コンサートホールの音場を再現すること」と「録音で音楽の感動を伝えること」はイコールではないと思います。録音に携わる方々には今一度よく考えていただきたい,というのが私の希望です。

ベートーヴェン:交響曲全集(オイゲン・ヨッフム指揮/ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団)

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ベートーヴェン:交響曲全集
オイゲン・ヨッフム指揮/ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団
1967年~1969年 アムステルダム,コンセルトヘボウ
PROC-2013/7 (P)1969 Decca Music Group (国内盤) タワーレコード企画盤
TOWER RECORDS VINTAGE COLLECTION +plus Eugen Jochum PHILIPS Recordings
好録音度:★★★★★
参考: Tower Records

ヨッフムのベートーヴェンの全集録音は3回で,これは2回目の録音とのことです。引き締まったフォルムで力強く推進される正統的な演奏ですね。やっぱりこういうのが好きです。

そして何よりこの録音がいいですねぇ! 残響はありますが適度に抑えられ,各楽器の音が分離良く,明瞭感高く,質感高く捉えられています。音色も自然ですしヌケも良く全くストレスなく音楽を楽しむことが出来ます。マルチマイクで比較的楽器に近い位置で録っているように思います。特に弦楽器のこのサウンドは大好きですね。若干ドライですがキレの良い情報量の多い音で満たされてるといった感じがします。この時代のフィリップスの良好なアナログ録音の一つに挙げられるのではないでしょうか。

オーディオクオリティでは現代のデジタル録音にかなわないかもしれませんが,鑑賞の邪魔になる残響等の付帯音が気にならないレベルに抑えられていて,クオリティの高い曇った現代の録音よりもはるかに音楽を楽しく聴くことができます。間違いなく好録音です。フィリップスやデッカはかつてこのような音楽の楽しさをストレートに伝えてくれる録音をしていたのに,なぜやめてしまったのでしょう? 「音楽の楽しさを伝える」ということに関しては退化しているとしか思えません。

ということで,演奏も録音も良いこのディスクは愛聴盤候補となりました。じっくりと楽しみたいと思います。このような復刻を企画してくれたタワーレコードに感謝!

バッハ:無伴奏ヴァイオリンのためのソナタとパルティータ全曲(五嶋みどり) ※NHK BSプレミアムで放送されたもの

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バッハ:無伴奏ヴァイオリンのためのソナタとパルティータ全曲
五嶋みどり MIDORI (Violin)
2016年8月8日-11日 ドイツ,ケーテン城
Accentus Music ※NHK BSプレミアムでの放送
好録音度:★★★★☆(Sonata No. 2, 3, Partita No. 2)~★★★★★(Sonata No. 1, Partita No. 1, 3)

CD試聴記」からの転載記事です。

これは2017年の3月にNHK BSプレミアムで放送された番組の感想です。 本CD試聴記では放送番組は基本的には取り上げていないのですが,これは特別に感銘を受けたので取り上げることにしました。 ちょっとタイミングを逸した感はあるのですが...ご了承願います。

演奏自体は2013年の全集とほぼ変わらぬブレない一貫した素晴らしい演奏です。 この演奏を映像で鑑賞出来るのはまさに至福と言うほかありません。

そしてさらに特筆すべきはその録音です。 この曲集はバッハがケーテン宮廷楽長だった頃の作品ということで, 五嶋みどりさんがゆかりの地であるケーテン城を訪れ,城内の幾つかのフロアで録音をされています。 吹き抜けのやや容積のあるフロアでの録音もありますが,小さめの部屋での録音もあります。 コンサートホールやや教会の録音のような豊かな響きは全くありません。 これが好録音につながっています。

ソナタ第2番,第3番,パルティータ第2番はやや広めのフロアで録音されているためか,また, 少しマイクポイントが遠めなのか,部屋の響きが少し感じられますが, ソナタ第1番,パルティータ第1番,第3番はほとんど響きがなく,適正な距離感で極めて明瞭に録られています。 弓が弦に触れるときの微妙な音や左手の運指に伴う演奏雑音を含め,演奏者の発するあらゆる音が克明に聴こえてきます。 質感,音色,ヌケの良さ,どれも申し分ありません。

特に後者は私が理想とする好録音にかなり近いです(→「好録音について考える」をご参照ください)。 残響がないから鑑賞に向かない,音楽的に劣る,といったことは全くありません。 残響の有無と音楽性とは基本的に無関係であるということを,この録音は見事に証明してくれています。

ソナタ第3番とパルティータ第2番がARTE concertというサイトで公開されていました。 録音がベストの楽曲の方ではないので上記の感想が伝わらないかもしれませんが。

この人類の宝のような映像作品,ぜひディスクで発売して欲しいものです。

ジュリアード四重奏団のリヴィング・ステレオ録音を聴く - リヴィング・ステレオ・ザ・リマスタード~コレクターズ・エディションより

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ベートーヴェン:弦楽四重奏曲第14番嬰ハ短調作品131
ジュリアード四重奏団 Juilliard Quartet
録音:1960年3月、ニューヨーク、RCAビクター・スタ ジオ
好録音度:★★★★★
参考: Apple Music

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ベートーヴェン:弦楽四重奏曲第11番ヘ短調作品95
ベートーヴェン:弦楽四重奏曲第16番ヘ長調作品135
ジュリアード四重奏団 Juilliard Quartet
録音:1960年4&10月、ニューヨーク、RCAビクター・スタジオ《★世界初CD化》
好録音度:★★★★★
参考: Apple Music

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シューベルト:弦楽四重奏曲第14番ニ短調D.810「死と乙女」
シューベルト:弦楽四重奏曲第12番ハ短調D.703「四重奏断章」
ジュリアード四重奏団 Juilliard Quartet

録音:1959年2月、ニューヨーク、米国芸術文学アカデミー
好録音度:★★★★★
参考: Apple Music

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ドビュッシー:弦楽四重奏曲ト短調
ラヴェル:弦楽四重奏曲ヘ長調
ジュリアード四重奏団 Juilliard Quartet
録音:1959年5月、ニューヨーク、 スタジオ”B”
好録音度:★★★★☆
参考: Apple Music

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ドヴォルザーク:弦楽四重奏曲第11番ハ長調作品61
ヴォルフ:イタリア風セレナード
ジュリアード四重奏団 Juilliard Quartet
録音:1959年5月、 ニューヨーク、スタジオ”B”《★世界初CD化》
好録音度:★★★★
参考: Apple Music

最初にお断りをしておきますが,拙ブログの以前からの読者様であれば「またか(^^;」と苦笑しながら読んでいただけると思うのですが,特に今回の録音評は「録り方,楽器音の捉え方」にフォーカスしたものであり,いわゆるオーディオ的クオリティの比率は低いとお考えください。

このリヴィング・ステレオのボックスシリーズは第3弾で,世界初CD化も多く含むそうです。上記のジュリアード四重奏団のディスクも2つが初CD化です。この中でベートーヴェンの第14番とシューベルトの死と乙女は,以前,TESTAMENTから発売されていたものを録音が素晴らしいということで紹介していました。

今回はApple Musicで試聴しました。CDと同じ音源かどうかは定かではありませんが,Apple Music上でのリリース日がいずれも2016年11月18日と,ディスクの発売日とほぼ同時期であることから同じ音源であろうと思われます。

この中ではやはりRCAビクター・スタジオで収録された1960年のベートーヴェンの2枚の録音が良いですね。第14番は音は痩せていて音色のバランスも崩れているものの,残響は皆無で適切な距離感で捉えられた楽器の生々しい質感が素晴らしく音楽がダイレクトに伝わってきます。好録音の良い見本です。第11番,第16番も録音の傾向は同じで,少し人工的な残響のまとわりつきが鬱陶しいものの,楽器音自体はシャープでキレがありこちらも演奏を存分に楽しむことが出来ます。

次に良いのが同じく1960年録音のシューベルトで,これも気になる残響は皆無と言って良く,極めてシャープでキレのよい録音です。音色のバランスはベートーヴェンよりも良いかもしれません。一方スタジオの録音現場の雰囲気,演奏者の存在感は希薄で,やや商品化された音づくりであり,これは善し悪しかなと思います。

ベートーヴェンの第14番とシューベルトの死と乙女はTESTAMENT盤に比べて今回のリマスターによって大幅に音質が改善され,音のヌケと解像感が良くなっています。特にシューベルトが格段に良くなっています。

ドビュッシー,ラヴェルとドヴォルザークは1959年の録音で,ベートーヴェン,シューベルトと比べるとクオリティ面でかなり落ちるため,基本的な録音の仕方は良いのですが,やはりだいぶ聴きづらくなってきます。これはちょっと惜しいですね。

とはいえ,ジュリアード四重奏団の録音がさらに良好な状態で復刻されたのは本当にうれしいことです。これはディスクで持っておきたいところですが,60枚組のセットなのでちょっと買うのをためらっています。分売してくれないですかね...

なおこの他のジュリアード四重奏団の演奏としては,エリオット・カーター,ウィリアム・シューマン,ベルク,ウェーベルンの作品のディスクが含まれています。

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Living Stereo - The Remastered Collector's Edition
参考: Tower RecordsAmazon.co.jpHMV Onlineicon

で,最後にお決まりのいつもの愚痴です(^^;。それにしても,このRCAのリヴィング・ステレオやマーキュリーのリヴィング・プレゼンスなど,1960年前後という50年~60年も前にこれだけの素晴らしい録音をされていたというのが驚異的に思えてなりません。逆に,これらに比べて現代の録音はなんでこんなにつまらない,聴いていて全然面白くないのか,音楽の鼓動がまったく伝わってこないのか,腹立たしくなってきます。世界の多くの人々が名録音と認めるものがこれだけあるにもかかわらず,先人達の偉業から学ぶ気がまったくないとしか思えないです。残念なことです。

シベリウス:交響曲全集(クルト・ザンデルリンク指揮/ベルリン交響楽団)

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シベリウス:交響曲全集
クルト・ザンデルリンク指揮/ベルリン交響楽団
1970-77年録音
Berlin Classics 0020592BC (C)1997 edelGesellschaft (輸入盤)
好録音度:★★★★★
参考: Tower RecordsAmazon.co.jpHMV Onlineicon

このザンデルリンク指揮/ベルリン交響楽団のシベリウスの全集は以前取り上げていました(→こちら)。実は友人のご厚意で聴かせていただいたディスクだったのですが,演奏も録音も良かったので手に入れたいと思いながら買いそびれていました。先日立ち寄った中古店で安価に販売されているのを見つけ,ようやく念願かなって入手した次第です。

感想に関しては前回の記事を参照していただきたいのですが,特に録音に関しては,クオリティも今の水準からすると少し物足りないところもあり,ちょっと過大評価かなと思いつつも,改めて聴いてみてオーケストラの魅力をきちんと伝えてくれる好録音には違いないということで,五つ星は変えません。

この全集が現役盤でないというのはやっぱり残念ですが,第2番,第4番,第7番はつい先日キングレコードから国内盤がリリースされているようですね(多分同じ演奏だと思います)。

ナイトフライ(ドナルド・フェイゲン)

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ナイトフライ The Nightfly
ドナルド・フェイゲン Donald Fagen
WPCR-14170 ワーナーミュージック (国内盤)
好録音度:★★★★★
参考: e-onkyoTower RecordsAmazon.co.jpHMV Onlineicon

長くバンドをやっている知人が,ミキシング・エンジニアがリファレンス音源として使っていると強力に推薦してくれたディスク。このディスクがミキシングの歴史を変えた!と力説していました。いわゆるAORに属する音楽で,私の守備範囲外の音楽なので聴くのは初めてでした。どこまで本当の話なのか私にはわかりませんが,確かにこれは素晴らしい録音であることは間違いないですね。(Wikipediaにもそのような記載がありました)

このアルバムは1982年のリリースで,所属していたスティーリー・ダンの解散後の最初のソロアルバムで,デジタル録音とのことです。

音のキレの良さ,見通しの良さ,明確で輪郭のくっきりした音像定位,クリアな音色,控え目ながら十分なレンジ感,どれをとっても文句なしですね。低音は必要十分にはありますが,キレが良すぎるためか,量感がそれほどないため軽めのサウンドに感じられます。ポピュラー音楽なので演出された作られた音ですが,リバーブなどはほとんどかけられておらず,ストレートなサウンドが痛快です。音圧競争で海苔波形と化した昨今の録音とは対極にあるような録音ではないかと思います。ポピュラー音楽もこういう録音が普通になって欲しいものです。

私はこのアルバムをe-onkyoで入手しました。48kHz/24bitの音源です。参考に挙げたものはSACDでどちらにしようかちょっと迷いました。通常のCDであればかなり安価に購入できますね。

ドヴォルザーク:交響曲第9番ホ短調作品95「新世界より」(イシュトヴァン・ケルテス指揮/ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団)

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ドヴォルザーク:交響曲第9番ホ短調作品95「新世界より」
イシュトヴァン・ケルテス指揮/ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
1961年 ウィーン
Apple Musicでの試聴
好録音度:★★★★★
参考: Apple MusicTower RecordsAmazon.co.jpHMV Onlineicon

本ブログをご訪問くださる皆様であればすでにご存じと思いますが,ステレオサウンド紙の企画盤であるStereo Sound リファレンスレコード オーディオ名盤コレクション クラシック編の第1弾として,このケルテスの「新世界より」が10月1日に発売されました。すでにいろいろなサイトでレビューがなされており,私も興味をもって拝見しております。私自身はこのディスクに興味を持ちながらも「新世界より」は聴き比べするほど好きな曲ではないため,入手をためらって今に至っており,まだ手にはしておりません。

しかし,このようにオーディオ専門誌に取り上げられるほどの録音であれば,以前から発売されているディスクでも素晴らしい音で聴けるはずだと思い,まずはApple Musicで聴いてみました。(参考に挙げたディスクはこれと同等と思われるものです)

おぉ,確かにこれは録音が良いですね! それぞれの楽器の生々しさ,音色の自然さ,質感の良さ,分離勘の良さ,いずれも素晴らしいです。1961年の録音なのでちょっと歪みっぽさがありクオリティは時代なりのところはあるものの(Apple Musicの圧縮だから,というのも少しはあるかもしれませんが),このストレートに迫ってくるサウンドは圧巻ですね。ステレオサウンドが独自に復刻を手がけるのも納得がいく素性の良さをこの録音は持っていますね。Apple Musicでもそれは十分に伝わってきます。これは俄然ステレオサウンドのディスクを聴きたくなってきました。(でも我慢我慢...)

それにしても,何度もしつこくて申し訳ないのですが,このような素晴らしい録音のお手本があるのに,現代の録音がそれを無視するかのような腑抜けたものばかりというのが本当に納得いきませんね。

グレン・グールド 日本企画の音匠仕様SACDハイブリッド盤 ~ ベートーヴェン,ブラームス,ワーグナー編曲

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ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第8番「悲愴」,第14番「月光」,第23番「熱情」
グレン・グールド Glenn Gould (Piano)
1966年(第8番),1967年(第14番,第23番) ニューヨーク,30丁目スタジオ
SICC 10199 (P)(C)2014 Sony Music Japan (国内盤)
好録音度:★★★★★
参考: Tower RecordsAmazon.co.jpHMV Onlineicon

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ブラームス:間奏曲集
グレン・グールド Glenn Gould (Piano)
1959年, 1960年 ニューヨーク,30丁目スタジオ
SICC 10204 (P)(C)2014 Sony Music Japan (国内盤)
好録音度:★★★★☆
参考: Tower RecordsAmazon.co.jpHMV Onlineicon

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ワーグナー:グレン・グールド編によるピアノ・トランスクリプションズ
ワーグナー:ジークフリート牧歌(オリジナル編成による演奏)(*)
グレン・グールド Glenn Gould (Piano)
グレン・グールド指揮/トロント交響楽団員(*)
1973年 トロント・イートン・オーディトリアム,1982年 トロント,セントローレンス・ホール(*)
SICC 10205 (P)1990 (C)2014 Sony Music Japan (国内盤)
好録音度:★★★★★
参考: Tower RecordsAmazon.co.jpHMV Onlineicon

先日紹介したモーツアルト:ピアノ・ソナタ全集バッハ録音と同じシリーズです。バッハは2012年の発売でしたが,こちらはモーツァルトと同じ2014年の発売でした。

ブラームスが1959年から1960年,ベートーヴェンが1966年から1967年,ワーグナー編曲が1973年の録音と,上記3枚の録音時期は離れていますが,今までの紹介でも触れてきたように,録音のポリシーは一貫しており,全てスタジオでの録音,残響は全くなくピアノの音色を極めて明瞭に捉えた私にとって最高のピアノ録音です。さすがにブラームスはクオリティ面で若干落ちますが,ほとんど気になりませんし,ワーグナー編曲の録音はもう全くクオリティ面で問題ありません。

グールドは一部のバッハ録音以外はあまり聴いてこなかったので,じっくりと楽しませてもらおうと思います。

グレン・グールドのバッハ録音 日本企画の音匠仕様SACDハイブリッド盤

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バッハ:インヴェンションとシンフォニア(全曲)
グレン・グールド Glenn Gould (Piano)
1964年3月18,19日 ニューヨーク,30丁目スタジオ
SICC 10168 (P)1964 (C)2012 Sony Music Japan (国内盤)
好録音度:★★★★☆
参考: Tower RecordsAmazon.co.jpHMV Onlineicon

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バッハ:平均律クラヴィーア曲集(全曲)
グレン・グールド Glenn Gould (Piano)
[第1巻]1962, 63, 65年,[第2巻]1966, 67, 69年 ニューヨーク,30丁目スタジオ/1971年 トロント,イートン・オーディトリアム
SICC 10162-5 (P)1972 (C)2012 Sony Music Japan (国内盤)
好録音度:★★★★☆~★★★★★
参考: Tower RecordsAmazon.co.jpHMV Onlineicon

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バッハ:パルティータ(全曲)
グレン・グールド Glenn Gould (Piano)
1957年(第5番,第6番),1959年(第1番,第2番),1962年(第3番),1962, 63年(第4番) ニューヨーク,30丁目スタジオ
SICC 10166-7 (P)1969 (C)2012 Sony Music Japan (国内盤)
好録音度:★★★★☆
参考: Tower RecordsAmazon.co.jpHMV Onlineicon

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バッハ:イギリス組曲(全曲)
グレン・グールド Glenn Gould (Piano)
1971年(第2番),1973年(第1番),1974年(第3番),1974, 76年(第4番,第5番),1975,76年(第6番) トロント,イートン・オーディトリアム
SICC 10169-70 (P)1977 (C)2012 Sony Music Japan (国内盤)
好録音度:★★★★★
参考: Tower RecordsAmazon.co.jpHMV Onlineicon

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バッハ:フランス組曲(全曲),フランス風序曲
グレン・グールド Glenn Gould (Piano)
1971年(第6番),1972年(第1番,第2番),1972, 73年(第3番),1973年(第4番),1971, 73年(第5番,フランス風序曲) トロント,イートン・オーディトリアム
SICC 10171-2 (P)1982 (C)2012 Sony Music Japan (国内盤)
好録音度:★★★★★
参考: Tower RecordsAmazon.co.jpHMV Onlineicon

先に紹介したモーツァルトのピアノ・ソナタ全集と同じ企画盤です。これが発売された2012年は,グレン・グールド生誕80年,没後30年ということでの日本独自の企画盤とのことです。SACDであることに加え,音匠仕様レーベル・コートが採用されています。

これらのバッハの録音は,1957年から1976年という長期にわたって録音をされています。録音機材の進歩に従って音質は徐々に向上しているのはもちろんですが,録音のポリシーは当初からほぼ一貫しているので,聴いた印象がぶれません。1960年代前半までの録音は,さすがに古くて歪み感が気になるものもありますが,1960年代後半以降の録音はクオリティ面でもほぼ不満がありません。

何度も申し上げているとおり,グールドの録音はスタジオで全く残響のない環境でピアノの音色をストレートに克明に質感高く録った超好録音と言えるものです。これらの一貫した録音はグールドが録音に拘り直接コントロールしていたからこそ実現したんですよね。素晴らしい演奏が最高の状態で残されたことに本当に感謝したいと思います。

なぜこのような録り方をする人が出てこないのかほんと不思議でなりません。

モーツァルト:ピアノ・ソナタ全集(グレン・グールド)

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モーツァルト:ピアノ・ソナタ全集
グレン・グールド Glenn Gould (Piano)
1965-1974年 ニューヨーク,30丁目スタジオおよびトロント,イートン・オーディトリアム
SICC 10200-3 (P)(C)2014 Sony Music Japan (国内盤)
好録音度:★★★★★
参考: Tower RecordsAmazon.co.jpHMV Onlineicon

いまさら感が強いのですが...(^^;,グールドは演奏も録音も基本的には好きなので,聴きたい曲については出来るだけ良い状態のものを手に入れておきたいということで,日本独自企画のSACD(Hybrid)をいくつか入手していました。レビューし損ねていたので,この機会に触れておきたいと思います。

解説書によると,グールドは最初期の録音(つまり有名なゴルトベルク変奏曲1955年)から録音に深く関わり,常に最新の録音技術(テクノロジー)を取り入れながら一貫性のある録音をしてきたようです。実際に,1957年あたりの録音からすでに録音のポリシーが確立しており,録音機材の進歩によってクオリティは徐々に向上しているものの,録り方は一貫していて年代による変化はほとんど見られません。グールドの数々の素敵な録音は,グールド自身が築き上げてきたものだったのですね。

このモーツァルトの全集録音は,1965年から1974年という時間をかけて完結されたものですが,1965年にはすでに一定水準以上のクオリティでの録音が可能となっていたためか,全体を聴き通しても録音のクオリティで気になるところはほとんどありません。

全てスタジオでの録音であり,残響は全くなく,音色も極めてクリアで自然であり,帯域感も必要十分,ピアノの粒立ちが素晴らしく,鑑賞を邪魔する要素が全くない,私にとっては完璧なピアノ録音です。

こんな素晴らしいピアノ録音なのに,追随してこのような録り方する人が全くゼロというのは残念でなりません。

シューマン:交響曲全集(サイモン・ラトル指揮/ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団)

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シューマン:交響曲全集
サイモン・ラトル指揮/ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
2013年2月,11月 ベルリン・フィルハーモニー
KKC 9083(BPHR 140011) (P)(C)2014 Berlin Phil Media GmbH (国内流通仕様盤)
好録音度:★★★★★
参考: Tower RecordsAmazon.co.jpHMV Onlineiconベルリン・フィル・レコーディングス

ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団の自主制作レーベル“ベルリン・フィル・レコーディングス”から,すでにシベリウスの交響曲全集ベートーヴェンの交響曲全集,そしてシューベルトの交響曲全集を取り上げてきましたが,このシリーズの第1弾がこのシューマンの交響曲全集とのことです。

本パッケージは以下のものから構成されています。

(1) CD 2枚

(2) Blu-ray Disc 1枚
 Blu-ray Disc Audio
  2.0 PCM Stereo 24-bit/96kHz
  5.0 DTS-HD Master Audio 24-bit/96kHz
 Blu-ray Disc Video
  Full HD 1080/60i 16:9
  2.0 PCM Stereo 24-bit/48kHz
  5.0 DTS-HD Master Audio 24-bit/48kHz

(3) High-Resolution Audio Download Code
 Stereo 24-bit/192kHz WAV/FLAC
 Stereo 24-bit/96kHz WAV/FLAC
 5.0 Surround 24-bit/192kHz FLAC
 5.0 Surround 24-bit/96kHz WAV/FLAC
 ※全てのファイルを何度でもダウンロード可能

一連のシリーズを聴いていて思うのは,私が勝手に抱いていたベルリン・フィルのイメージとだいぶ違うな,ということで,このシューマンも同様。小編成かと思うほどの機動性を発揮,隅々までコントロールが行き届き,スリムかつ力強く俊敏な演奏を聴かせてくれます。特にこのシューマンではこの小気味よさが曲にとてもよくマッチしていると思います。

録音ですが,印象としてはほぼシューベルトの交響曲全集と同じで,むしろこちらの方がわずかに鮮度が高くさらに良い印象です。残響はあるものの,引き締まったタイトな楽器の響きで支配されているため好印象です。音色に癖がなく整っていますし,高域のヌケも悪くありません。欲を言えばもう少し弦楽器の質感を強めにし,音色に透明感と輝きを持たせてモゴモゴした感じをなくして欲しかったところです。しかし,やはりあらゆる要素でバランスの整った欠点の少ない録音だと思います。不満がゼロではありませんが,これも五つ星とします。

このディスクは演奏も録音も良いので,私の中ではシューマンの交響曲全集の決定盤になるかもしれません。これからもしばらく聴き続けて評価を固めていこうと思っています。

このベルリン・フィル・レコーディングスのシリーズ,今後も注目していきたいと思います。

シューベルト:交響曲全集,ミサ曲第5番,第6番,歌劇「アルフォンゾとエストレッラ」(ニコラウス・アーノンクール指揮/ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団)

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シューベルト:交響曲全集
ニコラウス・アーノンクール指揮/ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
Recorded live at the Philharmonie Berlin, 2003-2006
BPHR 15006 (P)(C)2015 Berlin Phil Media GmbH (輸入盤)
好録音度:★★★★★
参考: Tower RecordsAmazon.co.jpHMV Onlineiconベルリン・フィル・レコーディングス

収録曲は,交響曲全集に加えて,ミサ曲第5番D 678,第6番D 950,歌劇「アルフォンゾとエストレッラ」D 732,が収録されています。本パッケージは以下のものから構成されています。

(1) CD 8枚

(2) Blu-ray Disc
 2.0 PCM Stereo 24-bit/48kHz
 5.0 DTS-HD Master Audio 24-bit

(3) High-Resolution Audio Download Code
 Stereo 24-bit/48kHz WAV/FLAC
 5.0 Surround 24-bit/48kHz WAV/FLAC
 ※全てのファイルを何度でもダウンロード可能

今回はパッケージの購入ではなく,ベルリン・フィル・レコーディングスからのダウンロード購入としました。€ 59.00でした。なお,以下,交響曲に関してのみのコメントです。

録音は2003年から2006年にかけて行われたもので,少し前の音源になりますが,アーノンクール氏70歳代の録音とのことです。ですが,この若々しく覇気に満ちた生命力溢れる音楽は本当に素晴らしい! 音楽の喜びがストレートに伝わってきます。それが勢い任せではなく細部まで神経が行き届いた細やかさをもって実現されているところが指揮者の統率力とオーケストラの技量の高さを示していると思います。

そして録音なのですが,残響が多めに取り込まれているものの,ウェットに傾きすぎることなく引き締まったサウンドで聴かせてくれます。残響は音色を濁すなど鑑賞の邪魔となる悪影響は最小で,むしろ潤いを持たせるプラス方向の効果の方が上回っています。音色の色づけや癖なども排除され,録音会場のキャラクターもほとんど前に出てきていない点も良いです。高度にバランスの取れた欠点の少ない万人向けの一つの理想を体現した録音として評価できると思います。正直なところ,もう少し残響によるモゴモゴ感を抑え,個々の楽器の質感を強めに出して音色に輝きを持たせ,スケール感と見通しの良さを出して欲しいとは思いますが,私の好きな録音とは方向が少し違うとはいえ,これは十分に納得のいく録音でした。少し甘い評価ですが五つ星です。

これは演奏も録音も素晴らしい全集でした。個人的には交響曲とその他の曲はパッケージを分けて,交響曲全集として入手しやすくして欲しかったです。

無伴奏リコーダーによる6つの編曲集(フランシス・コルプロン)

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無伴奏リコーダーによる6つの編曲集 Six Transcriptions
フランシス・コルプロン Francis Colpron (Recorder)
2013年4月 ケベック,ミラベル,サン・トギュスタン教会
ACD22677 (P)2014 ATMA Classics (輸入盤)
好録音度:★★★★★
参考; Tower RecordsAmazonHMV Onlineicone-onkyoApple Music

無伴奏ヴァイオリンのための作品,ほかをリコーダーに編曲したものとのことで,以下の曲を収録しています。

パガニーニ:無伴奏ヴァイオリンのためのカプリース第24番
テレマン:無伴奏ヴァイオリンのためのファンタジア第8番
マラン・マレ:スペインのフォリアによる変奏曲
バッハ:無伴奏フルートのためのパルティータBWV.1013
タルティーニ:コレッリの主題による変奏曲Op.5-10
テレマン:無伴奏ヴァイオリンのためのファンタジア第4番

リコーダーというと私はほとんどミカラ・ペトリしか聴いたことがなかったのですが(あと栗コーダー・カルテットくらい(^^;),この人もとても上手いですね。キレのある発音,透明感のある音色,リコーダーという楽器の表現力の幅広さに感心します。私としてはヴァイオリンで聴き慣れたテレマンのファンタジアが特に良かったです。

そして録音なのですが,残響が多く残響時間も長く,楽器音への影響はかなりあるものの,直接音もしっかりと捉えられていて,楽器そのものの透明感ある音色が上手く録られていると思います。私としてはもちろん残響をもっと抑えてクリアに録って欲しいとは思いますが,残響の質も取り入れ方もこれなら悪くないと思いますし,響きの心地よさも幾分あるかなと。残響を取り入れるなら一つの好例ではないかと思います。私の望む録音とは方向が違いますが,五つ星評価です。

ベートーヴェン:ディアベリの主題による33の変奏曲作品120(フリードリヒ・グルダ)

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ベートーヴェン:ディアベリの主題による33の変奏曲作品120
フリードリヒ・グルダ Friedrich Gulda (Piano)
1970年2月 ドイツ,フィリンゲン,MPSスタジオ
0300723MSW (P)1970 MPS Records (C)2016 Edel Germany (輸入盤)
好録音度:★★★★★
参考: Tower RecordsAmazon.co.jpHMV Onlineicon

バッハ:平均律クラヴィーア曲集全曲が素晴らしかったグルダのMPS録音。その第2弾のリリースです。ディアベリ変奏曲は初めて聴く曲なのでコメント出来ないのですが,とにかくこの録音が素晴らしいのです。残響が皆無で鑑賞の妨げとなる余計な付帯音が過剰と思えるくらいそぎ落とされ,ピアノの音が極めてクリアに粒立ちが美しく録られています。クラシックのピアノ録音としてはデッド過ぎるかもしれませんが,私にとってはほぼ理想的と言って良いです。こういう録音でもっといろいろな曲を聴いてみたいものです。

Carpenters GOLD - Greatest Hits (K2HD Mastering CD)

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Carpenters GOLD - Greatest Hits (K2HD Mastering CD)
A&M 5328998 (P)2000 (C)2010 A&M Records (輸入盤)
好録音度:★★★★★
参考: Amazon.co.jpHMV Onlineicon

いくつかの愛聴曲はあるものの,特にカーペンターズのファンというわけでもなく,すでにベスト盤を一つ持っているのですが,音質の良いリマスター盤があるのなら聴いてみたいとかねてから目を付けていたもの。この“Carpenters GOLD”は,ものすごくたくさんのエディションがありますが,高音質盤では,XRCD2とK2HDがありました。どちらにするかさんざん迷いましたが,結局このK2HDにしました。このディスクは香港盤ですが,Made in Japanです。

すでに持っている通常盤と比較すると,明らかに鮮度が上がり,音のキレと深みが増していました。アナログ時代の録音ですが,CDでこんなに良質な音で聴けるのか!と驚くとともに,リマスタリングでここまで音が変わるということにも驚きました。これを聴くと,CDのポテンシャルを全く活かし切れていない録音がものすごくたくさんあるんだなということを痛感しますね。マスタリングは本当に大切です。ちなみにMaster Engneerは袴田剛史と記載があります。

それにしても...ちょっと高いですねぇ。

バッハ:インヴェンションとシンフォニアを気持ちよく聴ける好録音盤2種(シャンタル・スティリアーニ Piano/クリスティアーヌ・ジャコッテ Harpsichord)

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バッハ:インヴェンションとシンフォニア BWV 772 - 801
シャンタル・スティリアーニ Chantal Stigliani (Piano)
録音不明
CAL1211 (P)2012 Calliope
好録音度:★★★★☆
参考: Tower RecordsAmazon.co.jpApple Music
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バッハ:インヴェンションとシンフォニア BWV 772 - 801
クリスティアーヌ・ジャコッテ Christiane Jaccottet (Harpsichord)
録音不明
(P)2009 Stradivari Classics
好録音度:★★★★★
参考: Apple Music

いずれもApple Musicでの試聴です。録音についてのコメントです。

この2盤とも,鑑賞の邪魔をする要素はほとんどありません。極めてクリアーで自然,何も足さず何も引かない,すっきりした音響が特徴です。特にジャコッテのハープシコードの音が良いですね。とかく響きで濃く雑味が加わりがちなハープシコードを綺麗な音で聴かせてくれます。スティリアーニのピアノの方はもう少しヌケの良い音だと最高なのですが...惜しいところです。

まあ優秀録音かどうかは微妙ですし,皆さんの賛同を得られるとはあまり思わないのですが,私にとっては間違いなく好録音。こういうのが好きなのです。ディスクは入手しづらいようなのが残念です。

ハイドン:ヴァイオリン協奏曲集(ジョルト・カッロー Vn/ニコラス・マクーギガン指揮/カペラ・サヴァリア)

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ハイドン:ヴァイオリン協奏曲集
ハ長調 Hob VIIa:1, イ長調 Hob VIIa:3,ト長調 Hob VIIa:4
ジョルト・カッロー Zsolt Kalló (Violin)
ニコラス・マクーギガン指揮/カペラ・サヴァリア
April 18-19, 2015 at Bartók Concert Hall, Szombathely, Hungary
Hungaroton HCD 3271 (P)(C)2015 Fotexnet Kft. (輸入盤)
好録音度:★★★★★
参考: Amazon.co.jpApple Music

ピリオド楽器による演奏。実に素直。曲を変にいじることなくストレートに表現しているのが好印象です。音色の美しさも特筆できます。ピリオド色が薄く聴きやすいです。技術的にものすごくキレるわけではありませんが,全く不足なし。好演奏。

そして録音なのですが,ソロはわずかに響きを伴いながらも適度な距離感の直接音主体の捉え方で,オーケストラよりも一段浮き上がって聴こえます。誇張された録音ではありますが,協奏曲の録音として好ましいと思います。ソロの音色がクリアで美しくニュアンス豊かなのは本当にうれしいです。私にとっては音場の自然さよりも断然優先されますので。ちょっとオマケですが五つ星としました。Hungarotonの録音は私の好みに合うものが多いと思います。

ショパン:ワルツ(仲道郁代)

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ショパン:ワルツ(17曲) (1842年製プレイエルと2013年製スタインウェイによる演奏)
仲道郁代 Ikuyo Nakamichi (Piano)
2015年5月26日~29日 サントミューゼ 上田市交流文化芸術センター 小ホール
SICC 19006-7 (P)(C)2016 Sony Music Japan (国内盤)
好録音度:★★★★★
参考: Tower RecordsAmazon.co.jpHMV OnlineiconApple Music

ショパンのワルツ17曲を,Disc 1では1842年製プレイエルで,Disc 2では2013年製スタインウェイで,同じ曲を違う楽器で弾いたものを収録するという贅沢な企画盤です。今日ここで触れたいのはこの録音についてです。

解説書の中で仲道さん自身が「録音方法」の項で次のように述べておられます。

 今回,これらの二つの楽器の特性をいかすべく,録音方法にも心をくだいた。プレイエルの音色の細やかさ,タッチの変化による音のスピード感,音質感の違いをよりリアルにお聴きいただきたく,なるべく響きをつけない“オン”で“ドライ”なマイク設定を試みた。もともと,ショパンの時代には大きなホールの豊かな響きで聴くということはなかったのである。サロンで,ピアノの近くに集まり,親密に聴くのである。

~中略~

 片や,スタインウェイはというと,この楽器が持っている豊かな響き,低音のパワーなどをしっかりと聴いていただくために,プレイエルの録音よりはいわゆるホールの中で聴いているような音場感を目指している。 ~後略~

仲道さん,いいこと書いています(^^)。そう!音楽の楽しみ方はさまざま,ホールで聴くだけが音楽の楽しみ方ではないのです。実際に聴いてみると,まさにこれが実践され,その雰囲気が実現されています。スタインウェイの方は「ホールの中で聴いているような音場感」とありますが,実際にはこちらも十分“オン”で“ドライ”であり,純粋にプレイエルとの音色の差異を比べられる録音になっています。そしてこれらのピアノの音色は美しく澄んでいて一つ一つの音が輝いています。ピアノって実はこんなに美しい音色の楽器だったんだ!と感動します。こんなに胸のすく気持ちの良いピアノの録音に接したのは本当に久しぶりです。

当ブログの読者様ならすでにご承知と思いますが,私はずっと録音における残響のあり方に疑問を呈してきました。音場感と引き替えに肝心の楽器の音色が犠牲になっている録音のなんと多いことか! この録音は,残響がなくともその音楽性は微塵も損なわれることはないし,音楽の価値が落ちることも全くない,録音において残響は必ずしも必要ではない,ということを見事に証明していると私は思います。

制作サイドの方に改めて問いたい。その残響,何のためですか? 楽器の音色を犠牲にしてまで入れる価値のあるものですか? いったいその残響まみれの録音を通じてリスナーに何を伝えたいのですか? ... ということを考えさせられる録音でした。(思わず愚痴ってしまいました...すみません...)

テレマン:無伴奏ヴァイオリンのための12のファンタジア(ピーター・シェパード・スケアヴェズ)

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テレマン:無伴奏ヴァイオリンのための12のファンタジア
ピーター・シェパード・スケアヴェズ Peter Sheppard Skærved (Violin)
Recorded at the Church of St. John the Baptist, Aldbury, Hartfordshire, England, on 13th and 21st November 2013
Athene ath 23203 (P)(C)2015 Divine Art Ltd. (輸入盤)
好録音度:★★★★★
参考: Amazon.co.jpApple Music

CD試聴記」からの転載記事です。同ページのほぼ9年ぶりの更新です(^^)。

バロック・ヴァイオリンによる演奏ですが,奏法的にはそれほどバロック的ではありません。 わざとかどうかはわかりませんが,リズムの崩しがたどたどしく,音楽に乗ることができません。 下手とまでは言いませんが,キレが良くなく素直に音楽を楽しむことができません。

録音ですが,わずかに残響感があるものの,背後にふわっと広がる程度であり, 直接音が支配的できわめて明瞭,高域の伸びも申し分なく, 楽器の質感がストレートに伝わってくる好録音です。 少しきつめに聴こえるかもしれませんが,私にはこれくらいがちょうど良いです。 録音の音のキレが抜群なだけに,演奏のキレが良くないのが残念でなりません。

本ディスクには,“12 Fantasies for Flute, TWV40:2-13”のヴァイオリンによる演奏も収録されています(2枚組です)。 また,本ディスクのタイトルが“THE GREAT VIOLINS volume 1: Andrea Amati, 1570”ということで, かつての名器で無伴奏ヴァイオリンの作品を録音するプロジェクトの第1弾なのかもしれません。

スケアヴェズ氏は先日紹介したタルティーニ:30の小さなソナタ集も録音しています。

ドヴォルザーク:弦楽四重奏曲第12番「アメリカ」,バルトーク:弦楽四重奏曲第2番,ドホナーニ:弦楽四重奏曲第3番(モディリアーニ四重奏団)

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ドヴォルザーク:弦楽四重奏曲第12番「アメリカ」
バルトーク:弦楽四重奏曲第2番
ドホナーニ:弦楽四重奏曲第3番
モディリアーニ四重奏団 Quatuor Modigliani
2015年3月 パリ,サル・コロンヌ
MIR 269 (C)2015 MIRARE (輸入盤)
好録音度:★★★★★
参考: Tower RecordsAmazon.co.jpHMV Onlineicon

ドビュッシー,ラヴェル:弦楽四重奏曲ハイドン:弦楽四重奏曲集が良かったモディリアーニ四重奏団の最新録音です。バルトークとドホナーニは少し苦手に思いましたので(^^;,ドヴォルザークを中心に聴きました。やはりここでもモダンでスマートな演奏を聴かせてくれるのですが,歌心たっぷりにユーモアも交えて楽しい音楽を展開してくれますね。これも素晴らしかった! 期待通り,さすがです。

そして録音がまた素晴らしい。それぞれの楽器の音が分離良く極めて明瞭で,低域の締まりも高域の伸びも音色の自然さも申し分ありません。わずかに残響感はあるものの直接音が主体でほとんど楽器音を邪魔しません。楽器の質感も良く感じられます。先に取り上げた2つのディスクよりも良好です。文句なしで五つ星の好録音です。

シベリウス:交響曲全集(ピエタリ・インキネン指揮/日本フィルハーモニー交響楽団)

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シベリウス:交響曲全集
ピエタリ・インキネン指揮/日本フィルハーモニー交響楽団
2013年3-4月 サントリーホール,横浜みなとみらいホール(第2番)
NYCC-27286-9 (P)(C)2015 Naxos Japan (国内盤)
好録音度:★★★★★
参考: Tower RecordsAmazon.co.jpHMV Onlineicon
2013年春のシベリウス交響曲ツィクルスのライヴ録音。演奏後の拍手も収録されています。指揮者の意向で,第6番と第7番は拍手なしに続けて演奏されています。

遅めのテンポで丁寧に,克明に描かれるシベリウスの交響曲の世界。情緒や感情に流れず禁欲的。北欧の作曲家の音楽という側面は強調されず,より普遍的な価値を持つ音楽としてアプローチされているように思います(これは解説書にもそのようなことが書かれています)。個人的にはベルグルンド/ヨーロッパ室内管弦楽団の3度目の全集とそういう面で近い印象があります。そういうところが良いですし気に入りました。

そしてこの演奏を仔細に伝えてくれる録音がまた素晴らしい。残響はかなり控えめ。各楽器の生の質感が明瞭に分離良く自然な音色で伝わってきます。特に弦楽器の質感が大切に扱われていることに好感を持ちます。セッション録音のような演出感も全くありません。会場の雑音はゼロではありませんが気になりません。リアルなライヴ録音としてかなり上手く録れていると思います。ほぼ不満のない好録音です。

演奏も録音も良い素晴らしい全集で感激しました。愛聴盤候補です。しばらくじっくり聴き続けたいと思います。私の中では今ベルグルンド/ヨーロッパ室内管弦楽団の全集と肩を並べる位置に来ています。録音が気に入っている分,こちらの方が好きになるかもしれません。

ビゼー:交響曲ハ長調,小組曲,シャブリエ:田園組曲(フランソワ=グザヴィエ・ロト指揮/レ・シエルク)

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ビゼー:交響曲ハ長調,小組曲
シャブリエ:田園組曲
フランソワ=グザヴィエ・ロト指揮/レ・シエルク
(P)2007 Mirare ※Apple Musicで試聴
好録音度:★★★★★
参考: iTunes StoreAmazon.co.jp
Twitterなどで,最近発売されたロト指揮レ・シエルク(古楽器オーケストラ)のシャブリエ「スペイン」などが収録されたディスクの録音が素晴らしいという評価を目にしたので一度聴いてみたいと思っていました。しかし曲にあまり興味がわかなかったので,同楽団の別のディスクを探していたところ行き当たったのがこのディスク。特にビゼーの交響曲が溌剌とした演奏で素晴らしいですね。この曲はほとんど聴いたことがありませんでしたが,こんなに楽しい曲だったのですね。

そしてその録音ですが,響きの透明さとヌケの良さが抜群,残響はあるものの,明瞭感と各楽器の分離感も良く,このキレの良いサウンドは魅力的で申し分ないです。やや演出された仕上がりで実在感や楽器の質感が薄めなので私の求める好録音とは少し方向性が違いますが,これなら十分納得できる録音です。

このディスクはすでに入手が難しくなっているようです。iTunes StoreやAmazonで配信されているのは見つけ手いたのですが,購入は躊躇していました。圧縮音源ですが,Apple Musicでフルに聴けるようになったのは本当に有り難いです。

バッハ:平均率クラヴィーア曲集全曲(フリードリヒ・グルダ)

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バッハ:平均律クラヴィーア曲集全曲
フリードリヒ・グルダ Friedrich Gulda (Piano)
1972年4月,1973年5月 ドイツ
0300650MSW (P)1972/73 MPS Records (C)2015 Edel Germany (輸入盤)
好録音度:★★★★★
参考: Tower RecordsAmazon.co.jpHMV OnlineiconiTunes Store
私は平均率クラヴィーア曲集はグールド盤しか持っておらず,それほどこの曲に関心を持っていたわけではなかったので,これが有名な演奏だとは知りませんでした。勝手な先入観で刺激的な演奏を期待していたのですが,どちらかというと多彩な音色と表情付けで曲毎にくっきりとコントラストを付けて描き分け,しかし揺るぎのない音楽をじっくり聴かせる演奏だなぁとちょっと意外に思いました(個人の感想です(^^;)。

そして何より素晴らしいのがこの録音! 印象としてはグールドのスタジオ録音に近いです(聴き比べると実際にはだいぶ違いますが)。ピアノ以外の響きが皆無,極めてクリアで粒立ちがとても綺麗。超Hi-Fi的な誇張や不自然さもない。ジャズでは良くある録り方かもしれませんが,クラシックではまずこんな録り方しないですね。一般的なクラシックのピアノ録音とはかけ離れているので好き嫌いが分かれると思いますが,私としてはほぼ理想に近い,こんなピアノの音が聴きたかったんだ!という録り方で本当に嬉しい限りです。MPSは西ドイツのジャズ・レーベルだそうで,それでこの録音が実現したのだと思います。感謝! なお,音質は第1巻の方が良く,第2巻は少し癖のある響きが感じられて少し落ちます。

あぁ,こんなピアノの録音でもっと聴けたらいいのに! こんな素晴らしい録音のお手本があるのになんで真似しないんですかね。こんな録音が増えたらもっとピアノが好きになるだろうに。なんでみなさんピアノの音を濁して録音するのか,私には全く理解できません。