2018/04/15

アイブラー四重奏団 Eybler Quartet
2015年6月29日-7月1日 グレン・グールド・スタジオ(トロント,カナダ)
COR16164 (P)(C)2018 The Sixteen Productions (輸入盤)
好録音度:★★★★☆
参考:
軽やかで小気味よくスピーディーに曲が進行していく清々しい演奏。巧いですしアンサンブルも優秀です。現代的で洒落てます。初期の作品はこういう演奏が良いですね。
録音ですが,少々残響感はあるもののしつこくはなく,直接音もそれなりに感じられることから悪い印象はありません。せっかくのスタジオ録音なのでもっと残響を抑えてキリッと録って欲しいところですが,これならまあ許せます。
想定外に良かったので(失礼!),今後の録音にも期待したいと思います。
2018/04/15

アナ・ゲッケル Anna Göckel (Violin)
Église du Bon Secours, Paris, in May 2017
FF003 (P)(C)2018 NoMadMusic (輸入盤)
好録音度:★★★★☆
参考:
「CD試聴記」からの転載記事です。
端正で美しい好演奏。 音色も伸びやかで透明感があり,爽やかな響きをもたらしていて印象的です。 表現自体はオーソドックスで強く主張する演奏ではありませんが, 気持ちよく聴ける良い演奏でした。 技術的にも全く問題ありません。
録音ですが,少し残響を伴っていて音色に影響しているものの, 音の抜けや伸びは保たれていますし,楽器の質感やニュアンスも感じ取れるので, 十分良好と言える録音です。
アナ・ゲッケルは1992年生まれ,フランスのヴァイオリニスト。
ディスクはまだ日本では取り扱いがないようですが,Apple Music等のサービスで聴くことが出来ます。
(記2018/02/17)
(記2018/04/15)
2018/04/10

若林顕 Akira Wakabayashi (Piano)
2017年5月22-24日,6月28日,8月28-29日,12月21-22日 埼玉・富士見市民文化会館(キラリふじみ)
TRITON OVCT-00144 (P)(C)2018 Octavia Records Inc. (国内盤)
好録音度:★★★★☆
参考:
ピアニストには全く疎い私の中では若林氏は「デュオ職人」というイメージだったので(ごめんなさい),このショパンの練習曲集のリリースはとても意外に思えたのですが,実はソロ作品もたくさんリリースされていたのですね...失礼しました。ということもあって興味津々で聴かせていただきました。
それでこの演奏なのですが,とても丁寧でキッチリと正確に弾かれているように思ったのですが,何というか,とても説明的というか,「ここはじつはこうなっていてね,こう弾くんですよ」という言葉が聞こえてきそうな,曲の構造が見えてきそうな,ネタばらし的演奏のように思えて,そういう点で他の多くの演奏とは随分と違った印象を受けました。こういうのもとても良いと思いました。
それで録音なのですが,少し残響感があり響きのまとわりつきが気になるものの,音色自体は芯があって美しく伸びがあり,これはこれでまあアリかなと思いました。私としてはやはりちょっとウェットな感じがするので,もう少しドライに録ってくれた方が好きなんですけどね。ちょっとオマケですが四つ星半としました。多くの人に受け入れられやすい録音だと思います。
2018/04/05

伊藤恵 Kei Itoh (Piano)
14-16 Sep. 1990, YAMAHA Test Saal, Hamamatsu
FOCD3125 fontec (国内盤)
好録音度:★★★★☆
参考:
この人のテクニックは本当に凄いですねぇ。積極果敢に攻める演奏でここまで淀みなく,一点の曇りもなく弾き切っているのは本当に立派です。表現はストレートで男性的であり,情緒的なところはあまりなく力で強引に突き進んでいく感はありますが,それがこの演奏の良いところでもあり,逆に物足りなく感じるところでもあるかもしれません。私はこういうのは大好きです。
さて録音ですが,残響は控え目で楽器自体の響きをダイレクトに捉えた好録音と言えると思います。少し高域の音色,響きに癖があり,きらびやかすぎるような気もしますが,まあ悪くはありません。不満はゼロではありませんが,フォンテックとしては良い方ではないでしょうか。
録音場所が「ヤマハ・テスト・ザール」とあり,楽器もヤマハ CF-IIIが使われていると書かれています。それにしてもテスト・ザールって...
2018/04/04

ペーター・シュタンゲル指揮/タッシェン・フィルハーモニー
2012年~2017年 Munich/Pullach/Germany
ETP010 (P)(C)2017 Edition Taschenphilharmonie (輸入盤)
好録音度:★★★★☆
参考:
タッシェン・フィルハーモニーは12名から20名で構成され「史上最少のオーケストラ」とも呼ばれているとのことです。今までにベートーヴェンの交響曲を含めすでに何枚かリリースされていて,その一部を以前取り上げていました(→こちら)。このときのコメントで「弦楽器の構成はヴァイオリン3名,ヴィオラ2名,チェロ2名,コントラバス2名」と書いていますが,下の写真を見るともう少し少ないのかもしれません。
それで演奏なのですが,やはり基本的には前のレビューの感想と変わりません。室内楽の弦楽器にオーケストラの管楽器が組み合わさるわけですから,このバランスの悪さどうにもなりません。管楽器が鳴り出した途端に弦楽器は辛うじてエッジが聴こえるだけでボディの鳴りは全く聴こえず,もどかしさしか感じられませんでした。この中では管楽器の編成が比較的薄い第6番「田園」,次いで第1番が何とかギリギリ聴けるかなとは思いましたが,それとて不満がなくなるわけではありません。小気味よいキレのある演奏は大変魅力的だと思うんですけどね...
録音ですが,残響は少なめで締まりがあり,音色への影響も少なく,演出感のない自然な音響で捉えられているのは好感が持てます。弦楽器と管楽器のバランスの悪さは,実際に聴いてもそういうバランスなのだろうなと思うので,それ自体は悪くはないと思います。しかし,音楽として楽しむためには多少のデフォルメを許し,もう少し弦楽器の比率を上げるべきです。意図的にそうしていないのかなとは思いますが。なお,録音自体は悪くはないと思いますので四つ少しオマケですが星半です。
ということで,これはこれで面白く価値ある試みだと思いますし,何かしらの意図は達成されているのだと思います。しかし,純粋に音楽を楽しめるかというと,やっぱり微妙だと言わざるを得ません。

タッシェン・フィルハーモニー
2018/04/01

クセニア・ヤンコヴィッチ Xenia Janković (Cello)
March 2006 at the Église Évangélique Saint-Marcel, Paris, France
MLS-CD-006/007 (P)(C)2015 Melism (輸入盤)
好録音度:★★★★☆
参考:
「CD試聴記」からの転載記事です。
少し速めのテンポで淀みなく小気味よく,そして躍動的に弾むリズムが気持ちのよい好演奏。 深い響きの低音から艶やかな高音まで音色も美しいです。 技術も確かで安心して音楽に浸ることが出来ます。 これはちょっとした掘り出し物でした。
録音ですが,少し残響が多めで楽器音へのまとわりつきが気になりますが, ボディ感たっぷりにしっかりと質感をもって捉えているのは良いと思います。 不満はあるものの,チェロの録音としてはまだ良い方ではないかと思います。
ヤンコヴィッチはセルビア出身のチェリストとのことで, 1981年にはガスパル・カ サド国際コンクールに優勝したとのことです。 現在はデトモルト音楽大学の教授とのことです。他にはハイドンのチェロ協奏曲の録音などがあり,以前取り上げていました。
2018/04/01

ロビン・ティチアーティ指揮/スコットランド室内管弦楽団
Usher Hall, Edinburgh, on 15–29 May 2017
CKD 601 (P)(C)2017 Linn Records (輸入盤)
好録音度:★★★★☆
参考:
ディスクの発売が少しずつ遅れているようで,当初3月の予定が2018年4月1日時点で4月10日の発売に延びています。e-onkyoにもまだ出ていません。私は待ちきれずにLinn Recordsから直接ダウンロード購入しました。こちらから購入するとちゃんとPDFのブックレットも付属しています。供給元からPDFが出ているのですから,e-onkyoもブックレットのダウンロードが出来るように対応してほしいものです。
ティチアーティ/スコットランド室内管弦楽団の演奏はシューマンの交響曲全集を取り上げていましたが,これも同様にいわゆる「キレッキレ」の演奏で,ちょっと極端すぎるきらいはあるものの,このような小編成で小気味の良い,見通しの良い演奏は基本的に好きなので,ワクワクしながら聴きました。ただしこれは嫌いな人も多いだろうなと思います。しかし,あろうことか,第1番,第2番の第1楽章の提示部のリピートがどちらも省略されているのです(第3番はリピートあり)。好きな演奏なのにこれだけでとても残念な気持ちになります。
録音ですが,残響はほどほどであり,低域の締まり,高域の伸びもそこそこあって,見通しも良く,良好な録音です。オーディオ品質も高い点はさすがLinn Recordsです。しかしあえて不満を言うと,これはLinn Recordsに共通の特徴だと思うのですが,音は綺麗なのですが,現実感に乏しく過度に加工された作り物のような感じがします。演奏者の存在が希薄で楽器の質感もあまり感じられないのです。これも惜しい点ですね。
2018/03/29

ラドミル・エリシュカ指揮/札幌交響楽団
2017年3月10,11日(No.1),2014年11月14,15日(No.2),2013年10月11,12日(No.3),2015年6月19,20日(No.4) 札幌コンサートホールKirara
ALT388/90 (P)2018 Altus Music (国内盤)
好録音度:★★★★☆
参考:
定期演奏会の拍手の入るライヴ録音。終楽章こそほのかに熱気を帯びて躍動感が出てくるものの,総じて素直で落ち着いた品格のある演奏であり,それがブラームスの交響曲によく合っていると思いました。札幌交響楽団も何カ所か縦の線が混沌とするところがあったものの健闘していると思います。なお,第1番から第3番の第1楽章の提示部のリピートはすべて省略されていて,それだけがとても残念でなりません。
録音ですが,残響は控え目ですがライヴの自然な音響が感じられる演出感の少ない録り方が好ましい好録音です。どちらかとえいば地味であり,これが好録音?と思われるかもしれませんが,音楽を邪魔する要素,欠点が少ないところが良いと思いました。欲を言えばもう少しヌケの良さと細部の見通しの良さがあればなとは思います。少々オマケの感はありますが四つ星半です。オーディオ的には標準的で可不可なしというところでしょうか。
2018/03/21

デネス・ジーグモンディ Denes Zsigmondy (Violin)
1995年5月
CD JBS 1001/2 Juneau Bach Society (輸入盤)
好録音度:★★★★☆
参考:
「CD試聴記」からの転載記事です。
気力の漲る意欲的な演奏。 年齢からくる技術的な衰えか,キレが良くないところが散見されますが,ほとんど気になりません。 むしろ勢いのある演奏で味わい深く感じさせるところなど長年の積み重ねを感じさせます。
録音ですが,少し残響が多めなのですが,直接音が主であるため明瞭感の低下や音色への影響は少なく,印象は悪くありません。 もちろん残響を抑えてもっとクリアーに録って欲しかったところですが,これでも十分許容範囲です。
ジーグモンディ氏は1922年生まれ,ハンガリー出身,2014年に亡くなられたとのことです。 これは73歳くらいでの録音になります。
本ディスクは残念ながら現在は入手が難しい状態で,音楽配信も見つけることが出来ませんでした。
(記2017/05/13)
入手が難しい状態が長く続いていましたが,4月に再発売されるようです。少し前に米アマゾンで見つけていたのですが,国内でも輸入盤の取り扱いがされるようで,喜ばしいことです。リマスタリングされているそうですので,これは入手しなければ!
→
(記2018/03/21)
2018/02/18

アイブラー四重奏団 Eybler Quartet
2012年1月,トロント
AN29842 (P)2012 Analekta (輸入盤)
好録音度:★★★★☆
参考:
Apple Musicでの試聴です。
まるで模範演奏のように教科書的に見事に整っています。個性的な表現はほぼないのですが,「標準」を結構いい線で極めているかなという感じがします。ちょっとおっとりしていて独特の雰囲気はあります。私はこういうのも好きですね。
録音ですが,響きが被って少し音色を濁してはいるものの,それでも直接音が多く明瞭感もあり,高域の伸びも感じられてまずまず良好と言えます。これなら弦楽四重奏の録音として十分許容範囲です。少々オマケですが四つ星半です。
2018/02/17

フィリップ・ジョルダン指揮/ウィーン交響楽団
Musikverein Wien, Vienna. 25/26 February and 8/9/10 March 2017
WS019 (P)(C)2017 WIENER SYMPHONIKER, VIENNA (輸入盤)
好録音度:★★★★☆
参考:
この2枚組の1枚目は昨年取り上げていました(→こちら)。2枚目の第4番,第5番はレギュラー盤は半年後に発売されるそうなのですが,2017年の日本ツアーのスペシャル・エディションとして1枚目とともに日本向けに製造されたとのことです。1枚目の出来が素晴らしかったので,半年を待ちきれずに購入してしまいましたが,こういう発売の仕方は正直あまり有り難くないですね... 勿体ぶらずにさっさとレギュラー盤で発売して欲しいものです。
第4番,第5番についても感想は1枚目と変わらず,演奏も期待通り,録音も良好でした。全集に向けての今後のリリースがますます楽しみになりました。
第1番,第3番については
日本向けということで,ジャケ写に漢字(しかも明朝体)で収録曲が記載されているのが新鮮です(^^;。解説書はありませんが,曲名や演奏者も日本語の記載があります。
2018/02/04

若杉弘指揮/シュターツカペレ・ドレスデン
1984年12月 ドレスデン,ルカ教会
Berlin Classics 0300923BC (C)2017 EDEL GERMANY GMBH (輸入盤)
好録音度:★★★★☆
参考:
これは上質というか品格のあるワーグナーですね。引き締まった造形で響きも美しく,誇張のない誠実な表現がとても良いと思います。
録音ですが,ルカ教会での録音としては残響がかなり控え目に抑えられ,直接音主体にシャープかつ透明感のある音で録られているのが好印象です。中低域は昨今のワイドレンジな録音と比較するとかなり薄く,下支えが少々足りない感じはありますが,帯域バランスを崩しているということはないので問題はありません。
[収録曲]
歌劇「さまよえるオランダ人」序曲
歌劇「タンホイザー」序曲
歌劇「リエンツィ」序曲
歌劇「ローエングリン」第1幕への前奏曲
歌劇「ローエングリン」第3幕への前奏曲
2018/02/04

ヴァージニア・ルケ Virginia Luque (Guitar)
Recorded at Kaleidoscope Sound
IPCD007 beria productions (輸入盤)
好録音度:★★★★☆
参考: CD Baby,演奏者Webサイト
私はギターについて技術的限界がどのあたりにあるのかよくわかっていないのですが,多重録音することなくギター1本だけで演奏しているなら大健闘で,1本で弾いているとは信じがたいところがしばしば現れます。正直なところやはりギター1本ではかなり無理があり,技術的困難が発音やリズムの崩れを引き起こしスムーズな演奏とは言い難いのは確かなのですが,それでもここまでやれるというのが私には驚異的に思えます。なので,CD 2枚組で演奏時間約98分に及ぶ演奏であっても全く退屈しませんでした。この困難な挑戦に拍手! ギターに興味のない方には全くお勧めしませんが,好きな方はサンプルを聴いてみて欲しいと思いました。
ギターによるゴルトベルク変奏曲は,カート・ラダーマーの特別仕様ギター多重録音による演奏は別格として,マルコ・サルチートのギター1本による演奏がありました。サルチートの方が安定感があり崩れの少ない演奏でしたが,原曲に対する忠実度はこちらの方が上のような気がしました。(もちろんかなり変更されていますが,相対的な印象としてということです)
録音ですが,スタジオでギターの前にマイクを1本だけ立てて録音したような誇張・演出感のない生録的な自然さが良いです。クラシック・ギターの録音としてほぼ不満はありません。結局こういう何もしていない録音が一番音楽を素直に伝えてくれますし,楽しめます。
最後にリピート表です。すべてのリピートが実行されています。完璧です。
演奏時間 約98分
リピート表
Aria ○○
Var.01 ○○ Var.02 ○○ Var.03 ○○
Var.04 ○○ Var.05 ○○ Var.06 ○○
Var.07 ○○ Var.08 ○○ Var.09 ○○
Var.10 ○○ Var.11 ○○ Var.12 ○○
Var.13 ○○ Var.14 ○○ Var.15 ○○
Var.16 ○○ Var.17 ○○ Var.18 ○○
Var.19 ○○ Var.20 ○○ Var.21 ○○
Var.22 ○○ Var.23 ○○ Var.24 ○○
Var.25 ○○ Var.26 ○○ Var.27 ○○
Var.28 ○○ Var.29 ○○ Var.30 ○○
Aria da capo ○○
2018/01/29

ブルッフ:ヴァイオリン協奏曲第1番ト短調作品26
レイチェル・バートン・パイン Rachel Barton Pine (Violin)
アンドルー・リットン指揮/BBC交響楽団
2017年1月9日-11日 BBCメディア・ヴェール・スタジオ(ロンドン)
AVIE AV2375 (P)(C)2018 RBP Music (輸入盤) 国内流通仕様
好録音度:★★★★☆
参考:
ブルッフはバートン・パインの濃厚でエモーショナルな表現がこの曲に良く合っていると思います。一方エルガーの協奏曲は...何枚かディスクを持っているのですが,今ひとつ掴み所がわからず,いまだに面白さを理解できていないのでちょっとコメントが難しいです(すみません(^^;)。
録音ですが,ソロ,オーケストラともに残響は控え目で直接音主体にクリアに録音されています。オーケストラは締まりとキレがあり,弦楽器主体に密度感のあるサウンドで構成されている点も好印象。ソロはその上にややフォーカスされて乗ってくるので聴きやすいバランスになっていると思います。協奏曲の録音としてほぼ不満がなく,かなり良いと思います。
最初Apple Musicで試聴して録音が良さそうだったので,この演奏・録音でエルガーをじっくりと聴いてみようと思い,ディスクを入手しました。それにしても...このエルガーの協奏曲,重厚長大で真剣に聴き出すと相当消耗しますね...(^^;。時間が半分くらいだともっと聴くと思うのですが。
2018/01/28

バッハ:管弦楽組曲全曲
サー・ネヴィル・マリナー指揮
アカデミー・オフ・セント・マーティン・イン・ザ・フィールズ
1971年1月30日-2月12日 ウェンブリー,プレント・タウン・ホール(協奏曲)
1970年12月7-10日 ロンドン,セント・ジョンズ・スミス・スクエア(管弦楽組曲)
PROC-2056/8 (P)1971 Decca Music Group (国内盤) タワーレコード企画盤
*TOWER RECORDS VINTAGE COLLECTION +plus Vol.24
好録音度:★★★★☆
参考:
マリナーとASMFのブランデンブルク協奏曲は全部で3回録音されていて,これは1回目の録音です。あとの2回の録音は以前取り上げていました(2回目,3回目)。今回はブランデンブルク協奏曲のみのコメントです。
このブランデンブルク協奏曲では,アイオナ・ブラウン(Vn),デイヴィッド・マンロウ(Rec),バリー・タックウェル(Hr),サーストン・ダート(Chem),レイモンド・レパード(Chem),といった名手が参加しています。また,サーストン・ダートが編纂した版を用いているという点でいろいろと特徴のある全集となっています。
このサーストン・ダート版に基づくこの録音は,「いわゆるブランデンブルク候への献呈稿(バッハ自身による改訂)より以前のケーテン時代の版による「First Version」として,ダートのよる仮説を含めた校訂が行なわれたのがこの音源です。第1稿の形で再演を試みようと進められたプロジェクトでした。」(以上,
気づいただけでも通常演奏されるものと次のような差異があります。
第1番: 通常,第3楽章としてAllegro,第4楽章としてMenuetto - Trio I - Polacca - Trio IIと演奏されるものが,第3楽章Menuetto,第4楽章Allegro,第5楽章Polaccaとなっている。
第2番: トランペットではなくホルンが使用され,リコーダーがアルトではなくソプラノ(?)・リコーダーが使われている。
第4番: リコーダーはソプラニーノ・リコーダーが使用されている。
第5番: チェンバロのソロが65小節ではなく19小節の短いものになっている。
細かく見るともっとあると思います。1970年の初めの演奏でこのような試みがなされていたとはちょっと驚きです。
録音ですが,響きを抑え気味にして各楽器をくっきりと明瞭に捉えているのが良いです。ややスタジオ録音的で録音会場の自然な雰囲気は感じられないものの,音の抜けの良さ,音の伸びなど申し分なく,十分に好録音と言えます。この頃のPhilips(ですよね?→※)の良さが出ていますね。こういう録音,好きです。
このような貴重な録音を復刻してくれたタワーレコードに感謝!
※原盤がフィリップスであることを,いつもお世話になっている友人が古い資料を掘り起こして確認してくださいました。有り難うございました。(2018/1/30追記)
2018/01/28

イルジー・ビエロフラーヴェク指揮/チェコ・フィルハーモニー管弦楽団
2014年5月12-14日 プラハ,スメタナ・ホール
483 3187 (P)2017 Decca Music Group (輸入盤)
好録音度:★★★★☆
参考:
この曲はこのように演奏するのです,と見本を示されているような気がしました。これが本場の演奏,という感じは私自身はしないのですが,確信をもって力強く堂々と演奏されていて,しかも大仰なところがないのが良いところだと思いました。
録音は残響多めですが,ウェットにならず,むしろドライで締まりもあり,変な癖もなく演出感も少ない素直で自然な音響が良いです。好きなタイプの録音とは少し違いますが,これは良いかなと思いました。最初聴いたときはちょっと冴えない地味な録音だなと思いましたが,そんなに悪くはないという印象です。少々オマケですが四つ星半としました。人により評価は分かれるとは思います。
指揮者のビェロフラーヴェク氏は2017年5月に71歳で亡くなられたとのことです。
2018/01/28

ジャン=フィリップ・トランブレ指揮/フランコフォニー管弦楽団
July 21 to 24 2009 at Salle Raoul-Jobin, Palais Montcalm, Québec
AN 2 9975-9 (P)2010 Analekta (輸入盤)
好録音度:★★★★☆
参考:
時折縦の線が乱れて混沌とすることがあり,オーケストラの力量に不安を感じる箇所が散見されるとはいえ,この生き生きと弾む音楽は大変魅力的です。テンポは総じて速く,メリハリのある躍動的な演奏が良いです。このオーケストラはカナダのフランコフォニー(フランス語を話す人)の学生を中心に若手プロも加わったユース・オーケストラとのことで,この荒削りながらフレッシュな演奏はそういうことだったのかと納得。
録音ですが,残響はありますが響きに締まりがあり音離れがよく楽器音をあまり邪魔しません。各楽器が比較的分離良く明瞭に聴き取ることができます。音色も自然であり,演出感も少なくライヴの雰囲気を良く伝えてくれます。まずまずの好録音です。
他人にお勧めはしませんが,私自身は演奏も録音も結構気に入りました。
2018/01/21

チャイコフスキー:弦楽四重奏曲第1番ニ長調作品11
ボロディン:弦楽四重奏曲第2番ニ長調
エッシャー弦楽四重奏団 Escher String Quartet
2017年3月 ドイツ,ノイマルクト,ライツターデル
BIS-2280 SACD (P)(C)2017 BIS Records (輸入盤)
好録音度:★★★★☆
参考:
チャイコフスキーとボロディンは,私の好きなボロディン四重奏団の演奏に近い印象ですが,さらに若々しく溌剌として勢いがあり音楽が躍動しています。技術的にも大変優れていて隅々までコントロールが行き届き音楽に多彩なニュアンスを与えています。これはなかなか良いと思いました。
そして録音もBISにしては良好です(^^;。残響感はあるものの直接音を主体に濃厚に捉えています。明瞭感も良好ですし個々の楽器の質感も良く感じられます。少々捉え方が濃すぎる感があり残響ももう少し控え目にすっきり録った方が良いとは思いますが,これでもまずまず良いと思います。
このディスク,収録時間が約82分で名曲が3曲収められているというのもうれしいですね。
2018/01/07

フランク・ペーター・ツィマンマーマン Frank Peter Zimmermann (Violin)
ベルリン・バロック・ゾリステン
2017年4月 イエス・キリスト教会
HC17046 (P)(C)2017 hänssler CLASSICS (輸入盤)
好録音度:★★★★☆
参考:
このディスクでは,ヴァイオリン協奏曲第1番BWV 1041,第2番BWV 1042と,原曲がヴァイオリン協奏曲とされるチェンバロ協奏曲第1番BWV 1052をヴァイオリン協奏曲として再構築したもの,ヴァイオリンとオーボエのための協奏曲BWV 1060を2つのヴァイオリンに編曲したもの,が収録されています。最後の曲は息子のセルゲ・ツィンマーマンとの共演とのことです。
スピード感のあるキレの良いスリリングな演奏ですねぇ。バッハの演奏としてはちょっと刺激的すぎる感はありますが,この痛快な演奏は結構好きです。こういうモダン楽器バリバリ(死語?(^^;)の演奏もアリじゃないかと。
録音ですが,残響はあるものの直接音主体に明瞭に録られた好録音です。まるでスタジオで録られたような感じであり,少々実在感が薄いようにも思いますが,残響で曇った録音よりははるかに良いと思います。このシャープな録音が演奏のキレの良さをさらに際立たせていますね。密度が高く息苦しい感じもあるので,もう少しすっきりと見通しが良かったら言うことなしなのですが,まあそれでもかなり良い方だと思います。
2018/01/02

ジャン=フランソワ・エッセール(弾き振り)/新アキテーヌ室内管弦楽団
2014年11月, 2015年3月
MIR374 (P)2017 Mirare (輸入盤)
好録音度:★★★★☆
参考:
Apple Musicでの試聴。国内での輸入盤発売は1月末のようですが,Apple Musicで公開されていましたのでフライングで聴いてみました。今回は録音のみのコメントです。
室内管弦楽団との協奏曲ということですが,録音を聴いてみると室内管弦楽団とは思えないスケール感で捉えられています。しかし,そういう録音に仕立てるためか,比較的楽器の近くにマイクが設置されているようで,各楽器の質感が分離感良く聴こえてきます。残響が多めで響きに癖があり少しうるさく聴こえるのは好みとは異なりますが,サウンドも比較的締まっていてトータルの印象は悪くありません。ピアノももう少し響きを整理してすっきりしたサウンドにして欲しいところですが,まあ許容範囲です。少しオマケですが四つ星半です。
2018/01/01

ミリアム・フリード Miliam Fried (Violin)
Jerusalem Music Center, December 2016
Nimbus Alliance NI 6351 (P)(C)2017 Wyastone Estate Limited (輸入盤)
好録音度:★★★★☆
参考:
「CD試聴記」からの転載記事です。
同氏20年ぶり2回目,70歳での録音。 速めのテンポで淡々と淀みなく演奏される点は1回目と同様ですが, ニュアンスが多彩な円熟した味わい深い音楽に仕上がっています。 技術的にも衰えはほとんど感じさせず,正確で安定しています。 インパクトはありませんが,聴く度に感銘を受ける好演奏です。 音楽的な深化と技術の衰えが交差するベストタイミングを狙って録音されたのでしょうね。
録音ですが,残響の影響でわずかながら音色にくすみが感じられるものの, 直接音が主体で細部も聴き取れますし,楽器の質感も感じられます。 もう少し透明感,ヌケの良さがあると良かったのですが,これでもまずまず良好です。少々オマケですが四つ星半です。
なお,本ディスクはレーベル公式のCD-R盤です。
2017/12/29

ハ長調 Hob VIIa:1, イ長調 Hob VIIa:3,ト長調 Hob VIIa:4
リサ・ジェイコブス Lisa Jacobs (Violin)
ザ・ストリング・ソロイスツ
April 19 & 21, 2017 Cunerakerk, Rhenen, The Netherlands
COBRA 0061 (C)2017 Cobra Records (輸入盤)
好録音度:★★★★☆
参考:
ハイドンのヴァイオリン協奏曲も見つけると手に入れてしまう好きな曲の一つです。リサ・ジェイコブスはオランダの若手ヴァイオリニスト。このハイドンの愛らしい曲をモダン・ヴァイオリンで美しく奏でているのですが,ちょっと控え目で大人しく枠にはまりすぎている気もします。協奏曲なのでもう少しはじけても良いのではと思います。なおカデンツァはすべて本人によるものとのことです。
録音ですが,ソロは少し残響を伴っていてまとわりつきが気になりますが,透明感があり音の抜けもまずまず良好で悪くありません。バックのアンサンブルはさらに残響が多いのですが,直接音と分離しており,響きが周囲にふわっと広がり空間性を上手く演出していて,残響が多い割に印象は悪くありません。残響を取り込むならこんな風にして欲しいという好例です。ソロがもう少し前に張り出してくれるとなおよかったのですが,まあこれでも十分に良好です。
2017/12/24

尾高忠明指揮/札幌交響楽団
2013年2月28日, 3月1,2日 札幌コンサートホールKitara
FOCD6036 Fontec (国内盤)
好録音度:★★★★☆
参考:

尾高忠明指揮/札幌交響楽団
2014年2月28日, 3月1日 札幌コンサートホールKitara
FOCD6040 Fontec (国内盤)
好録音度:★★★★☆
参考:

尾高忠明指揮/札幌交響楽団
2014年2月28日, 3月1日,2015年2月13,14日 札幌コンサートホールKitara
FOCD6048 Fontec (国内盤)
好録音度:★★★★☆
参考:

尾高忠明指揮/札幌交響楽団
2015年2月13,14,17日 札幌コンサートホールKitara
FOCD6049 Fontec (国内盤)
好録音度:★★★★☆
参考:
ベートーヴェンの交響曲全集が演奏も録音も良かったので,これも買うのを躊躇していたシベリウスの交響曲全集も思い切って聴いてみました。定期演奏会の録音とのことなのでライヴ録音だと思いますが,セッション録音並みに丁寧で落ち着きがあります。やはりベートーヴェンと同じくオーソドックスなアプローチなのでその点で物足りなさを感じることもありますが,全体として高水準な仕上がりであり,何度も聴き返したくなる魅力を備えていると思います。
そして,やはりこれも録音の良さがこの全集をさらに魅力的なものにしています。個々の楽器の音色を明瞭に質感高く分離良く捉えていて気持ちよく聴くことができます。ややデフォルメされた感はありますが,こういうのは歓迎です。
日本人指揮者と日本のオーケストラによるシベリウスの交響曲全集は,渡邉暁雄指揮日本フィルハーモニー交響楽団の新旧2種以来ということです。
2017/12/10

ブラームス:悲劇的序曲作品81
ピエタリ・インキネン指揮/日本フィルハーモニー交響楽団
2017/5/20, 4/22 横浜みなとみらいホール
NYCC-27305 (P)(C)2017 Naxos Japan Inc. (国内盤)
好録音度:★★★★☆
参考:
同顔合わせのシベリウス交響曲全集が演奏も録音も良かったのでこれも聴いてみました。拍手の入るライヴ録音です。オーソドックスなアプローチなので驚くようなところはありませんが充実感のある密度の濃い演奏で好印象でした。ライヴということもあってか事故?と思うところはあるのですが,気になりませんでした(←いやいやめっちゃ気にしとるやんけ(^^;)。
録音ですが,脚色のない生のライヴの雰囲気を伝えてくれる録音で,楽器の音色も自然であり,個々の楽器の質感も良く分離感もあり,左右の広がり,ステージ感も良好です。特に優秀録音ということはないと思いますが,地味ながら欠点の少ない好録音だと思います。前述のシベリウスに比べるとやや弦楽器の質感が弱いかなという気はしますが,欠点ではありません。こういう録音は好きな方です。
今後ブラームスの録音が続くのかわかりませんが,他の3曲の録音も期待したいです。
2017/12/02

尾高忠明指揮/札幌交響楽団
2011年9-12月 札幌コンサートホールKitara
FOCD6023/7 fontec (国内盤)
好録音度:★★★★☆
参考:
札幌交響楽団の50周年記念事業のまとめとして開いた「ベートーヴェン・ツィクルス」のライヴ録音と本番前日のセッション録音をまとめたものとのことです。札幌交響楽団の演奏は以前聴いたディスクでの技術面での不満があったのと,価格が1万円以上と高価なことから躊躇していたのですが,このたび清水の舞台から飛び降りる思いで入手しました(崖じゃないですよ(^^;)。
さて最も心配していた技術面ですが,全く問題ありませんでした。オーソドックスで特筆すべき特徴はないものの,速めのテンポで小気味よく引き締まった好演奏でした。起伏やニュアンスは乏しく感じられることもありますが,無理のない素直な演奏と受け取りました。50周年記念事業の記録としてふさわしいと思います。
そして録音なのですが,残響はそれなりに多く入っているものの,個々の楽器の直接音を主体に全体の音作りがされていて明瞭感,分離感があり,また中低域のサウンドも締まりがあって良好です。音色も癖がありません。弦楽器を中心に組み立てられているのにも好感を持ちます。個々の奏者の音が溶けあいすぎず,ザクザク?とした質感が感じられる点も好きです。すっきりしたサウンドではありませんし,オーディオ的にも標準的で特に良いとは思わないのですが,演出感が少なく楽器の音を大切に扱っているので私としては結構気に入りました。
演奏も録音も良好で,これはなかなか良い全集であったと満足しました。思い切って正解でした。
2017/11/26

フィリップ・ジョルダン指揮/ウィーン交響楽団
2015年4月11-12日(グレート),2014年11月15-16日(未完成) ウィーン,ムジークフェラインザール
WS009 (P)(C)2015 Wiener Symphoniker (輸入盤)
好録音度:★★★★☆
参考:
ベートーヴェンの交響曲第1番,第3番が良かったので,同顔合わせのこのシューベルトもApple Musicで聴いてみました。
この演奏もベートーヴェン同様のダイナミックで引き締まった演奏で期待通り。録音はベートーヴェンに比べると少し残響を控え目ですが同傾向であり,私の好きな録音とは少し違うのですが悪くありません。こういう録音であれば残響があってもストレスなく聴けるので,残響を多めにするならせめてこのように録って欲しいと思いますね。
ベートーヴェンを含め,今後の録音も楽しみにしたいと思います。
蛇足ですが,このディスクではグレートが先で未完成が後に収録されているのですが,グレートを聴いたあとに未完成はちょっと...と思うので,未完成を先に収録して欲しかったと思いました。もっとも自分で曲順を入れ替えて再生すれば良いだけの話だけなのですが。
また,参考サイトでは未完成が第8番,グレートが第9番と紹介されているのですが,ジャケット上では未完成が第7番,グレートが第8番となっていました。世界的に後者のナンバリングが一般的になったということでしょうか。まあどっちでも良いのですが,今は混在しているので副題や調性等を見ないと曲が判別しづらい状況というのはちょっと面倒ですね。
2017/11/26

フィリップ・ジョルダン指揮/ウィーン交響楽団
2017年2月25,26日 ウィーン,ムジークフェラインザール
WS013 (P)(C)2017 Wiener Symphoniker (輸入盤)
好録音度:★★★★☆
参考:
Apple Musicでの試聴です。ウィーン交響楽団の自主制作レーベルでしょうか(製造販売はSony Music)。フィリップ・ジョルダンのベートーヴェンはパリ・オペラ座管弦楽団との全集(Blu-ray/DVD)がありました。HMV Onlineの解説によるとウィーン交響楽団はベートーヴェンの交響曲全集の録音がないそうで,その穴を埋めるべく録音を開始した第一弾とのことです。
ジョルダン氏のベートーヴェンには前記のパリ・オペラ座管弦楽団との演奏で良い印象だったのですが,このウィーン交響楽団との演奏は,快速で小気味よい引き締まった演奏を維持しつつ,オーケストラのパワー感をもう少し前面に出し伝統的な演奏との折衷的な解を見いだそうとしているようにも思います。そしてそれが上手くいっているように思います。ウィーン交響楽団も指揮者の要求に的確に応じています。編成の大きなオーケストラでこの機動性の発揮された演奏は見事です。
録音ですが,かなり残響は多めに取り入れられているのですが,それが各々の楽器の音色にあまり影響せず,明瞭感,音色の自然さ,ヌケの良さと残響による豊潤な音響とがバランス良く成り立っているという印象です。このような録音は私の好きな録音とは方向性が違いますが,そんな私でもストレスなく聴くことが出来ました。積極的に支持はしませんが(^^;,良いと思います。
全集の完成が楽しみです。
2017/11/24

モザイク四重奏団 Quatuor Mosaïques
2014年~2016年
V5445 (P)2016 Naïve (輸入盤)
好録音度:★★★★☆
参考:
モザイク四重奏団のベートーヴェンとあらば聴かないわけにはいきません。注文しているのですが,注文先で発売延期になってしまい,待ちきれずにApple Musicで試聴しました。(なおAmazon.co.jpではすでに在庫があります)
モザイク四重奏団は10年ほど前に初期弦楽四重奏曲を分売で発売していましたが,それから長い期間が空いたのでもうベートーヴェンは録音しないのかと思っていたところでこのリリースは大変うれしいです。ピリオド楽器での演奏ですが,あまりそれが意識されませんし,そして彼らが弾く後期弦楽四重奏曲集は全く突き詰めたような厳しさがなく良い意味でユルく明るく楽しいのです。彼らならではの清々しい演奏ですね。
そして録音がまた良いのです。残響はあるものの控え目で付帯音が少なくすっきりしており,直接音主体に明瞭で自然でヌケの良い音色が気持ち良いです。残響があってもこういう素直ですっきりした仕上げにしてもらうと音楽に集中出来るんですけどね。何も特別なことはせずともそれぞれの楽器の音色を大切に扱って録音すればこういう素直で良い録音になると思うのです。
これは発売が楽しみです。
なお,HMV Onlineなどの解説では,第13番作品130と大フーガ作品133について,大フーガを終楽章に据えるのではなく,別の作品として単独で演奏しているように書かれていますが,少なくともApple Musicでは第13番の第6楽章が収録されておらず,第5楽章のあとに大フーガが置かれています。私としても大フーガは別に単独で演奏される方がどちらかといえば好きなので,この収録の仕方は残念です。Apple Musicだけがこうであって,ディスクには第6楽章が収録されていることを期待したいのですが...まあ収録されているとは思えないですけどね...
2017/11/23

バッハ:アリア~ゴルトベルク変奏曲 BWV.988
バッハ:14のカノン(ゴルトベルク変奏曲の主題に基づく) BWV 1087
バッハ:フルート,ヴァイオリン,通奏低音のためのソナタ ト長調 BWV 1038
鈴木雅明(cemb),菅きよみ(fl),寺神戸亮(vn),山口幸恵(vn,va),エマニュエル・バルサ(vc)
2016年8月 オランダ,ハーグ,旧カトリック教会
BISSA2151 (P)2017 BIS (輸入盤)
好録音度:★★★★☆
参考:
バッハの音楽の捧げものは曲調が渋く,また聴きどころが今ひとつ掴めていないためあまり聴かない曲なのですが,寺神戸さん等が演奏されているということで聴いてみたくなり,まずはApple Musicで聴いてみました(こういうときにApple Musicは有り難い)。ということで,今回は録音についてのみコメントします(スミマセン(^^;)。
教会での録音ということで,教会内で響く残響はやや多めに取り入れられているものの,直接音もそこそこしっかりと捉えられているため,楽器の質感も十分に伝わってきますので印象は悪くありません。各楽器の音像がやや近めに感じられ,楽器が重なってしまうため多少音像の大きさと位置に違和感がありますが,明瞭感はあるのでそれほど気になりません。私の好きなタイプの録音ではありませんが,楽器の音がリアルであるという点を評価して四つ星半です。
BISの録音はあまり好きでないのが多いのですが,これはまずまずでした。
2017/11/19

収録曲: KV 158, 160, 172, 171
ライプツィヒ弦楽四重奏団 Leipziger Streichquartett
10.04.-12.04.2017 Konzerthaus der Abtei Marienmünster
MDG 307 2044-2 (P)(C)2017 MDG (輸入盤)
好録音度:★★★★☆
参考:
待望のVol.3が発売されましたので追記します。これで初期弦楽四重奏曲集が完成しました。弦楽四重奏曲全集としても完結しましたね。基本的に演奏・録音ともにVol.1, 2と変わりません。この素晴らしい作品をゆっくりと楽しみたいと思います。

収録曲: KV 80, 155, 159, 169, 170
ライプツィヒ弦楽四重奏団 Leipziger Streichquartett
20.06.-22.06.2016 Konzerthaus der Abtei Marienmünster
MDG 307 1975-2 (P)(C)2016 MDG (輸入盤)
好録音度:★★★★☆
参考:

収録曲: KV 156, 157, 168, 173
ライプツィヒ弦楽四重奏団 Leipziger Streichquartett
21.11.-23.11.2016 Konzerthaus der Abtei Marienmünster
MDG 307 1976-2 (P)(C)2017 MDG (輸入盤)
好録音度:★★★★☆
参考:
モーツァルトの初期の弦楽四重奏曲から9曲です。まだ4曲ありますのでVol.3が近いうちに出ると思いますが,とりあえずこの2枚のレビューです。ライプツィヒ弦楽四重奏団のモーツァルトはハイドン四重奏曲とプロシア王四重奏曲はすでに発売されています。ホフマイスターは第14番~第23番まで収録したセットには収録されているようでした(これは1枚ずつ買い揃えてきた者としては少々腹立たしいですが)。初期のVol.3がリリースされれば全集が完結すると思います。
この四重奏団は結成からの歴史も長く,常に安定したスタンダード路線の高水準の演奏を聴かせてくれていますが,この演奏も同じ路線であり,個性を主張するようなところはなく,曲そのものの魅力を誠実に,そしてサラッと爽やかに表現して聴かせてくれます。長く付き合えそうな演奏で私は好きですね。
そしてこの録音がまた良いのです。残響感はそれなりにあり音場感もありますが,直接音が主であり,クリアで透明感のある音色が堪能できます。過去リリースされてきたモーツァルトのディスクよりも一段良くなっています。室内楽の録音として標準的な印象であり,その中で上手くまとめた好録音だと思います。
Vol.3のリリースが楽しみです。
(記2017/06/25)
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