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ブラームス:交響曲全集(ノリントン/ロンドン・クラシカル・プレイヤーズ)

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ブラームス:交響曲全集
(a) 交響曲第一番,ハイドンの主題による変奏曲 (CDC 7 54286 2 輸入盤)
(b) 交響曲第二番,悲劇的序曲 (TOCE-13229 国内盤)
(c) 交響曲第三番,第四番 (TOCE-13230 国内盤)
ロジャー・ノリントン(Roger Norrington)(Conductor)
ロンドン・クラシカル・プレイヤーズ(The London Classical Players)
1990年9月(第一番),1992年9月(第二番),1995年5月(第三番,第四番),No.1 Studio, Abbey Road, London
好録音度:★★★
参考url: HMV Onlineicon

ノリントンがロンドン・クラシカル・プレイヤーズと1990年から1995年にかけて録音したピリオド楽器による先駆的な全集とのことです。ピッチはA=435で,ビブラートを抑えた弦楽器の透明感ある響きはこの全集でも聴くことが出来ます。見通しが良くきびきびとした小気味よい演奏は私の好みです。演奏に関して言えば,シュトゥットガルト放送交響楽団との全集よりも好きかもしれません。

録音はロンドンのアビーロードスタジオで行われたようですが,残響感はそれほど多くなく,EMIの録音としては鬱陶しさが少ないという印象なのですが,少し遠いというか,それぞれの楽器の音の艶,質感がかなり失われてしまって,私としては欲求不満が募ってしまいます。演奏が面白いだけに残念でなりません。

[ブラームス][交響曲]

バッハ:無伴奏チェロ組曲全曲(イルジー・バールタ)

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バッハ:無伴奏チェロ組曲全曲
イルジー・バールタ(Jiri Barta)(Cello)
SU 3241-2 131/3242-2 131 (P)1996 Supraphon (輸入盤)
好録音度:★★☆
参考url: HMV Online (Vol.1icon, Vol.2icon)

演奏については「CD試聴記」にてコメントしていますので,そちらをご参照ください。

録音ですが,それほど残響が多いという感じは受けませんが,部屋の壁面の反射音が被って高域のヌケが悪くなり,くぐもった明瞭感のない音になってしまっています。演奏者の息づかいなども入るような音の捉え方をしているにも関わらず,です。 録音する部屋が良くないのか,マイクセッティングが良くないのか,おそらく両方だとは思いますが,響きの取り入れ方を間違えているというか,勘違いしているような気がします。

[バッハ][器楽曲][チェロ]

シベリウス:ヴァイオリン協奏曲,他(諏訪内/オラモ/バーミンガム市交響楽団)

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シベリウス:ヴァイオリン協奏曲 ニ短調 作品47
ウォルトン:ヴァイオリン協奏曲 ロ短調
諏訪内晶子(Akiko Suwanai)(Violin)
サカリ・オラモ(Sakari Oramo)(Conductor)
バーミンガム市交響楽団(City of Birmingham Symphony Orchestra)
2002年3月6日,6月26日 バーミンガム
UCCP-1065(470 998-2) (P)2002 Philips Classics (国内盤)
好録音度:★★★★
参考url: HMV Onlineicon

非の打ち所がありません。完璧です。あえて批判的に言うなら,「個性がない」とか,「真面目すぎてつまらない」とか,「北欧的な情緒感に欠ける」とか,そういった半ばやっかみ含みの言葉しか出てこないです。確かに上手すぎてちょっとすました感じが嫌みかなと思うところはありますが(^^;,曲の持つ本質的な素晴らしさに迫ろうとした結果かな,と受け取っています。

録音ですが,ヴァイオリンの距離感,オーケストラとのバランスもほぼ適切,ソロの明瞭度もそこそこあり,万人向けにバランスの取れた良い意味での協奏曲としての標準的な録音であると思います。私としてもこれならほぼ不満を感じることなく音楽を楽しむことが出来ます。協奏曲なら最低限これくらいのレベルを確保して欲しいという好例です。

ウォルトンは曲の面白さ自体がよくわかりませんでした...

[シベリウス][協奏曲][ヴァイオリン]

ブラームス:交響曲全集(ノリントン/シュトゥットガルト放送交響楽団)

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ブラームス:交響曲全集
ロジャー・ノリントン(Roger Norrington)(Conductor)
シュトゥットガルト放送交響楽団(Radio-Sinfonieorchester Stuttgart des SWR)
04.07-06.07.2005, Stuttgart Liederhalle, Beethovensaal
93.903 (P)2006 (C)2005 hänssler CLASSIC (輸入盤) (*DVD)
好録音度:★★★☆
参考url: HMV Onlineicon

交響曲4曲をDVD 1枚に収めています(片面2層)。音声はDolby Digital 5.1chと2.0ch。2ch音声のビットレートは180kbps前後でした。各曲のノリントン氏によるイントロダクションがあり,日本語の字幕が出ます。それぞれの曲に二十分近くも! ほんと良くしゃべります。このイントロダクション,なかなか楽しめました。

1枚のDVDに全集を詰め込んであり,さらに音声がリニアPCMでなくDolby Digitalということで,圧縮による劣化が心配でしたが,心配したほどひどくはありませんでした。圧縮のせいなのか編集のせいなのかはわかりませんが,ヘッドホンで聴くと位相がすこし不安定に感じましたが,スピーカでは問題ありません。また,何となく浮ついて実在感が希薄なのも圧縮音声のせいかもしれませんが,「Dolby Digitalは音が悪い」という先入観で聴いてしまっているせいかもしれません。私としてはやっぱりリニアPCMにして欲しかったと思います。(といいますか,そもそもDVDではなくてCDの方が私としては良かったのですが...)

音の捉え方自体はまずまずですが,少し遠い感じがします。もう少し各楽器に明瞭さが欲しかったのと,バランスとして弦楽器をもう少し大きくして欲しかったというところでしょうか。こういう特徴ある演奏だからこそもっとその音色,音の透明さを際立たせる録音にしたらいいのに,と思います。

演奏は好み(賛否)があると思いますが,ノンビブラートの独特の音色は意外にブラームスに合っていて悪くないなと思いました。全体に淡泊で,従来の伝統的?な重厚で真面目な演奏を好む方には今ひとつかもしれません。私自身も面白いとは思うものの,この独特の音色がいい,というところまでにはまだなりません。

[ブラームス][交響曲]

バッハ:ゴルトベルク変奏曲(シトコヴェツキー編曲 弦楽三重奏版)(ラクリン/今井/マイスキー)

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バッハ:ゴルトベルク変奏曲(シトコヴェツキー編曲 弦楽三重奏版)
ジュリアン・ラクリン(Julian Rachlin)(Violin)
今井信子(Nobuko Imai)(Viola)
ミッシャ・マイスキー(Misha Maisky)(Cello)
2006年2月 ドレスデン,ルカ教会
UCCG-1331(477 6378) (P)2006 Deutsche Grammophon GmbH, Hamburg (国内盤)
好録音度:★★★☆
参考url: HMV Onlineicon

本家本元の録音に参加したマイスキーにとって約22年ぶりとなる再録音。今回もソリストによるアンサンブルですが,大枠だけ決めてあとは各自好きなようにやる,といった趣です。アンサンブルとしてのまとまり,統一感はありませんが,各奏者が自由気ままに歌いまくる,各声部が自己主張する,これはこれで楽しい演奏でした。ゴルトベルク変奏曲がバッハの曲だということを忘れてしまいます。一流の演奏家ならではというところでしょう。室内楽専門の演奏家の演奏とは全く異なります。

それで録音なのですが,若干残響が多めというのは気に入りませんが,音の芯はしっかりとしていますし,それほど曇っていませんので,好きなタイプの録音ではありませんが,まずまず許容範囲かなと思います。

[バッハ][室内楽曲]

ブラームス:交響曲全集(ドラティ/ロンドン交響楽団,ミネアポリス交響楽団)

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ブラームス:交響曲全集
アンタル・ドラティ(Antal Dorati)(Conductor)
ロンドン交響楽団(London Symphony Orchestra)
ミネアポリス交響楽団(Minneapolis Symphony Orchestra)(第二番のみ)
12/1957(第二番) USA,6/1959(第一番),7/1963(第三番,第四番) Great Britain
Mercury Living Presence 434 380-2 (P)1996 Mercury (輸入盤)
好録音度:★★★★☆
参考url: amazon.comArkivMusic

これは驚きました! 1957年から1963年にかけての録音ですが,各楽器の音がすこぶる生々しく極めて自然な音色で録音されています。特に弦楽器の質感が大変良く再現されていて魅力的なのがうれしいです。残響は多少ありますが,ほとんど楽器音に影響を与えていません。古い録音なのでマスターテープの古さに起因するクオリティの悪さがあるのは否めませんが,その中に録音された音の魅力,詰め込まれた音楽の情報量という点では決して最新の録音にひけを取りませんし,下手な最新録音など全く足下にも及ばないくらい良いと思います。これがMercury Living Presenceか! 感激しました。

こんなに素晴らしい手本が過去の財産としてあるにも関わらず,また,今の技術をもってすればこの録音を越えることなどいとも簡単なはずと思うのですが,クオリティは良くても音に魅力がない,音楽の肝心な情報が削ぎ落とされてしまった劣悪な録音がこれほどまでにはびこっているのか... 不思議に思うとともに残念でなりません。

なお,私の評価としての好録音度はあえて高くしましたが,あくまで1960年前後の録音であるということをご承知おきください。念のため...

このCDは現役盤としては国内で流通していないようですが,amazon.comのマーケットプレイスやArkivMusicのArkivCD※1として手に入ります。

最後になりましたが,演奏自体は元気があり,歯切れの良さが好印象ですが,オーケストラのアンサンブルの精度の点では詰めの甘さがあるように思います。でも録音がいいので許してしまいます!

※1 ArkivCDとはArkivMusic独自のサービスで,正規ライセンスに基づいてCD-Rで復刻したものとのことです。(以前別のCDを購入しましたので,別の機会にまた紹介したいと思います)

[ブラームス][交響曲]

バッハ:ゴルトベルク変奏曲(シトコヴェツキー編曲 弦楽三重奏版)(シトコヴェツキー/コセ/マイスキー)

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バッハ:ゴルトベルク変奏曲(シトコヴェツキー編曲 弦楽三重奏版)
ドミトリ・シトコヴェツキー(Dmitry Sitkovetsky)(Violin)
ジェラール・コセ(Gérard Caussé)(Viola)
ミッシャ・マイスキー(Misha Maisky)(Cello)
Banberg, 26-27.11.1984
C 138 851 (P)(C)1985 ORFEO International Music GmbH (輸入盤)
好録音度:★★★☆
参考url: HMV Onlineicon

演奏者のシトコヴェツキー氏編曲のゴルトベルク変奏曲弦楽三重奏版。こういうのを本家本元というのでしょうね。この曲を本当に自分で演奏してみたかったんだなぁ...というのがストレートに伝わってきます。ここには厳しくバッハの音楽を追究する姿はなく,心底音楽を楽しんでいるという喜びがあります。ゴルトベルク変奏曲の弦楽三重奏版はこういう演奏で聴きたいものです。弦楽器が好きな私には最高の贈り物です。ゴルトベルク変奏曲を弦楽器のレパートリーに加えたシトコヴェツキー氏の功績を讃えたいと思います。

録音は少し残響感があるのでそんなに良いわけではありませんので好録音度は高くありませんが,演奏の雰囲気に合ったまずまずの音の捉え方をしているところは評価できます。オーディオクオリティも大切ですが,演奏者の姿勢をどう理解してその音を捉え,聴く人にそれを伝えるか,ということも大切だということを教えてくれる録音です。

[バッハ][室内楽曲][愛聴盤]

ブラームス:交響曲全集(マズア/ゲヴァントハウス管弦楽団)

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ブラームス:交響曲全集
(a) 交響曲第一番,ハイドンの主題による変奏曲 (Philips 476 2814)
(b) 交響曲第二番,第三番 (Philips 476 2815)
(c) 交響曲第四番,大学祝典序曲,悲劇的序曲 (Philips 476 2816)
クルト・マズア(Krut Masur)(Conductor)
ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団(Gewandhausorchester Leipzig)
Leipzig Germany, 1977
(P)1979 Universal International Music (C)2005 Universal Music Australia (輸入盤)
好録音度:★★☆
参考url: HMV Online (a)icon, (b)icon, (c)icon

ものすごく残響が多いです。こもった感じこそ少ないものの,中域に癖のある響きが被って音色が変化してしまい,明瞭感も著しく落としており,全く私の好みではありませんでした。第一番から第三番まではまだましで,第四番がさらに落ちます。これではせっかくの音楽を全く楽しめません。これが本当にフィリップスの録音か?と思ってしまいました。残念です。

[ブラームス][交響曲]

ブラームス:ヴァイオリン協奏曲,他(スヴェンセン/スコットランド室内管弦楽団)

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ブラームス:ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 作品77
ブラームス:ハンガリー舞曲集より14曲
ジョゼフ・スヴェンセン(Joseph Swensen)(Violin/Conductor)
スコットランド室内管弦楽団(Scottish Chamber Orchestra)
Recorded at the Usher Hall, Edinburgh, UK, from 7th-9th July 2003
LINN CKD 224 (P)(C)2004 Linn Records (輸入盤)
好録音度:★★★☆
参考url: HMV Onlineicon

ブラームスの協奏曲としては珍しい弾き振りです。技巧で魅了するタイプではありません(下手というわけではありません,念のため...)。この演奏のいいところは「ヴァイオリンってこんなに魅力的な音を出す楽器だったんだ」と再認識させてくれるところかなと。音がつぶれる寸前の弓使いながら,美しいというか艶めかしいというか,すごく魅惑的な音を出しています。キレは今ひとつでやや線が細いものの,この個性豊かな音色が光っています。この一所懸命さも何となく微笑ましくて好きです。

録音ですが,録音レベルが少し低いためか,音の捉え方自体は濃いめなのに迫力に欠け,音の芯が捉え切れていない感じがします。少なくともソロはもう少し寄ってもっと明瞭に捉えて欲しかったところです。オーディオクオリティは悪くありませんし,全体としてもそれほど悪くないのですが...惜しいと思います。

[ブラームス][協奏曲][ヴァイオリン]

チャイコフスキー:弦楽セレナーデ(シュトゥットガルト室内管弦楽団)

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チャイコフスキー:フィレンツェの思い出 ニ短調 作品70
チャイコフスキー:弦楽セレナーデ ハ長調 作品48
デニス・ラッセル・デイヴィス(Dennis Russell Davies)(Conductor)
シュトゥットガルト室内管弦楽団(Stuttgart Chamber Orchestra)
April, 20-23, 1999, Stuttgart
MDG 321 1008-2 (P)(C)2000 MDG (輸入盤)
好録音度:★★★
参考url: HMV Onlineicon

解説書の後ろに載っている写真を見ると,5-5-4-3-2 という編成のようです(Vnは6-4かもしれませんが)。とても意欲的・躍動的,かつアンサンブルも緊密で,この人数で密度感のある厚い響きを出しています。乱れたり見通しが悪くなったりすることがありません。見事です。

録音ですが,直接音もそれなりにあるのですが,それ以上に残響成分が多く,ちょっと暑苦しく高域の伸びも今ひとつです。低域のエネルギー感もやや多すぎるように思います。もう少しすっきりと爽やかに捉えて欲しかったと思います。残響の許せる方であれば決して悪くないレベルだとは思うのですが,私にはちょっと多すぎます。

演奏が素晴らしいだけに少々残念に思います。

[チャイコフスキー][管弦楽曲][弦楽合奏]

バッハ:ゴルトベルク変奏曲(シモーネ・ディナースタイン)

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バッハ:ゴルトベルク変奏曲
シモーネ・ディナースタイン(Simone Dinnerstein)(Piano)
Recorded at the American Academy of Arts and Letters, New York City, March 11-13, 2005
CD-80692 (P)(C)2007 TELARC (輸入盤)
好録音度:★★☆
参考url: Tower RecordsAmazon.co.jpHMV Onlineicon

非常にソフトなタッチのゴルトベルク変奏曲で,ずっとメゾピアノ以下で穏やかに演奏されているような印象の残り方をします(もちろん実際にはフォルテもちゃんとあるのですが)。バッハの音楽を聴いているということさえ忘れてしまう瞬間があります。録音がこれまたこの演奏の調子にぴったりといか,ムード音楽的というか映画音楽的というか,ホールでの自然な響きとは違う,独特の人工的な臭いのする響きが付加された音作りがされています。

Web上の評判を見ると,趣味が悪いという方から,それでも気に入ったという方まで,賛否両論あるようです。確かに現代的なバッハとしてこんな演奏もありかなとは思います。もっとも,私としては,演奏はもっと快活な方が好きですし,録音もこういうのは私の好みではありませんが。

タグ: [器楽曲]  [ピアノ] 

チャイコフスキー:弦楽セレナーデ,他(レイフィールド/ゴルトベルク・アンサンブル)

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チャイコフスキー:弦楽セレナーデ ハ長調 作品48
チャイコフスキー:フィレンツェの思い出 ニ短調 作品70
マルコルム・レイフィールド(Malcolm Layfield)(Conductor)
ゴルトベルク・アンサンブル(The Goldberg Ensemble)
Ribchester Church, Ribchester, Lancashire, 1992
CDE 84230 (P)(C)1992 Meridian Records (輸入盤)
好録音度:★★☆
参考url: HMV Onlineicon

演奏はごく普通なのですが,ちょっとせかせかしていて落ち着きがなく,また,情緒表現がぎこちない印象です。指揮が上手くないのか,アンサンブルがついて行けていないのか,よくわかりません。

録音は教会で行われたようですが,少し遠目で音源までの距離を感じ,また,残響はそれほど多くないのですが,直接音よりも間接音の方がやや多いようで,癖のある響きが乗るとともに高域のヌケも良くなく,今ひとつ冴えません。

演奏も録音も今一歩という感じで残念ながらお薦めできるものではありませんでした。

[チャイコフスキー][管弦楽曲][弦楽合奏]

バッハ:無伴奏ヴァイオリン・パルティータ,他(ジョセフ・リン)

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バッハ:無伴奏ヴァイオリン・パルティータ第三番 ホ長調 BWV1006
バッハ:無伴奏ヴァイオリン・パルティータ第一番 ロ短調 BWV1002
イザイ:無伴奏ヴァイオリン・ソナタ第二番 イ短調 作品27-2
イザイ:無伴奏ヴァイオリン・ソナタ第四番 ホ短調 作品27-4
ジョセフ・リン(Joseph Lin 林 以信)
2008年2月8-10日 すみだトリフォニーホール(東京)
fine NF NF53002 (P)(C)2007 N&F Co., Ltd. Tokyo (国内盤)
好録音度:★★★☆
参考url: HMV Onlineicon

演奏については「CD試聴記」にてコメントしていますので,そちらをご参照ください。

fine NFの録音はオーディオクオリティは良いものの,残響が多めで明瞭感と高域のヌケが悪くすっきりしないという印象が強かったのですが,やっぱりこの録音もそういう印象が残ります。とはいえ,思い込んでいたほどは悪くありませんでした。もうあと一歩マイクを近づけて録音してくれればもう少しバランスが取れた良い録音になったのではないかと思います。

また,空調ノイズのような「ゴーッ」という低域のノイズがあって,密閉型のヘッドホンでは耳に圧力がかかって少々不快です。超低域が再現されるとリアルさが増幅されるので,その効果を狙ったのかもしれませんが,音楽的な情報量はゼロですので,フィルタでカットして音楽情報の方にビットを使って欲しいと思います。

あと...ちょっと値段が高すぎる(4,500円もする!)のは勘弁して欲しいです...

[バッハ][器楽曲][ヴァイオリン]

バッハ:ヴァイオリン協奏曲集(シュムスキー/スコットランド室内管弦楽団)

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バッハ:ヴァイオリン協奏曲集
ヴァイオリン協奏曲 イ短調 BWV1041
ヴァイオリン協奏曲 ホ長調 BWV1042
二つのヴァイオリンのための協奏曲 ニ短調 BWV1043
オーボエとヴァイオリンのための協奏曲 ハ短調 BWV1060
オスカー・シュムスキー(Oscar Shumsky)(Violin)
スコットランド室内管弦楽団(Scottish Chamber Orchestra)
Recorded at The Queen's Hall, Edinburagh, January 1984
NI 7031 (P)1984 (C)1996 Nimbus Records Limited (輸入盤)
好録音度:★★★★☆
参考url: HMV Onlineicon

シュムスキー氏というと私にとってバッハ無伴奏ヴァイオリンの印象がとても強いヴァイオリニストです(ディスクの入手に苦労したので特に...(^^;)。ピリオド奏法やスマートで洗練された演奏が多くなった昨今の演奏と比べると,いかにも旧世代の真面目で堅くきっちりと弾く(ビブラートもきっちりとかける)スタイルですが,バッハ無伴奏で見せたような厳しさは影を潜め,どことなく優しくおっとりした雰囲気を醸し出していて,これはこれで良いなぁと思います。

Nimbusというと残響過多でモワモワの録音が多いというイメージでしたが,この録音はそのイメージを払拭するものでした。ソロにフォーカスした音の捉え方をしており,オーケストラに対してソロの音量,明瞭度を高めにとってあるため,オーケストラはやや遠く,ソロがしっかり前に出てきます。やや誇張された感じはありますが,協奏曲の録音としてはこれくらいが好ましく,気持ちよく聴けます。

[バッハ][協奏曲][ヴァイオリン]

チャイコフスキー:弦楽セレナーデ,他(バイエルン放送室内管弦楽団)

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チャイコフスキー:弦楽セレナーデ ハ長調 作品48
チャイコフスキー:フィレンツェの思い出 ニ短調 作品70
チャイコフスキー:アンダンテ・カンタービレ(チェロ独奏編曲版)
チャイコフスキー:フルートと弦楽のためのラルゴとアレグロ
バイエルン放送室内管弦楽団(Kammerorchester des Bayerischen Rundfunks)
ウェン・シン・ヤン (Wen-Sinn Yang)(Cello)
ロベルト・ファブリチアーニ(Roberto Fabbriciani)(Flute)
Studio I Bayerischer Rundfunk - Munchen (Germany) 15-18/10/2000
ARTS 47633-2 (P)2001 (C)2007 ARTS MUSIC (輸入盤)
好録音度:★★★★☆
参考url: HMV Onlineicon

室内管弦楽団による演奏で,編成は 5-4-4-3-1 と小編成です。全然期待せずに聴いたのですが...これはよかった! 緩急や強弱はあくまで自然,柔らかく丁寧で決して荒れず勢い任せになることがありません。アンサンブルも非常によくまとまっていて,すごく見通しが良いのも特筆できます。個性的な表現があるわけではありませんし,どちらかといえば地味な演奏ですが,よい意味で本当に優等生的です。それを物足りなく思う人もいるかもしれませんが,私は大変気に入りました。聴けば聴くほど,実はこれはすごい秀演なんじゃないかと思うようになりました。

そして録音もこれまた良くて,残響控えめで直接音を主体に弦楽アンサンブルのシルクのような質感をとても美しく捉えています。演奏同様すっきりと見通しが良いのも好感が持てます。

演奏も録音も良く,愛聴盤候補として急浮上しました。ファーストチョイスとしても十分にお薦めできる内容です。

[チャイコフスキー][管弦楽曲][弦楽合奏][愛聴盤]

バッハ:無伴奏チェロ組曲全曲(シギスヴァルト・クイケン)

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バッハ:無伴奏チェロ組曲全曲
シギスヴァルト・クイケン(Sigiswald Kuijken)(Violoncello da spalla)
Recorded at Galaxy-Studios Mol (Belgium), 4-7 December 2006 and 26-30 December 2007
ACC 24196 (P)2007 (C)2009 ACCENT (輸入盤)
好録音度:★★★
参考url: HMV Onlineicon

ヴィオロンチェロ・ダ・スパッラという肩掛けチェロによる演奏。クイケンと寺神戸亮の両氏によってすっかり有名になった楽器ですね(私はこの楽器は正直言うと好きではありませんが)。演奏については「CD試聴記」にてコメントしていますので,そちらをご参照ください。

若干癖のある響きが感じられるものの,楽器のボディの鳴りをしっかり捉えた好ましい録音です。ただ,なぜか少し歪みっぽい感じがします(ヘッドクリーニングしていないカセットデッキで聞き古したテープを再生したときのような...)。特に第四番,第五番で顕著に感じます。これが本来の楽器の音なのかもしれませんが,そうだとしても少々不快で,好録音度はどうしても低くなってしまいます。もう少し目立たないように録るべきだと思います。

[バッハ][器楽曲][チェロ]

チャイコフスキー:弦楽セレナーデ,他(コルステン/ヨーロッパ室内管弦楽団)

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チャイコフスキー:弦楽セレナーデ ハ長調 作品48
チャイコフスキー:フィレンツェの思い出 作品70
ジェラール・コルステン(Gerard Korsten)(Conductor)
ヨーロッパ室内管弦楽団(The Chamber Orchestra of Europe)
Berlin, Philharmonie, Kammermusiksaal, 3/1992
D 110467 (P)1993 Deutsche Grammophon GmbH, Hamburg (輸入盤)
好録音度:★★★★☆
参考url: ArkivMusic.comamazon.com

ヨーロッパ室内管弦楽団のチャイコフスキーの弦楽セレナーデ,これは絶対に良いに違いない!と大いに期待して聴きましたが,期待に違わぬ素晴らしい演奏でした。絶妙で緊密なアンサンブルに加え,パートとしてきっちりと揃っていながらも奏者一人一人の主張がそれぞれ聴こえてくるような,そんな溶け合い過ぎない弦楽器の音色がとても魅力的です。オーケストラ,各奏者の主体性の集合体として見事な音楽が形作られています。

一点だけ...弦楽セレナーデの第二楽章のトリルを皆で揃えるのはやめて欲しかった...しかもヨタっている...これは絶対に変です! トリルを揃えられるなんて,それはそれですごいのですが(^^;。

録音ですが,残響を控えめにして弦楽器の芳醇で美しい響きを明瞭に捉えていて好印象です。やや分厚めに響きを捉えていますが,各パート,各演奏者の音が分離良く聴こえてきます。私としてはもう少しすっきりと見通しよくして欲しかったところですが,それでもこれはこれで弦楽器の魅力をよく再現しています。

[チャイコフスキー][管弦楽曲][弦楽合奏][愛聴盤]

バッハ:ゴルトベルク変奏曲(トレヴァー・ピノック)

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バッハ:ゴルトベルク変奏曲
バッハ:イタリア協奏曲
トレヴァー・ピノック(Trevor Pinnock)(Cembalo)
Paris, Conservatoire, 4/1980 (ゴルトベルク変奏曲)
London, Henry Wood Hall, 5/1979 (イタリア協奏曲)
Archiv 00289 477 5902 (P)1979/1980 Deutsche Grammophon GmbH, Hamburg (輸入盤)
 愛聴盤   リファレンス音源  好録音度:★★★★☆
参考url: HMV OnlineiconAmazon.co.jpTower Records

かなりオンマイクで録音されたようですごくリアルなのですが,ちょっと圧迫感があるかなと思います。きつすぎると感じる方もおられるかもしれません。明瞭感,解像感が高くかなり良いのですが,もう少しヌケの良さがあれば最高に良かったのにと思います。それでもチェンバロの録音としてはかなり好きな方です。超低域のノイズがあるので(あまり遮音性の良いホールではないようです),低域の再生能力の高いヘッドホンなどで聴くと少し疲れるかもしれません。

演奏は軽快で淡々と整然としていて模範演奏的ですが,変にいじくり回したりせず恣意的なところもないので安心感があり,好感が持てます。録音の良さもあって,良く聴く一枚です。

チャイコフスキー:弦楽セレナーデ,他(ショルティ/イスラエル・フィル)

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チャイコフスキー:弦楽セレナーデ ハ長調 作品48
レスピーギ:バレエ音楽《風変わりな店》組曲
デュカス:交響詩《魔法使いの弟子》
サー・ゲオルグ・ショルティ(Sir Georg Solti)(Conductor)
イスラエル・フィルハーモニー管弦楽団(Israel Philharmonic Orchestra)
1958年4月(チャイコフスキー),1957年5月(レスピーギ,デュカス),テルアヴィヴ
UCCD-3784(436 5572) (P)1958/59 Decca Music Group Limited (国内盤)
発売元:ユニバーサルミュージック株式会社
好録音度:★★★★
参考url: HMV Online

ショルティの演奏はよく「筋肉質」と表現されますが,まさにその通り!と言いたくなる演奏でした。推進力がものすごく,量感があるにも関わらずビシッと引き締まっています。情緒もへったくれもない,身も蓋もないような演奏ですが,こういうの大好きです。第二楽章までこんな調子なので思わず笑みがこぼれてしまいます。これだけのスピード感でガンガン飛ばしながら全く乱れないオーケストラも立派です。

1958年の録音で,マスターテープの問題と思われるドロップアウトのような劣化が所々で感じられるのは残念ですが,過度の響きを抑え弦楽器の音をカラッとドライに捉えています。中低域の量感があまりなく,帯域バランスとしては良くないのですが,ヌケが良くてすっきりとしているため印象は悪くありませんし,極めて状態の良いSPレコードのような音質(あくまでイメージです(^^;)が弦楽器の音色をさらに魅力ある音として再現してくれているように思います。

以上のようにオーディオクオリティは良くありませんが,私としては好録音度が高く,かなり満足のいく録音と言えます。演奏の良さも含め大当たりの一枚でした。お薦めはしませんけど(^^;

で,当然現役盤だろうと思ったのですが,HMV Onlineでは廃盤ということでした...残念!

[チャイコフスキー][管弦楽曲][弦楽合奏]

ハイドン:ロンドン・トリオ(ランパル/スターン/ロストロポーヴィッチ)

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ハイドン:ロンドン・トリオ 第一番~第四番
ハイドン:ディベルティメント 作品100 第二番,第六番
ジャン・ピエール・ランパル(Jean-Pierre Rampal)(Flute)
アイザック・スターン(Isaac Stern)(Violin)
ムスティスラフ・ロストロポーヴィッチ(Mstislav Rostropovich)(Cello)
1/9, 10/'82 Vanguard Studios, NYC
CBS/SONY 38DC 42 (P)1982 CBS Inc. (国内盤)
好録音度:★★★★★
参考url: ArkivMusic.comAmazon.co.jp

愛聴盤です。ロンドン・トリオは,アマチュア初級者でも手の出せるくらいの譜面のやさしい曲集ですが,この短いシンプルな曲にハイドンのエッセンスが凝縮されているような感じがしてとても好きです。演奏者はそれぞれの楽器を代表するような巨匠ですが,ラフというかお気楽というか,これが私の好きな室内楽の雰囲気を醸し出しています。こんな演奏からもベテランの芸,味わいが感じられます(こんな演奏だからこそ?か?)。というか,理屈を並べても野暮というもの,素直に楽しみたいですね。

この録音はホールではなくスタジオで録音されていますので,残響感はほとんどなく,それぞれの楽器を極めて明瞭に自然な音で捉えており,また,身近でアットホームな雰囲気を出すのに一役買っています。元々コンサートで演奏するような曲ではなく,仲間内で演奏して楽しむ類の音楽なので,この上なく当を得た録音であると言えると思います。演奏と録音が素晴らしくマッチした好例です。室内楽はこういうのが良いですねぇ,やっぱり。

それで,これは現役盤ではなくもう手に入らないんじゃないかと思っていたところ,ごくたまに利用するArkivMusic.comにLow Stockですがあるということがわかりました。蛇足ですが...困ったときのArkivMusic,ここの検索システムは秀逸です。通販サイトの中でも最も探しやすいと思います。

ということで,この珠玉の曲集がモダン楽器による演奏で,しかもかなりよい録音で残されたというだけでもう感謝感激です。

[ハイドン][室内楽曲][愛聴盤]

ベートーヴェン:弦楽四重奏曲全集(ファイン・アーツ四重奏団)

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(a) ベートーヴェン:初期弦楽四重奏曲集
Everest EVC 9051/52 (P)1969/1996 Everest Record Group, Inc. (輸入盤)

(b) ベートーヴェン:中期弦楽四重奏曲集
Everest EVC 9053/55 (P)1969/1996 Everest Record Group, Inc. (輸入盤)

(c) ベートーヴェン:後期弦楽四重奏曲集
Everest EVC 9056/58 (P)1969/1996 Everest Record Group, Inc. (輸入盤)

ファイン・アーツ四重奏団(The Fine Arts Quartet)
Leonard Sorkin (Vn I), Abram Loft (Vn II), Irving Ilmer (Va), George Sopkin (Vc)
※全集としての初出は1969年
好録音度:★★★★
参考url: 公式Webサイト

ファイン・アーツ四重奏団はたまたまこのベートーヴェンの全集を見つけるまで全く知りませんでしたが,歴史あるアメリカの四重奏団のようで(設立は1946年!),録音もたくさんあるようです。

締めるところは締める,歌うところは歌う,アンサンブルも優秀,品格も感じられます。スタンダードと言ってもいいくらい至極真っ当な好演奏でした。これは掘り出し物でした。

古い録音なのでヒスノイズがやや多めで,マスターテープに問題がある部分も多少あるのが残念ですが,それに目をつぶれば,直接音主体の明瞭感と音色の自然さが確保された好録音度の高い録音でした。残響もそれなりに取り込まれてはいますが,直接音比率が高めなのでほとんど気になりません。

上記のCDは現役盤ではないようですが,amazon.comのマーケットプレイスから中古盤が入手できます(→amazon.com 前期中期後期)(私もamazon.comから入手しました)。

HMV Onlineで検索するとフランスのLyrinxレーベルの前期が見つかるのですが,これはTobu Tradingのカタログによると2005年の録音ということですので,別物のようです(→HMV Onlineicon)。

[ベートーヴェン][室内楽曲][弦楽四重奏]

ハイドン:弦楽四重奏曲集(アマデウス四重奏団)

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ハイドン:弦楽四重奏曲 作品54 「第1トスト四重奏曲」
ハイドン:弦楽四重奏曲 作品55 「第2トスト四重奏曲」
Munchen, Residenz, Plenarsaal der Akademie der Wissenschaften, 10/1971 (op.54 nos. 1 & 2), 9/1972 (op.54 no.3 & op.55 no.1), 12/1972 (op.55 nos. 2 & 3)
Deutsche Grammophon 437 134-2 (P)1973/1974 Polydor International GmbH (輸入盤)

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ハイドン:弦楽四重奏曲 作品64 「第3トスト四重奏曲」
ハイドン:弦楽四重奏曲 作品51 「十字架上のキリストの最後の7つの言葉」
Lindau bei Zurich, Phonag-Studio, 5/1971 (op.51); Munchen, Residenz, Plenarsaal der Akademie der Wissenschaften, 12/1973 (op.64 No.1 & 2), 3/1973 (op.64 No.3 & 4), 3/1974 (op.64 No.5 & 6)
Deutsche Grammophon 431 145-2 (P)1972/1974 Polydor International GmbH (輸入盤)

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ハイドン:弦楽四重奏曲 作品76 「エルデーディ四重奏曲」
Hannover, Beethoven-Saal, 9/1963(No.3); Berlin, Ufa-Studio, 5/1966(No.2); Berlin, Michaelsheim, 3/1970(Nos.1 & 4); Berlin, Studio Lankwitz, 5/1970(Nos.5 & 6)
Deutsche Grammophon 415-867-2 (P)1964(No.3)/1966(No.2)/1971 Polydor International GmbH (輸入盤)

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ハイドン:弦楽四重奏曲 作品71 「第1アポーニー四重奏曲」
ハイドン:弦楽四重奏曲 作品74 「第2アポーニー四重奏曲」
ハイドン:弦楽四重奏曲 作品77 「ロプコヴィッツ四重奏曲」
ハイドン:弦楽四重奏曲 作品103
Munchen, Herkules-Saal, 6/1977, 11 & 12/1978 (opp.71, 74); Hannover, Beethoven-Saal, 3/1964 (op.77 No.1), 3/1965(opp.77 No.2); Munchen, Plenarsaal der Akademie der Wissenschaften, 3/1973 (op.103)
Deutsche Grammophon 429 189-2 (P)1965/1979/1981 Polydor International GmbH (輸入盤)

アマデウス四重奏団(Amadeus Quartet)
好録音度:★★★(1960年代)~★★★★☆(1970年代)
参考url: HMV Onlineicon

アマデウス四重奏団はキレのある演奏はしませんが,このハイドンはすごくいいです! アマデウス四重奏団とハイドンとの相性は最高です。最初に聴き込んだのがこの演奏ということもありますが,「楽しさ」でこれを凌ぐ演奏には未だ巡り逢っていません。

格好良さとは無縁,一所懸命だけど全然厳しくなく,心底アンサンブルを楽しんでいる,それがこちらにも伝わってきてとっても微笑ましいんです。元気を出したいときによく聴く愛聴盤です。

1960年代前半から1970年代後半という長期にわたって録音されていて,1960年代の録音はどれも音色が曇りがちであまり鮮明さがありませんが,1970年代に入ってからの録音は響きが控えめで直接音が支配的であり,各楽器を明瞭に捉えていてどれも好印象です。「五度」や「皇帝」といった名曲が1960年代の録音であまり良くないのは残念ですが(1970年代に再録音してくれなかったのが本当に残念!),全体としては好録音度の高い良好な音質で残されていますので,アマデウス四重奏団の楽しさを十分に堪能できます。

上記で紹介したCDそのものは現役盤ではありませんが,上記の全てを1セットにしたもの(10CD)(→HMV Onlineicon),作品51から作品74までを収めたセット(7CD)(→HMV Onlineicon),作品76,77,103を収めたセット(3CD)(→HMV Onlineicon),などが手にはいるようです。

[ハイドン][室内楽曲][弦楽四重奏][愛聴盤]

ハイドン:ヴァイオリン協奏曲集(ヴァハラ/ヴィルトゥオージ・ディ・クフモ)

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ハイドン:ヴァイオリン協奏曲集
ト長調 Hob VIIa:4, イ長調 Hob VIIa:3, ハ長調 Hob VIIa:1
エリナ・ヴァハラ(Elina Vähälä)
ヴィルトゥオージ・ディ・クフモ(Virtuosi di Kuhmo)
Recorded at Hattula Church, Finland on 7-9 July 2008
ALBA ABCD 272 (P)2009 (輸入盤)
 愛聴盤  好録音度:★★★★
参考url: 公式WebサイトHMV OnlineiconAmazon.co.jpTower Records

ヴァハラ氏はアメリカ生まれ,フィンランド育ちのヴァイオリニストとのこと。透明で艶やかな音色が非常に美しく,伸びやで活気にあふれた清々しい演奏をされています。バックのオーケストラも切れよくリズムを際立たせなかなか良いアンサンブルを聴かせてくれます。モダン楽器の良さがフルに発揮された,現代的で洗練された出色の好演奏だと思います。

さて肝心の録音ですが,教会での録音ということで残響時間がすごく長いのですが,直接音比率の方がわずかに高く,音の濁りも最小限なので,印象は悪くありません。響き自体は美しいので,残響を許容できるなら良いと思いますし,優秀録音としても通用するかもしれません。ソロにも残響が被り気味でやや奥に引っ込みがちで鮮明さに欠けるのが残念なところです。直接音比率を高くして明瞭度を上げ,もう少し前に出るようにしてくれれば文句はなかったのですが。

ソロは別として,これだけの残響を取り入れていながら印象が悪くないのは,直接音の比率を残響よりも高く保っているからに他なりません。残響を取り入れるなら,最低限これくらいのバランスにして欲しいものです。もちろん私としては残響音をもっと抑えて鮮明に録るべきだと思っていますが。

バッハ:無伴奏ヴァイオリンのためのソナタとパルティータ(サルヴァトーレ・アッカルド)

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バッハ:無伴奏ヴァイオリンのためのソナタとパルティータ
サルヴァトーレ・アッカルド(Salvatore Accardo)(Violin)
September 24-29 2007
fonè SACD 061 (P)(C)2008 Audiophile Productions (輸入盤)
好録音度:★★☆
参考url: HMV Onlineicon

アッカルド氏2回目の録音。演奏については「CD試聴記」にてコメントしていますので,そちらをご参照ください。

それにしても,これはものすごく残響が多く,また残響時間が長い録音です。直接音へのまとわりつきが鬱陶しく,混濁して不明瞭になり,細部のニュアンスが聴き取りづらくなってしまっています。音色も大きく損なっています。明らかに残響過多です。曇った感じがあまりないのでこの残響量にしてはまだ許せるかもしれませんが,残念ながら私の好みではありません。メディアという器から音楽情報が残響音によって締め出されてしまった典型例です。

[バッハ][器楽曲][ヴァイオリン]
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