2017/01/29

イザベル・ファウスト Isabelle Faust (Violin)
ジョヴァンニ・アントニーニ指揮/イル・ジャルディーノ・アルモニコ
2015年3月21-23日,2016年2月4-8日 ベルリン、テルデックス・スタジオ
HMC 902230.31 (P)2016 harmonia mundi (輸入盤)
好録音度:★★★☆
参考:
ピリオド的なスタイルの演奏ですが,これは今までに聴いたことがないような新鮮さを感じます。付点や装飾音符の癖のあるリズムの取り方があまり好きではないのですが,それを除けばこの刺激に満ちた演奏は本当に楽しいですね。
さて肝心の録音なのですが,ホールトーンを多めに取り入れ,リアルに録音会場の雰囲気が想起される録音で,そういう方針ということであればかなり上手く録れていると思います。音も滑らかでオーディオ品質も良いと思います。しかし,これは少しホールのキャラクターを前に出し過ぎているように思います。オフマイクで間接音が主体であり,特にソロのボディ感も下支えも弱く,楽器の質感が希薄で表面的にしか捉えられていない気がして私としてはかなりもどかしさを感じます。音場再現を重視する方であれば優秀録音かもしれませんが,残念ながら私の好きな録音ではありませんでした。
2017/01/28

オーバーヘッド(アラウンドイヤー)型 密閉・ダイナミック型,ノイズキャンセリング対応,Bluetooth対応
参考: メーカーサイト,Amazon.co.jp
ヘッドホン・イヤホン 周波数特性 測定結果にも掲載しています。
特性はフラット基調でやや低域を持ち上げた音づくりになっています。このあたりはBOSEらしいと言えますが,持ち上げ方は意外に控え目でそれほど強調されたようには聞こえません。
電源オフでも音は出ますが,ピークディップがかなり大きいです(図のグレーのライン)。電源オン時にかなり電気的に補正をかけて整えていることがわかります。
Bluetooth時の特性はトランスミッターを持っていないので測定できませんでした...

図1 BOSE QuietComfort 35 周波数特性(有線/電源ON)
■SPL ■SPL[1] ■2次歪 ■3次歪 ■Impedance ■Impedance[2]
[1]電源OFF時 / [2]電源OFF時 / 測定環境 / 入力0.2Vrms
関連ページ: ノイズキャンセリングヘッドホンの性能測定を試みる
タグ: [ヘッドホン]
2017/01/25

ジェームズ・エーネス James Ehnes (Violin)
モーツァルト・アニヴァーサリー・オーケストラ
2005年8月18-21日 トロント芸術センター,ジョージ・ウェストン・リサイタル・ホール
ONYX 4164 (P)2016 Onyx (輸入盤)
好録音度:★★★★
参考:
これは上手い!さすがです。技術的にも文句の付けようがないですし,モダン楽器を活かした伸びのある音色とキレの良いはきはきした発音で音楽が生き生きしています。カデンツァもすべて演奏者自身によるものということで,これも聴きものです。そして演奏者自身が選抜した特別に編成されたオーケストラも良いですね。あえて一言いうとすれば,少しモーツァルトを意識して抑え気味に演奏しているように感じられるので,全開で演奏してくれていたらなぁとは思います。でもこれは良いです。
録音ですが,ソロもオーケストラも豊潤でニュアンス豊かに捉えているのは良いのですが,少し残響が多く演出感が強すぎて,もうちょっと生々しさを残して欲しかったと思います。悪くはないのですが,私の好きな録音とは少し違いました。
この全集,2006年のモーツァルト生誕250周年の年に向けて録音され,2007年の「カナダ版グラミー」と言われるジュノー賞を受賞したそうです。納得です。オリジナル盤は廃盤になったようですが,Onixから復刻リリースされました。
2017/01/22

コンラート・ヒュンテラー指揮/18世紀カメラータ
June, 10-14, 1996; February 24, 1997 Fürstliche Reitbahn Arolsen
MD+G 311 0746-2 (P)(C)1997 (輸入盤)
好録音度:★★★★
参考:
バロック楽器による演奏。おっ,なかなかええやん,って思ったら,18世紀カメラータ(Camerata of the 18th Century)ってブリュッヘンが創設した18世紀オーケストラのメンバーで構成され,さらにライナー・クスマウルらの著名なソリストを迎えての録音だったんですね。
音楽は颯爽と,そして極めて自然に流れていくのが良いです。バロック楽器での演奏ですがそれが意識に上って来ません。結局こういう癖のない綺麗で真っ当な演奏に戻ってきてしまうんですよね。
録音ですが,響きでわずかに音色に曇りがあるのですが,それを除けば適切な距離感でそれぞれの楽器を質感をもって捉えているので悪くありません。抜けよくすっきりと録ってくれていれば文句なしだったのですが,惜しいと思います。
これが現役盤なのか今ひとつわからなかったのですが,もし廃盤だとしたらちょっともったいないと思います。
タグ: [協奏曲]
2017/01/22

マンフレート・ライヒェルト指揮/バーデン=バーデン合奏団
1977年6月 バーデン=バーデン,南西ドイツ放送局,ハンス・ロスバウト・スタジオ
BVCD-38062(82876-63134-2) (P)1977 deutsche harmonia mundi / BMGファンハウス (国内盤)
好録音度:★★★★
参考: Amazon.co.jp
念願のディスクが手に入りました! LPでは持っていたのですが,CDを買い損ねてしまい,思い出す毎に探していたのですが,ようやく某中古CDショップで未開封品が1,000円を切る値段で!。見つけたときはちょっと小躍りしてしまいました(^^;。やはり「南国のばら」が聴けるのがうれしい。
収録曲は下記の通りです。
皇帝円舞曲(シェーンベルク編曲)
南国のばら(シェーンベルク編曲)
酒,女,歌(ベルク編曲)
わたしの恋人(ウェーベルン編曲)
編成は,フルート,クラリネット,ヴァイオリン×2,ヴィオラ,チェロ,ピアノ,ハーモニウム,です。オーケストラで演奏されるシュトラウスの曲にはあまり興味がわかないのですが(なのでニューイヤーコンサートも観ていません),室内楽版となると話は別です。こういうのが好きなんです。
録音ですが,ちょっとわざとらしい残響を伴っているのが気になりますが,各々の楽器をしっかりと捉えているので印象はまずまずです。演出が過ぎるのか現実感,自然さはあまりありません。録音としてはあまり好みではありませんが,まあ許容範囲内ではあります。
Amazon.co.jpではプレミア価格になっていますね。こういうのはタワーレコードさんの出番だと思うのですが,ちょっとマイナー過ぎて無理ですかね。
タグ: [室内楽曲]
2017/01/22
久しぶりの測定記事です。ソニーのバランスド・アーマチュア型イヤホンXBA-300の周波数特性と測定してみました。ヘッドホン・イヤホン 周波数特性 測定結果にも掲載しています。
それで,どちらかといえば次が本記事の本題になるのですが,このイヤホンをサンプルに,自由音場補正周波数特性の測定にチャレンジしてみたので,その結果を報告します。<疑似>としているのは,その測定方法を完全に実施出来ているわけではなく,幾つものエクスキューズが付いた「真似してやってみました」レベルだからです。その点,ご了承いただきたく思います。
「自由音場補正周波数特性」とは,一般社団法人 電子情報技術産業協会(以下JEITA)が発行する規格 “RC-8140B-1 ヘッドホン及びイヤホン(追補)(2016年3月発行)”の中で定義された周波数特性です。 この周波数特性の意味するところは,規格を推進されたJEITAの委員へのインタビュー記事「各社バラバラに計測「ヘッドホンのハイレゾ測定法」がついに統一? JEITAの新規格を聞く(Phile-web 2016/6/10)」で詳しく解説されていますので,そちらをご参照ください(手抜きですみません)。
上記のインタビュー記事ではハイレゾ測定にフォーカスされていますが, イヤホンの特性をスピーカの特性のように読みやすくするという意味で可聴帯域でもそれなりに意味があります(つまりフラット特性を一つの基準にデータを見ることが出来る)。
しかし,規格通りに測定するのは,測定器が高価すぎて個人レベルではほぼ困難です。 そのため今回の方法には,①規格に沿った測定器を用いていない, ②自由音場補正のためのデータが使用した測定器の実測値に基づくものではない,という二つの大きな問題があります。 これが<疑似>の大きな理由です。
上記のように,データの信頼性は残念ながら全くありませんが, とにかくやってみなければ何もわからないということで今回チャレンジしてみました。 上記①については,上記の測定でも使用しているシリコンチューブを使った自作カプラーを使用し(測定環境をご参照ください), 上記②については,ITU-T勧告P.58で定義されているHATSの自由音場特性の値を適用しました。 測定はARTA Softwareのオクターブ分析機能を用い,ピンクノイズ1mW相当の入力に対し1/3オクターブバンドで分析して値を出しています。
ということで,こういった幾つものエクスキューズを念頭に次のデータを見ていただければと思います。

図2 Sony XBA-300 <疑似>自由音場補正周波数特性
■SPL ■SPL(after free field compensation) ■ITU-T P.58 Free field frequency response
私はこのXBA-300について,少し低域が多すぎるけど高域がシャキッとして結構好きな周波数バランスだと思っていました。この特性を見ると,まあその印象に近いデータが得られたような気もしています(^^;。まあいずれにしても参考の参考の参考くらいにしかなりませんが...
ということで,個人レベルでは規格に沿ったまともな測定は困難で,得られるデータも信頼性に乏しいので,これ以上続けてやるかどうかは微妙ですが,機会があればまた試してみたいと思います。
それで,どちらかといえば次が本記事の本題になるのですが,このイヤホンをサンプルに,自由音場補正周波数特性の測定にチャレンジしてみたので,その結果を報告します。<疑似>としているのは,その測定方法を完全に実施出来ているわけではなく,幾つものエクスキューズが付いた「真似してやってみました」レベルだからです。その点,ご了承いただきたく思います。
「自由音場補正周波数特性」とは,一般社団法人 電子情報技術産業協会(以下JEITA)が発行する規格 “RC-8140B-1 ヘッドホン及びイヤホン(追補)(2016年3月発行)”の中で定義された周波数特性です。 この周波数特性の意味するところは,規格を推進されたJEITAの委員へのインタビュー記事「各社バラバラに計測「ヘッドホンのハイレゾ測定法」がついに統一? JEITAの新規格を聞く(Phile-web 2016/6/10)」で詳しく解説されていますので,そちらをご参照ください(手抜きですみません)。
上記のインタビュー記事ではハイレゾ測定にフォーカスされていますが, イヤホンの特性をスピーカの特性のように読みやすくするという意味で可聴帯域でもそれなりに意味があります(つまりフラット特性を一つの基準にデータを見ることが出来る)。
しかし,規格通りに測定するのは,測定器が高価すぎて個人レベルではほぼ困難です。 そのため今回の方法には,①規格に沿った測定器を用いていない, ②自由音場補正のためのデータが使用した測定器の実測値に基づくものではない,という二つの大きな問題があります。 これが<疑似>の大きな理由です。
上記のように,データの信頼性は残念ながら全くありませんが, とにかくやってみなければ何もわからないということで今回チャレンジしてみました。 上記①については,上記の測定でも使用しているシリコンチューブを使った自作カプラーを使用し(測定環境をご参照ください), 上記②については,ITU-T勧告P.58で定義されているHATSの自由音場特性の値を適用しました。 測定はARTA Softwareのオクターブ分析機能を用い,ピンクノイズ1mW相当の入力に対し1/3オクターブバンドで分析して値を出しています。
ということで,こういった幾つものエクスキューズを念頭に次のデータを見ていただければと思います。

図2 Sony XBA-300 <疑似>自由音場補正周波数特性
■SPL ■SPL(after free field compensation) ■ITU-T P.58 Free field frequency response
私はこのXBA-300について,少し低域が多すぎるけど高域がシャキッとして結構好きな周波数バランスだと思っていました。この特性を見ると,まあその印象に近いデータが得られたような気もしています(^^;。まあいずれにしても参考の参考の参考くらいにしかなりませんが...
ということで,個人レベルでは規格に沿ったまともな測定は困難で,得られるデータも信頼性に乏しいので,これ以上続けてやるかどうかは微妙ですが,機会があればまた試してみたいと思います。
タグ: [ヘッドホン]
2017/01/15

チョン・ミョンフン指揮/東京フィルハーモニー交響楽団
2002年~2004年 東京オペラシティ コンサートホール
IMXC-10001/6 (P)(C)2006 IMX CLASSICS & ARTS. (国内盤)
好録音度:★★★☆
参考:
演奏後に拍手の入るライヴ録音。交響曲以外にエグモント序曲,フィデリオ序曲,レオノーレ序曲第3番が収録されています。第5番のあとの凄まじいブラボーの嵐にはちょっと引いてしまいましたが,至極真っ当で推進力のある引き締まった良い演奏だと思いました。ライヴなので傷はありますがほとんど気になりませんし,むしろライヴでこれだけのパフォーマンスが出来るとは技術力もたいしたものだと感心します。
しかし,この録音はいまいちいただけません。低域偏重でさらに中域のどこかが抜けているようなバランスの悪さがあり,弦楽器が引っ込んで聴き取りづらく,音色にも艶がありません。低域が中高域に被って全体に不明瞭です。録音レベルも低めに感じられます。せっかくの演奏がこの録音では十分に楽しむことが出来ません。もったいないと思います。
この全集,現在は廃盤なのか,カタログからは消えているようで,中古では少し流通しているようです。
タグ: [交響曲]
2017/01/14

ジュリアード四重奏団 Juilliard Quartet
録音:1960年3月、ニューヨーク、RCAビクター・スタ ジオ
好録音度:★★★★★
参考: Apple Music

ベートーヴェン:弦楽四重奏曲第16番ヘ長調作品135
ジュリアード四重奏団 Juilliard Quartet
録音:1960年4&10月、ニューヨーク、RCAビクター・スタジオ《★世界初CD化》
好録音度:★★★★★
参考: Apple Music

シューベルト:弦楽四重奏曲第12番ハ短調D.703「四重奏断章」
ジュリアード四重奏団 Juilliard Quartet
録音:1959年2月、ニューヨーク、米国芸術文学アカデミー
好録音度:★★★★★
参考: Apple Music

ラヴェル:弦楽四重奏曲ヘ長調
ジュリアード四重奏団 Juilliard Quartet
録音:1959年5月、ニューヨーク、 スタジオ”B”
好録音度:★★★★☆
参考: Apple Music

ヴォルフ:イタリア風セレナード
ジュリアード四重奏団 Juilliard Quartet
録音:1959年5月、 ニューヨーク、スタジオ”B”《★世界初CD化》
好録音度:★★★★
参考: Apple Music
最初にお断りをしておきますが,拙ブログの以前からの読者様であれば「またか(^^;」と苦笑しながら読んでいただけると思うのですが,特に今回の録音評は「録り方,楽器音の捉え方」にフォーカスしたものであり,いわゆるオーディオ的クオリティの比率は低いとお考えください。
このリヴィング・ステレオのボックスシリーズは第3弾で,世界初CD化も多く含むそうです。上記のジュリアード四重奏団のディスクも2つが初CD化です。この中でベートーヴェンの第14番とシューベルトの死と乙女は,以前,TESTAMENTから発売されていたものを録音が素晴らしいということで紹介していました。
今回はApple Musicで試聴しました。CDと同じ音源かどうかは定かではありませんが,Apple Music上でのリリース日がいずれも2016年11月18日と,ディスクの発売日とほぼ同時期であることから同じ音源であろうと思われます。
この中ではやはりRCAビクター・スタジオで収録された1960年のベートーヴェンの2枚の録音が良いですね。第14番は音は痩せていて音色のバランスも崩れているものの,残響は皆無で適切な距離感で捉えられた楽器の生々しい質感が素晴らしく音楽がダイレクトに伝わってきます。好録音の良い見本です。第11番,第16番も録音の傾向は同じで,少し人工的な残響のまとわりつきが鬱陶しいものの,楽器音自体はシャープでキレがありこちらも演奏を存分に楽しむことが出来ます。
次に良いのが同じく1960年録音のシューベルトで,これも気になる残響は皆無と言って良く,極めてシャープでキレのよい録音です。音色のバランスはベートーヴェンよりも良いかもしれません。一方スタジオの録音現場の雰囲気,演奏者の存在感は希薄で,やや商品化された音づくりであり,これは善し悪しかなと思います。
ベートーヴェンの第14番とシューベルトの死と乙女はTESTAMENT盤に比べて今回のリマスターによって大幅に音質が改善され,音のヌケと解像感が良くなっています。特にシューベルトが格段に良くなっています。
ドビュッシー,ラヴェルとドヴォルザークは1959年の録音で,ベートーヴェン,シューベルトと比べるとクオリティ面でかなり落ちるため,基本的な録音の仕方は良いのですが,やはりだいぶ聴きづらくなってきます。これはちょっと惜しいですね。
とはいえ,ジュリアード四重奏団の録音がさらに良好な状態で復刻されたのは本当にうれしいことです。これはディスクで持っておきたいところですが,60枚組のセットなのでちょっと買うのをためらっています。分売してくれないですかね...
なおこの他のジュリアード四重奏団の演奏としては,エリオット・カーター,ウィリアム・シューマン,ベルク,ウェーベルンの作品のディスクが含まれています。

参考:
で,最後にお決まりのいつもの愚痴です(^^;。それにしても,このRCAのリヴィング・ステレオやマーキュリーのリヴィング・プレゼンスなど,1960年前後という50年~60年も前にこれだけの素晴らしい録音をされていたというのが驚異的に思えてなりません。逆に,これらに比べて現代の録音はなんでこんなにつまらない,聴いていて全然面白くないのか,音楽の鼓動がまったく伝わってこないのか,腹立たしくなってきます。世界の多くの人々が名録音と認めるものがこれだけあるにもかかわらず,先人達の偉業から学ぶ気がまったくないとしか思えないです。残念なことです。
2017/01/08

エディング四重奏団 Edding Quartet
LPH 023 (P)(C)2016 OUTHERE (輸入盤)
好録音度:★★★★☆
参考:
Apple Musicでの試聴です。
エディング四重奏団は,古楽オーケストラのシャンゼリゼ管弦楽団のトップ奏者で構成され,ピリオド楽器を使って演奏されているとのことです。終楽章は大フーガに置き換えられています。とても軽やかでスピード感がありキレの良い演奏を聴かせてくれます。アンサンブルも優秀です。特に混沌としがちな大フーガをサラッと弾いていてこんなに聴きやすい演奏はそんなにないと思います。ピリオド楽器であることがあまり意識されないのも良い点です。この演奏で他の曲も聴いてみたいです。
さて肝心の録音ですが,やや残響が多めで楽器音へのまとわりつきが気になりますが,楽器音自体は比較的近い距離で録られているのか,ニュアンスが十分に伝わってきて,これならまだ許せると思いました。もっと残響を抑えてクリアに録って欲しいのは言うまでもありませんが。
なお,カップリングとしてNorthernlightの演奏によるピアノと管楽器のための五重奏曲変ホ長調作品16が収録されています。
2017/01/07

ネヴィル・マリナー指揮
アカデミー・オブ・セント・マーティン・イン・ザ・フィールズ
1978年1月 ロンドン,キングズウェイ・ホール(管弦楽組曲),1980年5月 ロンドン,セント・ジョンズ・スミス・スクエア(ブランデンブルク協奏曲)
PROC-1964/6 (P)1978,1981 Decca Music Group Limited (国内盤)
TOWER RECORDS VINTAGE COLLECTION +plus Vol.22
好録音度:★★★★☆
参考:
タワーレコードの企画盤。マリナー氏2回目の録音で,ブランデンブルク協奏曲のソリストに,ヘンリク・シェリング(ヴァイオリン),ミカラ・ペトリ(リコーダー),ハインツ・ホリガー(オーボエ),ジャン=ピエール・ランパル(フルート),ジョージ・マルコム(ハープシコード)などの名手を迎えた名盤。ブランデンブルク協奏曲の方は昔発売されていたディスクを持っていて一度レビューしています(→こちら)。今となっては古さも感じる演奏ですが,当時としてはこれがスタンダードだったのだと思いますし,モダン楽器での演奏としては今でも十分に楽しめる内容です。
録音も「アナログ録音末期の優秀録音」というだけあってシルキーで滑らか,残響は少しあるものの控え目であり,当時のフィリップス録音らしく個々の楽器の音を大事に扱い分離良く見通し良く録った好録音です。正直なところもう少し高域の伸び,輝き,透明感が欲しいところでちょっと地味な感じですけどね。ちょっとオマケですが四つ星半です。
久しぶりに聴きましたけど,なんだか懐かしくホッとしました。
2017/01/07

.ニコラウス・アーノンクール指揮/ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
2003年8月29日 ザルツブルク音楽祭,フェルゼンライトシューレ
C 924 161 B (P)(C)2016 ORFEO International Music (輸入盤)
好録音度:★★★★
参考:
ザルツブルク音楽祭?でのライヴ録音。軽妙で生き生きした音楽が素晴らしく思います。特に第1番が良いと思いました。ライヴだから余計にかもしれませんが,活気に溢れ勢いがありますね。この顔合わせでのベートーヴェンがもっと残っていたら良かったのに,と残念に思います。
さて本題の録音ですが,ワンポイント録音のような感じであり,自然さが感じられるものの,全体にこぢんまりとしていてスケール感はあまりありません。またやはり全体を大きく捉えていて個々の楽器の質感などは希薄で,全体のまとまりと引き替えにサウンドとしては精彩を欠き,録音としてオーケストラの魅力を余すところなく伝えてくれているようには思えませんでした。私としてはあまり面白くない録音です。悪くはないとは思うのですけどね。好みの録音ではありません。
タグ: [交響曲]
2017/01/07

浦川宜也 Takaya Urakawa (Violin)
2015/12/16, 2016/1/30, 2/26, 3/28, 4/14-15
HMOC 17836/8 (P)(C)2016 HIBIKI MUSIC (国内盤)
好録音度:★★★★
参考:
「CD試聴記」からの転載記事です。
浦川氏34年ぶり2回目の録音で,75歳くらいの録音になります。 年齢からくる技術の衰えはいかんともし難く,相当キレはなくなり音程を含めて不安定です。 しかし,年齢の積み重ねから来る得も言われぬ味わいがあるのも確か。
録音ですが,少し残響が取り入れられていて音色に影響を与えているものの, 楽器の質感もそれなりに感じられて,まずまず良好です。 ソロヴァイオリンの録音として標準的で悪くありません。 もちろん個人的にはもっと残響を抑えてすっきりした音で録って欲しいと思っています。
でもやはりこれは浦川氏とご縁がある方に向けたアイテムなのでしょうね。
2017/01/07

浦川宜也 Takaya Urakawa (Violin)
1979年-1982年
FOCD 2505/6 FONTEC RECORDS (国内盤)
好録音度:★★★★
参考: Amazon.co.jp
「CD試聴記」からの転載記事です。
旧世代の古めかしい演奏スタイルを頑なに守り続ける職人気質の頑固オヤジ的演奏(^^;。 遅めのテンポで一音一音力を込め,ヴィブラートをしっかりかけて弾いています。 弓の圧力が強くひたすらハイテンションで音が少々ギスギスしています。 技術的なキレが良いとは言えませんが,地に足の付いた音楽を聴かせてくれます。 渾身のシャコンヌは一聴の価値ありです。 リピートの省略があるのが少々残念です。
録音ですが,比較的オンマイクで残響を抑え気味にしていますが,響きの質があまり良くなく楽器音が少し濁っています。 惜しいと思います。 ソナタ第3番,パルティータ第3番は少し良い状態です。
浦川氏1回目の録音で,40歳頃の録音と思われます。 15年ほど前に1回目のレビューを載せていましたが,久しぶりに聴いてみてだいぶ印象が異なりました。 再レビューです。
2017/01/04

ラース・ウルリク・モルテンセン指揮/コンチェルト・コペンハーゲン
2011年3月31日~4月3日 コペンハーゲン,ガルニソン教会
cpo 777 904-2 (P)2014 cpo (輸入盤)
好録音度:★★★★☆
参考:
Apple Musicでの試聴です。私の好みの録音の多いcpoレーベルということで試聴してみました。
ソリストはコンチェルト・コペンハーゲンのメンバーと思われます。数多あるバロック楽器によるバッハのヴァイオリン協奏曲のディスクの中では特に特徴があるというわけではありませんが,ソリストの腕前も確かであり,アンサンブルも良い優良な演奏だと思います。
録音ですが,残響はやや多めながら後方の空間にふわっと広がる感じで取り入れられていて,明瞭感や音色への影響は少なく良好と言えます。残響を取り入れるのならこんな風にして欲しいという見本になると思います。やはり私の好きな録音とは少し違いますが,この透明感と伸びのある綺麗なサウンドはなかなか良いと思います。好録音です。
2017/01/04

佐渡裕指揮/トーンキュンストラー管弦楽団
2015年10月~2016年5月 ウィーン,ムジークフェラインザール
TON2001 (P)(C)2016 Tonkunstler-Orchester (輸入盤)
好録音度:★★★★☆
参考:
いつも参考にさせていただいているハイドン音盤倉庫での強力推薦盤であり,モダン楽器でのハイドンということで興味深く聴かせていただきました。これらの曲はあまり馴染みがないのですが,感想に関してはハイドン音盤倉庫のレビューに同意しますのでそちらをご覧いただければと思います(手抜きですみません(^^;)。
さて肝心の録音ですが,各曲の最後に拍手の入るライヴ録音なのですが,演奏中は全くそんなことがわからないまるでセッション録音のような録り方をされています。残響はすごく多くまた残響時間も長いため,豊潤な響きが堪能できます。その残響ですが,ある程度楽器の直接音とは分離感があって,残響量の割には楽器の質感が保たれ,音色への影響も少なめなので十分に許容範囲であり,残響を好まれる方であれば優秀録音と言えるのではないかと思います。
私自身はせっかくのライブ録音なので,もう少し残響を抑えた生々しい録音で聴きたく,好みの録音とはだいぶ方向性が違うと思いました。しかし,この録音であれば私でも許容できますし,音楽も残響にあまり邪魔されることなく楽しめますので,四つ星半の好録音評価といたしました。
2017/01/02

イ・ソンイル Sungil Lee (Violin)
録音データ記載なし
WMED 0520(P)(C)2016 Arcade 9 (輸入盤)
好録音度:★★★★
参考: Amazon.co.jp
「CD試聴記」からの転載記事です。
モダン楽器の伝統的なスタイルによるオーソドックスな演奏。 技術的にものすごくキレるわけではありませんが,安定感はあって安心して聴けます。 特徴のある演奏ではありませんが,真摯に音楽に向き合う姿勢が伝わってくる良い演奏だと思います。
録音ですが,やや残響が多めで楽器音へのまとわりつきが少し気になりますが, その影響は少なめで許容範囲です。 ソロ・ヴァイオリンの録音としては標準的だと思います。 もちろん私としては残響をもっと抑えてすっきりと伸びのある音で録って欲しかったとは思います。
2017/01/01

中木健二 Kenji Nakagi (Cello)
2016年7月24-26日 キング関口台スタジオ 第1スタジオ
KICC 1345/6 (P)(C)2016 King Record Co. Ltd. (国内盤)
好録音度:★★★☆
参考:
「CD試聴記」からの転載記事です。
モダン・チェロによる演奏。 明るく軽やかであり,どこまでも爽やかな印象を残す好演奏。 技術的にも万全であり,この余裕がこの楽しい演奏を生み出しているのでしょう。 モダン楽器を活かした新しい時代を拓く演奏だと思います。
録音ですが,スタジオで録音したとは思えない残響感が中途半端です。 残響がまとわりついて明らかに明瞭感と質感を阻害しモゴモゴしています。 音楽を豊かに演出する効果はゼロ,音色を濁し不明瞭にする悪影響しか感じません。 明らかにこの素晴らしい演奏に水を差しています。 いったい何のためにスタジオで録音したのか理解に苦しみます。 もし人工的に残響を付加していたとしたら,本当に余計なことをしてくれたもんだと苦情を言いたいです。 演奏が良いだけに辛めの評価とさせていただきました。 本当にこの録音は残念です。
解説書によると,中木氏は,東京藝術大学を経て,2003年からパリ国立高等音楽院で錬磨を重ね, スイス・ベルン芸術大学でさらに研鑽を積み,2010年にはフランス国立ボルドー・アキテーヌ管弦楽団の首席奏者となられ, 2014年に帰国,東京藝術大学音楽学部准教授に着任された,とのことです。
また〈モダン楽器でバッハを弾くこと〉について,「バロック・チェロは弾きません」 「ちゃんと演ろうとしたらモダン楽器を一時辞めないといけませんし,中途半端なバロックは嫌い。 ロマンティックな解釈で演奏はしませんが,ガット弦でピッチを変えて弾く演奏とは一線を引いておきたい。」 と語られたそうです。
2017/01/01
あけましておめでとうございます。
本ブログは開設から約7年半,姉妹サイトのCD試聴記は約14年半になりました。
更新が滞っていても多数の方が毎日変わらずアクセスをしてくださるのが励みになっております。本当に有り難うございます。今年もマイペースで続けていきたいと思っておりますので,今後とも何とぞよろしくお願い申し上げます。
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プロフィール
Author: 𝕥𝕤𝕪𝟚𝟚𝟟 (@tsy227)
主に音楽とオーディオについて書いています。特に録音にこだわって書いていきます。私の録音に対する考え方を『「好録音」の録音評価のスタンスについて』という記事で表明しました。ご一読いただければ幸いです。
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CD試聴記: バッハ無伴奏Vn/Vc聴き比べ
ヘッドホン・イヤホン 周波数特性 測定結果
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