寺神戸亮さんのコレッリ:ヴァイオリン・ソナタ作品5の初期盤のエラーと再発売盤

寺神戸さんのディスクは1990年代よりDENONのAliareシリーズで多くのタイトルが発売されてきました。先のエントリーで紹介したコレッリのヴァイオリン・ソナタ集もその中の一つです。

このAliareシリーズですが,CDの規格の仕様の一つである「プリエンファシス」をかけたものが多くありました。プリエンファシスというのは,簡単に言うと,あらかじめ高域を強調して録音しておき,再生時に強調された高域を下げて元に戻すことにより,ヒスノイズなどのノイズの影響を少しでも低減しようというものです。磁気テープなど主にアナログ録音をするときのノイズ低減に効果のある方法ですが,CDにも取り入れられていました。なお細かい話ですが,録音時に高域を強調する処理をプリエンファシス,再生時に戻す処理をディエンファシスと言います。

もう少し細かい話をすると,プリエンファシスで録音されたCDは,プリエンファシスがONであるというフラグが立てられているので,再生するCDプレーヤは,このフラグを見て,フラグがONの時には,ディエンファシスフィルタをONにして再生することで,正しい音に戻しています。このフラグは,CDのTOC(Table of Contents = 管理情報)と音声データに付随するサブコードの2カ所に記録されています。

しかし,1990年代に発売されていたディスクの中で,プリエンファシスで録音されているにも関わらず,このフラグが正しく記録されていないエラーディスクのものがありました。この寺神戸さんのコレッリもその一つです。具体的には,音声データに付随するサブコードのフラグは正しくONとなっているのに,TOCのフラグがONになっていない,というエラーです。

このエラーの具体的な影響は,「PCで正しくリッピング出来なくなる」です。CDプレーヤは通常はサブコード側のフラグも参照するため,TOCの情報が間違っていても正しく再生できます。しかし,通常,PCではサブコードは読み取らずTOC情報だけを頼りとするので,これが間違っているとディエンファシスをかけ損ねて正しい音でリッピング出来なくなります(もちろんリッピングするソフトの仕様にもよるとは思いますが)。実際このディスクをリッピングしてみると高域が変に強調されたおかしな音になります。

このディスクが発売された1995年当時はPCでリッピングすることはなかったため,エラーがあっても実質的に問題はなかったので,このようなエラーディスクが見過ごされていたのだと思います。

このディスクは何度か復刻されていますが,2002年に再発売されたバージョンでは,TOCのフラグが正しくONに修正され,エラーディスクではなくなりました。

さらに,先のエントリーで取り上げた2010年に再発売されたバージョンでは,音声自体がプリエンファシスされていないものに変更されていました。デジタルであるCDではプリエンファシス自体ほとんど効果がないこと,TOCのフラグを無視して正しい音でリッピング出来ないソフトへの対策,で仕様変更されたのではないかと思います。

ちなみにiTunesはTOCのプリエンファシスのフラグを参照し,リッピング時にディエンファシスフィルタをフラグに応じて適用しているようです。

ディスクについて整理すると以下のようになります。

・1995年発売 COCO-78820 プリエンファシスON ★TOC情報エラーあり
・2002年発売 COCO-70459 プリエンファシスON
・2010年発売 COCO-73075 プリエンファシスOFF

■ この記事へのコメント

■ コメントの投稿

:

:

:

:

:

管理者にだけ表示を許可する