オーディオ・アクセサリー誌のディスク・エナジャイザーの記事に思う

オーディオ雑誌の記事にいちいち目くじらを立てるのも大人げないと思いつつ,このもやもやを引きずるのも嫌なので,ここに記事にして忘れたいと思います(^^;。

ディスク・エナジャイザーはCDなどのディスクそのものに処理を施して音質を改善するという装置です。このオカルト系のにおいのする装置について,オーディオ・アクセサリー136号の中で明確な効果を測定したとあります。測定の波形も載っています。私はこの装置の効果の有無を議論したいわけではなく,「測定に成功した」というところに疑問を投げかけておきたいというのがこのエントリの趣旨です。

この手の装置がなぜ「オカルト」と言われるか,それはその音の差があるとしてもあまりに微小で測定するのが極めて難しいからです。この微小な差を測定するにあたり,いかに本来の要因のみを上手く抽出するか,いかに他の無関係な要因を排除するかが成否のポイントになります。

記事で書かれている測定方法は,処理前と処理後のディスクをそれぞれ再生し,それをリスニングポイントに設置したPCMレコーダで録音して波形比較する,という方法です。記事を読む限りは,波形を表示して目視でエンベロープの山谷を比較し,その山谷の深さなどで判断されています。(詳しくは雑誌の原文をご参照下さい。)

PCMレコーダをお持ちの方はぜひ試して欲しいのですが,例えばCDプレーヤで同じ曲を何度も再生してそのライン出力を録音してみて下さい。それらの波形を比較すると,ほぼ一致するように見えて厳密には微妙に異なります。外乱の入りにくいライン出力でさえデータは一致しません。そもそもアナログ信号に対するサンプリングタイミングを厳密に合わせられませんので一致しないのは当然なのですが,微弱なノイズの影響などもあると思います。微妙な差を録音して計測する場合は,こういった測定のばらつきに対して明らかに異なる差があるのかどうかを慎重に検証していく必要があります。

一旦音として空間に放射された音をマイクで録音するという方法は,電気信号から機械振動への変換,機械振動から音波への変換,音波から機械振動への変換,機械振動から電気信号への変換,という,再現性の乏しい変換系をいくつも通るとともに,暗騒音,観測者(動けば当然音場に影響を与える)などの影響をもろに受け,一体何の差を計測しているのかわからなくなってしまします。それを波形の見た目で比較するなど無理もいいところです。私から見ると雑誌に載っているデータは全く説得力がありません。

もし実は納得性があるやり方をやっておられるとすれば,それをそのように書かない記事の書き方があまりにも良くないと思いますし,本当にこのようなやり方だけでやっておられるなら,きちんとやり方を練り直してほしいと思います。数少ないオーディオ専門誌で影響力も大きいのですから,正しい知識・情報を読者に伝えるために,正しく評価して欲しいというのが私の希望です。オーディオ業界の健全な発展を促すためにも大切なことだと思います。

なお,Phile-webにオーディオアクセサリー誌の該当ページの紹介があります(微妙に文字が読めない...)。

■ この記事へのコメント

che
こんにちは、バイオリンブログを書いているcheと申します。
僕はオーディオマニアではありませんが、音に対する好みは、T.S.さんとかなり似ていると思っています。
バッハだからといって、教会で残響がワンワン響くような録音には、いつも辟易させられています。

さて、オーディオのトンデモグッズについては、僕は純粋に記事を読むのを楽しんでいます。
スポーツ新聞の「ツチノコ発見!」と同じ読み方ですね(それを純粋とは言わないですか?)
個人的には、ブラインドテストで効果のない物に購入する価値はないと思っていますが、少しでも音を良くしたいというマニアの気持ちもわからないではありません。
そもそも、この手のアクセサリーってどれくらい売れているんでしょう?
気になります。
2010.03.14 at 12:25 #- URL [Edit]
T.S.
いつも有り難うございます。私の音に対する好みと近い方がおられるとわかってすこしホッとしております。私もブラインドテストで効果が出ないものはあまり手を出したくないとは思うものの,安心感を買うという意味で,金額的に妥当と思える範囲でできるだけ良さそうなもの,価値感のあるものを選びたいと思っています。

こういうグッズって,どれくらい売れているんでしょうね。私も興味があります。
2010.03.16 at 01:50 #- URL [Edit]

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