日本音響学会2010年春期研究発表会から

少し前の話ですが,社団法人 日本音響学会の2010年春季研究発表会が3月8-10日に電気通信大学で行われました。私は行っていないのですが,行った方から予稿集を見せていただきました。その中で,オーディオのオカルトに挑戦する?研究報告がありましたので,ここで紹介したいと思います。

一つ目は「ラインケーブルによる微小な音質の差異が検出可能な高分解能音響計測法の検討」で東理大の報告です。ここでは,構造・材質の異なる4種類のラインケーブル(長さ各10m)が比較されています。測定にはサンプリング周波数1MHz,分解能16ビットの高速ADコンバータが用いられています。このADコンバータで取り込んだ観測波形について,時間方向のずれと振幅方向のずれを正規化し,基準ケーブル(同軸銀製1m)との時間波形の誤差と,Wavelet変換による帯域別の時間波形の比較を行っています。

その結果,標本化誤差の出現傾向に違いが現れること,Wavelet変換では13k~25kHzの帯域の時間波形にケーブルによる差異が見られた,ということです。残念ながらこの報告では主観評価との関連までは述べられていません。

二つ目は「基盤材料によるCDの音質変化に関する検討」で広島市立大学大学院とメモリーテック,パイオニアの共同報告です。ここでは,同一スタンパでプレスされた5種類のマテリアル(ポリカ2種,HQCD 2種,ガラスCD)に対しそれぞれアルミ,銀,金の3種の反射膜を用意し比較しています。これらについてRF信号の観測,音楽信号の観測,心理実験が行われています。

結果の書き方が今ひとつわかりにくいのですが,普通のポリカのCDとその他のCDでは,Wavelet解析で低域の出力差,位相差が観測され,心理評価とも相関があったということです。ガラスCDについては,ポジティブ・ネガティブ両方の意見に分かれたが,普通のCDとは違って聴こえることがわかった,ということです。

一つ目に関しては,こんな微少な差が本当に聞き分けられるのか興味深いところです(しかも10mというケーブルの長さで!)。今後,きちんと主観評価との関連づけをやって欲しいところです。(そもそもこの4本のケーブルの主観評価では明確な差があったのか?)

二つ目に関しては,CDの製造メーカーと機器メーカーが協力しているので,より高度で精確な研究が出来るはずです。なぜ音質差が発生するかについてもっと突っ込んだ研究を期待したいところです。ガラスCDは必ずしも評価が良くなかったというところは一つの面白い成果だと思います。

これらの研究はなかなかテーマとして取り上げられにくいとは思いますし,内容を見る限りまだまだ途上という感じですが,オカルトと言われる現象をきちんと解明し,オーディオ業界の正しい発展に寄与してくれるものと期待します。

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