好録音について考える(5) ~ 残響の理想的な取り入れ方1

残響の取り込みを肯定するつもりはないのですが,取り入れることを是とするならどのように取り入れるべきかを考えてみたいと思います。

これに関し,私が以前に参加したAES(Audio Engineering Society)日本支部主催のAES東京コンベンション2005のワークショップでのデヴィッド・グリジンガー氏(レキシコン)の講演が参考になりますので,まずこれを紹介します。

講演のタイトルは「サラウンド録音を成功させるには(心理音響,音響物理との関係をふまえた成功の秘訣)パート2」で,その中で,響きが多い空間でマイクが音源から遠すぎる場合に発生する“濁り”について言及がありました。以下,私の理解に基づいて要旨をまとめます。

  • クリアで濁りのない録音のためには,残響音のエコータイムパターンが重要
  • 直接音に対し,20-50msecの初期反射音と150msec以降の残響音,というパターンが理想的
  • 50-150msecの反射音は“濁り”につながるので抑える必要がある


初期反射音は直接音を補強するとともに音源の奥行き感,立体感を出す効果があるとのことです。50msecくらいまでということは,直接音との経路差はだいたい17mくらいになります。ステージだと後方の反射壁からの反射音がこれくらいでしょうか。残響は150msecより大きくなければならないとすると,直接音との経路差は50m以上必要になります。

上記の講演内容はそれなりに納得性があるように思います。残響がそれほどない,あるいは残響時間が短いのに,楽器音が曇ったり濁ったり感じられる録音によく遭遇しますが,これは50-150msecあたりの反射音レベルが大きいのではないかということが想像できます。

では理想的なエコータイムパターンを得るためにはどのように考えればよいか。次回これを考えたいと思います。

■参考url: デヴィッド・グリジンガー(David Griesinger)氏 Home Page
http://www.davidgriesinger.com/

■ この記事へのコメント

こんにちは、初めてコメントさせていただきます。

好録音探求の記事、大変興味をもって読ませていただきました。
音楽と録音に関して並々ならぬ情熱で述べられていることに感銘を受けました。
私も自覚的には、人語に落ちないほどの音楽好き(主としてクラシック音楽)と思っておりますが、ネット上様々な、音楽やオーディオ関連のブログ記事、レビューなどに接し勉強させてもらっております。

しかし、自分のCD購入の参考にと調べて手にした音盤は、他者のレビューで
好評価されていたことが信じられないほど好ましくないことが多々あります。
当然、レビューアさまの装置や感性の相違で起こりうる現象には違いありませんけれど、情報量多くして核心をつくものが何かが全くつかめないという現実に困り果てていた状態でした。


今回、貴殿の本題のレポートに接し、日頃、CDの音に対する疑問に感じていた、音の汚れや残響に関する問題の認識を深めることが出来ました。

レコード音楽を楽しむためには必然的にオーディオに関わらざるを得ない訳で、私の歴史はLPの出始めから今日まで50年余りになります。
それなりにオーディオ装置も分相応の範囲内で進化させてきたつもりでおります。(経済事情から自作を余儀なくされて、他では見られないシステムになってしまいましたが)

拝見しておりますと、好録音探求は主としてヘッドフォン使用とお見受けしますが、スピーカによる試聴はなさっておられませんのでしょうか?
勿論、厳密な録音判定はスピーカより数等優れているだろうとは想像がつきます。大量の空気を振動さすために生ずる歪みの点では、スピーカとは比較にならない優位さはあると思います。
その音をもって、スピーカによる再生音とイコールと考えてよいものでしょうか?

こう申しますのも、実は個人的条件で恐縮ですが、私メは片耳難聴で、いわゆる双耳効果の恩恵が得られません。
従って、想像ですが、健常者の聴いている音とは異なった音を聴いていると思います。ですので、歪んだ音、濁った音やエコーが強くかかった再生音が非常に気になります。
またヘッドフォンの使用も不適なため、このような質問になったしだいです。

ともあれ、今後もまたお邪魔をさせていただきたいとおもっております。
本便、TS様への一マニアのエールとお受け取りいただければ幸いです。
2014.07.26 at 19:32 #- URL [Edit]
T.S.
コメント有り難うございます。また,応援のお言葉をいただきうれしく存じます。

オーディオに関しては非常に長いキャリアをお持ちで私の大先輩になりますね。片耳が難聴とのことで様々なご不便をされていることと想像します。

おっしゃるとおり私の試聴の中心はヘッドホンです。スピーカでの再生環境もあるにはあるのですが,諸事情からあまり良い環境とは言えず,紹介できるようなものではありませんので,本ブログでは触れておりません。ヘッドホンにはヘッドホンの良さがあり,好きであることは間違いないのですが,本当は私も良いスピーカで聴ければそれが一番とは思っています。イコールではないことは私も重々承知しております。私の場合はヘッドホンは妥協の選択ですが,その中でも出来るだけ良い環境をと思い,いろいろと試行錯誤している状況です。

特性に関してはヘッドホンが有利な面もございますが,よほどひどくない限りスピーカの歪や音の濁りが気になることはありませんし,私の経験では,ソースの欠点はヘッドホンの方がわかりやすく,スピーカで聴く方が残響や音の濁りがヘッドホンほどは気にならないことが多いように思います。まあこれは使っている機器や聴取環境にも大きく左右されますので一概に言えることではないとは思いますが。

ですので,今,スピーカでのシステムを進化させてきておられるのであれば,それが一番だと思いますし,仮にヘッドホンで聴けたとしてもソースに起因する音の歪みや濁りは解消しないと思います。

これでご質問の回答になっていますでしょうか。あまり役に立たない返信で申し訳ありません。

では今後ともよろしくお願いいたします。
2014.07.26 at 23:27 #- URL [Edit]

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