バイノーラル・マイクロフォンでヘッドホンの測定を試みる(その4)

前回の続きで,ローランドのCS-EM10とSound ProfessionalsのSP-TFB-2の2つのバイノーラル・マイクロフォンでのヘッドホンの測定の差をみていきます。測定したヘッドホンは,私のリファレンス機であるゼンハイザーHD25-1とHD580の2機種です。

測定方法は(その1)で説明した方法と同じです。グラフ表示は1kHzでレベルを揃えました。これは今まで示してきた表示方法と異なりますのでご注意下さい。

まずゼンハイザーHD25-1の測定結果から提示します。図1がローランドのCS-EM10,図2がSound ProfessionalsのSP-TFB-2です。青線がLch,赤線がRchです。

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図1 Sennheiser HD25-1 Lch: Blue/Rch: Red (使用マイク:CS-EM10

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図2 Sennheiser HD25-1 Lch: Blue/Rch: Red (使用マイク:SP-TFB-2


ちょっと見ただけでも3kHz以上の特性がかなり違うことがわかります。また,ローランドのCS-EM10は左右でかなり異なる特性になっていますが,Sound ProfessionalsのSP-TFB-2では左右で近い特性が得られています。

次にゼンハイザーHD580の測定結果です。図3がローランドのCS-EM10,図4がSound ProfessionalsのSP-TFB-2です。青線がLch,赤線がRchです。

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図3 Sennheiser HD580 Lch: Blue/Rch: Red (使用マイク:CS-EM10

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図4 Sennheiser HD580 Lch: Blue/Rch: Red (使用マイク:SP-TFB-2


やはり3kHz以上の特性がマイクの違いでかなり異なります。

測定対象が同じでも,測定する機器,ヘッドホンやマイクの装着の具合,測定する人(耳の形の違い),などによって測定結果がかなりばらつきます。こんなに違うと一体何を信じて良いのか? こんな測定をして本当に意味があるのか? という疑問が湧いてきます。この特性は,ある特定の条件下で観測された,その機器+測定系のごくごく限られた一側面を切り取ったにすぎません。

しかし,一方で,いろいろと測定を重ねていると,何となくそのヘッドホンの癖が特性に現れているのではないかとおぼろげながら思えるようにもなってきました。あくまで参考データでしかありませんが,できるだけ条件を揃えて測定することによって何らかの傾向をつかむことが出来るであろうと思っています。

周波数特性は,音質を示す特性のある一つの特性にすぎませんが,重要な特性の一つであることは間違いありません。課題が多いとはいえ,主観だけでなく客観的にも評価することにはそれなりに価値があると考えます。これからも出来るだけ客観データが示せるように検討を続けていきたいと思います。

今回の結果からは,Sound ProfessionalsのSP-TFB-2の方がばらつきが少なく安定して測定できそうな感触が得られましたので,当面は,ヘッドホンはSP-TFB-2を使おうと思います。一方,インナーイヤータイプ(耳栓型ではないオープンタイプ)のイヤホンの測定はローランドのCS-EM10+自作カプラーしか今は準備が出来ていませんので,こちらはこれで測定データを示していきたいと思います。

なお,測定にSP-TFB-2を使った場合は特にマイク位置が耳の中の方に入っていますので,必ず耳の形の影響を受けます。具体的には耳の凹みの前室効果による中高域への特性の影響で,盛り上がりのほか,激しいピークディップが生じることが想像されます。従って,「中高域の乱れ=ヘッドホンの特性の乱れ」とは必ずしも言えないと考えます。このあたりは測定を積んで傾向をつかんでいくしかないと思いますが,この測定とは別に,耳の形状などの影響を除いたヘッドホンのドライバユニットの素の特性を測る方法も考える必要があるかもしれません。ただし,こちらは素性を知るには良いかもしれませんが,ヘタをすると聴感からはずれた測定となってしまうかもしれません。難しいところです。

タグ: [ヘッドホン] 

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