オープンタイプのインナーイヤー型イヤホンの特性測定を試みる(その1) Sennheiser MX500

私はヘッドホンが好きなので,兄妹サイト「CD試聴記」の「オーディオ製品試用記」で私の使ったヘッドホンやイヤホンを紹介してきました。これらのヘッドホンについて,言葉だけではなく定量的なデータとして特性を示すことが出来ないかと常々思っていました。オーバータイプのヘッドホンについては,バイノーラル・マイクロフォンを使う方法があることがわかり,先日,実際に測定してみた結果を掲載しました(→バイノーラル・マイクロフォンでヘッドホンの測定を試みる(その1)(その2))。まだまだ検討の余地はあると思いますが,自分の聴いた印象とそれなりに相関のある特性データが取れたのではないかと思っています。

私はオープンタイプのインナーイヤー型イヤホンも愛用しているので,この特性も測定してみたいと考え,今回試験的に実施してみました。

オープンタイプのイヤホンの測定についてはほとんど情報を見かけません。耳に装着しないとまともな特性にならないことは容易に想像できるのですが,耳の中にマイクを仕込むわけにいかず,どうやって測定したらよいのか全くアイデアが浮かばなかったのですが,オーバータイプのヘッドホンに使ったバイノーラル・マイクロフォン(ローランド CS-10EM)の形状が適度な大きさで突起形状になっていることを利用し,この先端に耳の代わりのカプラーを取り付けて測定出来るのではないかと思いつきました。

カプラーをどう作るかも悩みましたが,材料は消しゴムを使えば柔軟性もあり加工も楽なのでこれで作ってみました。

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カプラーを付けたRoland CS-10EM(右)
このすり鉢状の部分にイヤホンをあてて音を出し,マイクで拾います。オープンタイプなので適度な隙間が必要なのですが,これはイヤホンに付属のスポンジのパッドを装着することで確保できるのではないかと思い,取り付けて測定しています。信号の再生系と収録系はオーバーヘッドホンの測定と同じです。
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MX500
実際に測定した結果を示します。測定したイヤホンは,Sennheiser MX500です。
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3本の特性がありますが,これらは以下のように条件が異なります。

 ①イヤホンをカプラーに押しつけて密閉度を高くして測定
 ②イヤホンをカプラーにそっと載せて軽く手を添えるくらいの状態で測定
 ③イヤホンとカプラーの間に意識的に隙間を空けて測定(別の日に別のカプラーで測定)

上記のように隙間の空き具合を変えただけで特性が大きく変わってしまいます。隙間の空き具合で低域特性が大きく変わることは容易に想像できたのですが,装着具合の影響がほぼ4kHzにまで及んでいるのには正直驚きました。自分がどの程度の装着状態で聴いているのかはわかりませんが,恐らく②と③の間くらいの状態で聴いているものと思います。

なお,この図は測定したそのままのレベルで表示していますが,例えば1kHzでレベルを合わせて表示すると,違った見え方をしてくるように思います(装着具合によって低域と高域のバランスが変わってくる)。

この測定でわかったのは,オープンタイプのイヤホンは人によって装着具合が異なるでしょうから,全然違う音を聴いているのではないかということです。イヤホンの音や特性を一意的に示すことはかなり難しそうです。

あと,この測定の課題としては,耳の形状が全く考慮できていないことです。カプラー形状の妥当性,マイクとイヤホンとの距離の妥当性など,全く検討できていません。さらに,この測定そのものを他の方が試しても同じ特性にはならないでしょう。自分自身がやっても再現性がどれくらいあるかわかりません。

じゃあこんな測定全然意味ねーじゃん,とも思うのですが,そう言っていては進歩がありません。できるだけ測定条件を単純化し,そのイヤホンの素性を何らかの形で表すことで,相対的ではあってもそれぞれのイヤホンの特徴が見えてくるのではないかと考えています。

なお,測定結果にはマイクの特性も重畳されていることに注意しなければなりませんし,個々のユニットのばらつきもあるので,本来は複数のサンプルでその傾向をつかんでおきたいところです(なかなか出来ませんが)。まだまだ試験段階ですので,試行錯誤してデータを積み上げ,より適切な方法を模索していきたいと思います。

タグ: [ヘッドホン] 

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