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「好録音」の録音評価のスタンスについて

「録音を取り扱うブログなのだから,録音評価に対するスタンスを明示すべき」というアドバイスをいただきました。おっしゃる通りなので,ご理解いただけるかどうかはわかりませんが,ここでそれを表明しておきたいと思います。

■私の好む録音

私の録音へのこだわりについて少し説明をしておきたいと思います。私の好む録音は端的に言うと「演奏者を身近に感じられる録音,演奏者の存在が見えるような録音」です。いわゆる「優秀録音」とは少し視点が異なりますし,一般的に好まれるホール音響を再現するような録音とも異なります。

たとえば家に仲間を呼んでカルテットを演奏する(あるいは招待してホームコンサートを開く),子供がリビングでピアノを弾いているのを横で聴く,こういう場合に耳に入ってくる音・音楽を想像してみてください。これが私が聴きたい音・音楽に最も近いと言えると思います。

演奏者が弦に弓を置くところから最後の消え入る瞬間の音まで,さらに,弦の上を指が滑る音,演奏者の息づかい,などなど,演奏者が音楽に込める極めて微妙なニュアンスまで総て耳に飛び込んできます。こういう音・音楽を録音でも聴きたい,というのが私の望みです。

とはいえ,実際にはこんな録音はないわけで,これをもう少し実際の録音に則して言うと,

  ・楽器そのものが発する音の質感(楽器の肌触り)をストレートに伝えてくれる録音
  ・奏者が楽器を通して発する表現のニュアンスを余さず伝えてくれる録音

といったところでしょうか。具体的には次のような要件を満たしているかどうかということになると思います。

  (a) 間接音(響き・残響)より楽器からの直接音が支配的で純度・明瞭度が高い
  (b) 楽器音を適切な距離感で捉えている
  (c) 個々の楽器が分離よく見通しよく聴こえる
  (d) 高域のヌケがよく,曇りがない
  (e) 音色が自然で(響きなどの外的要因による)色づけがない

私の録音評を読んでいただくと,残響を極度に嫌っているということがわかると思います。一般的にクラシック音楽の録音は,ホールでの音響を再現し,心地よい残響を伴う音楽を提供しようとしているように思います。しかし多くの録音において,この残響は心地よさを演出するよりも,楽器音を濁し音楽の微妙なニュアンスといったとても大切な情報を消し去ってしまう弊害の方が大きい,と感じています。これがその理由です。

こういう点をご理解いただいた上で私の録音評を読んでいただければと思います。

■SACDについて

あともう一点ご承知おきいただいた方が良いであろうSACDの扱いについて説明しておきます。私が取り上げるディスクにはSACDハイブリッドも多くありますが,基本的には評価するのはCD層の音で,SACD層の音は評価しません。

SACDの音質の良さ,その価値は私もそれなりに認識していますし価値も認めています。しかし,私が音楽を聴く時間のほとんどはSACD非対応の機器を使っており,残念ながらSACDの音をじっくり聴ける状況にありません。私にとってはCD層こそが大切であり,いくらSACD層の音が良くてもCD層の音作りが悪いものは私にとってほとんど価値がないのです。

という理由から,あえてSACD層を無視してCD層で評価しています,ということをあらかじめご了解いただきたく,よろしくお願いいたします。

■ この記事へのコメント

このコメントは管理人のみ閲覧できます
2013.07.02 at 22:35 # [Edit]
コノスバ
素晴らしいサイトです。非常に参考になりましたし、音に対するスタンスがここまで一致する方も珍しいので、非常にうれしく思います、これからもどんどん発掘していいディスクを教えていただければと思います。
2016.06.19 at 10:01 #JalddpaA URL [Edit]
T.S.
有り難うございます! 私のような音に対する好みを持っておられる方は少数のようなので,このようなコメントがいただけて心強く思います。

最近ちょっと評価がブレたり甘くなったりすることが多くなってきている気がするので,気を引き締めて辛口で発掘を続けて行きたいと思います。今後ともよろしくお願いします。
2016.06.19 at 15:30 #- URL [Edit]
コノスバ
はい、ぜひその方向でお願いいたします。ちなみにグールドがないようですが、やはり恐れ多すぎて評価できないからでしょうか(笑)。
2016.06.19 at 23:38 #- URL [Edit]
T.S.
こんにちは。グールドはブログを始めた頃にゴルトベルク変奏曲の新盤を取り上げていました。よろしければご覧ください。
http://dominant7th.blog83.fc2.com/blog-entry-2.html
2016.06.20 at 06:36 #- URL [Edit]
コノスバ
ほかのおすすめを考えるとグールドがないわけがないので、なぜかなあ、と思っておりました。上のリンクで別のページにも行けるんですね。誤解があり申し訳ありませんでした。。。
2016.06.22 at 05:56 #- URL [Edit]
T.S.
いえいえ。このブログで最初に取り上げたのがこのグールドのゴルトベルク変奏曲でした。過去のエントリーは下記のリンク先で一覧にしていますのでよろしければ。最近更新を怠っていますが...
http://www.sam.hi-ho.ne.jp/t-suzuki/scribble/blog_cd_list.html
2016.06.22 at 06:28 #- URL [Edit]
コノスバ
なるほどそうですか。どうもありがとうございます!
2016.06.23 at 00:09 #- URL [Edit]
ドヴォルザーク好き
全く同感。
トスカニーニも残響がきらいだったようですね。
ちなみに私が最も好きなホールはティタニア・パラストです(笑)
2016.12.11 at 14:23 #rnZ40XG6 URL [Edit]
T.S.
ご同意いただけてうれしく思います。トスカニーニはほとんど聴いたことがないのですが,そうなのですね。ティタニア・バラストも私は知らなかったのですが,映画館を改修した会場とありました。これが聴けるのはフルトヴェングラーの演奏ですかね?笑)
2016.12.11 at 23:47 #- URL [Edit]
このコメントは管理人のみ閲覧できます
2017.10.23 at 10:31 # [Edit]
大変参考になるページです。
バッハのゴルドベルク変奏曲の掲載CDの多さに驚きましたが、
巷で大変評判の良い、書籍まで出ている、Zhu Xiao-Meiの演奏が取り上げられていないのは何故でしょうか。新録音は音質もまずまずだと思います。演奏はもちろん最高です。
2022.08.15 at 22:22 #- URL [Edit]
追記です。
貴ブログですが、録音について深い考察がなされていて大変参考になるのですが、録音エンジニアやプロデューサーについての記述がほとんど無いのが興味深いです。
カラヤンが特に顕著ですが同じ演奏家でもレーベルや録音エンジニアで全く音作りが違ってきますし、録音プロデューサー次第で演奏自体も大きく変わってくることは常識です。お好きなエンジニアについても触れていただければ幸いです。
2022.08.16 at 10:22 #- URL [Edit]
𝕥𝕤𝕪𝟚𝟚𝟟 (@tsy227)
コメント有り難うございます。この記事にご興味を持っていただいたこと,うれしく存じます。

Zhu Xiao-Meiについてですが,確か2回録音されていたと思います。今まで取り上げていなかったのは特に他意はございません。きっかけをいただきましたので聴いてみようと思います。有り難うございます。

録音エンジニアやプロデューサについては,このブログを始めた頃はそこまで気を配れておらず,その後,録音はエンジニアに寄るところは大きいだろうと思いつつも,それをチェックするところまではやっていませんでした。今後その点について取り上げていくかは少し考えたいと思います。

ということで実際にそこまで出来るかどうかはわかりませんが(出来なかったらごめんなさい),今後とも気長にお付き合いいただければうれしく存じます。よろしくお願いします。
2022.08.16 at 23:21 #- URL [Edit]

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