書籍:超広帯域オーディオの計測(蘆原郁(編著),大久保洋幸,小野一穂,桐生昭吾,西村明(共著),コロナ社)

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超広帯域オーディオの計測
蘆原郁(編著),大久保洋幸,小野一穂,桐生昭吾,西村明(共著)
コロナ社 2011年8月 ISBN978-4-399-00824-1
参考: Amazon.co.jp

本書で言う「超広帯域オーディオ」とは,一般的なオーディオCDと比較して周波数帯域,ダイナミックレンジが広いデジタルオーディオのことを指す,としています。そして本書の目的は,「高品位オーディオが置かれている現状,課題を整理し,新しい時代のオーディオ技術を切り開くための基礎知識を共有しようというものである」とまえがきに書かれています。

「計測」と書かれていますが,計測や実験,評価を切り口に俗に言うハイレゾオーディオを含めたオーディオ技術に関する概論書となっており,まえがきに書かれている通り,現在のオーディオ技術を俯瞰するのに役に立つであろうと思われます。専門書なので数式なども出てきますが,それを読み飛ばしてもそれなりに知識が得られるように書かれていますが,本書の性格上,あまり深くまで突っ込んだ記述はないですし,いわゆる迷信的なことに対して断定的な言い方は避けられていますので,少し物足りないところはありますが,これはまあ仕方ないと思います。

本書の構成は次のようになっています。

1.超広帯域オーディオまでの道のり
オーディオの技術面からみた歴史について書かれています。

2.サンプリングと量子化
デジタルオーディオの基礎知識となる内容が書かれています。

3.ハイサンプリングのメリットとデメリット
メリットとしては,波形忠実度の向上,量子化雑音レベルの低減,デメリットとしては,非線形ひずみの増大,タイムジッタの影響などが挙げられています。SACDの量子化雑音についてもデメリットの項として述べられています。

4.ハイビットとダイナミックレンジ
ダイナミックレンジの求め方,ハイビット化で何が期待できるのか,などが書かれています。

5.超広帯域のマイクロホン技術
超広帯域マイクロホンを開発するための技術について書かれています。

6.室内音響と超広帯域オーディオ
残響時間や室内音響の周波数特性,騒音,再生環境などについて書かれています。

7.オーディオ信号の劣化およびその計測
オーディオ機器を評価する指標の説明と,これを超広帯域オーディオに適用する場合の課題について書かれています。

8.タイムジッタ
なんとジッタに1章まるまる割いています。しかもかなりのページ数を使っています。インターフェースジッタとサンプリングジッタの説明,また,理論上のジッタ許容量,および音楽信号聴取時のジッタの主観的な検知限に関する近年の研究が紹介されています。

オーディオ機器で発生しうるジッタは,実験で確認された検知限よりもはるかに小さいレベルのようで,メディアの素材の違いなどで発生する音の差はジッタが影響していると言い切れるほど単純なことではないように思いました。

9.聴覚からみたオーディオ周波数帯域
可聴帯域下限,上限に関する実験結果が紹介されています。22kHz以上の高い音を確実に聴き取るには音圧レベルとして80dB以上が必要であることや,音楽信号などの複合音で高レベルの高周波が含まれている場合は,スピーカの非線形性に起因する可聴域の混変調ひずみ音を聴いて違いを感じている可能性の指摘なども書かれています。

10.主観評価実験を行うには
聴取実験による主観評価も重要であるとし,主観評価を行う上での注意点が書かれています。また,ラボノートに記録を残すことの重要性,認知的バイアス(プラシーボ効果やヒツジ・ヤギ効果(これは初めて知りました),盲検法など),有意差検定の注意点などが書かれています。

深く知るには物足りないと思いますが,デジタルオーディオ技術全般の基礎の入り口としては参考になると思いますので,ご興味のある方は読んでみられても良いかと思います。実はまだ斜め読みしかしていないので,もう少しじっくりと読んでみようと思います。

タグ: [書籍] 

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